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13巻
13-2
しおりを挟む「自分の知らない所で有名になっているというのも、奇妙な気分にさせられますね。あまりやりすぎると自分が魔法使いである事を忘れそうです」
「最初は〝お風呂屋さんのドラン〟で、次は〝なんでも屋さんのドラン〟、今度は〝魔法石工のドラン〟ですか。半年くらいの間によく変わりますね」
魔法学院に入学してからずっと一緒だったセリナは、私の二つ名の変遷を知っているから、実にしみじみと感想を零す。
私も同じ気持ちだよ。
どうやら私はガロア四強の〝金炎の君〟フェニアさんや、〝氷花〟ネルネシアのような二つ名とは縁がないらしい。
嫌な二つ名ではないが、彼女達と比べると、どうにも締まらんな。
夏休み明けに魔法学院に就職したディアドラは、私の二つ名の変遷については耳にしていなかったらしく、愉快そうに口角を上げる。
「普通じゃないという意味では、ドランらしくっていいじゃない。それにあんまり物騒な二つ名なんて、ドランは嫌でしょう? 貴方はとても強い力を持っているけれども、戦いが好きというわけではないしね」
「私の事を分かってくれていて嬉しいよ。それに、二つ名は自分で吹聴して定着させるものではないさ。それではトララト様、これらの石像をお納めさせていただきたく思うのですが、ご迷惑ではないでしょうか?」
「迷惑など、とんでもない。貴方が彫刻された石像は大変な人気がありますから、正規に依頼をしたら暫く待たなければならないところだったでしょう。貴方の誠心と共に、ありがたく受け取らせていただきます」
もし断られたら魔法学院の依頼で稼いだお金を寄進する用意はしておいたが、石像で喜んでもらえて何よりだ。
それから私達は他の四柱の神を奉ずる神殿を順に回り、同じように石像を奉納していった。
中にはガロアで私とドラミナが神々に対し誓約を交わした話を知っている方も居られ、長話に興じる事もあった。
教団側にしても、五大神が揃って同じような神託を降し、誓約を交わすというのは珍しい出来事らしい。
アルデス教団の神殿に顔を出した時には、老いた神官から、〝ぬは神様〟の笑い声が響き渡るという、大変めでたい事があった――などと嬉しそうに語られた。
おそらく、競魔祭の決勝戦でジエル魔法学院ハルトの魔剣とやり合っている時、アルデスが盛大に笑っていたから、それが信徒達に届いたのだろう。
まあ、悪い事ではないし、今更何が出来るわけでもない。とりあえず私は、老神官に〝それは良かったですね〟と同意しておいた。
全ての神殿に奉納を終えた頃には、太陽が中天に掛かっており、私達は王都の中ではそれなりに裕福な人々が住まう区画にある一軒のレストランに腰を落ち着ける事にした。
塵一つなく清潔に整えられた店内は落ち着いた雰囲気で、王都近郊の風景画や季節の花々を活けた花瓶が、目立ちすぎない程度に配置されている。
店内は身なりの良い人々が八割ほどを埋めていて、七十人ほどで満席といった広さだ。
入店してすぐに、青年の店員が私達を六人がけのテーブルに案内してくれた。
この世の美人全てを集めてもその最上位に君臨する美人揃いの集団はここでも当然目を引き、店員や客達は陶然と蕩けた視線をこちらに寄越してくる。私に向けられる視線もいつも通りである。
並の神経の男が私の立場に置かれたら、今日一日だけで胃に無数の穴が空いてしまいそうだ。
テーブルに置かれた品書には、陸路と空路を介して集められた王国各地の食材を用いた料理の名前と、手描きの絵、簡単な説明が書かれていて、食欲をそそられる。
