~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女

にせぽに~

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冒険者の狂想曲《カプリッチオ》

リーゼの武器探し

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リーゼを仲間にした数日後、依頼の疲れを癒した私達は
リーゼが扱う為の武器を探しにグランゼルの武器屋を巡っていた、けど………

「う~ん、予想はしてたけど良さげな物は無いねぇ」

マリスは陳列された武器を眺めながら呟く。

「リーゼ、これは?」

私は陳列してある大きなハンマーを指さす。
リーゼはそれを片手で軽々と手に取るも、棚に戻して首を振り

「軽すぎます、これでも恐らく壊してしまいますね」
「嘘でしょ、私こんなの持ち上げる事も出来ないわよ!?」
「いや、これ片手で持てるのリーゼだけだと思う………」

さっきから片手で軽々と重量武器を持ち上げるリーゼに
武器屋の店員が唖然とした表情で見てる。
まぁ、リーゼの正体知らないとそんな表情になるよね。

「おっちゃん、もっと重くて頑丈な武器は無いの?」

唖然としてる店員にマリスが話しかける。

「そ、そんなもんねぇよ!!
 大体その大槌だってレベル40台の大の男が何とか扱えるレベルなんだぞ!?」

まぁ、そーだよね。
とは言えここもダメだったね、これで4件目なんだけど
中々見つからないものだね。

「ん~、それじゃこれより重い武器作ってるとこってある?」
「これ以上重い武器作ったって使いモンにならねぇよ、と言うかその嬢ちゃん
 どんなバケモンなんだよ………」

まぁ、中身ドラゴンだしね。
結局何も収穫もないまま店を出る。

「弱ったね、服はどうにかなりそうなんだけど武器が厳しいね」

店を出た私が愚痴る。
実際のところ、服の方は割とあっさり見つかったのだ。
とは言え、大きめの男性服を多少詰めて貰ったに過ぎないけど
それでもパツパツ学生服より遥かにマシな格好にはなった。
ちなみに学生服はやっぱり伸びきっていた、帰った時どうしよこれ………
けど、何かリーゼの採寸をした仕立て屋のお姉さんが何か火が付いたらしく

「こんな奇麗な上凄い体型をした方なのにそんな服じゃ勿体ないですよ!!
 時間さえいただければ私が最高の服をお作りします、ですので!!」

物凄い興奮しながら迫ってきて、その迫力に負けて
特注の服を作って貰う事になったんだよね。
まぁリーゼならどんな格好でも様になるとは思うけど
出来れば大人しい服がいいなぁ、私の精神的にも。
そんな感じで服の目途は立ったんだけど、武器で苦戦しているんだよね。

「これで4件目がダメ、大きめの店は全滅ね。
 後は小さい店か職人さんに直接作って貰うかだけど
 リーゼが使って大丈夫な武器を作れる人なんているのかしら」

歩き疲れたのか、フィルが珍しく少し弱気な事を言う。

「もうレンお姉ちゃんが戦い方教えたほうが早くない?」
「最悪の場合そうするけど、本来は教える程のモノじゃないんだよ
 この格闘術って」

マリスの提案に私は首を振って答える。
を教えて癖になったら大変だし、武器が使えるなら
それに越した事は無いんだよね。

「ふ~ん、そんなモノなんだ
 さてさて、どーしたものかなー、困ったな~♪」

まるで困ってないような口調でマリスが呟く。

「まぁ、焦る事は無いかな
 依頼を受けた訳じゃないからすぐ必要な物じゃないし
 のんびり探していこっか」
「そうね、どこかに掘り出し物があるかもしれないし」
「そうと決まればギルドに戻ろっか、さ~て今日のご飯は何かな~と」

私達はギルドへ戻る為に踵を返す、その時

「おや、数日振りじゃない、こんなところで何してるの?」

声のした方へ振り向くと、そこには手ぶら状態のラミカが立っていた。

「こんにちはラミカ、そっちはまだ仕事なの?」
「ううん、今終わったとこ。いやー今回はレン達のお陰で
 納品が早く済んで助かったよ、また近いうちに護衛よろしくね」
「毎度ありぃ~、いや~冒険者初めていきなりお得意様げっととは
 マリス達運がいいよね~」
「あはは、そう言って貰えるのは嬉しいけど
 運がいい冒険者は初依頼でドラゴンと戦ったりしないと思うよ?」
「全くその通りよね………」

