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少女達の輪舞曲《ロンド》
憤怒の竜
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「ゴアアアアアアアアアア!!」
ドラゴンは天を仰ぎ、盛大に咆哮する。
何でかえらく怒ってない?
「ちょっ、いきなり何なの!?」
状況が分からない、確かにドラゴンがいるかもって話だったけど
いきなり現れてさらに激怒状態なんだけど、私何かした!?
「っ!!」
私は本能的に駆け出す、どんな状況であろうとこのまま見つかるのはマズい。
一先ず距離を取って状況を確認しないと………
「レン!!」
「レンお姉ちゃん!!」
駆け出した矢先にフィル達がこちらに向かって来る。
「フィル、マリス、ラミカ!!」
「一体何があったの!?何でドラゴンが………」
「分からない、けどどうやら相当怒ってるみたい」
「怒ってる!?何でまた………」
「分かんないよ、逃げた男を追ってたらいきなり現れたんだから」
「………」
私達の会話を他所にマリスが深刻な顔をして考え込んでいる。
「マリス?何か心当たりでもあるの?」
「ドラゴンって、幼い頃は兎も角、成長すると基本理知的でむやみに
暴れまわったりしないんだよね。
けど、そのドラゴンがそれをやられると無条件で激怒することがあってさ」
「まさか………逆鱗!?」
うっそ、逆鱗ってあの触ったらヤバイ逆鱗!?
この世界の竜にもそんなのあるの!?
「うん、普段は隠してるみたいなんだけど、寝てるときとかに出てくるらしくて
それがまた奇麗な色をしてて知らないと宝石と見間違えるらしくってさ」
「まさか………逃げた男がそれを見つけて」
「うん、多分そうだろうね」
うわ~、なんて事してくれたのあの男!!
これなら投降を呼びかけず問答無用で倒しておけばよかった、私の失態だ。
ドラゴンを見ると咆哮を上げながら山の木々をなぎ倒してる。
あちゃぁ、見境なしに暴れ始めちゃってるよ。
幸いにも見つかっては無いっぽいけど、このままにしていいのかな?
「ちなみに放っておいたら自然に怒りは………」
「解けないね、あの状態になったら疲れ切って眠るか気絶させるまで
怒りっぱなしだよ」
ラミカの問いにマリスが首を振る。
流石に甘い考えだったか、とは言えあんなのに戦いを挑むのは流石に無謀すぎるし
逃げた方がいいんだろうけど………
「だったら逃げるしかないわね、とてもじゃないけど
私達の手に負える相手じゃないわ」
フィルの提案は尤もだ、けどマリスは首を振り
「けど、そうしたら討伐隊が編成されて倒されるまで暴れ続けるよ
軽く見積もってもジダの村は壊滅、周辺にも甚大な被害が及ぶね
よしんば倒せたとしても、そのあと確実に誰がドラゴンを怒らせたって
話になるから………」
「最悪、私達のせいになるって事?」
「結構な確率でそうなると思うよ、だから放って逃げるのはお勧めしないかな」
「ならアレと戦えって事!?それこそ無謀じゃない!!
私やアンタは兎も角、レンが死ぬことだけは許さないわよ!!」
こんな時でも私優先なのねフィル、いつも通り過ぎてちょっとホッとする。
「勝てとは言わないよ、ただ時間稼ぎをする必要があるって事
恐らくドラゴンの姿はジダの村からも見えてるはず、ならラミカお姉ちゃんが
この事態を知らせに行って、私達が村人が退避するまでの時間を稼げば、
もし疑いがかかった時にこちらの言い分が通りやすくなるから
逃げるより遥かにマシなんだよ」
確かに、一目散に逃げるより時間稼ぎをして被害を抑える様に動いた方が
心象は遥かにいいけど、今の私達に足止めとは言えドラゴンと戦えるの?
