~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女

にせぽに~

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帝国と王国の交声曲《カンタータ》

解放の雷

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「………ッ!!」

マリスの魔法が発動としたと同時に私の纏わりついていた雷が
一斉に放電を始め辺りに爆音と雷光を巻き散らす。
あまりの光と音の強さに私は反射的に薄目にし耳を手で塞ぐ。

「全く、マリス今度は一体何を………って!?」

爆音と雷光はすぐに止み、辺りはさっきまでの薄暗い地下室………
じゃなく、若干明るくなった地下室になる。
と言うか、依然私の全身を覆う様に雷が纏わりついている、なにこれ?
余りの展開に巨人女性ですら呆気に取られたような感じで棒立ちしてる。

「んっふっふ~、大成功♪
 いや~術式構築に手間取っちゃって今までかかっちゃったよ
 レンお姉ちゃんに常時帯電させようとしたら制御が難しくってねぇ」

………いや、何言ってんのこの子?
つーか、どんな発想をしてたら私を帯電させようなんて考えが出て来るのさ!?

「という訳でレンお姉ちゃん、その状態なら火力不足も何とかなるし
 レンお姉ちゃんに近寄っただけで相手に雷が襲い掛かって来るから
 防御面も向上したよん
 まぁ、その雷は仲間も巻き添えにしちゃうからその辺りは気を付けてね~
 後、マリスはこの魔法の制御で手いっぱいだから後よろしくね~」

………良く分かんないけど、取り合えずこの雷はマリスの
援護魔法って事でいいんだよね。
まぁ、確かに触れただけで感電させそうな感じなんだけども………
とは言え火力不足が何とかなるのは有難い、防御面の向上は
どの道私は巨人女性のハンマーを受けたら挽肉確定なので
あまり期待できそうにはないけど。

「………色々突っ込みたいけど今は有難いよマリス
 んじゃ仕切り直しと行こうか、リーゼ」
「了解しました、マスター」

予想外の援護を受けた私はリーゼと共に再び巨人女性に接近する。

「■…■■■■■■■■■■■―――!!」

呆気に取られていた巨人女性も私とリーゼの動きを見て直ぐにハンマーを構え直す。
流石に立ち直りが早い、期待はしてなかったけど呆気に取られたままだったら
そのまま畳みかけて終わらせることが出来たのに、少し残念。
私はハンマーを持ってない左手側から回り込むように、リーゼは真正面から
巨人女性に肉薄する。
当然ながら巨人女性も黙っているはずも無く、咆哮を上げ………
私の方に向き直し、ハンマーを振り上げる!!

「………ッ!!」

ゴウン!!と唸りを上げて振り下ろされるハンマー、私の方が倒しやすいと判断したか
けど、いくら早くても予備動作が大きすぎる大振りなど当たってあげる訳にはいかない。
私はすぐさま右へ回避し、ハンマーを避ける。
その間に射程内に巨人女性を捕らえたリーゼが短めに持った戦斧を
横薙ぎに振り抜こうとする!!

     ギィン!!

金属と金属がぶつかり合う音が木霊する、巨人女性は振り下ろしたハンマーの柄を
横に向けて振り上げ、振り抜かれるリーゼの戦斧に合わせて防御し
再び鍔迫り合いの形に持ち込む。

「くっ………この人間、思っていた以上に器用ですね」

今度の鍔迫り合いも互角、体勢は巨人女性の方が不利だが
戦斧を短く持っていたリーゼも体重がかけれず、均衡状態になる。
リーゼと2度も真っ向勝負が出来るなんてこの巨人女性の力も相当なものだね。
けど、鍔迫り合いの格好に持って行ったのは失策だったね。
私の攻撃なら大したことないと踏んだのか知らないけど
急所の肝臓ががら空きだよ!!
私は踏鳴を入れ、体重を乗せた拳を巨人女性の脇腹に打ち込む!!

    バリバリバリバリバリ!!

私の拳が巨人女性の脇腹に触れた瞬間、私が纏っていた雷が
まるで獲物を捕らえた蛇のような動きで巨人女性の全身を駆け巡る!!

