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少女達の輪舞曲《ロンド》

胡散臭い魔道少女

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「なっ………あっ、え?」

余りの事態に困惑する私。
いきなり声がしたと思ったら、天井から女の子が
逆さまにぶら下がってるってどんな状況!?

「マリス………帰ってきてたの
 相変わらず突拍子もない登場の仕方するわねぇ」
「それがマリスの存在意義だからね、あはははは」

そう言って女の子は天井から落ちた瞬間、空中でくるっと回って
私達の前に着地する。

「という訳でマイーダお姉ちゃん、マリスもこの依頼
 参加したいんだけど、いいかな?」
「私は構わないわよ、この2人に断られたらあんたに声かけるつもりだったし」
「あんがと、んじゃお姉ちゃん達宜しくね~」

え~っと?
話の展開が急すぎて脳が追い付いてない。
一体何がどうなってるの?

「い、いきなり突拍子もない現われ方して何言ってるの貴方!?
 しかも貴方も依頼を受けるってどういう事!?」

我に返ったフィルが他人モードも忘れて少女に言葉をぶつける。
そんな様子もどこ吹く風で少女はにっこりと笑い

「だってお姉ちゃん達面白そうだし、ついてったら
 興味深いトラブルが起きそうな予感がビンビンしてるんだよね~」

ごめん、理解が出来ない。
取り合えず状況の説明を求めてマイーダさんに視線を送る。

「あ~、この子の名前はマリス。こんなちっこいナリだけど冒険者よ
 曲芸師みたいなことやってたけど一応魔導士だよ」

冒険者?
そう言われて私は女の子をまじまじと見る。
小さくてまるで小学生みたいだね、それなのにぶかぶかなコートとマントを
着てるからなんか学芸会みたいな印象を受けるけど………
ふと目が合うとその子は歯を見せながらにっこり笑う。
表情も年相応だけど………何かが引っかかってる。
………

「え~っと、貴方は私達と一緒に依頼に行きたいって事でいいのかな?」
「そだよ~、変な事は考えてるけど悪気はないから安心して♪」

一瞬変な言葉に惑わされそうになるも悪意や殺気は微塵も感じない
本当に面白そうだからついて来たいだけみたいなんだけど………
どうしようかとフィルの方をちらっと見ると、何かこの子の事
物凄い目で睨んでない!?

「魔導士が私の前に出てきて何のつもり?」

敵意も隠さずフィルは女の子に言葉を浴びせる。
って、フィルってばまた喧嘩腰で………

「ちょっとちょっとフィル、なんでまた喧嘩腰で………」
「レン、悪いけど少し黙ってて。貴方、【聖教】と【協会】がどんな関係か
 知ってて私に声をかけて来たの?」

フィルの剣呑に思わず引いてしまう。けど、女の子は飄々とした態度のまま

「知ってるよ、仲悪いよね~ホント
 けど、そんなのマリスには関係ないよ。マリスはお姉ちゃん達が
 面白そうだから依頼に乗っかっただけだし」
「な………」

女の子の言葉に絶句するフィル、聖教とか協会とか分からないけど
取り合えずマイーダさんに聞いてみたほうがいいかな。

「マイーダさん、聖教と協会って………」
「あ~そっか、そのしがらみの事を忘れてたわね」

マイーダさんは私の方へ向き、苦笑しながら話を続ける。

「まずはフィルミールの所属してる聖教が【ブランティア聖教】って言うのね
 そこは2人の神様がこのエルシェーダを作った~って事で
 広く信じられてる宗教なの。
 んで、レンも見ただろうけどこの世界には魔法ってのがあって
 聖教はその魔法の事を「神様の力を借りて行う奇跡」って定義してるの」

成程、フィルが魔法使うときに祈るような仕草をするのはそういう事だったのね。

「けどマリス達『魔導士』はそれを学問として定義してそれを学ぶ場所
 【魔導協会】って言うのを立ち上げて日々魔法の研究をしてる訳。
 そのお陰で魔法に色んな系統が生まれて発展して行ったんだけど………」

