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少女達の輪舞曲《ロンド》

いきなりのプロポーズ

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――――――そこは、見知らぬ森の中だった。 



眼前には倒れた男3人と、木を背にして立っている女の子が1人。
男達は完全に気絶している、当分起き上がってきそうもない。
やりすぎたかな………と自己反省するものの手加減してる余裕なんてなかった。
状況もわからず、いきなり襲い掛かって来たので思わず迎撃したらこの有様だ。

そんな姿を女の子はボーっと見つめている。 
怖がらせちゃったかな………と思い少し微笑んでみる。

よく見ると不思議な格好をしている、何か漫画に出てくるような格好だね。
髪も真っ白、と言ってもお年寄りのような白髪ではなく透き通るような白色。
年は同じぐらいかちょっと上っぽい、背もちょっと高めかな。
結構な美人だ、けど、顔の作りは日本人っぽくないような………

そんな風に考えながら見つめていると、女の子の表情が驚愕から笑顔に変わる。
ほっ、どうやら安心してくれたようだ。
色々聞きたい事もある、そう思って声をかけようとした瞬間―――― 


      ぼすっ!!
 

いきなり女の子が抱き着いてくる。

結構腰の入ったタックルだった、予想外の事によろめきながらも踏ん張り
転倒は免れる。
どうやら男達に襲われてたっぽいし、恐怖から解放されて
思わず抱き着いちゃったのかな?
それならばと安心させるため頭でも撫でてあげようかなと手を出した瞬間
女の子は顔を上げ――――――






「私と………結婚してください!!」 





瞳を潤ませ、頬を済めながら満面の笑みでそう言い放った。 





―――――えーっと、何?

いきなりの展開に思考が停止する。
結婚してください?この子そう言ったの今?

色々な思考が駆け巡り混乱する。
何これ?まさかテレビとかでたまにやってるドッキリとか? 
もしくはまだ寝てて今は夢の中とか? 

思わず頬をつねってみるが痛みはある、と言うか抱き着いてる女の子の体温が
伝わってくる。
うん、夢じゃないねこれ、ますます状況がわからない。
と言うか女の子の言葉でさらに困惑する、そもそも――――




…………私、一応「」なんですけど。
ひとまず落ち着く為、私は数十分前の事を思い出す。






私、公塚 蓮きみづか れんは今年16歳になったばかりの高校生だ。

家族は無し、幼い頃に事故で家族を失い、それまで疎遠となっていた
お爺ちゃんが私を引き取り、ここまで育ててくれた。

お爺ちゃんは私を学校に通わせながらも「それ以外の育て方を知らない」
と年頃の娘に結構な鍛錬を課してきた。
最初は当然泣き叫び、逃げ出そうとしてもひっ捕まえられて鍛錬させようとする
お爺ちゃんの事が大嫌いだった。
けど、出来なかったことが出来るようになった時、お爺ちゃんは
必ず褒めてくれたし、嬉しそうに頭を撫でてくれた。
方法はどうあれ、間違いなく私を可愛がってくれてたと思う。
それに気づいてからは自ら進んで鍛錬するようになったし、お爺ちゃんも
心なしか嬉しそうに私を鍛えてくれた。
そのお陰で、今では少々の事では1人で切り抜けられる自信がついた。
ちなみに私の親は早々に反発して疎遠になったらしい、そりゃそうだよね。

数年後、私が1人で生きられると悟ったのか「教えられることは教えた」と言い
その晩、お爺ちゃんは静かに息を引き取った。 
無茶苦茶だったけど唯一の家族で、大好きだった。



「さて、今日も学校に行かないとね」 


葬式も済み、悲しみも薄れてきた頃、私は日常に戻る。
家族がいなくなったのは悲しいけど、私はその分も生きなきゃいけない。
両親とお爺ちゃんの遺産、そして後見人となったお爺ちゃんの知り合いの
弁護士さんのおかげで、私は施設に行くこともなく
普通の高校生活が送れている。

