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冥界の剣
第二十三話 共闘戦線
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扉を潜って蔵の中に足を踏み入れれば、内部は見上げる高い天井を大の男が何十人も腕を伸ばして抱えなければならない太さの無数の円柱が支え、そこかしこに傷を負った男女や妖怪の姿がある。
無尽会に限らず楽都の商家や組織に妖怪が所属しているのは、珍しいものではない。
ラドウとクゼの姿に気付いて駆け寄ってきた者達に、ラドウは気さくに話しかけて最新の情報収集に余念がない。
既に冥業剣以外の財宝の持ち出しは済んでおり、財宝の輝きは一粒もない。床も円柱も天井も石造りになっており、どれだけの年月を経たのか肩にのしかかるような重圧を発している。
「クゼ殿、どうやら中層までは魔族で溢れかえっているみたいだね。少しずつ取りこぼしも増えてきているようだ。なによりこちらの防衛線の後ろに魔族が生じたりするから、どうしたって抜かれもするってものさ」
「禍羅漢の瘴気の質と量をこちらが見縊っていたか?」
「実際に魔王を見たことのある奴なんていやしないから、仕方ないんじゃないかな。会長なら知っている可能性はあるけれど、細かい指示は来ていないから、現場の俺達でなんとかしなきゃ」
「お前と意見を同じくするとは、私も落ちたものだ」
「あははは。手厳しいなあ。それじゃ、ここからはちょっと急ごうか。ほら、新しい取りこぼしも来たしさ」
いつの間にか灼骨炎戯と呪黒を手にしていたラドウが、蔵の奥からわらわらと姿を見せる魔族達を示した。灰無、百刃百足、大壊と楽都でクガイ達の戦った三種の魔族達だ。
「雁首並べてぞろぞろと。ウロト、ゲンテツ、先程の私の指示を忘れるな」
二人とも心中では不服もあったろうが、クゼがラドウ、セイケンと共に駆け出してもその後を追わずにクムを守る位置から動かなかった。代わりというわけではないだろうが、クガイが木刀を右手に駆け出す直前の状態にあった。
「ハクラ、クム、用意は良いか?」
「はい!」
このよに元気よく返事をするクムは既にハクラの左手で抱えあげられていて、両手はハクラの首に回されている。ここ数日の騒動ですっかり抱えられ慣れたクムと、抱え慣れたハクラの絶妙に息の合った連携であった。
「クムは私に任せよ。その代わり道を開く役は任せる」
「がってん承知よ!」
答えを返すのと同時にクガイは疾風と化して魔族の群れの中へと飛び込み、先んじて光線を開始していたクゼ達に加勢する。飛び込んできたクガイの一刀が次々の灰無の頭部を粉砕し、それらが灰となって消える前に一匹の百刃百足がクガイをぐるりと囲い込む。
ジャキンと刃を立てる音が連なり、百刃の切っ先がクガイへと向けられる。クガイの頭上は百刃百足の人面が抑え込み、逃げ場のない即興の牢獄が出来上がっている。
「死を与える」
頭上より睥睨する百刃百足の言葉に、クガイは笑みを返した。それが自我の無い筈の百刃百足の癇に障ったのかは分からない。だが百刃百足を行動に踏み切らせたのは確かだ。
百刃百足の甲殻がギャリギャリと甲殻を擦れる音と共に、百刃百足の包囲が一息に狭まる。こうなれば閉じ込められた者は百本の刃に串刺しにされ、無惨な死体と変わるばかり……だが、この時、閉じ込められているのはクガイであった。
「羅象刃・塵旋風!」
炎上する楼閣の崩落を凌ぎ切った絶技が百刃の牢獄の内側で放たれ、百刃百足の人面が苦悶に悶えた次の瞬間、長大な体の全身に一斉に罅が走り幾百幾千の破片へと砕け舞う。
「喋っている暇があるならさっさと攻撃しな。とは言っても、もう聞く耳もないか」
バラバラに砕けた百刃百足が灰となって消える中、無傷のクガイがふてぶてしい笑みを浮かべていた。
襲い来る人外の化生共を迎え撃ち、撃滅していたのはクガイばかりではない。