フィルのぼやきにラミカが笑う。
そうだ、商人のラミカなら武器職人の事何か知ってるかも。

「そう言えばラミカ、今リーゼの武器を探してるとこなんだけど
 流石に難しくてね、どこかにいい武器職人知らないかな?」
「リーゼの武器、かぁ………生半可な物じゃダメだよね?」
「そだね~、物凄く重そうなバトルハンマーですら片手でひょいっと
 持って『軽い』って言っちゃうくらいだからねぇ」
「あ~、その光景が簡単に想像できるね………」

リーゼの事を知っているラミカは苦笑する。

「ん~、伝手のある武器職人なら何人かいるけど、どの人もリーゼの武器を
 作れそうじゃないし………」

ラミカが考え込み始める、ラミカがダメならもう気長に行くしかないかな。

「ん、そう言えば………」

何か思いついたのかラミカは顔を上げて呟く。

「心当たりあるの?」
「うん、取引のある職人さんから聞いた話だけど工業区の隅の方に
 【ゼルガ=イーゼン】って名前の武器職人がいるんだって。
 なんか凄い偏屈なお爺さんらしくて、作る武器がすんごい扱い辛いって話みたい
 けど、その代わりに使いこなせるようになったら強力な武器らしくて
 上級冒険者が依頼しに行ってるみたいだよ。
 ただ、滅多な事では作ってくれないって噂だけど」

へぇ、腕はいいけど偏屈なお爺ちゃんって感じな人だね………
会ってみたいかも。

「私の心当たりはこのくらいかな、鍛冶ギルドで探せばもっといるかも
 しれないけど、あそこは職人気質の塊だからね~
 私達みたいな小娘が行っても門前払いが関の山だね」

あ、そんなギルドもあるんだ。
けど一見さんお断りかぁ、ならそのお爺ちゃんのとこに行くのがいいかな。

「他に手は無さそうだし、一先ずそのゼルガって人のとこ行ってみるよ」
「そっか、住んでる処は工業区黒鉄通りみたいだよ。
 案内したげたいけど、これから商業ギルドに顔を出さないといけないんだ」
「いや、十分助かったよ。ありがとラミカ」
「どういたしまして、後何か入用なら声かけてね~」

ラミカはそう言うと手を振りながら町の雑踏の中に消えて行った。

「んじゃ、行ってみよっか」
「偏屈な爺さんねぇ………一筋縄では行きそうに無いわね」
「マリスは楽しくなってきたかも、あはははは」
「………」

四者四様の言葉を紡ぎながら、私達はゼルガと言う武器職人が住んでいる
工業区へ向かっていった。



………



………………



………………………




「えーっと、確かこの辺りって聞いたけど………ってここだ」

数十分後、多少迷いながらも何とかゼルガって人の工房を見つけることが出来た。
いわゆる知る人ぞ知る、って感じの職人さんらしく工業区で詳しい場所を聞いても
知ってる人が少なくてちょっと大変だった。

「本当にここがゼルガって職人の家なの?
 その割にはただの家にしか見えないんだけど」
「奥行きがあって工房はそこにあるのかも知れないね~」

フィルとマリスの会話を他所に、私は入り口のドアをノックする。

「すみませ~ん、武器を見せて欲しいんですけど~」
「………」

1分経過、何の返事もない。

「留守なのかしら?」
「違うみたいだよ~、ほら」

奥の方からどたどたと走ってくる様な音が聞こえる。
良かった、留守じゃなかった。
私達はドアの前で待つ、するとドアが勢いよく開き………




「はいは~い、我が【憩いの鍛冶処・イーゼン】へようこそ~♪
 鋳造に致しますか?研ぎに致しますか?それともと・く・CHU?♪」





一瞬、世界が止まる。

えーっと、何?
偏屈な老人は何処へ行ったのか、出て来た男の人は意味不明な踊りを
踊りながらそれ以上に意味の分からない事を言い放つ。
あの~ラミカ、聞いてた話とぜんっぜん違うんだけど………
仲間達を横目で見るとフィルはもちろんマリスですら呆気に取られている。
………マリスにこんな表情をさせるなんてこの人凄いかも。