バンパイアであるドラミナは白ワインと季節の野菜サラダを、黒薔薇の精であるディアドラも果汁を搾って水で割ったものだけを頼んだ。
二人とも人間と同じ食事を取る事は出来るが、生命維持に必要なわけではないから、人間並みの量を口にするところはほとんど見ない。
一方、セリナは品書を睨んで少しの間迷っていたが、すぐに決めたらしい。枝豆のムース、七色アワビのフライ、青菜と挽肉のオムレツ、豆と茸のグラタン。私も彼女と同じものを注文する。
市場を見た方が正確な情報を得られるだろうが、この店の料理一つでも王都で手に入る食材の豊富さが分かる。
国内の主要な陸路が王都に繋がっているのはもちろん、やはり飛行船によって空路が出来た事で遠地にある食材がより早く、より大量に、より安価で手に入るようになっているな。
東西南北それぞれの地方の名物とされる食材が散見されるし、それらは乾物や燻製など長期間の保存に適した加工がされたものではない。
これからは陸と空の交通機関の発達と整備が、都市部の発展により大きく寄与する事になるか。
陸路の発展には馬車以上に高速かつ大量に人間や荷物を運べる交通機関が必要だし、空路は飛行船と港の整備が不可欠。それらの開発競争は盛んになっているという。
近隣諸国の技術水準を考えると、魔力を使った魔法機関か蒸気機関辺りが遠からず開発されるところだろうな。
天人の遺産を上手く活用出来ていれば、既に実用化の目処が立っているかもしれない。
多次元宇宙に存在する多くの人類の文明に目を向ければ、確か機関車とか自動車? とかいう箱型の乗り物が長期間にわたって運用されていたと記憶している。
私の手で開発するのもありかもしれんが、アレらは乗り物自体もさることながら、それらを運用する為の交通網と、法の整備に時間がかかるからな。単に開発するだけでは済むまい。
ならばゴーレム製造技術の応用で機関車などの開発を――などと考えていると、それが顔に出ていたらしく、フォークとナイフでオムレツを切り分けていたセリナに軽く怒られてしまった。
「もう、ドランさん、難しい事を考えておいででしょう? 眉間に皺が寄っていますよ」
いかんな、せっかくの食事だというのに無粋な真似だった。これは反省の必要ありだ。
「すまない。つい考え事をしてしまったよ。ここでは王国各地の食材が料理に使われているからな。ベルン村でもこうして各地の特産品を集められるようにするにはどうすればいいか、考えていた」
幸いセリナはそこまで怒った様子ではなく、仕方ないなあ、と言わんばかりの苦笑を浮かべる。
「もう、ドランさんの故郷大好きなところは相変わらずですね。でも、お食事をしている間はお料理に集中するのが、お料理してくださった方と食材への礼儀ですよ」
「セリナの言う通りだな。考え事は食べ終えてからにするよ」
反論の余地がない言葉を受けて、私は降参する他なかった。
ディアドラは食事という行為に対して、糧となったモノへの礼儀などという観念はさほどないらしく、こういう話題には関心を示さない。全てのモノの命を直接食らう黒薔薇としての感性だろう。
対照的なのはドラミナで、生命維持を生物の血液に依存する種族である事と、本人の性格から、食事という行為には酷く気を遣うところがある。ただ、今回は私に味方してくれた。
「セリナさんの言う通りですが、ドランが考え事をしてしまうのも分からなくはありません。食材に限らず、交通網の発達は人材と情報とお金の流れに直結します。それを把握し、掌握出来れば、巨大な力になりますから。交通網が未整備であったとしても、それが整備された後の事を考えれば、先行投資や実現性について前もって検討しておくのは大切ですよ。私の国の場合は、先達が既にほとんど整え終えた後でしたから、あまり偉そうな事は言えませんが」
