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第1章 アースからの旅立ち
4.試験的冒険国家「マインフィールド」建国
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アマゾネスの女王プレオノーラ69世とバラクーダとの戦いの決着がアマゾネーラ星中枢首都フェミネットのセントラルタワー857階の、とあるバルコニーで今まさに始まろうとしていた。
女王は、年齢150歳を超えると言われていたが、アンチエイジング医療を施術されているのかその肉体や風貌はどう見ても人間の15~17歳位の小娘にしか見えなかった。またその敏捷な体の動きやムチの捌き方は、並の通常的な戦闘力に優る実力があり、バラクーダに対し距離を取って電磁ムチのスパーク攻撃を仕掛けてくる戦法は実に見事としか言いようがなかった。互いに火花を散らし、光線と電磁スパークがバチバチと音を立てて飛び交う。
「やるじゃねえか、女王様よお。だが、オレもこれではちったあ銃捌きじゃ、腕を鳴らした口なんでな。」とレーザーガンによるビームを隙なく何発も打ち込んで、間合いを詰めていこうとするバラクーダ。両者の戦いは他の邪魔者がいなくなって1対1の戦いに持ち込まれたとはいえ、にわかに決着がつくものでもなかった。こうして勝負がつかぬまま、2時間以上も経過した。だんだん、互いに疲労の色が濃くなってきた様だ。
「もお~っ、妾は疲れたのじゃ。もう止めじゃ、止めじゃあ~っ!。」と、突然手にしていたムチをポイと放り投げてしまった。一方、バラクーダも疲労の色が濃く、こちらも銃を投げ出してしまった。お互い、その場に疲れた様子でヘナヘナと床にくず折れてしまった。
「ア~ア、こっちも止~めた・・・。なあどうだろう、もう争いは止めにして、そろそろ妥協点をお互い探らないか?。」ともうすっかり飽き飽きした表情で妥協する様に促している。
「そこでだ。民主的な手で解決ってえのはどうかな?。こちらは、この星にこちらの信条ややり方に沿った小国家か政府を作らせてもらう。そして、そちらとは不可侵条約を結ぶんだ。その見返りとしてこちらは、そちらの全エネルギーの30パーセントに当たるエネルギーを無償で供給する。ただし、この星の国民がどちらを支持し、どちらの国家若しくは政府に従うかは各自の自由判断、裁量に委ねるというのでは。どうだ、そちらにとっても悪い話じゃないだろう?」
それから数時間が経った。バルコニーのはるか階下、セントラルタワーの周辺ではすでに事態を知った国民のうち、バラクーダに賛成する民衆の群れが蜂起し、女王の近衛師団を中心とした軍隊と睨みあいを続けており、まさに一触即発という状況になっていた。もっとも民衆側の方は、国民の大多数が女性であるだけに女性版バラクーダの魅了効果による影響も皆無とは言えなかったようだが・・・。ともあれ数だけから言えば、バラクーダ側の人数が多かったものの、所有する兵器や火器の力では、圧倒的に女王軍が優利であり、実際に双方が衝突した場合にはどちらの側にも相当の死傷者や損害が出ることは、必至であった。
やがて、セントラルタワーの入り口にプレオノーラと女バラクーダの2人が姿をともに現した。2人は入り口から民衆が詰めかけている近くの会見会場へと足を運ぶ。
「この度、わがアマゾネス・キングダム星帝大皇国第69世女王プレオノーラ・ド・ケディチは、ここに宣言する。この母なる星、大アマゾネスに新しい国家マインフィールドを建国することを許可する!。なお、新国家マインフィールド国王には、このバラクーダ・アリエス・フェルゼンが就位する。」
