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帝国と王国の交声曲《カンタータ》
燃え爆ぜる掌
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「うわ~、これはまた大物を釣ってきたねぇ」
スライムの姿を確認したマリスが感心した口調で言う。
外壁にへばりついてる状態とは言えざっと目測しただけでも横に十数m
高さに至っては外壁を乗り越えようとしてるから少なく見積もっても
5m以上はありそう。
マリスの言う通りこれは大騒ぎになってもおかしくないね、と言うか
魔物と言うより津波とかの自然災害に近い印象を受ける。
何ともはや、何がどうなってこんなものを連れて来たのか知らないけど
王国軍からしたら迷惑極まりないね、冒険者の制限をするかもしれないって
予想は尤もかなと思う。
「………どうするのレン、流石にあの規模のスライムを相手にするのは
無謀だと思えるんだけど」
うん、フィルの意見は尤もだね。
とは言え、このまま放置して逃げ出すのもいい方法だとは思えない。
ここの兵士に私達も戦いますって言っちゃったしね。
「………マリス、あいつの攻撃方法ってどんなのがあるの?」
「ん?見た目通り体当たりで獲物を捕食するのと………
あと、粘液を巻き散らして来ることもあるかな?
毒性は無いけど触れると人間の皮膚程度は直ぐに
溶け始めちゃうから注意だね」
む、遠距離攻撃もしてくるのか。
よく見たら確かに外壁の上で応戦してる兵士達に粘液らしきものを
飛ばして反撃してるね。
「マスター、流石にあの規模の大きさを焼き尽くすとなると
今の我では到底無可能です、元の姿で全力で敢行すれば
可能かもしれませんが………」
普段冷静なリーゼも想定外の大きさに若干引き気味だ。
私はスライムをじっと観察する、動き自体は緩慢で本能に則った
動きっぽいね、元は苔らしいから思考能力は無いと思うけど。
中心に白い石のようなものが見える、恐らくあれがマリスの言ってた
核って奴なんだろう、当然ながらその周囲は分厚い粘体に覆われてる。
あの粘液を燃やすか切り裂くかしないと倒せそうにないけど
下手な火力じゃびくともし無さそうだし普通の武器は勿論
リーゼの戦斧ですら飲み込んで溶かしてしまいそうな層の厚さだ。
さてどうする………?
「ん~、準備おっけっと」
唐突にマリスの声が聞こえ、私の思考が途切れる。
思わずマリスの方を見ると、もはや見慣れた光景になった
複数の魔法陣や幾何学文字がマリスの周囲に浮かんでいた。
「マリス?何かいい方法でもあるの?」
「んっふっふ~、いや~こうしたら面白そうだな~って造ってた魔法が
こうも早く出番があるとは嬉しい誤算だったね~」
マリスは上機嫌な声色でそう呟く。
「魔法を造る!?アンタそんなことも出来るの!?」
思わずフィルがマリスに聞き返す。
「正確には既存の魔法を掛け合わせた改造だけどね~
けど、これならレンお姉ちゃんが頑張ればあのスライムも何とか出来るかもだよ」
はい?私が頑張る?
一体どういう事だろ、魔法を撃つまで囮をしろって事かな?
「とりあえずフィルミールお姉ちゃんは2人の強化をお願いね~
リーゼは強化かかったらなるべくレンお姉ちゃんから
離れて戦った方がいいよん、後これ」
マリスは2人に指示を出しながらキューブを取り出し、中から
長い棒状のものを取り出す。
これは………槍?
「レンお姉ちゃんの攻撃で核が露出されたら核に向かってこれブン投げて
それで倒せると思うよ~」
「ちょっと待ってマリス、私の攻撃で核が露出するってどー言う事!?」
マリスのがいきなり妙な事を言い出し、私は思わず聞き返す。
私の攻撃で核を露出って、どう見ても格闘攻撃が通用する相手じゃ
無いと思うんだけど!?
………まぁそれでも戦おうとする私も馬鹿なんだろうけど。
「んっふっふ~、その言葉を待ってたよん
それは、こういう事だよ!!」
マリスの言葉と共に、周囲の魔法陣や幾何学文字が輝いて鳴動し始める。
「名付けて、蓮・大業火!!いっくよ~!!」
ちょっ、なんかダサ目の物騒な名前が聞こえたんだけど!!
抗議する間もなく魔法の効果が発動し、光の奔流となった魔法陣達が
一斉に私に降り注ぐ。
「わっ!!」
余りの眩さに思わず目を閉じる、これって強化魔法!?