巨大な足を持ち上げて、クガイ達をまとめて踏み潰そうとした大壊は、残る軸足にクゼが触れた直後、全身が内側からボコボコと膨れ上がり、見るも無残に破裂した。
「狂い咲き・鳳仙花」
それが、路地と今とで二度に渡り大壊を葬った技の名であった。流し込んだ気と流し込まれた側の気をわざと反発させ、過大な負荷を生じさせて敵を体内から破壊する凶悪無比な技だ。
同じく気を扱う者として、クゼの残虐無比な技を目撃したクガイは、うへえ、と舌を出した。
「敵の全身を鳳仙花が狂い咲いたように破壊するって意味の名前か。悪趣味ってもんだぜ」
「私が名付けたわけではない」
わざわざそう答えるあたり、クゼも悪趣味だと思っているのかもしれない。今も周囲を魔族の群れに囲まれているというのに、余裕綽々の態度で言葉を交わす二人をラドウが咎めた。
もっとも、口元はいつもの通りの作り物の微笑みを浮かべているから、彼が本気で咎めているわけでないのは一目瞭然だ。
「おやおや、クゼ殿、クガイ君、のんびり話してないで真面目にやっておくれよ。俺とセイケンばかりが働いているじゃないか」
ラドウは口ばかりを石造りの床を這いまわる灰無達を、灼熱の剣と漆黒の刀で次々と切り伏せて、灰の積もった山を無数に作り上げている。
薄笑いは一度も消える事はなく、人外の速度と膂力で襲い来る灰無達は相当の脅威であるはずだが、ラドウの余裕を消し去るにはまるで足りていないようだった。
セイケンもまた口元の微笑をそのままに、灰無と百刃百足達へまだ距離が開いている状態から拳を振るい、眼には見えない風の打撃を叩き込んで他の三人が戦いやすいように支援に回っている。
「打風。それにしてもやはりクゼ様もクガイ様もお強い。ハクラ様のお力は身をもって経験いたしましたが、この面子ならば魔族の群れを突破して冥業剣の元へと辿り着くのも難しくはありますまい」
「ははは、お話の中の主人公にでもなった気分だねえ、セイケン。俺も少しだけ張り切ろうかな。そら、クゼ殿、クガイ君、道を開くよ!」
言うが早いかラドウは両手を大きく振りかぶり、二振りの仙術武具の纏う炎と呪いが勢い激しく噴き出す。それを操るラドウにも炎や呪いの被害が及ぶのではと危惧する程の勢いだ。
「赤黒螺旋」
稲妻の勢いで二振りの妖刀魔剣が振り下ろされるのと同時に、刃から迸った赤い炎と黒い呪いは前方の魔族達に向かって、絡み合って螺旋を描きながら襲い掛かる。
骨まで達して焼き尽くす炎と傷口から浸透してゆく呪いは、この世の者ではない魔族にも有効で、赤と黒の螺旋に飲まれた魔族達は見る間に跡形もなく消滅してゆく。
「俺の手持ちの中でも結構な大技なんだぜ。そら、道が出来たろう。今のうちに先に進もう!」
ラドウが自慢たっぷりに言った通り、その威力は見事なもので赤黒螺旋に飲まれた魔族達に生き残りはいない。
にっかりと遠足にでも出発するような調子で言うラドウを無視して、クガイ達は先を急いだ。
「無視しないでおくれよ、寂しいじゃないか~」
置いて行かれまいとするラドウのおどけた声が聞こえてきても、クガイ達は足を止めなかった。ほどなくして彼らは中層で外に出ようとする魔族達と戦っている無尽会の兵隊と合流した。
突貫で作り上げた防護柵のこちら側から弓矢を射かけ、槍衾を作り、それでも抑えきれないところへ仙術武具を持つ者や肉体を改造した者が向かい、これまで魔族の進撃を跳ねのけていたようだ。
クガイ達が到着した段階でも魔族が外に出ていなかった点を踏まえれば、突然の魔族の襲撃にも無尽会の面々はよく対応したと言えるだろう。
急遽組み上げられた櫓が防護柵には激しい戦闘の痕跡がありありと残り、柱の陰に隠れるように設置された救護所では簡易寝台の上で包帯塗れになったものや、体のそこかしこに血を滲ませた者達で溢れかえっている。
この状況で姿を見せた幹部のクゼとラドウは大いに歓迎されて、仮に指揮を執っていた者が息せき切って姿を見せ、この緊急事態の対応についてすぐさま協議に入った。