「そんなに長くは保たないだろうけど、足止めするだけなら何とかなると思う
ただし、レンお姉ちゃんがドラゴンの攻撃を一手に引き受ける必要があるけど」
ですよね~、前線で戦えるの私しかいないし。
とりあえずドラゴンの動きを観察する。理性を失っている影響か
攻撃の予備動作が大きい、前足の踏み付けも尻尾の薙ぎ払いも範囲は広いけど
避けるだけなら何とかなりそうかな………
「マリスはレンお姉ちゃんを強化した後魔力の続く限り攻撃魔法を打ち込むよ
多分牽制以上の効果は出ないと思うけど………フィルミールお姉ちゃんは
私の強化の上から更に強化を重ねがけして回復を………」
「………出来ないわ」
マリスの提案にフィルが気まずそうに答える。
その答えが予想外だったのかマリスがぎょっとしてフィルの方へ振り向く。
「えっ!?出来ないってフィルミールお姉ちゃんあんな凄い
回復魔法使えるのに何で!?強化なんて祈祷魔法の初歩だよ!?」
ああ、やっぱりフィルの回復魔法って凄いんだ。
最初の熊との戦いの時、肩を結構ざっくりやられたけど
速攻治してくれたんだよね。
でも、何か雲行きが怪しくなってきたような………
「私が使えるのは聖教で見た魔法だけ、そもそも誰からも
魔法なんて教わってないの」
「………って事は使える魔法って」
「聖教司祭様たちが使ってた回復魔法と解呪、そして
レンに使った【イラストリアス・ブレッシング】のみ
あれも強化の1つだけど効果時間は10分しかないわ」
「む………それはちょっと想定外だね」
魔法の事は分からないけど何かマズいみたい。
「仕方ないね、無い物をねだっても始まらない
レンお姉ちゃん、悪いけどマリスの強化だけで何とかお願い」
マリスは目をつぶり、ぼそぼそと言葉らしきものを発し
同時に右手で幾何学文字を、左手で魔法陣っぽいものを描き始める。
「なっ………嘘!?」
今度はフィルが驚いてマリスを見る。
「アンタ、なんでそんな事が………」
「ゴメン、今は説明してる暇ないんだ。レンお姉ちゃん、合図したら
戦闘開始して。フィルミールお姉ちゃんはレンお姉ちゃんが少しでも被弾したら
即座に回復お願い、ラミカお姉ちゃんは戦いが始まったらすぐに村に知らせに
行って頂戴」
「………分かったわ。けど、それは後で聞かせてもらうからね」
「隠してる事でもないしね、無事切り抜けたら答えるよ」
「………みんな、本当にドラゴンと戦う気なの?」
戦闘の段取りを整えていく私達にラミカが心配そうに問いかける。
「それしか選択肢が無さそうだしね、ラミカは私達を気にせず村人と一緒に
避難を優先して。ま、何とかしてみせるよ」
不安にさせない様に軽い感じで言ってみる。その意図にラミカは
気づいてくれたのか、顔を引き締め頷く。
「分かった。けど、絶対に生きててよ
貴方達への依頼料を未払いなんて商人のプライドが許さないんだから」
「おっと、それがあったね。じゃあ何が何でも生き残らないと」
「………うん、じゃあまた後でね!!」
ラミカは村の方へ駆け出す、これで村は確実に避難を始めてくれるだろう。
後は私達がいつまで持ちこたえられるか。
「準備完了、レンお姉ちゃん、行くよ!!」
マリスの周囲が様々な光に包まれ、その光が私に降り注ぐ。
………なんだか力が漲ってくる感じだ、これなら何とかなるかも。
「強化かかってるって言っても、直撃を受けたら確実に致命傷だよ
だから攻撃はあくまでドラゴンの気を引く程度で回避優先だよ!」
「………レン、絶対に死なないでね
死ななければ私がいくらでも治すから、だから………」
「まぁ、何とかやってみせるよ」
私はドラゴンを見据える、自分の怒りに触れた者を八つ裂きにする為に
山の木々をなぎ倒し張本人を探しているようだ。
………異世界に来て1週間くらいでドラゴンと素手で対峙する羽目になるとか
仮にゲームだとしても有り得ないよね全く、まぁゲームじゃないけどさ。
けど愚痴ってたところで仕方ない、戦闘時に準備不足なんていつもの事だ。
手札が無いなら無いなりにやっていくしかない。
「それじゃ、始めようか!!」
私は覚悟を決め、憤怒の嵐と化しているドラゴンへと向かっていった。
ドラゴンは天を仰ぎ、盛大に咆哮する。
何でかえらく怒ってない?
