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1.訪れの時

21.吸乳鬼の恐怖

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 シンディと神波達との合同パーティは南極上空で飛行機からパラシュートを使って一人ずつ降下していく。場所はウィルクスランドと呼ばれる平原だ。平原とは言っても南極大陸の中でこの辺は氷の氷厚が最も厚く、その厚さは4000メートルはある所だ。
全員が降下したところで、各自が一か所に集まってくる。
「ひゃあー、南極だわあ~、広いわ~。」と人形坂らがはしゃいでいる。
「ホント、南極2号だなんて過去に言われていたモノの意味がわからないくらいだワネ。」とマヤマ・サトミが意味深なことを言う。それはさておき、神波達とシンディ達の合同パーティは、ここから2キロ程先にある南磁極点を目指すわけだが、飛行機から同じく投下してもらった四輪駆動の小型ジープのパーツを組み立てて向かうことになる。早速、機材等の点検と確認を行い組み立てにかかる一方で、食事の準備をする係の者達もいた。
「今日はカレーか。外で食べるのもたまには乙な趣向。いい香りだ。」と神波も南極で食べる食事に心地よさげに肯く。
 そんな彼等を遠くから双眼鏡で監視している二人の人物の姿があった。一人は中務だったが、もう一人は痩せ型の長身で長い髪が特徴的な男、あの「乳吸い」と呼ばれる処刑人だった。
「ふふん。楽しそうにはしゃいでいるわ。今に恐ろしいことが始まるとも知らずに。」とせせら嗤うのだった。

 食事を済ませ、一行はジープ2台に分乗して目的地に向かう。かなり氷が溶けているとはいえ滑りやすく、所々にクレバスや亀裂があったりして用心するに越したことはない。途中、ペンギンの群れやアザラシの集団にも出会ったが、さしたる障害物も無く一行は無事目的地に到着した。
「この近くのはずなんだけど・・。」
シンディが磁力計をセットしながら、探索を始める。この辺りの地盤はあまり固くはなく、小さなクレバスや穴の様なものが所々にポッカリ口を開けているといった風情だ。
「あ、反応があったわ。強い磁力を発している所がある。こっちよ。」磁力計を頼りにしながら一行は進んで行く。
こうしておよそ1時間ほど歩き回ってみたが、なだらかに続く平原ばかりで磁性体の位置はなかなか特定できない。みんなにも焦りと不安がつのりつつあったが、早瀬が辺りをキョロキョロ見回しながら少し窪んだ荒地に歩いて行った。と、突然その姿がかき消す様に見えなくなった。
「お~い、お~い!」微かに守の声が聞こえてきたが、どこから叫んでいるのやら見当もつかなかった。
「マモル、一体どこにいるんだ~?。」
「ここだよ~、地下だよお~。」
一行は早瀬の消えた窪地の辺りに行ってみると、はたしてそこにはポッカリと人一人が漸く入れるほどの穴が垂直方向に開いていた。声はその穴の下から聞こえてくる。どうやら、早瀬はこの穴から落ちたようだ。
「じっとしてろよ。今、助けに行くからな。」
早速、クレバス対策用に持参していた縄梯子がかけられ、穴の入り口にしっかりと鉄製クイで固定した後、まず神波から先に降りていくことになった。電燈で辺りを照らしてみると、穴の深さは3メートルほどで大した深さではなかったが、横に続く巨大な通路が続いていてどこまでも延びている様な案配に見える。

「探検してみましょ。」と恋町の言葉に一同は肯き、その横穴へと入っていくことになった。横穴はかなり広く、幅は15、6メートル位あり、奥に行くにつれて石筍や鍾乳石の様な構造物が増えていった。やがて段々と傾斜が大きくなり、明らかに地下深くへとつながっているようだ。しばらく歩き続けると道が二つに分かれている。話し合った結果、磁力が高そうな方ということで左に進むことに決めた。左の道もなお進んで行くとやがて、巨大な水晶が晶洞になっている場所へと出た。巨大な水晶の柱が幾重にも林立し、さながら水晶のジャングルの様な感じだ。一行は、柱をくぐり時には、這いつくばって匍匐前進しながら進む。晶洞を抜けると小さな滝が流れ込む池に出た。早瀬が池に手を浸す。
「あれ⁉。この水、温かいよ。」
神波も池に手を浸してみるが、ぬるめのお湯だった。
「温泉かな。でも湧き出している感じじゃないし・・・。」
「地熱勾配を考えるのよ。特に火山の様な熱異常源が近くにあるわけじゃないし、非火山性の熱勾配だとすればおおざっぱに言って0.03℃/mといったところね。そうだとすれば、このお湯の温度は30℃だから、地上から大体1000mの所まで来たことになるわ。」とシンディが教えてくれた。