指揮所となっている陣幕の中に消えていったクゼ、ラドウ、セイケン、指揮者を見送り、クゼ達は陣幕のすぐ横で待つこととなった。
ウロトとゲンテツはクガイ達から少し離れた場所で周囲の警戒を行っている。クゼよりもクムの身を守る為の行動だ。
無尽会の兵隊は男女を問わず、妖怪の類も含まれているが共通してまだまだ戦意は衰えていなかった。それを見て取ったクガイが半分は感心し、半分は警戒しながらこう口にする。
「無傷の連中の方が少ないくらいだが、全員の顔に闘志が満ちているな。この場では助かるが、敵に回した時には面倒だ」
冥業剣の封印を行うまでは無尽会は敵に回らないとしても、その後はまた話が別だ。冥業剣の主としての資格をクムから無尽会にとって都合の良い者へと移すべく、クムの抹殺を目論まれたなら今度こそ無尽会を敵に徹底抗戦となる。
その点についてはクゼを相手に交渉を済ませているが、ラドウも絡んできた以上は実際にどうなるか、時が来るまで確実な事は口に出来ない。
「ふむ、クガイの案じている事は私も多少は理解しているつもりだが……」
ハクラはクガイの言わんとしている事を察し、クムを傍らに降ろしたまま、同じように周囲を見回す。
軽く見ただけでも仙術武具が五個以上、ウロトやゲンテツのように肉体を改造している者が十名以上いる。無尽会の戦力としてはほんの氷山の一角に過ぎないだろう。
この場の全員を相手にするだけでも骨が折れるが、更に多くの数を敵にするとなればクガイとハクラでも抗いきれるものかどうか。
「この場からの脱出くらいなら、何とかして見せよう。それにもしクムが楽都には居られないと判断したなら、私の故郷でよければ預かるぞ」
「ハクラさんの故郷……北にある霊山でしたよね」
思わぬハクラからの提案に、クムは目を丸くしながら屋台の常連客という関係から始まった女性を見上げた。
「うむ。クムにとっては随分と生活しづらい場所になるとは思うが、ほとぼりが冷めるか他所の土地に移るまでの時間を過ごすくらいならば、まだ我慢も利くと思う。
もちろん、楽都で生まれ育ったクムにとってこの街は離れがたいだろうし、最悪の事態を想定した上での提案だ。今は頭の片隅にでも置いてくれるだけでいい」
「お母さんとの思い出があるから、出来れば楽都から離れたくないのが本音です。でも、もしどうしようもなくなったら、ハクラさんのご厚意に甘えます」
「そうか。私はいつでも歓迎する。私の契約者も同意見だ」
「はい。あの、でも、ハクラさんはどうしてそこまで私に良くしてくれるんですか? 今までだって命懸けの戦いをしてくれていましたし、今は楽都の外で匿ってくれる場所まで案内してくれるなんて」
「私がそういう性格だからというのもあるが、クムにとっては関係のない話になるがあの夜、私は多くの者を守れなかった。集落の皆、集落そのもの、そして自分の命すら。
そんな守れなかった私だから、今度は誰かを守り通したいとそう思っている。言ってしまえば代償行為だ。私が自分の都合で、私の勝手でクムを守ろうとしているだけなのだから、そう気に病むな。この手の問答は何回もしただろう?」
「でも、それでもやっぱり申し訳ないって思っちゃいます。でも、それはハクラさんの望みじゃないというのも分かっていから、私は何度でもお礼を言います。私を守ってくれてありがとうございます、ハクラさん」
「まだ守っている途中だ。守り通せたら、その時に改めてお礼を言ってくれ。それとクムの料理も」
「はい!」
元気よく返事をするクムにハクラが柔和な笑みを零し、戦場とはかけ離れた雰囲気が一瞬生まれる。二人の会話を聞くだけに徹していたクガイが、ふとした疑問をハクラに問いかけた。
「話の邪魔をして悪いんだが、ハクラ、お前さんの故郷には他にも生き残りが居るのか? なんというか、これまで聞いた話の流れから、お前さんが最後の生き残りかと勝手に思い込んでいた。悪い」
「別に謝る必要はない。お前を勘違いさせたのは私の言い方が理由だろう。話は単純だ。私達の集落が襲われた夜、白龍と契約を結んだのは私ばかりではなかったというだけだ。
