リ・インカーネーション

ウォーターブルーム

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2.探求の時

2.闇の科学帝国

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「最近、若い男子が性的不能にさせられているって話をよく聞くわね。」
「なんでも金髪碧眼の外国人の女が「アタシ、綺麗?」って近寄ると男の子のパンツを引き剥がすんですって。」
どこかのお茶の間の井戸端会議みたいな話題だが、話をしているのは予備校のカフェテリアの中での恋町と人形坂とのある会話なのだ。
「でもなんで若い男の子ばかり狙うのかしら。」
「男の子の精液を吸い取るって話もあるわよ。」
「じゃあ今度は、うちのマモル君も危ないんじゃないかな。」
「どうかな?。でも彼っていつも女の人にヤラレテばかりいるじゃない。またヒドイ目に遭うかも知れないわね。」
「うふふふ、そうかもよ。」

その頃、早瀬 守は背筋がゾクゾクッとして一瞬、体が震えるのだった。
(誰か、ボクの噂でもしているのかな?)とも思ったが、それ以上気にせずテニスの練習に励むのだった。早瀬の通う高校は神波の卒業した高校と同じで、彼はテニス部所属だった。テニスを趣味としているだけあって、これでも部の副部長である。しかし、背が低いこともあってか同僚の同じ部の女子や場合によっては下級生の女子にまで、まるで「マスコット」的存在として扱われるので、本人は辟易としていることが多い。
部活動も終わり、更衣室で着替えることもなく校舎から出ようとした時、突然彼を呼び止めた者がいた。
「早瀬クン、部活動終わったの?。」振り返るとクラス担任の赤城せきじょう 魅衣みい先生が立っていた。黒いスーツにすらりと伸びた両足がタイトスカートから出ている振る舞いは、非常に魅力的な美しさを醸し出している。
「あ、先生、今終わりました。」
「そう。頑張ったわね。それと部活動もいいけど今度、先生との進路相談があるから自分の進路、どうするのかよく考えてきてね。」
「ハイ。その時にはいろいろと相談に乗ってください。」
赤城先生はにこやかな表情で微笑み、うなずくとゆっくりと職員室へと戻っていく。その後ろ姿を見送りながら、早瀬は美しく若い大人の女性の魅力に撃たれ、何となく少しはにかむ感情を覚えざるを得なかった。
(先生にふさわしい様な大人の男にボクもならなきゃ)と思うと顔が赤くなる。
校舎の出入口を出て帰宅の途上に着いた頃、突然路上の暗がりから飛び出て来た何者かとぶつかって、倒れそうになる。「イテテ・・・。だ、だれだい・・・。」
よく見るとあの雪女少女、雪野だった。
「あ、ごめんなさい・・・。」
「アレ、あの時の雪女!。またボクの精子を狙いに来たの!?。」と早瀬がいきなり雪女を突き放す。
「ま、まって!。アナタを襲いに来たんじゃないわ。ワタシ、追われているの。タスケテ欲しいのよ。」と雪野が哀願する目つきで訴え、早瀬にすがりついた。
「とにかく、逃げましょ。」
雪野は、早瀬の手を取って一緒に逃走し始める。早瀬の方も何が何やら分からないまま、引きずられる様に雪女と逃走を始める。

30分も走り続けただろうか。.人気の無い、位置もよく分からない場所に辿り着く。そこはどこかの工事現場みたいな場所だった。
「い、一体どうしたの?。」と漸く早瀬の方から口を訊いてみる。雪野の不可解な行動にまだ得心がいかない早瀬だった。
「実は、アタシの組織が改編されてね。財団Zの出資でいくつかの傘下の組織が一つにまとまったのよ。そして・・・。」と言うとブルっと体を震わせた。
「新たな秘密結社、いや組織が誕生したの。名前は『超科学帝国デスネシア』とか言ってたわ。」
しかし、雪女の言うことは本当のことなんだろうか、早瀬の疑問は深まるばかりだった。
「でも、なんで追われてるの?。」
「もう、アタシは用済みってことなのよ。新組織は、従来の財団Zの所属組織よりもずっと強化された改造人間や遺伝子改編人間を中心に纏め上げられた組織なのよ。世界征服も視野に入れた恐るべき目標を財団Zよりも優れた科学力で実現しようとする集団なの。そういった組織にとってアタシは役目が無くなったと見なされて・・・。」とそこまで言うと雪女少女(と言っても年齢は二十歳を優に超えているのだが)はシクシクと泣き出してしまった。
早瀬はそこまで言われてしまうと、この雪女少女を不憫に思わざるを得なかった。
「分かったよ。もう泣かないで。ボクがキミを匿ってあげる。」と言ってしまった。
「本当?。今までヒドイことしてきたのに、いいの?。」と赤い目で涙を拭いながら尋ねる雪女。
「事情は分かったし、過去は過去だよ。これからは一緒にやってこ。」と人が良いというか、能天気な早瀬。
ちょっと自分がナイトになった様な気分で、少しは雪女を疑う素振りでも見せるべきだと思うが、早瀬は雪女の話を涙ながらに語る彼女の表情から哀れに思って信じてあげることにした様だ。だが、果たして本当に彼女を信じてよかったのだろうか。