エエーッと、大衆の間から驚きと歓喜のどよめきがあちらこちらで起こった。
「私が先ほど女王よりご紹介のあった新国家マインフィールドの国王となるバラクーダだ。この国家はただの国ではない。まず、この国では国民、いや市民は原則として自由で基本的人権が保障される。もちろん結婚も自由だし、男との同棲も結構だ。ただここの国民になった場合、一つだけ義務を守ってもらう必要がある。それは「冒険」をジャンルは問わず、何でもよいから1つはやってもらうこと。もちろん、補助金やもろもろのバックアップは行う。こちらであっせん、もしくは用意するクエストをやってもよい。ただ何かしらの冒険には参加してもらうことが必須条件になる。それでよければやる気のある者は我が試験的冒険国家マインフィールドへ集え!詳細は追って星間ネットワークで流す。以上だ!。」
その後、細かい話や報道会見等も行われたが、その衝撃的な国家建国宣言は劇的に全宇宙に公表、公開された。こうして新国家マインフィールドが建国されて、一つの星に二つの国家が並立することになったのだった。
「それじゃ、女王の差し金じゃなかったってことか。」アマゾネスの女王プレオノーラとバラクーダは顔を見合わせた。厳重な皇国の女王執務室で男バラクーダ、女王、ベニステラ、スペルナそしてマーモンドで襲ってきたレッド戦隊のビライとその軍上層部幹部たちが、例のキューブの件で話し合っているのだ。
「たしかに、女王からの御命令という形で艦隊司令から連絡を受け、お前たちを追っていたのだ。女王の命令は絶対だからな。私はその指示に従ったまでのことだ。あのキューブがどういうモノなのかも何も知らされてはいない。ただ、キューブをお前たちから奪還せよ、と言う命令だった。」とビライが語る。
「じゃが、妾はそんな命令を軍に対して出したことは全くない。一体、誰がそんな事をやったのじゃ。」プレオノーラは幾分、不機嫌そうな感じだ。いろいろ調べたが、ビライに命令を下した艦隊司令はその上官である情報参謀から指示を受けたと言い、情報参謀は参謀総長から、参謀総長は准将から、准将は大元帥から指令を受けたという。そしてその大元帥は、アマゾネスの女王の双子の妹クレオノーラ・ド・ケディチだった。彼女は、現在行方をくらましており消息不明となっている。
「あのキューブがどうして性転換する機能を持ってるのか、俺には分からない。それに性転換したのは、今まで俺だけの様だけど、一体どんな目的で誰が作ったのか、そして何故、女王の妹さんがアレを狙うのか、分からないことが多い。なので俺はいったん、当初の予定通りあのキューブを依頼主の発送先まで届けようと思うんだが。これも冒険になるかもな。」当初、バラクーダたちがキューブ運送を引き受けた時、マウント星雲にある工業メーカー「M」の工場にこのキューブを届けるというミッションだった。途中、アマゾネス艦隊の攻撃を受け、そのミッションは大幅に予定を超過したものになってしまっていた。
「私を届ける任務もありますわ、仮マスター。」とアンドロイド、通称でもあり自称スペルナが静かに話す。
「う~ん、新たに建国したマインフィールドだが、まだまだ国の組織も固まっていないうえに国王自ら冒険で不在とは、まさしく「冒険国家」だな。」と腕組みをして感心した様な口ぶりのバラクーダだったが、傍で聞いていたベニステラは呆れたような表情をしている。
「国の件は今後、相談役に頼むというのはどうかしら?」とベニステラは提案してみる。「彼女なら、財閥の令嬢だし組織や財政のバックボーンとか国の制度や運営に関してはアタシ達よりもずっと上手くやってくれると思うわ。どうかな?。」相談役というのは、バラクーダ所属の宇宙貿易商会シモンネッターの若き女性相談役であり経理担当でもありさらに商会の一株主でもある、パメラ・オコーナーのことである。