私のように集落の外に出て仇を探している者もいれば、集落に留まって復興に勤しんでいる者もいる。今は白龍も居るからな。集落の守りは以前よりも増しているぞ」
「そういう理由か。相当高位の白龍が守護する集落か。そうなりゃ大妖怪の類でも安易に手は出せん。住み心地はこの目で確かめていない俺には何とも言えんが、安全なのは間違いないだろう。まあ、ここを離れずに済むようにするのが俺とハクラの役割だがよ」
「うむ。その心得を間違えてはならん。クガイ、お前もここに居づらくなったら、しばらく逗留するくらいは構わないぞ。お前なら集落の皆も快く受け入れるだろう」
「はは、ありがとうよ。ただ、俺の場合は個人的な目的がここなら叶いそうなんで、余程の事がない限りは楽都を離れるつもりはないんだ」
「そうか。ならばお前の目的が一刻も早く叶う事を祈るとしよう」
「そうしてくれると心強い。一応言っておくと、俺の目的は後ろ暗いもんじゃねえし、誰かに迷惑をかけるようなもんでもないぜ。だから大いに祈ってくれよな」
「口の減らない奴だ。さて、中の話し合いは一段落したようだぞ」
ハクラが感じ取ったようにクガイも無尽会の面々が陣幕から出てくる気配を察し、そちらに視線を向ける。クゼは陣幕を出るなり、すぐさまクガイ達に話しかけてきた。
「魔族は禍羅漢の封印されている部屋を中心に、定期的にやってきているようです。禍羅漢の封印が更に緩み、魔族の攻勢が増す可能性がある以上、時間をかければこちらが不利。
ここの戦力をまとめてこのまま最深部を目指して進み、冥業剣の完成と再封印を目指す他ない、というのが私達の結論です」
クゼの視線はクムへと向けられている。蔵の内部が事前の説明よりも危険な状態となってなお、進むほかない選択肢を提示する罪悪感がその顔にありありと浮かんでいる。
ラドウはそんなクゼを不思議そうに見ている。ラドウからしてもクゼのクムに対する対応は珍しいもののようだ。
「分かりました。私は怖いけど、我慢します。でもクゼさんやここの人達はそれでいいんですか? とても危険だというのは私だって分かります」
「これが私達の仕事ですから。いざという時に命を張れなくては、無尽会に籍を置く資格はありません。それはあのラドウも同じこと」
否定はしないだろうな、と視線に問いかけを含めて睨むクゼに、ラドウは両手をひらひらと動かしながら答える。ふざけているとしかみえないが、本人に尋ねれば大真面目さ、と答えが返ってくるだろう。
「わざわざ釘を刺さなくっても大丈夫だってば。流石に魔王となる俺達でも持て余してしまいそうだからね。今はゆっくりと眠っていてもらうのが一番だって分かっているよ」
「ならば構わん。では、急ぎましょう。私達の行動が遅くなればなるほど、事態の解決は困難になってゆくのですから」
その後、防衛線に詰めていた兵隊の中でまだ戦える者がかき集められ、クムを最深部へと送り届ける為の部隊が編成される。これにはクガイとハクラも口を挟む立場になく、魔族の襲撃に備えながら見学に徹していた。
戦えない者も決して少なくはなかったが、クゼとラドウは無尽会の中でも突出した個人の武力で知られており、この二人がいる事によって無尽会の者達の士気は大きく高められていた。
無尽会に限らず楽都の商家や組織に妖怪が所属しているのは、珍しいものではない。
ラドウとクゼの姿に気付いて駆け寄ってきた者達に、ラドウは気さくに話しかけて最新の情報収集に余念がない。
既に冥業剣以外の財宝の持ち出しは済んでおり、財宝の輝きは一粒もない。床も円柱も天井も石造りになっており、どれだけの年月を経たのか肩にのしかかるような重圧を発している。
「クゼ殿、どうやら中層までは魔族で溢れかえっているみたいだね。少しずつ取りこぼしも増えてきているようだ。なによりこちらの防衛線の後ろに魔族が生じたりするから、どうしたって抜かれもするってものさ」
「禍羅漢の瘴気の質と量をこちらが見縊っていたか?」