けど、今まで受けた強化魔法と違って体の奥底から湧き上がってくる
力の感覚が無い、一体何やったのマリス!?
光の奔流が消え、周りの景色が目に入ってくる。
体の状態を確認するも特に変わったところはない、いつもの強化魔法なら
力が沸き上がってきて体が凄く軽くなる感覚なんだけど………
「………マリス、一体何したの?」
余りの変化の無さに思わずマリスに問いかける。
「んっふっふ~、そろそろ効果が現れるから…っとほら」
マリスが私の左手を指さす、そこに視線を向けた瞬間………
――――私の左手が燃え始めた。
「うわわっ!!」
反射的に左手を振り火を消そうとする私、マリスなんてことすんの!?
「マスター!?」
「マリス!!アンタレンに何してるの!!」
フィルとリーゼも驚愕した様子で叫ぶ、フィルに至っては凄い形相で
マリスに掴みかからんとしてる。
「みんな落ち着いて落ち着いて、レンお姉ちゃん
全然熱くないでしょ、それ」
マリスがいつもと変わらない笑顔のまま指摘する。
………あれ?そう言われてみれば全然熱くない。
炎は確かに燃え盛ってるけどその中の左手は全然焼けてる様子じゃない
むしろ十全に動いてる。
「えっ………何?これ」
何か違和感を通り越して凄い不気味なんですけど………
マリスホントに私に何したの?
「もしかして付与魔法!?
ウソでしょ………武器防具なら兎も角人の体そのものに属性を付与するなんて」
何かを察したらしきフィルが絶句したまま私の左手を見つめる。
えーっと、何それ?
言葉の意味からして何かくっつける感じの魔法なのかな?
「………魔法には武具や道具を強化したり特定の属性を付ける
付与魔法って魔法があるの
効果は切れ味が増したり………今のレンの左手の様に
武器に炎を纏わせたりするの」
へぇ…そんな魔法もあるんだ、それをマリスは私の左手にかけたって事なのかな?
でもそれなら何でフィルはそんなに驚いてるんだろ。
「付与魔法の対象はあくまで武具や道具で、人の体そのものに
属性を付与する魔法なんて聞いた事ないわ、実際にやったら
手は丸焦げになる筈なのよ
マリス………アンタ一体何したのよ」
フィルはマリスを睨みつけながら私の疑問に答える。
そんな視線をマリスは何時もの様に受け流し
「いや~、レンお姉ちゃんが自分の攻撃力の無さを気にしてたみたいだからさ
何とかしてみよっかな~ってちょっと頑張ってみたんだよ、あはははは♪」
「ちょっと頑張ったって………こいつはホント何なのよ」
大した事をしていない風に笑うマリスを見て再び絶句するフィル。
………うん、良く分かんないけど何かまたマリスが魔法の常識を
ひっくり返すようなことを仕出かしたんだろうって事は理解出来た。
「ちなみに、右手の攻撃を当てると爆発するから注意してね~
レンお姉ちゃん自身にはダメージ無いけど他の人は仲間でも
容赦なく吹っ飛んじゃうから」
ちょっ!!それって私の右手は爆弾って事!?
ずっと燃え続けてる左手もアレなのに右手にはもっと危険物を仕込んでるの!?
「………それで私に離れて戦えと言ったのですね」
「そゆこと、そこそこな爆発が起こるから戦闘時は常にレンお姉ちゃんの姿を
意識して戦った方がいいよん」
リーゼが得心した様子で頷く。
まるっきり危険物扱いな私、マリスは私をどうしたいんだろうか………
けど、これで私もあのデカスライムに有効打が撃てるって事になるね。
取り合えず戦闘スタイルはボクシングっぽく左で牽制をしながら
右を本命で打ち込むって感じでいいかな。
「うん、色々言いたい事はあるけどありがとマリス
これで皆の足を引っ張らずに済みそうだよ」
「んっふっふ~、どう致しまして
お礼はこの戦いをド派手に勝ってくれればいいよん」
必要以上にド派手な仕込みをした人間が何言ってるんだか。
私は心の中でそう呟きながら未だ絶句状態のフィルに声をかける。
「フィル、気持ちは分かるけどそろそろ気を取り直して
支援してくれると嬉しいかな」
「えっ!?ああ…うん、御免なさいレン」
私の声に反応し魔法の詠唱を開始するフィル。
「さて………それじゃ苔掃除と行こうかね、リーゼ」
「了解致しましたマスター、一片残らず駆除いたします」
フィルの魔法が完成し、私達に力が降り注いでくる。
それを確認した後、私達はデカスライムに突撃していった。
スライムの姿を確認したマリスが感心した口調で言う。
外壁にへばりついてる状態とは言えざっと目測しただけでも横に十数m
高さに至っては外壁を乗り越えようとしてるから少なく見積もっても
5m以上はありそう。
マリスの言う通りこれは大騒ぎになってもおかしくないね、と言うか
魔物と言うより津波とかの自然災害に近い印象を受ける。
何ともはや、何がどうなってこんなものを連れて来たのか知らないけど
王国軍からしたら迷惑極まりないね、冒険者の制限をするかもしれないって
予想は尤もかなと思う。
「………どうするのレン、流石にあの規模のスライムを相手にするのは
無謀だと思えるんだけど」
うん、フィルの意見は尤もだね。
とは言え、このまま放置して逃げ出すのもいい方法だとは思えない。
ここの兵士に私達も戦いますって言っちゃったしね。
「………マリス、あいつの攻撃方法ってどんなのがあるの?」
「ん?見た目通り体当たりで獲物を捕食するのと………
あと、粘液を巻き散らして来ることもあるかな?
