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17.彼の場所へ(6)
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昼食をとりながら神崎と話してきたら調子が戻ってきた。
午後は2コマ講義に出て、その後はまたふたりで練習室に篭った。いつも通り、というほど上手く弾けなかったが、午前よりはだいぶマシな演奏が出来るようになった。今日は程々にしておこう、と神崎が提案してくれたので、夕方過ぎには解散して帰ることになった。
神崎と大学の最寄りの駅まで一緒に行って、そこからは反対方向なので別の電車に乗る。
「神崎、明日学校来る?」
「……うん、1限からいる」
「そっか。俺も1限講義だから、午後とか時間合ったら練習しよう!」
「……連絡する」
「了解、じゃあな!」
神崎と練習の約束をして、駅で別れた。結局、今日は予定通りの練習が出来なかった。だから、明日取り返そう。明日は今日のようなひどい演奏にならないはずだ。
電車に乗って30分ほど経つと、家の最寄駅に着く。大学を出るときに連絡を入れたので、家の人が誰か迎えにきてくれているはずだ。ロータリーに行ってあたりを見回すと、中条家が所有する黒塗りの高級車を見つけた。
「お疲れ様です、晴太郎坊ちゃん」
今日迎えにきてくれたのは、上の姉の従者兼旦那の黒木だ。
黒木は運転席から降りて、後部座席のドアを開けてくれた。
「どうぞ」
「うん、ありがとう」
晴太郎が後部座席に乗り込むと、パタン、と静かに黒木が扉を閉めた。
以前はこのような送迎はすべて七海が行っていた。彼がいなくなってから、晴太郎は専属の従者を迎えていない。なので、兄弟たちの従者で時間のある人が迎えにきてくれることになっている。
晴太郎が座る隣の席に、それなりの大きさの段ボールが置いてあった。黒木は普段は車に物を乗せないのに珍しい。何か荷物を出しに行く途中だったのだろうか。
隣で存在感を出すそれが何となく気になり、段ボールに貼り付けてある送り状に目を通した。
お届け先にある住所は、宮城県仙台市。懐かしいな、何年か前に家族旅行で行った場所だ。
そして送り先主の欄には——"七海壮介"の4文字。
「……っ?!」
晴太郎は己の目を疑う。ゴシゴシと乱暴に擦ってから、もう一度送り状に目を通した。
そこには間違いなく、"七海壮介"と記載されてある。
これは、晴太郎の探し人である七海へ送る荷物なのだ。もちろん、住所の欄にはアパート名と部屋番号までしっかりと書かれている。
午後は2コマ講義に出て、その後はまたふたりで練習室に篭った。いつも通り、というほど上手く弾けなかったが、午前よりはだいぶマシな演奏が出来るようになった。今日は程々にしておこう、と神崎が提案してくれたので、夕方過ぎには解散して帰ることになった。
神崎と大学の最寄りの駅まで一緒に行って、そこからは反対方向なので別の電車に乗る。
「神崎、明日学校来る?」
「……うん、1限からいる」
「そっか。俺も1限講義だから、午後とか時間合ったら練習しよう!」
「……連絡する」
「了解、じゃあな!」
神崎と練習の約束をして、駅で別れた。結局、今日は予定通りの練習が出来なかった。だから、明日取り返そう。明日は今日のようなひどい演奏にならないはずだ。
電車に乗って30分ほど経つと、家の最寄駅に着く。大学を出るときに連絡を入れたので、家の人が誰か迎えにきてくれているはずだ。ロータリーに行ってあたりを見回すと、中条家が所有する黒塗りの高級車を見つけた。
「お疲れ様です、晴太郎坊ちゃん」
今日迎えにきてくれたのは、上の姉の従者兼旦那の黒木だ。
黒木は運転席から降りて、後部座席のドアを開けてくれた。
「どうぞ」
「うん、ありがとう」
晴太郎が後部座席に乗り込むと、パタン、と静かに黒木が扉を閉めた。
以前はこのような送迎はすべて七海が行っていた。彼がいなくなってから、晴太郎は専属の従者を迎えていない。なので、兄弟たちの従者で時間のある人が迎えにきてくれることになっている。
晴太郎が座る隣の席に、それなりの大きさの段ボールが置いてあった。黒木は普段は車に物を乗せないのに珍しい。何か荷物を出しに行く途中だったのだろうか。
隣で存在感を出すそれが何となく気になり、段ボールに貼り付けてある送り状に目を通した。
お届け先にある住所は、宮城県仙台市。懐かしいな、何年か前に家族旅行で行った場所だ。
そして送り先主の欄には——"七海壮介"の4文字。
「……っ?!」
晴太郎は己の目を疑う。ゴシゴシと乱暴に擦ってから、もう一度送り状に目を通した。
そこには間違いなく、"七海壮介"と記載されてある。
これは、晴太郎の探し人である七海へ送る荷物なのだ。もちろん、住所の欄にはアパート名と部屋番号までしっかりと書かれている。
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