「■■■■■■■■■■■―――!!」

いきなりの高電流を全身に流され、流石の巨人女性も痛みに叫び声を上げる
けど………

「ぐううううううぅぅぅぅっっ!!」

そのまま鍔迫り合い状態のリーゼにも電流が流れてしまい
リーゼにも電流のダメージを与えてしまう。

「しまっ!!」

慌てて拳を引く私、高電流を浴びた巨人女性とリーゼの体からは
僅かに黒煙が上がってる。
………くっ、なんて馬鹿な事してる私、つい今し方マリスに
注意されたばかりじゃないか!!

「………大丈夫です、マスター
 そのまま追撃を!!」

自分の不甲斐なさに一瞬自己嫌悪に陥ろうとするも
リーゼの意外な言葉で私は我に返る。

「追撃って、リーゼ何言って………」
「我なら大丈夫です、この程度の電撃で倒れるなどではあり得ません
 それよりも今はこの人間を倒す好機です!!
 口惜しいですが今の状況では我も力不足です、ならばマスタ―の代わりに
 足止め役を担う迄!!」

リーゼはそう言いながら鍔迫り合いを続けている、もしかしてさっきの攻撃は
この状況を作り出す為に!?

「………どうですか人間、先ほど貴方に極められた拘束を真似してみました
 力の均衡による拘束………成程、これは実に有効ですね!!」

って、さっき戦斧を止められた力の均衡による拘束アレを模倣してるの!?
しかも全く同じ型じゃなくって応用した形でって………
………リーゼは成長している、強くなろうと模索してる。
そしてそれで得た知識や技術を惜しげも無く私達の為に使ってる。
これは………応えないといけないね!!

「フィル!!リーゼに治癒魔法をお願い!!
 それと出来るだけ雷が効かない様にもしてあげて!!」

けど、流石にそのまま電流を流し続ける訳もいかない
リーゼがあの巨人女性よりタフだって保証は無いんだから
なら、こっちもこっちで対策をさせて貰う迄。

「………分かったわ、レンの頼みだもの、全力で当たらせて貰うわ!!」

そう言ってフィルは祈り始め、魔法の準備に入る。

「■■■■■■■■■■■―――!!」

私達の意図を察したのか、巨人女性は放せとばかりに咆哮を上げ
ハンマーに力を籠める。
………だけどリーゼが絶妙な力加減で均衡を保ち続ける、戦斧の刃を
柄で受け止めてるので力を抜いて引くことも出来ない、引いてしまったが最後
そのままリーゼの戦斧が巨人女性を両断する格好になってるからだ。
そうこうしている内にリーゼの体がぼんやりと光出す
フィルの防護魔法がかかった様だね。

「レン、準備完了よ!!何時でも行けるわ!!」

フィルの言葉と同時に私は再び私は肉薄し………今度は肝臓部分ではなく
左手を貫手にし、!!

「■■■■■■■■■■■―――!!」

肉を貫く生暖かい感触が腕から伝わってくる、流石の巨人女性も激痛に
激しい咆哮を上げる、けどここからが本番だよ!!

        バリバリバリバリバリバリ!!

纏っていた雷が巨人女性の胸の中で暴れ始める、そこから巨人女性
駆け巡った雷は鍔迫り合いを続けていたリーゼに再び襲い掛かる!!

「■■■■■■■■■■■―――!!」
「ガアアアアアアアァァァ!!」

雷撃を受けている2人がまるで競う様に咆哮を上げる、その後方で
フィルが詠唱を続けリーゼに治癒魔法を掛け続けてる。
こうなったら消耗戦だ、私の纏ってる雷の効果が切れるのが先か
回復を受け続けてるリーゼが力尽きるのが先か、それとも………

「■…■■■■■■■■■■!!」

雷撃を受け続けてもなお巨人女性が私を引きはがすべく
開いている左手で私を掴もうとする――――が

「■■■■■■■■■■■―――!!」

私が纏っている雷がそれを許さず、その左手に追撃の雷を送り込む!!

「■…■■■………■■■■■■■■■■―――!!」

巨人女性ことさら大きい苦悶の咆哮を上げた後、私の方へ顔を向ける。
憤怒の表情で私を睨みつけてくる巨人女性







――――けど、その表情が一瞬変わった様に見えた瞬間
巨人女性の体がぐらりと揺れる。





「▪▪▪………ァ………………ゥ」






言葉にならない声を出し、巨人女性は大きな音を立てて仰向けに倒れた。





――――その表情は、何かに開放されたように穏やかだった。
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