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1.訪れの時

12.電流人間と真夏の地獄雪ん子現る

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 それは、ある夏の日のことだった。もう初夏も過ぎて7月に差し掛かった、暑く晴れた日の午後。私立虹色学園の高校2年生男子の鳶鷹とびたか拓哉たくやがバドミントン部の部活を終え、更衣室でシャワーを済ませて帰宅の途に就こうとしていた時のことだった。もう暑いので、制服ではなく白地にブルーのラインの入った半袖シャツにブラックの短パン、スポーツハイソといういで立ちで、校舎裏の自転車置き場へと向かっているところであった。
「君、これから帰り?。ちょっと付き合ってよ。」と彼に声を掛ける者がいた。見ると他校の生徒の制服を着た女子生徒が1人たたずんでいる。
「誰?。見慣れない人だね。ボクに何の用?。」といぶかしげに訊いてくる鳶鷹に対し、女子生徒はクスクスと片手を艶やかな口唇にあてがって笑いながら「あなたにお話しがあるのよ。と~っても大切なお・ハ・ナ・シ。」と言うと、彼の自転車の後部座席に自ら飛び乗りおさまってしまった。

 こうして見知らぬ女子とともに鳶鷹は、仕方なく自転車を漕ぎだした。20分もペダルを漕いだ頃だろうか。女子の指示で近くの川の土手を自転車で走っていたが、「ストップ!。」という女の声でブレーキを掛けた。
「ここでいいわね。ちょっと一緒に来て。」と女子が後部座席から降りて、彼を手招きする。そして彼女が先に立って土手を降りていくのだった。土手を降りた所にはちょうど何本か松の木が立っていて、その陰に掘っ建て小屋の様なプレハブが1軒、川の側に建っている。
「ここよ。」と言うと女子生徒はプレハブのドアを開けて、彼を招き入れる。彼は少し不安になったが特に疑問もなく、こんなことで躊躇するよりも好奇心や「もしかすると告白かも」という妄想的な期待の方が勝っていたので、何のためらいもなく、プレハブ小屋の中へと誘われるがままに中に入って行った。小屋の中に入ると女子生徒は後ろ手にドアを閉めると急に「ウフフフフ」と嗤いだした。
「クククク、まんまとここまでやって来たわね。」と声色が急変する。驚いた様子で彼は「ど、どうしたっていうんだ?。なんで笑うの?。」と豹変した彼女の態度に不安が込み上げてきた。
「ククク・・・、お前はアタシの実験材料としてここにおびき出されたのよ。もう逃げられないよ。」と言うと両腕を交差させる。すると両腕の先からそれぞれ鋭い棒状の物がせり出してきた。すかさず、女子が彼に飛び掛かって両腕の棒を頭の右と左のこめかみに押し当てる。
「うぎゃあああ~つ。」と甲高い悲鳴を上げる鳶鷹。しかし、彼の体は硬直したかの様に動かない。ピッタリと棒を押し当てている所から時おり、バチッ、バチッとスパークが放たれる。
「どう?65万ボルトの電圧に40アンペアの電流のお味は。最高にしびれてイカスでしょ。」ともはや悪魔の様な形相で冷徹な微笑みを浮かべる彼女は、ウットリと快感に酔いしれているかの様であった。

 やがて小脳が完全に麻痺したために鳶鷹は、脳震盪を起こしてしまい激しい目まいと遠くなる意識のせいでグッタリと倒れてしまった。すると悪魔女子は棒の接触を止めると同時に倒れた男子に馬乗りになって、哀れな獲物の衣服をビリビリと引き裂き、脱がしにかかった。そして半裸になった男子のアソコを両手でしごいてさすり出すと、そそり立って勃起したところで再び電流を流し、男子が苦痛で顔を歪め苦しむ様子を喜々とした表情で楽しむ残忍な変態ショーが繰り広げられるのだ。
「ア、アアッ・・アアアッ、く、くるしいっ・・。」と苦しみ呻き声を出す彼の顔をながめ、悪魔少女は「カ・イ・カ・ン♪」と言いながら恍惚こうこつとした表情を浮かべ、もはや抵抗すらできず、時おりビクッ、ビクッと痙攣けいれんしている裸の男子の肉体を愛撫しその精気を吸い取りながら、更に自らのアソコとの融合の快楽に耽り、完全に悦楽の境地の彼岸へとイッテしまうのであった・・・。