その後、二人は早瀬の自宅へ行き、早瀬の部屋で雪女は彼と同棲することになった。幸いここ一週間ほど、早瀬の両親は海外へ出張しており、家の中は今は早瀬が一人で住んでいる状態であった。食事を済ませた後、普段の宿題をやっている早瀬の傍に雪女が別の椅子を持ってきて並んで机の前に座り、雪女が早瀬の宿題を手伝う羽目となっている。何だかんだと言っても早瀬も高校生であり、一受験生でもあるのだから致し方ない。
今日は数学Bの『統計的な推測』を学習しているところだ。
「あらっ!?この参考書、おかしいんじゃない?。」と雪女こと雪野が指摘をしている。
それは表題を『統計的な推測が面白いほどわかる本』とかいう参考書だった。この参考書の前半部分に「確率変数」を取り扱う場面があるのだが、その例題の一部にこんな問題が載っている。
【例題1-2】
袋の中に赤玉10個、白玉2個の合計12個の球が入っている。この袋の中から無作為に球を1個取り出したとき、取り出される赤玉の個数をXとする。このとき、次の確率を求めよ。
(1)P(X=1) (2)P(X=0) (3)P(0≦X≦1)
早瀬の解答では、(1)は5/6となりここまでは参考書と同様の正解であった。しかし(2)は早瀬の計算では2/12=1/6なのに参考書では2/10=1/5となっている。(3)も参考書では1/5+4/5=1としているが、早瀬の計算では5/6+1/6=1になるはずで、結果は1で同じだが、足し合わせる確率は全く別物でどこから出て来たのか全く分からない。
雪女も困った表情で「最近の参考書はいい加減なモノが多いわね。ミスを平気で載せて正解として載せるなんて。」と呆れた表情でため息をついている。

「やっぱりおかしいよね。なんでこんな過程になるのか、理由も書いてないし変だなと思ってたんだ。どうもあ・・・。」と言いかけて、ハッと目を見開く早瀬。それきり沈黙が続いてしまう。いきなり、雪女が早瀬の唇にぷちゅっとキスをしてきたからだ。雪女の唇は冷たかったが、舌の感触は心地よく、高校生の早瀬にとっては感じたことのない甘美で艶めかしい舌触りだった。雪女は目を細めて、早瀬とディープキスを堪能していたが、やがて今度は白い細い二の腕を彼の短パンの陰部に伸ばしてきた。
「あ、あ・あ・あ・・・・」
短パンの上から陰部を刺激されて、顔を赤らめながらも心地よい快感に身悶えする早瀬。
(ああ、ボ、ボク、オカシクなりそうだよお~)
雪女の執拗な性感攻めに抵抗もできず、されるがままの早瀬だった。だが、早瀬の中では男として一皮むける自覚が足りないだとかと神波などから言われていることもあってか、ここは女の誘いにのって性的満足を女に与えてやらなくちゃというおかしな妄想が彼の頭を支配してしまった。
「キャッ!」雪女の口から小さな悲鳴が漏れる。ガバッと早瀬は小柄な自身の体でやはり小柄な雪女の体に覆いかぶさって、二人はベッドの中へと倒れ込んだ。
「ま、マモルくんって結構積極的なタイプだったのね。」と目を細めながら、白い顔がやや火照った様な表情で雪女が囁く。
「ボ、ボクだって男なんだ。女の子ともエッチイことできるんだって証明してやるんだ。」
「うふふふ、カワイイわねえ。イイわ、付き合ってア・ゲ・ル・・・。」
そう言うと雪女は細い両腕で早瀬に抱き着くと、彼の短パンに手をかける。そのままずりおろしていくとやがてピンと突っ立った棒状のモノがビクビクとそそり立つように現れて来た。
そして、雪女はゆっくりとその彼の下半身へと頭を移動させて行く・・・・。
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