「ええっ、アンナ奴にぃ!?。オマエ、正気で言ってるのかあ?。」とバラクーダが驚きの表情と同時に顔をしかめる。パメラとバラクーダは普段、あまり仲が良くない。性格もまるで正反対でいつもベニステラが取り持ったりして何とかバランスをとっているのだが、二人は会えば絶えず喧嘩をしている様な状況なのだ。この前もカイワレ惑星のオリコウ・モンキーの件で大喧嘩したばかりだった。ただ、なんだかんだと言ってる割にはお互い協力しあう時もあり、よく分からない関係ではあった。
結局、ベニステラの仲介もあって不承不承、バラクーダもパメラに依頼することになりパメラの方も「考えておくわ。」と前向きに検討してくれることになった。こうして建国間もない試験的冒険国家マインフィールドの若き国王バラクーダは、数日後には国王自ら外宇宙へ出発することになった。
出航当日、すでに愛機の宇宙艇ライトニング号の整備も終え、乗組員としてベニステラ、スペルナの他に新たな国家の市民となりシモンネッターの航海士となったビライを加え、4人はコックピットでそれぞれの位置を占めた。
「さあ、出発だ!。」
ライトニング号の光量子エンジンが点火し、船はドックから快速で飛ばしていく。みるみるアマゾネス星が遠ざかっていく。ちょうどその頃、ライトニング号より少し遅れて一隻の艦艇がアマゾネス本星を出航した。その艦艇は全身が緑色の機体をした一見するとバッタの様な形をした不思議な船だったが、ライトニング号のレーダー網を回避する様な速度と距離を保ちながら、後をつける様に航行し始めた。
マウント星雲までは一か月ほどかかる距離で、途中いくつかの中継星やポイントで燃料や食料を調達したり、注文を新たに取る仕事もある。バラクーダがスケジュールに目を通していた時だ。
「前方にSOS信号を発信している船があるわ。どうする?。」とビライが航行レーダーを見ながら叫ぶ。
「行ってみよう、何かのトラブルか遭難でもしたのかな。」とバラクーダが即座に答えた。一時間ほどして、前方の宇宙空間に残骸の様に船体が幾つか破損している小型艇が見えてきた。速度を徐々に落として損壊した小型艇の真横にライトニング号をドッキングさせるとバラクーダ、ベニステラの二人で相手の船へと侵入することにした。相手艦はSOS信号を発信してはいるが、内部の状況やどうして破損したのか等は乗組員から通信とかないので、まるで分からない。仕方がないので、こちらから乗り込むことにしたのだ。
船の内部はいたってシンプルで乗組員といってもせいぜい二人か三人が乗船限度といった小型艇だった。操縦席があると思しきピットへ入ると一人の少女が倒れている。
「おい、しっかりしろ!大丈夫か。」バラクーダが駆け寄り、その少女を助け起こした時、一瞬目を疑ってしまった。少女はどう見てもあのアマゾネスの女王プレオノーラだったからだ。ベニステラが少女に気つけ薬を飲ませ、しばらく介抱すると苦悶の表情を浮かべながらも、漸く少女が目を開いた。
「ここは・・・。」とボンヤリ辺りを見回していたが、ハッと気づいたかの様な拍子で我に返り、いきなりベニステラを突き飛ばして、彼女の携帯銃を奪い取った。
「お前達は何者だ。どうしてここにいる?。」と銃を構えたまま、叫ぶ少女。
一瞬、不意をつかれた恰好になり、両手をあげるバラクーダとベニステラだったが、隙を見逃さなかった。
「答える前に、アンタは誰なんだ?。まさかアマゾネスのプレオノーラさん、ってわけじゃないだろう。」とうすうす相手の素性が判明しかかっていたバラクーダが言うと、少女はせせら笑って「あのボンクラ女王と一緒にするな!
