~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女

にせぽに~

文字の大きさ
上 下
26 / 208
冒険者の狂想曲《カプリッチオ》

顕現!!恐怖の変態鍛冶師

しおりを挟む
「おっ待たせ致しました~♪
 ご注文の品は、この中に入っております~ヨ!!」

数分後、ケジンさんは1つの指輪を持ってきてそう言ってきた。
………思ってたより遥かにマシな物を持ってきてはくれたんだけど
この中に入ってるってどういう意味?

「おんや珍しい、これ格納指輪ストレージリングだよね?」
「ん?マリスこれ知ってるの?」
「うん、魔導協会が開発したアイテムでこの指輪の中に
 何でも1つだけ出し入れが出来るんだよ。
 インベントリキューブが出来ちゃってから誰も使わなくなったけど」

インベントリキューブってフィルが持ってた奴だよね。
でもあれって特別性って言ってたような。

「まぁ、キューブにも色々制限あるからそこまで便利って訳でも
 無いんだけどね。ま、それはさておいて」

マリスが差し出された指輪を手に取り、色々な角度から眺め見る。

「うん、普通に動作しそうだね
 リーゼ、この指輪を嵌めて【展開デプロイ】って言ってみて。」
「了解しました、マスター、宜しいでしょうか?」
「うん、でも気を付けてね
 どんな武器が入ってるか分からないから………」

リーゼには悪いけどそう言いながら私達は数歩下がる。
出した途端爆発とかしないよね………

「それでは、【展開デプロイ】」

リーゼがそう呟いた瞬間、指輪についていた宝石から
何か長くて大きな物が排出され、リーゼの手元に現れる。

………それは長大な柄の先に巨大な刃が付いた、両刃の戦斧バトルアックスだった。

「!?」

リーゼは反射的に右手で持つも、一瞬右手が沈み驚いた顔をする。

「お………おお~」

マリスが思わす唸る、その気持ちは分からなくもない。
ここまでにリーゼが手に取った武器で重さを感じさせたのは初めてだったからね。
その戦斧だけどまず全長がかなり長く、身長が170㎝くらいある
リーゼのさらに頭一つ上に刃がある。
その刃も単純な形じゃなく、返しなどでかなり複雑な形でしかもかなり大きい。
見るからに重そうな代物だ。

「重い…ですね、ですが振り回しやすそうな重さです」

リーゼが重いって言うならば相当重い武器なのだろう。
もしかして人間が持てる代物じゃないのかもしれない。

「リーゼ、両手で持って横に振ってみて」
「分かりました」

リーゼは斧を両手に持ち、横にフルスイングをする。

 轟ッ!!

恐ろしい風切り音と共に私達に風圧がかかり髪がなびく。

「ひえ~、おっそろしい音がしたね今
 あれ、マリスが10人ぐらい並んでも平気で輪切りに出来そうだよ」
「同感だけど………アンタ気持ち悪い物を想像させないでよ」

私も同感だ、正直あの振りと刃を真っ向から受け止める方法なんて思いつかない。
正直城壁すらもぶった切れそうじゃないこれ?

「ひゅ~、やっぱり僕の思ったとおりだったネ!!
 前にグランドファーザーが「なんでもぶった切れる武器」を依頼されて
 グランドファーザーの代わりに作ったんだヨ
 けど、何故~かお客様はベリー激怒しちゃったんだ♪
 折角だ・れ・で・も使えるように武器の装備レベルまで下げたのにサ~
 グランドファーザーは「お前の発想は真似できん」って
 褒めてくれてたのにネ~」

それはそうだろう、確かに扱えれば何でも切れそうだけど
これ絶対人間が扱える武器じゃないよね。
例え持てたとしてもリーゼの様に振り回すことは不可能だよ。

「ふむ………思ってた以上に手に馴染みます
 マスター、これならばお役に立てるかと」

作った人間は兎も角、リーゼとの相性は良さそうだ。
持ち運びも収納リングみたいなのがあるし、申し分ないかな。

「………うん、リーゼがいいならこれを頂こうかな
 ケジンさんだっけ、この武器のお代はいくらなのかな?」

けどこれだけの武器だ、作った本人の印象からしてそう見えないけど
結構作るの苦労したんじゃないかな、となれば値段もかなりする筈………

「ノーンノーン、その武器のお代はお金じゃないんですヨ~
 ちょーっと僕のお願いを聞いてくれれば、それはノーキャッシュで
 お譲りするヨ~♪」

おや、お金はいらないと。
けどお願いかぁ、この人の性格上ロクな物じゃないと思うけど………

「おや、太っ腹だね
 それで、マリス達に何をしてほしいのかな?」
「ふっふっふ~、そ・れ・は!!」

ケジンさんは声を弾ませながらそう言うといきなり地面に寝ころび




「そこのネ~イスバディのお姉さん
 僕を踏みつけながら蔑んだ視線で見下してくださ~い♪」






「は?」

再び世界が止まる。
いやいやいやちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って
言ってることが全く理解できないんだけど!!

