~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女

にせぽに~

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冒険者の狂想曲《カプリッチオ》

顕現!!恐怖の変態鍛冶師

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「おっ待たせ致しました~♪
 ご注文の品は、この中に入っております~ヨ!!」

数分後、ケジンさんは1つの指輪を持ってきてそう言ってきた。
………思ってたより遥かにマシな物を持ってきてはくれたんだけど
この中に入ってるってどういう意味?

「おんや珍しい、これ格納指輪ストレージリングだよね?」
「ん?マリスこれ知ってるの?」
「うん、魔導協会が開発したアイテムでこの指輪の中に
 何でも1つだけ出し入れが出来るんだよ。
 インベントリキューブが出来ちゃってから誰も使わなくなったけど」

インベントリキューブってフィルが持ってた奴だよね。
でもあれって特別性って言ってたような。

「まぁ、キューブにも色々制限あるからそこまで便利って訳でも
 無いんだけどね。ま、それはさておいて」

マリスが差し出された指輪を手に取り、色々な角度から眺め見る。

「うん、普通に動作しそうだね
 リーゼ、この指輪を嵌めて【展開デプロイ】って言ってみて。」
「了解しました、マスター、宜しいでしょうか?」
「うん、でも気を付けてね
 どんな武器が入ってるか分からないから………」

リーゼには悪いけどそう言いながら私達は数歩下がる。
出した途端爆発とかしないよね………

「それでは、【展開デプロイ】」

リーゼがそう呟いた瞬間、指輪についていた宝石から
何か長くて大きな物が排出され、リーゼの手元に現れる。

………それは長大な柄の先に巨大な刃が付いた、両刃の戦斧バトルアックスだった。

「!?」

リーゼは反射的に右手で持つも、一瞬右手が沈み驚いた顔をする。

「お………おお~」

マリスが思わす唸る、その気持ちは分からなくもない。
ここまでにリーゼが手に取った武器で重さを感じさせたのは初めてだったからね。
その戦斧だけどまず全長がかなり長く、身長が170㎝くらいある
リーゼのさらに頭一つ上に刃がある。
その刃も単純な形じゃなく、返しなどでかなり複雑な形でしかもかなり大きい。
見るからに重そうな代物だ。

「重い…ですね、ですが振り回しやすそうな重さです」

リーゼが重いって言うならば相当重い武器なのだろう。
もしかして人間が持てる代物じゃないのかもしれない。

「リーゼ、両手で持って横に振ってみて」
「分かりました」

リーゼは斧を両手に持ち、横にフルスイングをする。

 轟ッ!!

恐ろしい風切り音と共に私達に風圧がかかり髪がなびく。

「ひえ~、おっそろしい音がしたね今
 あれ、マリスが10人ぐらい並んでも平気で輪切りに出来そうだよ」
「同感だけど………アンタ気持ち悪い物を想像させないでよ」

私も同感だ、正直あの振りと刃を真っ向から受け止める方法なんて思いつかない。
正直城壁すらもぶった切れそうじゃないこれ?

「ひゅ~、やっぱり僕の思ったとおりだったネ!!
 前にグランドファーザーが「なんでもぶった切れる武器」を依頼されて
 グランドファーザーの代わりに作ったんだヨ
 けど、何故~かお客様はベリー激怒しちゃったんだ♪
 折角だ・れ・で・も使えるように武器の装備レベルまで下げたのにサ~
 グランドファーザーは「お前の発想は真似できん」って
 褒めてくれてたのにネ~」

それはそうだろう、確かに扱えれば何でも切れそうだけど
これ絶対人間が扱える武器じゃないよね。
例え持てたとしてもリーゼの様に振り回すことは不可能だよ。

「ふむ………思ってた以上に手に馴染みます
 マスター、これならばお役に立てるかと」

作った人間は兎も角、リーゼとの相性は良さそうだ。
持ち運びも収納リングみたいなのがあるし、申し分ないかな。

「………うん、リーゼがいいならこれを頂こうかな
 ケジンさんだっけ、この武器のお代はいくらなのかな?」

けどこれだけの武器だ、作った本人の印象からしてそう見えないけど
結構作るの苦労したんじゃないかな、となれば値段もかなりする筈………

「ノーンノーン、その武器のお代はお金じゃないんですヨ~
 ちょーっと僕のお願いを聞いてくれれば、それはノーキャッシュで
 お譲りするヨ~♪」

おや、お金はいらないと。
けどお願いかぁ、この人の性格上ロクな物じゃないと思うけど………

「おや、太っ腹だね
 それで、マリス達に何をしてほしいのかな?」
「ふっふっふ~、そ・れ・は!!」

ケジンさんは声を弾ませながらそう言うといきなり地面に寝ころび




「そこのネ~イスバディのお姉さん
 僕を踏みつけながら蔑んだ視線で見下してくださ~い♪」






「は?」

再び世界が止まる。
いやいやいやちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って
言ってることが全く理解できないんだけど!!