私はクレオノーラだ。」と言い放った。
「助けてもらったことには感謝する。だが、ここからは別だ。お前達はどこから来た?。お前達の船はどこだ。」と矢継ぎ早に質問攻めに会うが、「そうさな、その前に俺らはお前を助けてやったんだぜ。その礼をちゃんと言えよ。」と言うがいなやいきなり瞬足の速さでバラクーダが少女に宛て身をくらわす。バニステラも素早い動作でクレオノーラの銃を叩き落とした。そのまま相手を後ろ手にねじ伏せた。
「チクショー、殺せえ、殺せよー。」と喚く少女に催眠銃を打ち込む。あっという間におとなしくなった。
「なんだ、コイツ、女王の妹だと自称しているが。」バラクーダは少女を右肩で軽々と担ぎ上げるとライトニング号の方へと歩いて行った。
女王は、年齢150歳を超えると言われていたが、アンチエイジング医療を施術されているのかその肉体や風貌はどう見ても人間の15~17歳位の小娘にしか見えなかった。またその敏捷な体の動きやムチの捌き方は、並の通常的な戦闘力に優る実力があり、バラクーダに対し距離を取って電磁ムチのスパーク攻撃を仕掛けてくる戦法は実に見事としか言いようがなかった。互いに火花を散らし、光線と電磁スパークがバチバチと音を立てて飛び交う。
「やるじゃねえか、女王様よお。だが、オレもこれではちったあ銃捌きじゃ、腕を鳴らした口なんでな。」とレーザーガンによるビームを隙なく何発も打ち込んで、間合いを詰めていこうとするバラクーダ。両者の戦いは他の邪魔者がいなくなって1対1の戦いに持ち込まれたとはいえ、にわかに決着がつくものでもなかった。こうして勝負がつかぬまま、2時間以上も経過した。だんだん、互いに疲労の色が濃くなってきた様だ。
「もお~っ、妾は疲れたのじゃ。もう止めじゃ、止めじゃあ~っ!。」と、突然手にしていたムチをポイと放り投げてしまった。一方、バラクーダも疲労の色が濃く、こちらも銃を投げ出してしまった。お互い、その場に疲れた様子でヘナヘナと床にくず折れてしまった。
「ア~ア、こっちも止~めた・・・。なあどうだろう、もう争いは止めにして、そろそろ妥協点をお互い探らないか?。」ともうすっかり飽き飽きした表情で妥協する様に促している。
「そこでだ。民主的な手で解決ってえのはどうかな?。こちらは、この星にこちらの信条ややり方に沿った小国家か政府を作らせてもらう。そして、そちらとは不可侵条約を結ぶんだ。その見返りとしてこちらは、そちらの全エネルギーの30パーセントに当たるエネルギーを無償で供給する。ただし、この星の国民がどちらを支持し、どちらの国家若しくは政府に従うかは各自の自由判断、裁量に委ねるというのでは。どうだ、そちらにとっても悪い話じゃないだろう?」
それから数時間が経った。バルコニーのはるか階下、セントラルタワーの周辺ではすでに事態を知った国民のうち、バラクーダに賛成する民衆の群れが蜂起し、女王の近衛師団を中心とした軍隊と睨みあいを続けており、まさに一触即発という状況になっていた。もっとも民衆側の方は、国民の大多数が女性であるだけに女性版バラクーダの魅了効果による影響も皆無とは言えなかったようだが・・・。ともあれ数だけから言えば、バラクーダ側の人数が多かったものの、所有する兵器や火器の力では、圧倒的に女王軍が優利であり、実際に双方が衝突した場合にはどちらの側にも相当の死傷者や損害が出ることは、必至であった。
やがて、セントラルタワーの入り口にプレオノーラと女バラクーダの2人が姿をともに現した。2人は入り口から民衆が詰めかけている近くの会見会場へと足を運ぶ。
「この度、わがアマゾネス・キングダム星帝大皇国第69世女王プレオノーラ・ド・ケディチは、ここに宣言する。この母なる星、大アマゾネスに新しい国家マインフィールドを建国することを許可する!。なお、新国家マインフィールド国王には、このバラクーダ・アリエス・フェルゼンが就位する。」