「マスター、この人間の言ってる意味が全く分からないのですが
 もしかして未知の言語なのでしょうか?」

リーゼは表情一つ変えず私に質問して来る。

「いや、一応人間の言葉だけど………意味は私もさっぱりだよ」
「そうですか………」

予想外過ぎる展開に呆気に取られたけど、こうしちゃいられない
一先ず出て来た男の人に尋ねてみないと。

「えーっと、ここは【ゼルガ=イーゼン】さんの鍜治場ですよね?」

私の質問に男の人はくるりと1回転をし、何故か流し目で私を見据え

「お~、申し訳ありませんね~
 マイグランドファーザーは1か月前にお空に旅立っちゃったんです!!
 な・の・で跡取りで孫の僕【ケジン=イーゼン】が!!
 このブラックスミッシー鍜治場を取り仕切ってる訳ですよ♪
 いや~祖父から孫に伝わる想いと技術、感動的ですね~」

………やばい、この人関わっちゃいけない人だ。
一応この人がゼルガさんの孫って事らしいけど
キャラが濃すぎて頭がクラクラしそう。
これは適当に話を打ち切って逃げた方がいいかも………

「ここに、私が扱える武器があるかもしれないとのことですが
 心当たりはありますか?」

そんな変人にリーゼが全く臆せず問いかける。
………凄いねリーゼ、あんな濃いキャラ前面に押し出されても
平然としてるなんて。
ドラゴンだし、単に気にも留めてないだけかもしれないけど。

「おお~、これはまたネィ~イスバディなお客ですねぃ~
 ん~、ほうほうほうほう………」

ケジンと名乗ったこの変な人はしげしげとリーゼの全身を見る。
傍から見てるとセクハラこの上ないなぁ。

「ほほ~う、これはこれはこれはこれは
 中々にエクセレ~ントなお客様ですね~ぃ
 内面インサイド外面アウトザイドがこッッッこまで違うとは!!
 むっふっふっふっふ~、これはそそられますねぃ」

………!?
頭が痛くなりそうなセリフに惑わされがちだけど
この人、リーゼの本質を見抜いてる!?

「ほっほっほっほ、な・ら・ば・あれが最適で~すね♪
 ご注文、受けっっ賜りましたぁ~、少々お待ちを~
 ふんふんふんふ~ん」

呆気に取られ続ける私達を他所に、すこぶる変なテンションのまま
ケジンさんは家の中に入っていく。

「………はっ!!
 しまった、あまりにもキャラが濃すぎてマリスとした事が呆然としちゃったよ
 む~、修行不足だなぁ」
「ゴメン、私あの男の相手は無理かも
 次顔を合わせたら眩暈で倒れる自信があるわ………」

数秒後、我に返った2人がそれぞれの感想を述べる。
マリスは兎も角フィルは苦手そうだよね、あの手のキャラ………

「あははは、リーゼいなかったら多分会話になんなかったろうね
 ありがとリーゼ」
「………良く分かりませんが、お役に立てたのでしたら幸いです」
「けどどうしようか、あの様子だと変な武器持ってきそうだけど………」

マリスが尤もな事を言う。けど、現状ほかに代案がないのも事実なんだよね。

「取り合えず持ってきた武器を見てみよう、変な武器だったら
 買わなければいいだけだし、けど、きついならフィルは先に帰る?」
「………いえ、もう少し頑張ってみるわ」

取り合えず私達は待つことに決める。

「ん~?この辺りにしまったんだけどネ~
 これは………おっとこれは握るとエクスプロージョンする失敗作だったYO
 危うくこの場一体ヴァニッシュするところだったよ、HAHAHAHAHAHA!!」

………ほんっとーに大丈夫なんだろうか、これ。
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