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23.私の主人はワガママな神様(7)
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「大丈夫ですから、落ち着いて!」
「大丈夫じゃないですよ!? どうすんですか、追い出されちゃいますよー!」
「大丈夫です! ちゃんと、話をしましたから!」
「えっ…………本当に? もしかして、和解できました?」
「まあ、そんな感じです……」
和解、と聞いてホッとしたのか山田はどかりと椅子に深く座った。
「なーんだ……良かったあ~。開演前に出てけなんて言われたらどうしようかと思った……」
「すみません、心配をさせてしまって……でも、もう大丈夫です」
晴太郎とのことで、山田には色々と迷惑をかけていることはわかっているつもりだ。会うために晴太郎のスケジュールを教えて貰ったり、他の家族に見つからないような場所を手配してもらったり、など。
山田は何も言わないが、きっと晴太郎と七海の間を持つことは楽なことではない。それでもふたりのわがままを聞いて、今までなんとかしてきてくれた。迷惑も心配もかけてしまった。だからこそ幸太郎と和解した今、彼には安心してもらいたい。
「じゃあ俺は、これから堂々と坊ちゃんと七海さんの仲を応援できるってことですね」
七海の大丈夫の一言から、何かを察したらしい。山田は七海の方を見て、とても安心したように穏やかに笑った。
「……ありがとう、山田くん」
「いいえ、俺はなーんもしてませんよ。あ、ほら……もう始まるみたいです」
ぱっ、と客席の照明が消えたと同時に、がやがやと人の声が飛び交っていた会場がしんと静まり返る。
いよいよ開演の時間だ。七海はごくりと喉を鳴らした。自分の出番なんて無いのに、どうしてかひどく緊張してしまう。
暗い会場の中、唯一ライトで照らされているステージの舞台袖から、黒のタキシードに身を包んだ晴太郎が現れた。ステージの中央で一礼すると、パチパチと大きな拍手が巻き起こった。
ステージの上に堂々と立つ晴太郎の姿は、とても美しいと思った。緊張に押しつぶされそうになりながら、震える手を握りしめてなんとか立っていた、あの頃とは違う。堂々として自信に満ち溢れている。誰にも頼らずとも、自身の力で立っていられる。
頼られなくなったのは少し寂しいが、今のこの晴太郎の姿を、七海は誇りに思う。こんな美しくて素晴らしい人が、自分のパートナーだなんて勿体ない。
客席に向かって礼をしていた晴太郎が顔を上げたとき、ちょうど目が合った。たぶん、気のせいでは無い。遠くからでも分かる。彼は、七海に向かって挑発的な笑みを向けた。
——最高の音を、聴かせてやる。
そんな風に言われている気がした。
ピタリ、と拍手の音が止む。
そして晴太郎の演奏が始まった。
「大丈夫じゃないですよ!? どうすんですか、追い出されちゃいますよー!」
「大丈夫です! ちゃんと、話をしましたから!」
「えっ…………本当に? もしかして、和解できました?」
「まあ、そんな感じです……」
和解、と聞いてホッとしたのか山田はどかりと椅子に深く座った。
「なーんだ……良かったあ~。開演前に出てけなんて言われたらどうしようかと思った……」
「すみません、心配をさせてしまって……でも、もう大丈夫です」
晴太郎とのことで、山田には色々と迷惑をかけていることはわかっているつもりだ。会うために晴太郎のスケジュールを教えて貰ったり、他の家族に見つからないような場所を手配してもらったり、など。
山田は何も言わないが、きっと晴太郎と七海の間を持つことは楽なことではない。それでもふたりのわがままを聞いて、今までなんとかしてきてくれた。迷惑も心配もかけてしまった。だからこそ幸太郎と和解した今、彼には安心してもらいたい。
「じゃあ俺は、これから堂々と坊ちゃんと七海さんの仲を応援できるってことですね」
七海の大丈夫の一言から、何かを察したらしい。山田は七海の方を見て、とても安心したように穏やかに笑った。
「……ありがとう、山田くん」
「いいえ、俺はなーんもしてませんよ。あ、ほら……もう始まるみたいです」
ぱっ、と客席の照明が消えたと同時に、がやがやと人の声が飛び交っていた会場がしんと静まり返る。
いよいよ開演の時間だ。七海はごくりと喉を鳴らした。自分の出番なんて無いのに、どうしてかひどく緊張してしまう。
暗い会場の中、唯一ライトで照らされているステージの舞台袖から、黒のタキシードに身を包んだ晴太郎が現れた。ステージの中央で一礼すると、パチパチと大きな拍手が巻き起こった。
ステージの上に堂々と立つ晴太郎の姿は、とても美しいと思った。緊張に押しつぶされそうになりながら、震える手を握りしめてなんとか立っていた、あの頃とは違う。堂々として自信に満ち溢れている。誰にも頼らずとも、自身の力で立っていられる。
頼られなくなったのは少し寂しいが、今のこの晴太郎の姿を、七海は誇りに思う。こんな美しくて素晴らしい人が、自分のパートナーだなんて勿体ない。
客席に向かって礼をしていた晴太郎が顔を上げたとき、ちょうど目が合った。たぶん、気のせいでは無い。遠くからでも分かる。彼は、七海に向かって挑発的な笑みを向けた。
——最高の音を、聴かせてやる。
そんな風に言われている気がした。
ピタリ、と拍手の音が止む。
そして晴太郎の演奏が始まった。
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