エエーッと、大衆の間から驚きと歓喜のどよめきがあちらこちらで起こった。
「私が先ほど女王よりご紹介のあった新国家マインフィールドの国王となるバラクーダだ。この国家はただの国ではない。まず、この国では国民、いや市民は原則として自由で基本的人権が保障される。もちろん結婚も自由だし、男との同棲も結構だ。ただここの国民になった場合、一つだけ義務を守ってもらう必要がある。それは「冒険」をジャンルは問わず、何でもよいから1つはやってもらうこと。もちろん、補助金やもろもろのバックアップは行う。こちらであっせん、もしくは用意するクエストをやってもよい。ただ何かしらの冒険には参加してもらうことが必須条件になる。それでよければやる気のある者は我が試験的冒険国家マインフィールドへ集え!詳細は追って星間ネットワークで流す。以上だ!。」
その後、細かい話や報道会見等も行われたが、その衝撃的な国家建国宣言は劇的に全宇宙に公表、公開された。こうして新国家マインフィールドが建国されて、一つの星に二つの国家が並立することになったのだった。
「それじゃ、女王の差し金じゃなかったってことか。」アマゾネスの女王プレオノーラとバラクーダは顔を見合わせた。厳重な皇国の女王執務室で男バラクーダ、女王、ベニステラ、スペルナそしてマーモンドで襲ってきたレッド戦隊のビライとその軍上層部幹部たちが、例のキューブの件で話し合っているのだ。
「たしかに、女王からの御命令という形で艦隊司令から連絡を受け、お前たちを追っていたのだ。女王の命令は絶対だからな。私はその指示に従ったまでのことだ。あのキューブがどういうモノなのかも何も知らされてはいない。ただ、キューブをお前たちから奪還せよ、と言う命令だった。」とビライが語る。
「じゃが、妾はそんな命令を軍に対して出したことは全くない。一体、誰がそんな事をやったのじゃ。」プレオノーラは幾分、不機嫌そうな感じだ。いろいろ調べたが、ビライに命令を下した艦隊司令はその上官である情報参謀から指示を受けたと言い、情報参謀は参謀総長から、参謀総長は准将から、准将は大元帥から指令を受けたという。そしてその大元帥は、アマゾネスの女王の双子の妹クレオノーラ・ド・ケディチだった。彼女は、現在行方をくらましており消息不明となっている。
「あのキューブがどうして性転換する機能を持ってるのか、俺には分からない。それに性転換したのは、今まで俺だけの様だけど、一体どんな目的で誰が作ったのか、そして何故、女王の妹さんがアレを狙うのか、分からないことが多い。なので俺はいったん、当初の予定通りあのキューブを依頼主の発送先まで届けようと思うんだが。これも冒険になるかもな。」当初、バラクーダたちがキューブ運送を引き受けた時、マウント星雲にある工業メーカー「M」の工場にこのキューブを届けるというミッションだった。途中、アマゾネス艦隊の攻撃を受け、そのミッションは大幅に予定を超過したものになってしまっていた。
「私を届ける任務もありますわ、仮マスター。」とアンドロイド、通称でもあり自称スペルナが静かに話す。
「う~ん、新たに建国したマインフィールドだが、まだまだ国の組織も固まっていないうえに国王自ら冒険で不在とは、まさしく「冒険国家」だな。」と腕組みをして感心した様な口ぶりのバラクーダだったが、傍で聞いていたベニステラは呆れたような表情をしている。
「国の件は今後、相談役に頼むというのはどうかしら?」とベニステラは提案してみる。「彼女なら、財閥の令嬢だし組織や財政のバックボーンとか国の制度や運営に関してはアタシ達よりもずっと上手くやってくれると思うわ。どうかな?。」相談役というのは、バラクーダ所属の宇宙貿易商会シモンネッターの若き女性相談役であり経理担当でもありさらに商会の一株主でもある、パメラ・オコーナーのことである。