「えーっと、ケジンさん。それってどういう意味で………」
「そのままの意味ですヨ~、さぁ早くお願いしますネ♪」

やばい、この人電波な上にドMか!!
どんだけキャラ濃いんだよ!!もうすでにお腹いっぱいだよ!!
さらなる衝撃にマリスは唖然としちゃってるしフィルに至っては眩暈で
倒れそうになって壁によっかかってるし………

「マスター、この人間の指示通りにすればいいのですか?」

行為の意味を理解してないのか、リーゼは動揺もなく私に問いかける。
うん、ほんっとリーゼがいて助かるよ。

「お願い、死なせない様に手加減はしてあげてね」
「了解しました、では」

リーゼは足を上げ、ケジンさんを睨みつけながら踏みつけようとする。
けど知ってか知らずか、リーゼの足はケジンさんのに向かい………

「ふん!!」
「ぎぴゃ!!」

そこを、容赦なく踏み抜いた。

「あ、ちょ………リ、リリリーゼ!!」
「マスター?指示通り急所を避ける為に下腹部を踏みましたが………」

慌てる私にリーゼがキョトンとした顔で答える。
………ドラゴンの雄ってアノ部分が急所じゃないのかな。
けど、男の人ってを攻撃されると悶絶してたし、リーゼの力で
踏み抜かれたら流石にヤバいんじゃ………
そう思って恐る恐るケジンさんを覗き見ると………

「ああ……ああ………!!
 こ、これは今まで味わったことのない新たなるニューイーズ快楽インパクト
 今………僕は新しい世界ニューワールドに降り立とうとしてるヨ………」

もう、言葉が出ない。
何と言うか、ある意味リーゼと対峙してた時より疲労感が凄い。

「え、えーっと、それじゃこれは頂いていきますね」
「当然だヨ、むしろ予想以上の快楽インパクトをくれた君達に感謝だヨ♪
 お礼にその武器のメンテは何時でも請け負うヨ~、勿論ノーキャッシュでネ」
「あ…はい、有難うございます」

首を起こしいい笑顔で私に向かって親指を立てるケジンさん、流石に
これ以上は遠慮したいところだけど、こんな武器のメンテナンス出来るのは
あの人だけだろうし、多分関わらないといけないんだろうなぁ。

「マスター、酷くお疲れの様ですが大丈夫ですか?」
「ああ、うん大丈夫………帰ろっかみんな」
「うん………そだね」
「私、もう二度とここには来ない」

リーゼ以外の私達は、重い体を引きずって帰路に着いた。
なんか、今日は夢にまで出てきそうな気がする、あの人………

………



………………



………………………


「マスター、本日は有難うございます」

ギルドへの帰り道、私の横を歩いていたリーゼが唐突に口を開く。

「ん?どうしたの突然」
「私の為にこのような物を手り入れてくださいましたので
 一言お礼を申し上げたかったのです」

リーゼは右の中指に付けた格納指輪ストレージリングを見ながら言葉を続ける。

「私はあの場所を探してついて行っただけだよ
 ケジンさんと交渉してたのはほぼリーゼだったじゃない」
「それでも、マスターにあの場所に連れて行って貰わなければ
 これは手に入りませんでした」

律儀だね、ドラゴン族がそうなのかリーゼの性格がそうなのか
けど、もうちょっと軽く考えてもいいんだけどね。

「ですが、このような疑問も頭に浮かぶのです
 ドラゴンである私に武器こんなものが必要なのかと」

その疑問は尤もだ、いくら規格外な武器とは言えドラゴンの姿に戻ってしまえば
無用の長物以内の何物でもないと。

「確かにね。けど、リーゼは強くなりたいんだよね」
「はい、それは勿論
 強くなって、一族に胸を張って1人前の古代竜エンシェントドラゴンだと認めて貰いたいです」

リーゼは瞳に強い光を湛えたままそう口にする。
そこにどんな思いがあるのかは私は知らない。けど、それなら………

「うん、それならリーゼに武器は必要だよ
 これから『人化したまま』で戦ってもらわなきゃいけないから」
「………それは、何故ですか?」

リーゼが顔を上げて私に問いかける。
尤もな疑問だと思う。けど、それにも理由がある。

「リーゼは、まだ『戦い方』知らないから
 それを教えてあげるのに、その姿は都合がいいんだ」
「戦い方………ですか?それを、マスターが教えて下さるのですか?」
「うん、不思議な縁だけどマスターになっちゃったからね
 リーゼが1人前だと自信を持って言えるくらいまでは付き合うよ
 その代わりと言っては何だけど、私の我儘事情に、無理のない範囲で
 付き合ってくれると嬉しいかな」

リーゼを正面から見て微笑む、私に付き合ってくれるというリーゼに
私が今してあげられることはこれしかない。
けど、リーゼは首を振った後真剣な表情で私を見つめ

「そのようなお気遣いは不要です、私はマスターと契約した瞬間から
 マスターに付き従うと決めたのですから、ですが………」

リーゼはそう口にした後、表情を和らげ

「ですが、マスターのお気持ちは大変嬉しく思います
 お手数をかけると思いますが、どうかこの未熟者を鍛えてやってください」

そう言ってふっと笑う。

「そっか、それじゃ明日から鍛錬を始めようか
 言っとくけど、泣いて止めてって言ってもやめないから覚悟しといてね」
「ふふふ、望むところです」

私達は顔を合わせて笑い合う。
そんな私達を夕日が、帰り道を示すように照らしていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

筋トレ民が魔法だらけの異世界に転移した結果

kuron
ファンタジー
いつもの様にジムでトレーニングに励む主人公。 自身の記録を更新した直後に目の前が真っ白になる、そして気づいた時には異世界転移していた。 魔法の世界で魔力無しチート無し?己の身体(筋肉)を駆使して異世界を生き残れ!

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった

ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。 しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。 リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。 現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...