ふむ、やはりかつては一国の女王であったドラミナである。目下、政に関する相談相手としては、水龍皇として龍宮国を治める龍吉と並んで非常に頼りになる。
とはいえ、この私が政などというものに関われるようになるのは、さていつになるやら。焦る必要はないが、かといってあまり悠長に構えるものでもあるまい。
今回の競魔祭で色々なところに私を売り込む事は出来たし、ガロアの総督府の方でも目を付けた事だろう。
幸いにして、私は王国北部の貴族のご令嬢達との縁もある。だが……
「そうだな。ただ、今は皆との食事の時間だ。余計とは言わんが、無粋な真似をしたと反省しているよ。さあ、冷めないうちに頂いてしまおう」
一通り食事を楽しみ、食後に出されたスオム茶で咽喉を潤しながら、私とセリナは午後からの予定を話した。
この後は食材や衣類、薬種や建材、鉱物を問わず王都の市場を見て回るのと、お土産を求めて商店巡りをしようと決めている。個人的には、後々役に立ちそうな書籍や、魔法関係の素材や道具を取り扱っている店を回りたいとも思っている。
「王都に明るい方が居ないと、どこに行けばいいか迷うな。もちろん、何も知らない所を歩き回るのも楽しいがね」
「もう少し時間が取れていたら良かったのでしょうけれど、競魔祭向けの特訓はともかく、観光の下調べは準備が足りていなかったわね」
ディアドラの言う通り、競魔祭の事ばかりを意識しすぎたかな――と、お茶の最後の一口を飲みながら、私は反省していた。
あれもこれもと欲張っても中途半端になってしまいそうだから、ある程度見て回る先は絞った方が良いだろう。
楽しくも悩ましい思案を巡らせていると、私達の近くの席でまったりと談笑していた二人組の男性客が立ち上がり、声を掛けてきた。
「失礼、もし王都観光でどこに行くかお悩みなら、おれ達が力になれるかと」
「貴方は……」
声を掛けて来た青年の顔を見て、私はかすかに眉を上げた。
そんな私の反応を受け、青年は悪戯に成功した子供のように小さく笑う。
こちらを不快な気分にさせる要素が欠片もない、爽快な笑みだった。人誑しの素養がある青年だな。
「名乗りもせずに失礼した。おれはリオン。とある騎士の三男坊で、年中遊び回っているから王都の案内役としては適任だと思う」
自らをリオンと名乗った金髪の青年と、その傍らに立つ少し軽薄な印象を受ける青い髪の青年。
正直に言って、不意を突かれて私は少々困惑した。
なんともはや……良くも悪くも影響力のある方と遭遇してしまったぞ。
私は自らを騎士の三男坊と名乗った〝我が国の王太子と瓜二つの青年〟を見つめた。
彼らは私達を待ち構えてこの店に居たのではない。私達を尾行している者は居なかったし、運命神の干渉や意図が働いた痕跡もない。となると、ここで出くわしたのは全くの偶然か。
先日の〝アークウィッチ〟メルル女史との手合わせの件といい、どうも王都には私達を困らせる出来事がいくつも、大口を開けて待ち受けているらしい。
「いやあ、おれは止めたんだよ? せっかく年頃の男女が楽しそうに食事しているんだからさ、お邪魔しちゃ悪い、雰囲気と空気を読みましょうよって。でも、若は聞いてくれなくってね。本当に悪いね」
こちらが口を挟む暇もなく喋るのは、リオンと一緒に居た青年で、シャルルと名乗った。
シャツ、ズボン、スカーフ、ボタン、腰に帯びた剣といい、二人が身につけている何もかもが、一目で高級品と分かる。
一応、隠しているらしい彼らの素性を考えれば、これでもまだ安い品でまとめた方なのだろう。