「ちょっ、いきなり何なの!?」
状況が分からない、確かにドラゴンがいるかもって話だったけど
いきなり現れてさらに激怒状態なんだけど、私何かした!?
「っ!!」
私は本能的に駆け出す、どんな状況であろうとこのまま見つかるのはマズい。
一先ず距離を取って状況を確認しないと………
「レン!!」
「レンお姉ちゃん!!」
駆け出した矢先にフィル達がこちらに向かって来る。
「フィル、マリス、ラミカ!!」
「一体何があったの!?何でドラゴンが………」
「分からない、けどどうやら相当怒ってるみたい」
「怒ってる!?何でまた………」
「分かんないよ、逃げた男を追ってたらいきなり現れたんだから」
「………」
私達の会話を他所にマリスが深刻な顔をして考え込んでいる。
「マリス?何か心当たりでもあるの?」
「ドラゴンって、幼い頃は兎も角、成長すると基本理知的でむやみに
暴れまわったりしないんだよね。
けど、そのドラゴンがそれをやられると無条件で激怒することがあってさ」
「まさか………逆鱗!?」
うっそ、逆鱗ってあの触ったらヤバイ逆鱗!?
この世界の竜にもそんなのあるの!?
「うん、普段は隠してるみたいなんだけど、寝てるときとかに出てくるらしくて
それがまた奇麗な色をしてて知らないと宝石と見間違えるらしくってさ」
「まさか………逃げた男がそれを見つけて」
「うん、多分そうだろうね」
うわ~、なんて事してくれたのあの男!!
これなら投降を呼びかけず問答無用で倒しておけばよかった、私の失態だ。
ドラゴンを見ると咆哮を上げながら山の木々をなぎ倒してる。
あちゃぁ、見境なしに暴れ始めちゃってるよ。
幸いにも見つかっては無いっぽいけど、このままにしていいのかな?
「ちなみに放っておいたら自然に怒りは………」
「解けないね、あの状態になったら疲れ切って眠るか気絶させるまで
怒りっぱなしだよ」
ラミカの問いにマリスが首を振る。
流石に甘い考えだったか、とは言えあんなのに戦いを挑むのは流石に無謀すぎるし
逃げた方がいいんだろうけど………
「だったら逃げるしかないわね、とてもじゃないけど
私達の手に負える相手じゃないわ」
フィルの提案は尤もだ、けどマリスは首を振り
「けど、そうしたら討伐隊が編成されて倒されるまで暴れ続けるよ
軽く見積もってもジダの村は壊滅、周辺にも甚大な被害が及ぶね
よしんば倒せたとしても、そのあと確実に誰がドラゴンを怒らせたって
話になるから………」
「最悪、私達のせいになるって事?」
「結構な確率でそうなると思うよ、だから放って逃げるのはお勧めしないかな」
「ならアレと戦えって事!?それこそ無謀じゃない!!
私やアンタは兎も角、レンが死ぬことだけは許さないわよ!!」
こんな時でも私優先なのねフィル、いつも通り過ぎてちょっとホッとする。
「勝てとは言わないよ、ただ時間稼ぎをする必要があるって事
恐らくドラゴンの姿はジダの村からも見えてるはず、ならラミカお姉ちゃんが
この事態を知らせに行って、私達が村人が退避するまでの時間を稼げば、
もし疑いがかかった時にこちらの言い分が通りやすくなるから
逃げるより遥かにマシなんだよ」
確かに、一目散に逃げるより時間稼ぎをして被害を抑える様に動いた方が
心象は遥かにいいけど、今の私達に足止めとは言えドラゴンと戦えるの?