毒性は無いけど触れると人間の皮膚程度は直ぐに
溶け始めちゃうから注意だね」
む、遠距離攻撃もしてくるのか。
よく見たら確かに外壁の上で応戦してる兵士達に粘液らしきものを
飛ばして反撃してるね。
「マスター、流石にあの規模の大きさを焼き尽くすとなると
今の我では到底無可能です、元の姿で全力で敢行すれば
可能かもしれませんが………」
普段冷静なリーゼも想定外の大きさに若干引き気味だ。
私はスライムをじっと観察する、動き自体は緩慢で本能に則った
動きっぽいね、元は苔らしいから思考能力は無いと思うけど。
中心に白い石のようなものが見える、恐らくあれがマリスの言ってた
核って奴なんだろう、当然ながらその周囲は分厚い粘体に覆われてる。
あの粘液を燃やすか切り裂くかしないと倒せそうにないけど
下手な火力じゃびくともし無さそうだし普通の武器は勿論
リーゼの戦斧ですら飲み込んで溶かしてしまいそうな層の厚さだ。
さてどうする………?
「ん~、準備おっけっと」
唐突にマリスの声が聞こえ、私の思考が途切れる。
思わずマリスの方を見ると、もはや見慣れた光景になった
複数の魔法陣や幾何学文字がマリスの周囲に浮かんでいた。
「マリス?何かいい方法でもあるの?」
「んっふっふ~、いや~こうしたら面白そうだな~って造ってた魔法が
こうも早く出番があるとは嬉しい誤算だったね~」
マリスは上機嫌な声色でそう呟く。
「魔法を造る!?アンタそんなことも出来るの!?」
思わずフィルがマリスに聞き返す。
「正確には既存の魔法を掛け合わせた改造だけどね~
けど、これならレンお姉ちゃんが頑張ればあのスライムも何とか出来るかもだよ」
はい?私が頑張る?
一体どういう事だろ、魔法を撃つまで囮をしろって事かな?
「とりあえずフィルミールお姉ちゃんは2人の強化をお願いね~
リーゼは強化かかったらなるべくレンお姉ちゃんから
離れて戦った方がいいよん、後これ」
マリスは2人に指示を出しながらキューブを取り出し、中から
長い棒状のものを取り出す。
これは………槍?
「レンお姉ちゃんの攻撃で核が露出されたら核に向かってこれブン投げて
それで倒せると思うよ~」
「ちょっと待ってマリス、私の攻撃で核が露出するってどー言う事!?」
マリスのがいきなり妙な事を言い出し、私は思わず聞き返す。
私の攻撃で核を露出って、どう見ても格闘攻撃が通用する相手じゃ
無いと思うんだけど!?
………まぁそれでも戦おうとする私も馬鹿なんだろうけど。
「んっふっふ~、その言葉を待ってたよん
それは、こういう事だよ!!」
マリスの言葉と共に、周囲の魔法陣や幾何学文字が輝いて鳴動し始める。
「名付けて、蓮・大業火!!いっくよ~!!」
ちょっ、なんかダサ目の物騒な名前が聞こえたんだけど!!
抗議する間もなく魔法の効果が発動し、光の奔流となった魔法陣達が
一斉に私に降り注ぐ。
「わっ!!」
余りの眩さに思わず目を閉じる、これって強化魔法!?
けど、今まで受けた強化魔法と違って体の奥底から湧き上がってくる
力の感覚が無い、一体何やったのマリス!?