あ~、そういう事か。

「聖教にとっては神聖なる奇跡を学問におとしめるのは以ての外
 魔導士は学問を発展させて何が悪いと、お互いいがみ合う様になっちゃったと」
「そういう事、冒険者からしたら便利だからどうでもいい事なんだけどね
 それも聖教にとっては面白くないみたいだけど」

マイーダさんが笑いながら首をすくめる。
だからフィルは私が冒険者になるって時にあんなに声を荒げたんだね。

「けどまぁ、マリスの言う通り組織同士のいさかいなんて個人では関係ないだろうし
 私としてはフィルミールをなだめてマリスを連れてった方がいいとは思うけどね
 あの子、レベルは低いけど中々役に立つわよ」

ふむ、マイーダさんがそう言うならついて来て貰うのが得策だけど
このまま私が強引に決めるのはあまり良くないかな。
フィルの事だから私が決めたら従ってはくれそうだけど、それだと連携に
支障が出そうなんだよね。
あの子の力がどんなものかは分からないけど、少なくとも前線で切った張ったする
タイプじゃなさそうだし、となるとフィルと同じ様な立ち位置になりそうだから
ある程度の意思疎通をして貰わないといけないんだけど………
一先ず話をしてみるかな。

「ねぇフィル、貴方はその子が一緒に来るのは反対なのかな?」
「………それを聞くという事はレンは連れて行きたい訳ね」
「この子の実力はどんなものか知らないけど、マイーダさんが勧める以上
 私は一緒に来てもらった方が得策だと思うよ」
「そう………レンが言うなら私は………」
「ストップ。フィル、私の意見だからって無理矢理納得しないで
 言いたいことがあればはっきり言って欲しい、私はそんな事でフィルを
 嫌いになんてならないから」
「………」

フィルは少し思いつめた表情で顔を背ける、恐らく何かと葛藤してるんだろうね。
1分ほど沈黙した後、決意をした表情で私に向き

「正直に言って私はこの子がついてくるのは反対、言動が胡散臭い上に
 聖教の神官と言う立場から信用することは出来ないわ。」

う~ん、やっぱり本音は嫌みたいだね。
となると下手すればトラブルの元になる可能性もあるし
この子には悪いけど………

「けど、私がレンと一緒に冒険者になったのも全てはレンを支える為だから
 私の身勝手な感情が原因でレンに危険が及ぶのは耐えられない
 それだったら、たとえ信用できない輩でも利用させて貰うわ」

成程、そう来たか………
実にフィルらしいセリフで安心する、これなら大丈夫かな?

「本音を話してくれてありがと。そして、私の我儘わがままを許してくれてありがと」
「私が決めた事だもの、レンが礼を言う必要は無いわ」
「うん、それでもありがと」

そうやって2人して笑い合う、そして女の子の方に向きなおすと
………またいない。

「いやはや、旅立つ前から面白い物を見せて貰えるとは思わなかったよ~
 やっぱりお姉ちゃん達について行くって決めて正解だったね」

………と、また天井に張り付いた女の子が言い放つ。
この子………天井好きなの?

「えっと、一先ず自己紹介したいから降りてきてくれると助かるかな」
「ほいほ~い、よっと」

女の子はさっきと同じように空中で回転して私達の前に着地する。
ホント、変な子だねこの子。

「えっと、その様子だと知ってるかもだけど一応名乗っとくね
 私の名前はレン=キミヅカ、昨日冒険者になったばかりの新人だよ」
「フィルミール=ルクヴルールよ」

一々ファーストネームを指定するのも面倒なのでこの国に倣った名乗りをする。
フィルは一瞬驚いた表情をしたけど意図を察してくれたのか
直ぐに元の表情に戻ってくれた。
私達の自己紹介に、女の子はにかっと笑いながら

「マリスの名前は【マリス=ベドゥルナ】って言うんだ
 見てのとーり、どこにでもいる普通の魔導士だけど宜しくね♪」

そう言って、私に向かって手を出してくる。

「うん、宜しくねマリス」

出された手を握ると、楽しそうにぶんぶんと振ってくる。

「はぁ………なんか変なのに懐かれたわね、レン」

フィルが溜息交じりに呟く。
でも、出会っていきなりプロポーズしてきたフィルも人の事言えないと思うよ?
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