「実際に魔王を見たことのある奴なんていやしないから、仕方ないんじゃないかな。会長なら知っている可能性はあるけれど、細かい指示は来ていないから、現場の俺達でなんとかしなきゃ」
「お前と意見を同じくするとは、私も落ちたものだ」
「あははは。手厳しいなあ。それじゃ、ここからはちょっと急ごうか。ほら、新しい取りこぼしも来たしさ」
いつの間にか灼骨炎戯と呪黒を手にしていたラドウが、蔵の奥からわらわらと姿を見せる魔族達を示した。灰無、百刃百足、大壊と楽都でクガイ達の戦った三種の魔族達だ。
「雁首並べてぞろぞろと。ウロト、ゲンテツ、先程の私の指示を忘れるな」
二人とも心中では不服もあったろうが、クゼがラドウ、セイケンと共に駆け出してもその後を追わずにクムを守る位置から動かなかった。代わりというわけではないだろうが、クガイが木刀を右手に駆け出す直前の状態にあった。
「ハクラ、クム、用意は良いか?」
「はい!」
このよに元気よく返事をするクムは既にハクラの左手で抱えあげられていて、両手はハクラの首に回されている。ここ数日の騒動ですっかり抱えられ慣れたクムと、抱え慣れたハクラの絶妙に息の合った連携であった。
「クムは私に任せよ。その代わり道を開く役は任せる」
「がってん承知よ!」
答えを返すのと同時にクガイは疾風と化して魔族の群れの中へと飛び込み、先んじて光線を開始していたクゼ達に加勢する。飛び込んできたクガイの一刀が次々の灰無の頭部を粉砕し、それらが灰となって消える前に一匹の百刃百足がクガイをぐるりと囲い込む。
ジャキンと刃を立てる音が連なり、百刃の切っ先がクガイへと向けられる。クガイの頭上は百刃百足の人面が抑え込み、逃げ場のない即興の牢獄が出来上がっている。
「死を与える」
頭上より睥睨する百刃百足の言葉に、クガイは笑みを返した。それが自我の無い筈の百刃百足の癇に障ったのかは分からない。だが百刃百足を行動に踏み切らせたのは確かだ。
百刃百足の甲殻がギャリギャリと甲殻を擦れる音と共に、百刃百足の包囲が一息に狭まる。こうなれば閉じ込められた者は百本の刃に串刺しにされ、無惨な死体と変わるばかり……だが、この時、閉じ込められているのはクガイであった。
「羅象刃・塵旋風!」
炎上する楼閣の崩落を凌ぎ切った絶技が百刃の牢獄の内側で放たれ、百刃百足の人面が苦悶に悶えた次の瞬間、長大な体の全身に一斉に罅が走り幾百幾千の破片へと砕け舞う。
「喋っている暇があるならさっさと攻撃しな。とは言っても、もう聞く耳もないか」
バラバラに砕けた百刃百足が灰となって消える中、無傷のクガイがふてぶてしい笑みを浮かべていた。
襲い来る人外の化生共を迎え撃ち、撃滅していたのはクガイばかりではない。
巨大な足を持ち上げて、クガイ達をまとめて踏み潰そうとした大壊は、残る軸足にクゼが触れた直後、全身が内側からボコボコと膨れ上がり、見るも無残に破裂した。
「狂い咲き・鳳仙花」
それが、路地と今とで二度に渡り大壊を葬った技の名であった。流し込んだ気と流し込まれた側の気をわざと反発させ、過大な負荷を生じさせて敵を体内から破壊する凶悪無比な技だ。
同じく気を扱う者として、クゼの残虐無比な技を目撃したクガイは、うへえ、と舌を出した。
「敵の全身を鳳仙花が狂い咲いたように破壊するって意味の名前か。悪趣味ってもんだぜ」
「私が名付けたわけではない」
わざわざそう答えるあたり、クゼも悪趣味だと思っているのかもしれない。今も周囲を魔族の群れに囲まれているというのに、余裕綽々の態度で言葉を交わす二人をラドウが咎めた。
もっとも、口元はいつもの通りの作り物の微笑みを浮かべているから、彼が本気で咎めているわけでないのは一目瞭然だ。
「おやおや、クゼ殿、クガイ君、のんびり話してないで真面目にやっておくれよ。俺とセイケンばかりが働いているじゃないか」
ラドウは口ばかりを石造りの床を這いまわる灰無達を、灼熱の剣と漆黒の刀で次々と切り伏せて、灰の積もった山を無数に作り上げている。