「え~っと、今日は確か国語のテストが………」
パジャマから制服に着替え、学校へ行く支度をする。
そのまま何事もなくいつも通りの日常が始まる筈だったけど………



「――――――して」

 
「ん?」
何処からともなく声が聞こえる。
テレビでも消し忘れたかな?と思いリビングに入った瞬間………


「―――わた―――して」 


「誰!?」 
反射的に振り向くも誰もいない、気配も感じない、ついでにテレビもついてない。
「幻聴?それにしてはやけにはっきりと聞こえたような………」
そう思った瞬間、景色がぐにゅりと歪み、私に突如強烈な眠気が襲い掛かかる。
「えっ、なっ………」

全く予想外の状況に、私は抵抗する間もなく私は深い眠りに落ちる――――。





―――――意識を失う瞬間、1人の女の子の姿を見たような気がした。






「~~~~~っ、何だったの、今の?」
私は意識を取り戻し、起き上がろうとする。
手のひらに土の感触、そして草の匂い。

「!? 何!?」

私は家のリビングにいた筈だ、眠気で倒れてたとは言えそんなとこに
土や草なんてある筈がない。
明らかな異常事態に私は意識を覚醒させ、即座に立ち上がる。


「………何、これ」



何故か、私は見知らぬ森の中にいた。

「一体何が起きたの………」

私は周囲を見渡す、どう見ても家の中じゃない。
空気の感じも町ではあり得ない、とても澄んだ香りだ。
思わずお爺ちゃんにやらされてた山での鍛錬を思い出す。

「もしかしてまたお爺ちゃん、私が寝てる隙に連れてきたの?」

自分でもあり得ない事を口にしてる、だってお爺ちゃんはもうこの世にいない。
棺に入ってるとこも骨になったとこもこの目で見てる。
触っただけで怒られたお爺ちゃんの宝も今際いまわきわ
「形見」として譲ってくれたのも覚えてる。
あれが嘘だって絶対にあり得えない。

「まずは状況確認、か………」

私はしゃがみ込み、地面に生えてる草を眺める。
見覚えがある草が生えてれば、ここがどこかのおおよその
見当はつくんだけど………

「何、これ………」

そこに生えていたのは見た事もない形状の葉を生やし
見た事もないつぼみを付けた草だった。
思わず周囲の木々や草を片っ端から確認する………が、どれもこれも
現物どころか図鑑でも見た事のない物ばかりだ。

「嘘………」

これは不味い、ここが何処か皆目見当もつかない。
となるとここで下手に動くのは自殺行為だ、迷った挙句
体力が尽きるのが関の山だ。
私の格好も袖の無くスカートも短めな夏の制服だ
森の中を歩くのに適していない。
挙句の果てに食料も殆ど持っていない、周囲の野草も食べられるか
判断できない物ばかり、遭難のケースとしては最悪の部類だ。

「不味いね、状況も分からない上に打開策も見えないとはね
 こうなると一か八かに賭けるしかないんだけど」

進むも闇、留まるも闇なら………選択肢は一つか。

「進むしかないね、獣道でもあればいいんだけど」

私はそう決意して足を踏み出した瞬間。

 ガササッ!!

何かが草をかき分ける音が横切る、それも複数だ。

「獣!?」

思わず音のした方へ向かう、そこには明らかに何かが通った後があった。
さて………どうする?

「行くしかないね、これは」

どの道行く当てなど無いんだ、ならこのが通った後に賭けるしかない。

「さて、鬼が出るか蛇が出るか………」

私は何者かが通った草道をなぞって行く。
これで何もなかったら本気で覚悟しないといけないかもね。





踏み荒らされた草道を暫く進むと開けた場所に出た。
そしてそこに………

「何、これ………」




黒づくめの3人の男と、漫画にいるような格好の少女がいた。
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