自らを騎士の三男坊などと口にしたリオンは、シャルルの弁明を聞いて困ったように頬を掻く。
恋人達の逢瀬を邪魔したのは紛れもない事実であり、無粋な真似をしたという自覚はあるようだ。
後で正式に呼び出せば私に断る選択肢はないというのに……まったく、こんな時に声を掛けてこなくてもよいではないか。
「シャルルの言う通りだな。実は今年の競魔祭を観戦する事が出来て、その時に君の活躍を目にしたんだ。食事をしに来た先で出くわすとはなんたる幸運かと、つい舞い上がって、君らの都合を考えずに声を掛けてしまった。すまなかった」
リオンに誤魔化している様子はないし、このようなつまらぬ嘘を吐く方でもあるまい。ここはそう信じておこう。
「評価して頂いた事は感謝します。しかし、確かに突然ですね。私の自己紹介は不要だと思いますが、こちらの女性達の紹介は必要でしょう」
セリナ達の紹介をしようとすると、シャルルは揉み手をせんばかりに嬉しそうな表情を見せる。
「おお、それはありがたい。そちらの白いドレスのご婦人は顔が見えないが、他の方々と同じで、とびっきりの輝きを持った宝石だってのは間違いないからね。是非、名前だけでも教えてほしいってもんだ」
ふむ、軽薄な印象を裏切らぬ態度だが、リオンの傍に付いているのだから、それだけの男ではあるまい。
振り返ってみると、これまでこういう男性は私の周りには居なかったな。そういう意味では新鮮な方である。
セリナ達も競魔祭の会場にいたので、唐突に自分達に声を掛けてきた青年達の正体に気付き、大なり小なり驚きを見せていた。といっても、露骨に驚いているのはセリナくらいのもので、ディアドラとドラミナは〝おや〟程度の反応だ。
「では……こちらが私の使い魔のセリナ、ヴェールで顔を隠しているのが同じく使い魔のドラミナ。そして、そちらの黒薔薇に彩られているのが、ガロア魔法学院で教鞭を執っているディアドラです」
「使い魔? 確か君の使い魔は――いや、姿を変える魔法か」
リオン達は事前に私の魔法学院での成績などにも目を通していたろうから、私の使い魔がラミアであると知っていてもおかしくない。
だからこそ、ラミアであるはずのセリナが人間にしか見えない姿である事に驚いたのだ。どうしてそう見えるのかという理由にすぐさま思い至ってくれたお蔭で、説明をする手間は省けたが。
「その通りです。王都で騒ぎを起こすつもりはありませんから。ところで、リオンさんと行動を共にする事で、王都の騎士団に追いかけ回されるような事態にはなりませんかね?」
リオンがシャルル以外の誰にも言わずに城下を出歩いているとなると、そうなる危険性は大きい。この様子ではお忍びをするのは今回が初めてではないだろうし、騎士団の方も対応に慣れていそうだ。
二人の素性の深いところまでは尋ねないが、余計な面倒には巻き込まないでほしいと暗に釘を刺した私に、リオンは人懐っこい笑みを浮かべて答える。
「それは大丈夫だ。家に戻らず夜を明かしたとなればいささか問題だが、王都を案内する程度の時間なら、騒ぎにはならないよ」
「随分と慣れているように聞こえますが、ひょっとして、普段からこのように市井に出歩いておいでなのですか?」
リオンは私の指摘を笑って誤魔化す。
常習犯か。まあ、治める民の暮らしを直に見た経験もなく、周囲から教えられた事だけで国政の舵取りをする頭でっかちよりは良いと感じるが……
「普段から甘やかしておられるのですか?」
「甘やかすほどじゃないが、大目に見る事はあるな」
私から矛先を向けられたシャルルは、おどけた様子で肩を竦め、視線を逸らした。
どこか後ろめたいものを感じさせるこの仕草……リオンのお忍びに付き合って、おこぼれを貰っているな?