 しばらくして「ああっ、気持ちイイわあ~、サイコー!。」とサッパリとして晴れやかな笑顔でプレハブ小屋を後にする彼女の姿があった。男子をそこに誘い込んでからすでに2時間以上が経過している。男子はどうしたのか、未だに目を覚まさず、女子に服を引き裂かれてほぼ全裸に近い状態で横たわったままだ。
女子は何事も無かったかの様に自らの制服の出で立ちを整えると、外に出て夕暮れが迫る血の様に赤い景色を背景に颯爽といずこかへ静かに歩み去っていくのであった。

 こうした事が起きてから数日後、今度はあの五百蔵いおろい少年の身にも不思議な出来事がまたもや起こったのだ。彼が日曜日の晴れた午後、駅の近くにあるアウトレットモールの屋上で1人遊んでいると彼に近づく1人の女性がいた。
「ねえ、キミ、この辺におトイレないかしら?。」とその女性は声をかけた。見ると10代とおぼしき見知らぬ少女がこちらを見て立っている。年齢的にも彼と同世代に思われた。
「ああ、トイレならこの屋上にあるよ、こっち来なよ。」と親切心から少年は、その少女を近くのトイレに案内することにした。屋上の端の方に行くとくだんのトイレが複数あった。
すると女の子が「ここでいい。」と言って指を指す。そのトイレは障害者や乳児を抱えた婦人専用の、いわゆる男女兼用の小部屋タイプのトイレだった。普段、このタイプのトイレを利用する者自体が少なく、この日も人っ子一人辺りにはいなかった。
「うん、それじゃ。」と言って少年がそのトイレの前で少女と別れようとした時だった。いきなりすさまじい力で口を塞がれたかと思うと、あっという間にトイレの中に引きずり込まれる。もちろん、引きずり込んだのは案内してあげた、あの少女だ。

 「アッ、な、何をするんだ!。」と少年が叫んだがすでにトイレのドアは閉められ、少年は閉じ込められた恰好になってしまった後だった。
「ふふふふふ。罠にかかったわね。」と突然、口調が冷たいものに変わった少女がせせらわらう。
「お前は何者なんだっ!なぜ、ボクをこんな所に誘い込んだんだ。」と気丈にも声をあげる少年だったが、以前にも別の女に襲われた時の経験を思い出し、不安でたまらなかった。
「アンタを人体実験するのよ。ソレッ!。」と言うと口から粉の様な雪がシューツと吹き出し、少年の身を包み込んでしまう。たちまち、冷凍人間と化す少年。
「ウ、うわわわ・・さ、寒い・よ・お・。」と悲鳴さえあげることも口が凍り付いてしまったのか、声すら出ない。
季節は夏だというのに季節はずれの雪女の襲撃に少年は目を白黒するばかりだ。もっとも体は凍り付いて真っ白になり、もう身動きすらままにならない状態に陥っていた。
「ひひひひひ、お前を冷凍人間にしてやる、ソレッ!。」というや否や再び、粉雪状の冷気を何度も何度も少年に浴びせかける。もう少年の顔も髪も半袖シャツも短パンやハイソックスまでも真っ白々になって凍り付き、やがて完全に動かなくなってしまった。

「ひひひひ。お前はアタシを10代の女の子と思ってる様だけど、実はアタシは二十歳を超えた女なんだよ。成長ホルモンの分泌ができない小人症の女なのさ。まんまと見た目に引っかかったわね、ひひひひひ。」と恐ろしい声で言い放つ小人症こびとの雪女。
「どれ、もう一つの実験材料に必要なコイツの精子をいただくとするか。」と雪女は冷ややかに言うと冷凍人間となった少年の前にかがみこんで、白っぽくなったネイビー色の短パンをベリバリと両手で引き裂いて、脱がし始めた。その力は確かにとても10代の少女の膂力りょりょくの比ではなかった。すると男児の股間から例のモノが現れると雪女はソレをすごい勢いで上下にしごいて、刺激を与え続ける。やがて30分もするとネットリとした白濁したゲル状の液体が溢れ出てきた。雪女はそれをどこから取り出したのか、ピペットで1滴残らず吸い上げると試験管の中に収め、ゴム栓で蓋をすると何事も無かったかの様にそそくさとトイレから出ていった。後に残されたのは数時間後、やっと解凍して身動きできる様になるまで冷凍人間と化した哀れな犠牲者の彫像が、ただたたずんでいるばかりだった。
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