薄笑いは一度も消える事はなく、人外の速度と膂力で襲い来る灰無達は相当の脅威であるはずだが、ラドウの余裕を消し去るにはまるで足りていないようだった。
セイケンもまた口元の微笑をそのままに、灰無と百刃百足達へまだ距離が開いている状態から拳を振るい、眼には見えない風の打撃を叩き込んで他の三人が戦いやすいように支援に回っている。
「打風。それにしてもやはりクゼ様もクガイ様もお強い。ハクラ様のお力は身をもって経験いたしましたが、この面子ならば魔族の群れを突破して冥業剣の元へと辿り着くのも難しくはありますまい」
「ははは、お話の中の主人公にでもなった気分だねえ、セイケン。俺も少しだけ張り切ろうかな。そら、クゼ殿、クガイ君、道を開くよ!」
言うが早いかラドウは両手を大きく振りかぶり、二振りの仙術武具の纏う炎と呪いが勢い激しく噴き出す。それを操るラドウにも炎や呪いの被害が及ぶのではと危惧する程の勢いだ。
「赤黒螺旋」
稲妻の勢いで二振りの妖刀魔剣が振り下ろされるのと同時に、刃から迸った赤い炎と黒い呪いは前方の魔族達に向かって、絡み合って螺旋を描きながら襲い掛かる。
骨まで達して焼き尽くす炎と傷口から浸透してゆく呪いは、この世の者ではない魔族にも有効で、赤と黒の螺旋に飲まれた魔族達は見る間に跡形もなく消滅してゆく。
「俺の手持ちの中でも結構な大技なんだぜ。そら、道が出来たろう。今のうちに先に進もう!」
ラドウが自慢たっぷりに言った通り、その威力は見事なもので赤黒螺旋に飲まれた魔族達に生き残りはいない。
にっかりと遠足にでも出発するような調子で言うラドウを無視して、クガイ達は先を急いだ。
「無視しないでおくれよ、寂しいじゃないか~」
置いて行かれまいとするラドウのおどけた声が聞こえてきても、クガイ達は足を止めなかった。ほどなくして彼らは中層で外に出ようとする魔族達と戦っている無尽会の兵隊と合流した。
突貫で作り上げた防護柵のこちら側から弓矢を射かけ、槍衾を作り、それでも抑えきれないところへ仙術武具を持つ者や肉体を改造した者が向かい、これまで魔族の進撃を跳ねのけていたようだ。
クガイ達が到着した段階でも魔族が外に出ていなかった点を踏まえれば、突然の魔族の襲撃にも無尽会の面々はよく対応したと言えるだろう。
急遽組み上げられた櫓が防護柵には激しい戦闘の痕跡がありありと残り、柱の陰に隠れるように設置された救護所では簡易寝台の上で包帯塗れになったものや、体のそこかしこに血を滲ませた者達で溢れかえっている。
この状況で姿を見せた幹部のクゼとラドウは大いに歓迎されて、仮に指揮を執っていた者が息せき切って姿を見せ、この緊急事態の対応についてすぐさま協議に入った。
指揮所となっている陣幕の中に消えていったクゼ、ラドウ、セイケン、指揮者を見送り、クゼ達は陣幕のすぐ横で待つこととなった。
ウロトとゲンテツはクガイ達から少し離れた場所で周囲の警戒を行っている。クゼよりもクムの身を守る為の行動だ。
無尽会の兵隊は男女を問わず、妖怪の類も含まれているが共通してまだまだ戦意は衰えていなかった。それを見て取ったクガイが半分は感心し、半分は警戒しながらこう口にする。
「無傷の連中の方が少ないくらいだが、全員の顔に闘志が満ちているな。この場では助かるが、敵に回した時には面倒だ」
冥業剣の封印を行うまでは無尽会は敵に回らないとしても、その後はまた話が別だ。冥業剣の主としての資格をクムから無尽会にとって都合の良い者へと移すべく、クムの抹殺を目論まれたなら今度こそ無尽会を敵に徹底抗戦となる。
その点についてはクゼを相手に交渉を済ませているが、ラドウも絡んできた以上は実際にどうなるか、時が来るまで確実な事は口に出来ない。
「ふむ、クガイの案じている事は私も多少は理解しているつもりだが……」
ハクラはクガイの言わんとしている事を察し、クムを傍らに降ろしたまま、同じように周囲を見回す。
軽く見ただけでも仙術武具が五個以上、ウロトやゲンテツのように肉体を改造している者が十名以上いる。無尽会の戦力としてはほんの氷山の一角に過ぎないだろう。