光の奔流が消え、周りの景色が目に入ってくる。
体の状態を確認するも特に変わったところはない、いつもの強化魔法なら
力が沸き上がってきて体が凄く軽くなる感覚なんだけど………
「………マリス、一体何したの?」
余りの変化の無さに思わずマリスに問いかける。
「んっふっふ~、そろそろ効果が現れるから…っとほら」
マリスが私の左手を指さす、そこに視線を向けた瞬間………
――――私の左手が燃え始めた。
「うわわっ!!」
反射的に左手を振り火を消そうとする私、マリスなんてことすんの!?
「マスター!?」
「マリス!!アンタレンに何してるの!!」
フィルとリーゼも驚愕した様子で叫ぶ、フィルに至っては凄い形相で
マリスに掴みかからんとしてる。
「みんな落ち着いて落ち着いて、レンお姉ちゃん
全然熱くないでしょ、それ」
マリスがいつもと変わらない笑顔のまま指摘する。
………あれ?そう言われてみれば全然熱くない。
炎は確かに燃え盛ってるけどその中の左手は全然焼けてる様子じゃない
むしろ十全に動いてる。
「えっ………何?これ」
何か違和感を通り越して凄い不気味なんですけど………
マリスホントに私に何したの?
「もしかして付与魔法!?
ウソでしょ………武器防具なら兎も角人の体そのものに属性を付与するなんて」
何かを察したらしきフィルが絶句したまま私の左手を見つめる。
えーっと、何それ?
言葉の意味からして何かくっつける感じの魔法なのかな?
「………魔法には武具や道具を強化したり特定の属性を付ける
付与魔法って魔法があるの
効果は切れ味が増したり………今のレンの左手の様に
武器に炎を纏わせたりするの」
へぇ…そんな魔法もあるんだ、それをマリスは私の左手にかけたって事なのかな?
でもそれなら何でフィルはそんなに驚いてるんだろ。
「付与魔法の対象はあくまで武具や道具で、人の体そのものに
属性を付与する魔法なんて聞いた事ないわ、実際にやったら
手は丸焦げになる筈なのよ
マリス………アンタ一体何したのよ」
フィルはマリスを睨みつけながら私の疑問に答える。
そんな視線をマリスは何時もの様に受け流し
「いや~、レンお姉ちゃんが自分の攻撃力の無さを気にしてたみたいだからさ
何とかしてみよっかな~ってちょっと頑張ってみたんだよ、あはははは♪」
「ちょっと頑張ったって………こいつはホント何なのよ」
大した事をしていない風に笑うマリスを見て再び絶句するフィル。
………うん、良く分かんないけど何かまたマリスが魔法の常識を
ひっくり返すようなことを仕出かしたんだろうって事は理解出来た。
「ちなみに、右手の攻撃を当てると爆発するから注意してね~
レンお姉ちゃん自身にはダメージ無いけど他の人は仲間でも
容赦なく吹っ飛んじゃうから」
ちょっ!!それって私の右手は爆弾って事!?
ずっと燃え続けてる左手もアレなのに右手にはもっと危険物を仕込んでるの!?
「………それで私に離れて戦えと言ったのですね」
「そゆこと、そこそこな爆発が起こるから戦闘時は常にレンお姉ちゃんの姿を
意識して戦った方がいいよん」
リーゼが得心した様子で頷く。
まるっきり危険物扱いな私、マリスは私をどうしたいんだろうか………
けど、これで私もあのデカスライムに有効打が撃てるって事になるね。
取り合えず戦闘スタイルはボクシングっぽく左で牽制をしながら
右を本命で打ち込むって感じでいいかな。
「うん、色々言いたい事はあるけどありがとマリス
これで皆の足を引っ張らずに済みそうだよ」
「んっふっふ~、どう致しまして
お礼はこの戦いをド派手に勝ってくれればいいよん」
必要以上にド派手な仕込みをした人間が何言ってるんだか。
私は心の中でそう呟きながら未だ絶句状態のフィルに声をかける。
「フィル、気持ちは分かるけどそろそろ気を取り直して
支援してくれると嬉しいかな」
「えっ!?ああ…うん、御免なさいレン」
私の声に反応し魔法の詠唱を開始するフィル。
「さて………それじゃ苔掃除と行こうかね、リーゼ」
「了解致しましたマスター、一片残らず駆除いたします」
フィルの魔法が完成し、私達に力が降り注いでくる。
それを確認した後、私達はデカスライムに突撃していった。
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