 一行はここを拠点とし一休みすることに決めた。時間もかなり経過し、穴からここまでおよそ2時間30分が経過していた。テントを組み立て、しばらく休憩だ。
「暑いね。地熱のせいかしら・・・。」くつろぐうち、周りの温度が高くなってきたのか、ソフィア・ソマーズが探検用の上着を脱いで、Tシャツ1枚になる。もともと金髪碧眼美少女だけあって、プロポーションも抜群だ。しなやかで繊細なボディをこれ見よがしに見せつける有様に男性陣の目も磁石の様に引き付けられてしまう。
甘い香水の香りを漂わせながら、ソフィアが「ちょっと周りを見てくる。」と言ってテントから出ていった。ソフィアはテントから出ると7,8mほど先にある先ほどの池へと向かう。池の傍まで来るといきなりTシャツを脱ぎ捨て、大胆にもブラまで脱いでしまう。ふくよかな女性の肉体美が具現化したかの様な錯覚を覚えるほど、見事な胸と体形だった。そしてしゃがみ込み、タオルを池に浸して体を拭く。
長い金髪が揺れるたびに白い素肌がよりいっそう際立って見える。
と、その時だった。池の底から黒く長いモノが影の様にゆっくりとソフィアの方へと近づいて行く。ソフィアは池よりも体を洗うことに気をとられて、気づいている様子はない。それにほとんど電燈の光以外には光源もなく、ほぼ闇の中の出来事で気づくことすらできなかっただろう。ソイツはソフィアの近くまで来ると彼女に悟られない様に音もなく水中から顔を覗かせると、ゆっくりと池からあがり彼女の死角となる所へ回り込む。しかし、ソフィアはまだ気づかなかった。まさかこんな場所に自分達以外の存在があろうとは予想もしていなかったのに違いない。そんな油断もあってか、影の様な存在は音も無くスルスルとソフィアの背後に迫っていく。

「!?・・・・ウッ!。」
一瞬の出来事であった。影の様な存在がソフィアの口を塞ぎ、同時に彼女のしなやかな肉体のくびれた腰の部分にもう一方の手を回し、抱え込んだのだ。アッという間の出来事だった。そして脱兎のごとくものすごい速さで洞窟の奥へと連れ込んでいく。幾百メートルも走ったのだろうか。女をかかえたまま謎の影は、スルスルと洞窟の奥深く進んで行き、やがてやや広い空き地の様な空間に至ると女の体をドサッと投げ出した。
「な、ナニをするの。」
とソフィアは強気にも相手をキッと睨みつけた。この時、相手の姿は暗くてよく分からなかったがどうやら男であることは分かった。
男は懐中電灯を灯すと自分の顔を彼女に見せる。光に照らし出された謎の男の正体は、あの処刑人、「吸乳鬼」だったのである。
「ア、アタシをどうする気?。」と叫ぶソフィア。
しかし、男は無言のまま、じりじりと彼女に迫るといきなり、しゃにむに飛びついた!。
「きゃあっ!」
男は瘠せていたが、先ほどソフィアをここまで連れ込んだ体力といい腕力も相当なものでとてもソフィアの力で太刀打ちできるものではなかった。それでも、ソフィアも合気道をやっていたので咄嗟に身をかわし、相手を投げ飛ばすが男は軽くもんどりかえっただけで、すぐに立ち上がる。
そしてじりじりと猫が獲物をもてあそぶかの様にソフィアを岩壁に追い詰めていく。段々とソフィアの表情が恐怖で歪んでくる・・・。

「い、いや~っ!。」半裸のソフィアに飛び掛かるが否や、吸乳鬼は女のふくよかなバストを両手で掴んで押し倒した。はじける様に揺れる胸。同時に男は女の左乳房にチュッといやらしい音を立てながら、吸い着いてしまった。
「キ、キャアああああ~~~~ッ!。」
チューチューと凄い勢いと音を発しながら、乳房を吸い続ける。必死に男の背中を叩いたり、蹴ったりしたが、どうにもならなかった。
チューチュー、チューチュー・・・。最初は抵抗していた彼女も段々、抵抗する力が衰えグッタリしてしまう。
チューチューチュー・・・。男は抵抗しなくなった女の乳をなおも執拗に吸い続けていく・・・。
「だ、だれかあ・・・タスケテ・・。」
女は首を振り苦しそうに呻き声を漏らすが、男は躊躇することなく女の乳を吸い続ける。やがて1時間も経っただろうか。吸い続けられている女の胸に変化が起こった。女の乳房が段々と長く伸びてたるんでいき、干からびていったのだ。若くてピチピチした張りのある豊満な胸の面影はもうどこにも無かった。
チューチューチュー・・・。
それでも男はなおも乳を吸い続ける。もはや長く伸びた皮だけのズタ袋、完全なペチャパイになってしまう。
「ううっ・・く、苦しい・・。」女は泡を吹いて気絶してしまった。
ゆっくりと男が顔を上げる。男の口の周りには女から吸い取った乳脂肪でベッタリと黄色くなっていて、凄まじい吸引力で乳を吸い続けたことが分かる。舌で拭う口の周りのその黄色い脂肪には、赤い血も混じっていた。

男はユラリと満足そうに顔を上げ、手で黄色い脂肪を拭うと今度は右の乳房にブチュリと顔を埋めるのであった。
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