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プロローグ
朝日光一、20歳。
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朝日光一、20歳。お金がほしいです! Hは未経験です、よろしくお願いします!
「これでよし」
「待て待てまてまて、全然良しじゃねぇ」
決定ボタンを押そうとしたおれの手を止め駿はスマホを取り上げた。
「おい、駿! 返せよ!」
「返さん。この一瞬でお前にSNSの才能がまるで無いことがはっきりと分かった」
「なんだよSNSの才能って、ただのエロ垢だろ?」
「声がデケェよ」と駿に頭を押さえられる。確かに平日昼間の大学食堂でする話題としては内容がディープだった。幸い喧騒に紛れて周りには聞こえてなさそうだ。わりぃ、の意味を込めて手刀を切る。
駿は自販機で買った缶コーヒーを一口含み、気持ちを落ち着かせるとおれに先ほどのスマホの画面を見せる。
「いいか、こういうのは普通本名を使わないんだ。あっという間に身バレするぞ」
「ああ、そりゃそうだな! 表垢は本名だから癖でつい」
「本当は表でも本名は良くないんだが……まあそれはいい。そんなことより、金欲しさにエロ垢始めるってどういう発想だよ」
「未成年じゃないし法的にはいいかなって」
「法的に良くてもやめとけ。ロクな目に遭わねぇし、普通にバイトしろ」
「それじゃ足りないんだよぉ~!」
毎日の講義にフットサルサークル、週末は合コンや飲み会、それに加えて資格の勉強までしなきゃならない。なんとか週4でバイトしてるけどもう忙しすぎる!
「大学生ってもっと暇だと思ってたのに~」
「合コンや飲み会する暇はあるんだな」
「暇じゃねぇ!合コンは学生の仕事だ!」
「そうかい、じゃあ俺はニートだな」
駿は長身イケメンでモテまくりだけど合コンには一切参加しない。一部では読者モデルと付き合ってるとか噂されているけど真相はシンプルに「ゲイだから」。
佐々島駿は高校からの同級生で親友だ。高校2年生の夏、おれが片想いしてた女子の魅力を駿に熱く語っていたとき、突然「俺ゲイだからお前の気持ち全く共感できないわ」と言われたことは一生忘れないと思う。
「つーかなんで男?ノンケの癖に」
「背に腹は代えられぬといいますか……」
「背に対して腹が弱すぎるだろ。対価が釣り合ってねぇのよ」
「おれにとっちゃ釣り合ってんの!」
「……お前がどうしてもお金がほしいということはよく分かったよ」
駿は諦めたように首を振った。
「でも駿の言うとおりSNSは危なそうだからゲイビにしようかな~」
「普通のAVって選択肢はねぇんだな」
「おれは彼女以外の女の子とはヤらねぇ!」
「全然かっこよくねぇから。……最近のAVは身体的には安全ではあるけど身バレのリスクがでかいし最悪ネットのおもちゃにされるぞ」
「うーん、まあ顔隠せばバレねぇっしょ!」
「……例えば俺が監督だとして、お前が面接に来たとしよう」
「ん? うん」
駿は頭に被っていた帽子のつばを後ろに回し大胆に足を組んだ。額にしわを寄せるとどこかAV監督っぽい雰囲気を醸し出して言う。
「君がうちに出演したいって子?」
「え? あっハイ!」
「へぇ~君イケてるしかわいいねぇ! 顔出せる?」
「いやぁ、顔はちょっと……」
「あ、そう? ふーん、顔出せるならギャラ倍出すけど」
「倍!?」
「どう? ついでにうちの玩具もあげちゃうよ~」
「まじすか……スゥ~、じゃあ」
「チョロ過ぎだろ」
「ハッ!」
駿に頭をチョップされて目を覚ます。おれ今完全に目が"¥"になってた。
「まんまと引っかかっちまった……」
「金欲しさで来る奴は結局顔出すんだよ」
「そっか~ていうか俺ってやっぱ駿から見てもイケてる?」
駿が横にいるからパッとしないけどおれもそこそこモテる方だ。小学生からサッカーやってたから筋肉にも自信はある。駿はおれの顔を真顔でじっと見る。
「……背低めだし短髪で可愛げあってホモにモテる顔してるなとは思うぜ」
「なんかそれ褒め言葉に聞こえないんだけど……。でも駿おれのことタイプじゃないって言ったよな」
「俺はゴリゴリのマッチョがタイプだからな。つーか光一がタイプだったら絶対カミングアウトしねぇよ」
「へーそういうもんなのか」
「そういうもんだ。あ、やべ時間だ」
駿は時計を確認すると慌ててバッグと空の缶コーヒーを持って立ち上がった。今日は午後からバイトがある日だからだ。「ほい」とおれに向かって没収したスマホを放る。