「えーっと、ケジンさん。それってどういう意味で………」
「そのままの意味ですヨ~、さぁ早くお願いしますネ♪」

やばい、この人電波な上にドMか!!
どんだけキャラ濃いんだよ!!もうすでにお腹いっぱいだよ!!
さらなる衝撃にマリスは唖然としちゃってるしフィルに至っては眩暈で
倒れそうになって壁によっかかってるし………

「マスター、この人間の指示通りにすればいいのですか?」

行為の意味を理解してないのか、リーゼは動揺もなく私に問いかける。
うん、ほんっとリーゼがいて助かるよ。

「お願い、死なせない様に手加減はしてあげてね」
「了解しました、では」

リーゼは足を上げ、ケジンさんを睨みつけながら踏みつけようとする。
けど知ってか知らずか、リーゼの足はケジンさんのに向かい………

「ふん!!」
「ぎぴゃ!!」

そこを、容赦なく踏み抜いた。

「あ、ちょ………リ、リリリーゼ!!」
「マスター?指示通り急所を避ける為に下腹部を踏みましたが………」

慌てる私にリーゼがキョトンとした顔で答える。
………ドラゴンの雄ってアノ部分が急所じゃないのかな。
けど、男の人ってを攻撃されると悶絶してたし、リーゼの力で
踏み抜かれたら流石にヤバいんじゃ………
そう思って恐る恐るケジンさんを覗き見ると………

「ああ……ああ………!!
 こ、これは今まで味わったことのない新たなるニューイーズ快楽インパクト
 今………僕は新しい世界ニューワールドに降り立とうとしてるヨ………」

もう、言葉が出ない。
何と言うか、ある意味リーゼと対峙してた時より疲労感が凄い。

「え、えーっと、それじゃこれは頂いていきますね」
「当然だヨ、むしろ予想以上の快楽インパクトをくれた君達に感謝だヨ♪
 お礼にその武器のメンテは何時でも請け負うヨ~、勿論ノーキャッシュでネ」
「あ…はい、有難うございます」

首を起こしいい笑顔で私に向かって親指を立てるケジンさん、流石に
これ以上は遠慮したいところだけど、こんな武器のメンテナンス出来るのは
あの人だけだろうし、多分関わらないといけないんだろうなぁ。

「マスター、酷くお疲れの様ですが大丈夫ですか?」
「ああ、うん大丈夫………帰ろっかみんな」
「うん………そだね」
「私、もう二度とここには来ない」

リーゼ以外の私達は、重い体を引きずって帰路に着いた。
なんか、今日は夢にまで出てきそうな気がする、あの人………

………



………………



………………………


「マスター、本日は有難うございます」

ギルドへの帰り道、私の横を歩いていたリーゼが唐突に口を開く。

「ん?どうしたの突然」
「私の為にこのような物を手り入れてくださいましたので
 一言お礼を申し上げたかったのです」

リーゼは右の中指に付けた格納指輪ストレージリングを見ながら言葉を続ける。

「私はあの場所を探してついて行っただけだよ
 ケジンさんと交渉してたのはほぼリーゼだったじゃない」
「それでも、マスターにあの場所に連れて行って貰わなければ
 これは手に入りませんでした」

律儀だね、ドラゴン族がそうなのかリーゼの性格がそうなのか
けど、もうちょっと軽く考えてもいいんだけどね。

「ですが、このような疑問も頭に浮かぶのです
 ドラゴンである私に武器こんなものが必要なのかと」

その疑問は尤もだ、いくら規格外な武器とは言えドラゴンの姿に戻ってしまえば
無用の長物以内の何物でもないと。

「確かにね。けど、リーゼは強くなりたいんだよね」
「はい、それは勿論
 強くなって、一族に胸を張って1人前の古代竜エンシェントドラゴンだと認めて貰いたいです」

リーゼは瞳に強い光を湛えたままそう口にする。
そこにどんな思いがあるのかは私は知らない。けど、それなら………

「うん、それならリーゼに武器は必要だよ
 これから『人化したまま』で戦ってもらわなきゃいけないから」
「………それは、何故ですか?」

リーゼが顔を上げて私に問いかける。
尤もな疑問だと思う。けど、それにも理由がある。

「リーゼは、まだ『戦い方』知らないから
 それを教えてあげるのに、その姿は都合がいいんだ」
「戦い方………ですか?それを、マスターが教えて下さるのですか?」
「うん、不思議な縁だけどマスターになっちゃったからね
 リーゼが1人前だと自信を持って言えるくらいまでは付き合うよ
 その代わりと言っては何だけど、私の我儘事情に、無理のない範囲で
 付き合ってくれると嬉しいかな」

リーゼを正面から見て微笑む、私に付き合ってくれるというリーゼに
私が今してあげられることはこれしかない。
けど、リーゼは首を振った後真剣な表情で私を見つめ

「そのようなお気遣いは不要です、私はマスターと契約した瞬間から
 マスターに付き従うと決めたのですから、ですが………」

リーゼはそう口にした後、表情を和らげ

「ですが、マスターのお気持ちは大変嬉しく思います
 お手数をかけると思いますが、どうかこの未熟者を鍛えてやってください」

そう言ってふっと笑う。

「そっか、それじゃ明日から鍛錬を始めようか
 言っとくけど、泣いて止めてって言ってもやめないから覚悟しといてね」
「ふふふ、望むところです」

私達は顔を合わせて笑い合う。
そんな私達を夕日が、帰り道を示すように照らしていた。
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