「そんなに長くは保たないだろうけど、足止めするだけなら何とかなると思う
ただし、レンお姉ちゃんがドラゴンの攻撃を一手に引き受ける必要があるけど」
ですよね~、前線で戦えるの私しかいないし。
とりあえずドラゴンの動きを観察する。理性を失っている影響か
攻撃の予備動作が大きい、前足の踏み付けも尻尾の薙ぎ払いも範囲は広いけど
避けるだけなら何とかなりそうかな………
「マリスはレンお姉ちゃんを強化した後魔力の続く限り攻撃魔法を打ち込むよ
多分牽制以上の効果は出ないと思うけど………フィルミールお姉ちゃんは
私の強化の上から更に強化を重ねがけして回復を………」
「………出来ないわ」
マリスの提案にフィルが気まずそうに答える。
その答えが予想外だったのかマリスがぎょっとしてフィルの方へ振り向く。
「えっ!?出来ないってフィルミールお姉ちゃんあんな凄い
回復魔法使えるのに何で!?強化なんて祈祷魔法の初歩だよ!?」
ああ、やっぱりフィルの回復魔法って凄いんだ。
最初の熊との戦いの時、肩を結構ざっくりやられたけど
速攻治してくれたんだよね。
でも、何か雲行きが怪しくなってきたような………
「私が使えるのは聖教で見た魔法だけ、そもそも誰からも
魔法なんて教わってないの」
「………って事は使える魔法って」
「聖教司祭様たちが使ってた回復魔法と解呪、そして
レンに使った【イラストリアス・ブレッシング】のみ
あれも強化の1つだけど効果時間は10分しかないわ」
「む………それはちょっと想定外だね」
魔法の事は分からないけど何かマズいみたい。
「仕方ないね、無い物をねだっても始まらない
レンお姉ちゃん、悪いけどマリスの強化だけで何とかお願い」
マリスは目をつぶり、ぼそぼそと言葉らしきものを発し
同時に右手で幾何学文字を、左手で魔法陣っぽいものを描き始める。
「なっ………嘘!?」
今度はフィルが驚いてマリスを見る。
「アンタ、なんでそんな事が………」
「ゴメン、今は説明してる暇ないんだ。レンお姉ちゃん、合図したら
戦闘開始して。フィルミールお姉ちゃんはレンお姉ちゃんが少しでも被弾したら
即座に回復お願い、ラミカお姉ちゃんは戦いが始まったらすぐに村に知らせに
行って頂戴」
「………分かったわ。けど、それは後で聞かせてもらうからね」
「隠してる事でもないしね、無事切り抜けたら答えるよ」
「………みんな、本当にドラゴンと戦う気なの?」
戦闘の段取りを整えていく私達にラミカが心配そうに問いかける。
「それしか選択肢が無さそうだしね、ラミカは私達を気にせず村人と一緒に
避難を優先して。ま、何とかしてみせるよ」
不安にさせない様に軽い感じで言ってみる。その意図にラミカは
気づいてくれたのか、顔を引き締め頷く。
「分かった。けど、絶対に生きててよ
貴方達への依頼料を未払いなんて商人のプライドが許さないんだから」
「おっと、それがあったね。じゃあ何が何でも生き残らないと」
「………うん、じゃあまた後でね!!」
ラミカは村の方へ駆け出す、これで村は確実に避難を始めてくれるだろう。
後は私達がいつまで持ちこたえられるか。
「準備完了、レンお姉ちゃん、行くよ!!」
マリスの周囲が様々な光に包まれ、その光が私に降り注ぐ。
………なんだか力が漲ってくる感じだ、これなら何とかなるかも。
「強化かかってるって言っても、直撃を受けたら確実に致命傷だよ
だから攻撃はあくまでドラゴンの気を引く程度で回避優先だよ!」
「………レン、絶対に死なないでね
死ななければ私がいくらでも治すから、だから………」
「まぁ、何とかやってみせるよ」
私はドラゴンを見据える、自分の怒りに触れた者を八つ裂きにする為に
山の木々をなぎ倒し張本人を探しているようだ。
………異世界に来て1週間くらいでドラゴンと素手で対峙する羽目になるとか
仮にゲームだとしても有り得ないよね全く、まぁゲームじゃないけどさ。
けど愚痴ってたところで仕方ない、戦闘時に準備不足なんていつもの事だ。
手札が無いなら無いなりにやっていくしかない。
「それじゃ、始めようか!!」
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