真面目だが柔軟なところのある主と、軽薄だが目端の利く従者か。とりあえずは、お互いの性格を補える組み合わせと言っておこう。
「意外な事を知ってしまいましたが、私が口を挟める問題でもなさそうです。こうして出会ったのも何かしらの縁というものでしょう、お言葉に甘えて、王都の案内をお願いしたく思います」
セリナ達と水入らずとはいかなくなったのは果てしなく残念だが、頭上に戴く方の〝人となり〟を知る希少な機会であるのも事実。
こうなった以上、その機会を存分に活かすしかあるまい。
「ああ、大船に乗ったつもりで任せてほしい。それと、私の好奇心のせいで君達の楽しみを邪魔してしまったお詫びに、ここの払いは私が持とう」
おや、太っ腹。
王国の予算と王家の予算は別に分けられていると言うし、リオンの財布に入っているお金はリオンの領地からの税収か、投資先の商会などからの配当金だろう。
……おっと、余計な詮索はするまい。リオンは王家とは縁もゆかりもない騎士の三男坊だったな。
まあ、そういう事情なら、リオンの財布が軽くなったとしても国民の血税を浪費させたという罪悪感に襲われずに済む。
「でしたら、食後の甘いものでも頼みますかね」
私が遠慮の〝え〟の字もなく、品書に目を落とすと、セリナも半ば自棄になって次から次へと注文していく。
「それなら、私はこれとこれとこれと……」
「セリナ、あまり食べすぎてお腹に余計な肉が付いても知らないわよ。砂糖とバターがたっぷりじゃない。……それと、せっかくのお申し出だけれど、私はもう充分よ。お気持ちだけ受け取っておくわ」
「私もディアドラさんと同じくです。ドランとセリナさんがその分頼まれるでしょうし、見ているだけでお腹一杯になれそうです」
ディアドラとドラミナは種としての特徴から追加の注文はしなかったが、私とセリナは遠慮を忘れて次々と注文を重ねていく。
お言葉に甘えた結果なのだが、当のリオンはまさかここまで大量に注文するとは考えていなかったらしく、軽く目を見開いて苦笑を零した。
「ここまで遠慮がないと、むしろ清々しいくらいだな」
「遠慮をしすぎるのも非礼かと思いますので」
私としてはせっかくの逢瀬を邪魔された事を、これでお相子にしたという認識であったし、セリナも同じであろう。
まあ、確かに王都の観光案内としては破格の相手を期せずして得られたわけなのだが、この縁は良きものとなるか、悪しきものとなるか……はてさて。
目の前で財布の中身と睨めっこをしている爽やかな好青年を前に、私は少しだけ悩んだ。
第二章―――― 邪竜教団
ドラン達が〝どう見ても自国の王太子と瓜二つの青年〟と遭遇していた頃、父アルマディア侯爵より、王女フラウからの招待状を受け取ったガロア四強の一人――クリスティーナは、ガロア魔法学院の男子学生服姿で王城に嫌々足を運んでいた。
魔法学院の制服は正式な夜会や晩餐会への出席を許される衣服である。
アルマディア家の屋敷に常備されているドレスや装飾品を借り受ける選択肢もあったが、クリスティーナは着慣れた制服で行く事を選んでいた。
意外というべきか、父は彼女の選択に反対しなかった。
フラウが初めてクリスティーナを目にして魅了されたのは、競魔祭の最中である。
ならば、その時と同じ男子学生服に袖を通した姿で行った方が、王女殿下はお喜びになるだろうという、父からのありがたい助言を貰っていた。
アルマディア家が用意した馬車に乗り、特に問題なく王城に入った後は、待ち構えていた女官達に案内されて、この王国で最も権威のある城の中をフラウの下へと向かって歩くばかり。
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クリスティーナが知っている中で最も豪奢な施設と言えば、アルマディアの本城になるのだが、数百年を閲する王国の本城は、それをも上回る。
床一面に敷き詰められた繊細かつ複雑な刺繍の施された絨毯や、調度品の数々は、素人目にも高級品と分かる。
それらがけばけばしさや下品さを感じさせずに配されているのは、代々の国王、あるいはこれらを管理する者達の品性が良かったからか。
とはいえ、クリスティーナが青い薔薇の活けられた白磁の大花瓶を見て抱いた感想は、極めて世俗的な内容であった。
(これ一つでいくらになるだろうか。お土産に貰えないかな? ……いや、こんな物貰えるわけがないか)
ドランがこの場に居たら、同じように何度も思ったに違いない。
この王国の社会構造の底辺で暮らしてきた経験のある者に共通する感想だった。
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