「ええっ、アンナ奴にぃ!?。オマエ、正気で言ってるのかあ?。」とバラクーダが驚きの表情と同時に顔をしかめる。パメラとバラクーダは普段、あまり仲が良くない。性格もまるで正反対でいつもベニステラが取り持ったりして何とかバランスをとっているのだが、二人は会えば絶えず喧嘩をしている様な状況なのだ。この前もカイワレ惑星のオリコウ・モンキーの件で大喧嘩したばかりだった。ただ、なんだかんだと言ってる割にはお互い協力しあう時もあり、よく分からない関係ではあった。
結局、ベニステラの仲介もあって不承不承、バラクーダもパメラに依頼することになりパメラの方も「考えておくわ。」と前向きに検討してくれることになった。こうして建国間もない試験的冒険国家マインフィールドの若き国王バラクーダは、数日後には国王自ら外宇宙へ出発することになった。
出航当日、すでに愛機の宇宙艇ライトニング号の整備も終え、乗組員としてベニステラ、スペルナの他に新たな国家の市民となりシモンネッターの航海士となったビライを加え、4人はコックピットでそれぞれの位置を占めた。
「さあ、出発だ!。」
ライトニング号の光量子エンジンが点火し、船はドックから快速で飛ばしていく。みるみるアマゾネス星が遠ざかっていく。ちょうどその頃、ライトニング号より少し遅れて一隻の艦艇がアマゾネス本星を出航した。その艦艇は全身が緑色の機体をした一見するとバッタの様な形をした不思議な船だったが、ライトニング号のレーダー網を回避する様な速度と距離を保ちながら、後をつける様に航行し始めた。
マウント星雲までは一か月ほどかかる距離で、途中いくつかの中継星やポイントで燃料や食料を調達したり、注文を新たに取る仕事もある。バラクーダがスケジュールに目を通していた時だ。
「前方にSOS信号を発信している船があるわ。どうする?。」とビライが航行レーダーを見ながら叫ぶ。
「行ってみよう、何かのトラブルか遭難でもしたのかな。」とバラクーダが即座に答えた。一時間ほどして、前方の宇宙空間に残骸の様に船体が幾つか破損している小型艇が見えてきた。速度を徐々に落として損壊した小型艇の真横にライトニング号をドッキングさせるとバラクーダ、ベニステラの二人で相手の船へと侵入することにした。相手艦はSOS信号を発信してはいるが、内部の状況やどうして破損したのか等は乗組員から通信とかないので、まるで分からない。仕方がないので、こちらから乗り込むことにしたのだ。
船の内部はいたってシンプルで乗組員といってもせいぜい二人か三人が乗船限度といった小型艇だった。操縦席があると思しきピットへ入ると一人の少女が倒れている。
「おい、しっかりしろ!大丈夫か。」バラクーダが駆け寄り、その少女を助け起こした時、一瞬目を疑ってしまった。少女はどう見てもあのアマゾネスの女王プレオノーラだったからだ。ベニステラが少女に気つけ薬を飲ませ、しばらく介抱すると苦悶の表情を浮かべながらも、漸く少女が目を開いた。
「ここは・・・。」とボンヤリ辺りを見回していたが、ハッと気づいたかの様な拍子で我に返り、いきなりベニステラを突き飛ばして、彼女の携帯銃を奪い取った。
「お前達は何者だ。どうしてここにいる?。」と銃を構えたまま、叫ぶ少女。
一瞬、不意をつかれた恰好になり、両手をあげるバラクーダとベニステラだったが、隙を見逃さなかった。
「答える前に、アンタは誰なんだ?。まさかアマゾネスのプレオノーラさん、ってわけじゃないだろう。」とうすうす相手の素性が判明しかかっていたバラクーダが言うと、少女はせせら笑って「あのボンクラ女王と一緒にするな!
私はクレオノーラだ。」と言い放った。
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「チクショー、殺せえ、殺せよー。」と喚く少女に催眠銃を打ち込む。あっという間におとなしくなった。
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