「本気でAV出るつもりならちゃんとケツ使えるように練習しとけよ」
半笑いでそう言うと駿は去っていった。
「練習かぁ……」
「これでよし」
「待て待てまてまて、全然良しじゃねぇ」
決定ボタンを押そうとしたおれの手を止め駿はスマホを取り上げた。
「おい、駿! 返せよ!」
「返さん。この一瞬でお前にSNSの才能がまるで無いことがはっきりと分かった」
「なんだよSNSの才能って、ただのエロ垢だろ?」
「声がデケェよ」と駿に頭を押さえられる。確かに平日昼間の大学食堂でする話題としては内容がディープだった。幸い喧騒に紛れて周りには聞こえてなさそうだ。わりぃ、の意味を込めて手刀を切る。
駿は自販機で買った缶コーヒーを一口含み、気持ちを落ち着かせるとおれに先ほどのスマホの画面を見せる。
「いいか、こういうのは普通本名を使わないんだ。あっという間に身バレするぞ」
「ああ、そりゃそうだな! 表垢は本名だから癖でつい」
「本当は表でも本名は良くないんだが……まあそれはいい。そんなことより、金欲しさにエロ垢始めるってどういう発想だよ」
「未成年じゃないし法的にはいいかなって」
「法的に良くてもやめとけ。ロクな目に遭わねぇし、普通にバイトしろ」
「それじゃ足りないんだよぉ~!」
毎日の講義にフットサルサークル、週末は合コンや飲み会、それに加えて資格の勉強までしなきゃならない。なんとか週4でバイトしてるけどもう忙しすぎる!
「大学生ってもっと暇だと思ってたのに~」
「合コンや飲み会する暇はあるんだな」
「暇じゃねぇ!合コンは学生の仕事だ!」
「そうかい、じゃあ俺はニートだな」
駿は長身イケメンでモテまくりだけど合コンには一切参加しない。一部では読者モデルと付き合ってるとか噂されているけど真相はシンプルに「ゲイだから」。
佐々島駿は高校からの同級生で親友だ。高校2年生の夏、おれが片想いしてた女子の魅力を駿に熱く語っていたとき、突然「俺ゲイだからお前の気持ち全く共感できないわ」と言われたことは一生忘れないと思う。
「つーかなんで男?ノンケの癖に」
「背に腹は代えられぬといいますか……」
「背に対して腹が弱すぎるだろ。対価が釣り合ってねぇのよ」
「おれにとっちゃ釣り合ってんの!」
「……お前がどうしてもお金がほしいということはよく分かったよ」
駿は諦めたように首を振った。
「でも駿の言うとおりSNSは危なそうだからゲイビにしようかな~」
「普通のAVって選択肢はねぇんだな」
「おれは彼女以外の女の子とはヤらねぇ!」
「全然かっこよくねぇから。……最近のAVは身体的には安全ではあるけど身バレのリスクがでかいし最悪ネットのおもちゃにされるぞ」
「うーん、まあ顔隠せばバレねぇっしょ!」
「……例えば俺が監督だとして、お前が面接に来たとしよう」
「ん? うん」
駿は頭に被っていた帽子のつばを後ろに回し大胆に足を組んだ。額にしわを寄せるとどこかAV監督っぽい雰囲気を醸し出して言う。
「君がうちに出演したいって子?」
「え? あっハイ!」
「へぇ~君イケてるしかわいいねぇ! 顔出せる?」
「いやぁ、顔はちょっと……」
「あ、そう? ふーん、顔出せるならギャラ倍出すけど」
「倍!?」
「どう? ついでにうちの玩具もあげちゃうよ~」
「まじすか……スゥ~、じゃあ」
「チョロ過ぎだろ」
「ハッ!」
駿に頭をチョップされて目を覚ます。おれ今完全に目が"¥"になってた。
「まんまと引っかかっちまった……」
「金欲しさで来る奴は結局顔出すんだよ」
「そっか~ていうか俺ってやっぱ駿から見てもイケてる?」
駿が横にいるからパッとしないけどおれもそこそこモテる方だ。小学生からサッカーやってたから筋肉にも自信はある。駿はおれの顔を真顔でじっと見る。
「……背低めだし短髪で可愛げあってホモにモテる顔してるなとは思うぜ」
「なんかそれ褒め言葉に聞こえないんだけど……。でも駿おれのことタイプじゃないって言ったよな」
「俺はゴリゴリのマッチョがタイプだからな。つーか光一がタイプだったら絶対カミングアウトしねぇよ」
「へーそういうもんなのか」
「そういうもんだ。あ、やべ時間だ」
駿は時計を確認すると慌ててバッグと空の缶コーヒーを持って立ち上がった。今日は午後からバイトがある日だからだ。「ほい」とおれに向かって没収したスマホを放る。
「本気でAV出るつもりならちゃんとケツ使えるように練習しとけよ」
半笑いでそう言うと駿は去っていった。
「練習かぁ……」
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