この場の全員を相手にするだけでも骨が折れるが、更に多くの数を敵にするとなればクガイとハクラでも抗いきれるものかどうか。
「この場からの脱出くらいなら、何とかして見せよう。それにもしクムが楽都には居られないと判断したなら、私の故郷でよければ預かるぞ」
「ハクラさんの故郷……北にある霊山でしたよね」
思わぬハクラからの提案に、クムは目を丸くしながら屋台の常連客という関係から始まった女性を見上げた。
「うむ。クムにとっては随分と生活しづらい場所になるとは思うが、ほとぼりが冷めるか他所の土地に移るまでの時間を過ごすくらいならば、まだ我慢も利くと思う。
もちろん、楽都で生まれ育ったクムにとってこの街は離れがたいだろうし、最悪の事態を想定した上での提案だ。今は頭の片隅にでも置いてくれるだけでいい」
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「そうか。私はいつでも歓迎する。私の契約者も同意見だ」
「はい。あの、でも、ハクラさんはどうしてそこまで私に良くしてくれるんですか? 今までだって命懸けの戦いをしてくれていましたし、今は楽都の外で匿ってくれる場所まで案内してくれるなんて」
「私がそういう性格だからというのもあるが、クムにとっては関係のない話になるがあの夜、私は多くの者を守れなかった。集落の皆、集落そのもの、そして自分の命すら。
そんな守れなかった私だから、今度は誰かを守り通したいとそう思っている。言ってしまえば代償行為だ。私が自分の都合で、私の勝手でクムを守ろうとしているだけなのだから、そう気に病むな。この手の問答は何回もしただろう?」
「でも、それでもやっぱり申し訳ないって思っちゃいます。でも、それはハクラさんの望みじゃないというのも分かっていから、私は何度でもお礼を言います。私を守ってくれてありがとうございます、ハクラさん」
「まだ守っている途中だ。守り通せたら、その時に改めてお礼を言ってくれ。それとクムの料理も」
「はい!」
元気よく返事をするクムにハクラが柔和な笑みを零し、戦場とはかけ離れた雰囲気が一瞬生まれる。二人の会話を聞くだけに徹していたクガイが、ふとした疑問をハクラに問いかけた。
「話の邪魔をして悪いんだが、ハクラ、お前さんの故郷には他にも生き残りが居るのか? なんというか、これまで聞いた話の流れから、お前さんが最後の生き残りかと勝手に思い込んでいた。悪い」
「別に謝る必要はない。お前を勘違いさせたのは私の言い方が理由だろう。話は単純だ。私達の集落が襲われた夜、白龍と契約を結んだのは私ばかりではなかったというだけだ。
私のように集落の外に出て仇を探している者もいれば、集落に留まって復興に勤しんでいる者もいる。今は白龍も居るからな。集落の守りは以前よりも増しているぞ」
「そういう理由か。相当高位の白龍が守護する集落か。そうなりゃ大妖怪の類でも安易に手は出せん。住み心地はこの目で確かめていない俺には何とも言えんが、安全なのは間違いないだろう。まあ、ここを離れずに済むようにするのが俺とハクラの役割だがよ」
「うむ。その心得を間違えてはならん。クガイ、お前もここに居づらくなったら、しばらく逗留するくらいは構わないぞ。お前なら集落の皆も快く受け入れるだろう」
「はは、ありがとうよ。ただ、俺の場合は個人的な目的がここなら叶いそうなんで、余程の事がない限りは楽都を離れるつもりはないんだ」
「そうか。ならばお前の目的が一刻も早く叶う事を祈るとしよう」
「そうしてくれると心強い。一応言っておくと、俺の目的は後ろ暗いもんじゃねえし、誰かに迷惑をかけるようなもんでもないぜ。だから大いに祈ってくれよな」
「口の減らない奴だ。さて、中の話し合いは一段落したようだぞ」
ハクラが感じ取ったようにクガイも無尽会の面々が陣幕から出てくる気配を察し、そちらに視線を向ける。クゼは陣幕を出るなり、すぐさまクガイ達に話しかけてきた。
「魔族は禍羅漢の封印されている部屋を中心に、定期的にやってきているようです。禍羅漢の封印が更に緩み、魔族の攻勢が増す可能性がある以上、時間をかければこちらが不利。
ここの戦力をまとめてこのまま最深部を目指して進み、冥業剣の完成と再封印を目指す他ない、というのが私達の結論です」
クゼの視線はクムへと向けられている。蔵の内部が事前の説明よりも危険な状態となってなお、進むほかない選択肢を提示する罪悪感がその顔にありありと浮かんでいる。
ラドウはそんなクゼを不思議そうに見ている。ラドウからしてもクゼのクムに対する対応は珍しいもののようだ。
「分かりました。私は怖いけど、我慢します。でもクゼさんやここの人達はそれでいいんですか? とても危険だというのは私だって分かります」
「これが私達の仕事ですから。いざという時に命を張れなくては、無尽会に籍を置く資格はありません。それはあのラドウも同じこと」
否定はしないだろうな、と視線に問いかけを含めて睨むクゼに、ラドウは両手をひらひらと動かしながら答える。ふざけているとしかみえないが、本人に尋ねれば大真面目さ、と答えが返ってくるだろう。
「わざわざ釘を刺さなくっても大丈夫だってば。流石に魔王となる俺達でも持て余してしまいそうだからね。今はゆっくりと眠っていてもらうのが一番だって分かっているよ」
「ならば構わん。では、急ぎましょう。私達の行動が遅くなればなるほど、事態の解決は困難になってゆくのですから」
その後、防衛線に詰めていた兵隊の中でまだ戦える者がかき集められ、クムを最深部へと送り届ける為の部隊が編成される。これにはクガイとハクラも口を挟む立場になく、魔族の襲撃に備えながら見学に徹していた。
戦えない者も決して少なくはなかったが、クゼとラドウは無尽会の中でも突出した個人の武力で知られており、この二人がいる事によって無尽会の者達の士気は大きく高められていた。
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曲亭馬琴他 編「兎園小説」第十一集「白猿賊をなす事」より(全五話)
江戸時代後期に催された、世の中の珍談・奇談を収集する会「兎園会」
「南総里見八犬伝」等で有名な曲亭馬琴、著述家の山崎美成らが発起人となって開催された「兎園会」で披露された世の珍談・奇談等を編纂したのが「兎園小説」
あの有名な「けんどん争い」(「けんどん」の語源をめぐる論争)で、馬琴と山崎美成が大喧嘩をして、兎園会自体は自然消滅してしまいましたが、馬琴はその後も、個人的に収集した珍談・奇談を「兎園小説 余録」「兎園小説 拾遺」等々で記録し続けます・・・もう殆ど記録マニアと言っていいでしょう。
そんな「兎園小説」ですが、本集の第十一集に掲載されている「白猿賊をなす事」という短い話を元に短編の伝奇小説風にしてみました。
このお話は、文政八(1825)年、十月二十三日に、海棠庵(関 思亮・書家)宅で開催された兎園会の席上で、「文宝堂」の号で亀屋久右衛門(当時62歳)という飯田町で薬種を扱う商人が披露したものと記録されています。
この人は、天明期を代表する文人・太田南畝の号である「蜀山人」を継いで二代目・蜀山人となったということです。
【あらすじ】
佐竹候の領国、羽州(出羽国)に「山役所」という里があり、そこは大山十郎という人が治めていました。
ある日、大山家に先祖代々伝わる家宝を虫干ししていると、一匹の白猿が現れ家宝の名刀「貞宗」を盗んで逃げてゆきます・・・。
【登場人物】
●大山十郎(23歳)
出羽の国、山役所の若い領主
●猟師・源兵衛(五十代)
領主である大山家に代々出入りしている猟師。若い頃に白猿を目撃したことがある。
●猴神直実(猴神氏)
かつてこの地を治めていた豪族。大山氏により滅ぼされた。
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