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15.幸せのため(3)
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七海は息を飲む。
——どうして、彼の口からそんなことが? この話は昨夜晴太郎と二人きりの時に話したはずだ。
幸太郎の貫くような視線は、すべて知っているぞと七海を追い詰める。まるで蛇に睨まれた蛙のように、七海は固まったまま動けなかった。
「何も言わないということは、そういう事なんだな」
「……いいえ、坊ちゃんとの間にそのような関係はありません」
「これを見てもそんなことが言えるのか?」
幸太郎は席を立ち、七海の目の前に来るとバン、と1枚の写真を机に叩き付ける。
「……っ、これ、は」
それを見て、七海は目を見開いた。
監視カメラの映像を切り取ったものなのか、とても画質が悪い。画質が悪くても、これがいつ撮られたもので何が写っているのか、七海は瞬時に理解した。
「……まさか、言い逃れはしないよな?」
写真に写っていたのは、晴太郎と七海。
昨日のパーティー会場のホテル。人気のない廊下で顔を近付けて、キスをした瞬間。
「……晴太郎様との間に、そういった関係はありません」
これは事実だ。晴太郎は七海の恋人ではない。まだ主人と従者という関係のままだ。
「仮にそれが本当だとしても……晴太郎の気持ちに、気付いていないわけではないだろう?」
「……っ」
「無言は肯定だと受け取るぞ。晴太郎は分かりやすいからな。それで、おまえはあいつの気持ちに応えたのか?」
「いいえ、まだ……」
「まだ、という事は受け入れる気持ちがあるということか」
幸太郎の刺さるような冷たい視線が、何を言っても無駄だと七海に語りかける。きっと彼は晴太郎と七海の間に、そういった感情があるという事実が気に入らないのだ。この場を凌ぐような嘘を言っても、きっと幸太郎には見透かされる。本当の事を言ったら、さらに追い詰められる。どうする事も出来ない。
「晴太郎はまだ未成年で子供だ……子供ゆえに、視野が狭い。憧れと恋愛感情が混ざってしまっているのだろうな。しかし、七海。おまえは大人だ……この意味、わかるな?」
「……はい」
「主従の関係に恋愛感情など不要だ。七海、おまえは晴太郎から離れてもらう」
ピリ、と空気が凍った。
一瞬、何を言われたかわからなかった。
——晴太郎から、離れる? それは一体、どういうことだ?
「兄さん、待って!」
凛と澄んだ高い声が、会議室内に響いた。普段は穏やかに話す紗香の、こんなに大きな声は今まで聞いたことがない。
彼女の必死の形相を見て、七海はこの時やっと幸太郎の言葉の意味を理解した。
——どうして、彼の口からそんなことが? この話は昨夜晴太郎と二人きりの時に話したはずだ。
幸太郎の貫くような視線は、すべて知っているぞと七海を追い詰める。まるで蛇に睨まれた蛙のように、七海は固まったまま動けなかった。
「何も言わないということは、そういう事なんだな」
「……いいえ、坊ちゃんとの間にそのような関係はありません」
「これを見てもそんなことが言えるのか?」
幸太郎は席を立ち、七海の目の前に来るとバン、と1枚の写真を机に叩き付ける。
「……っ、これ、は」
それを見て、七海は目を見開いた。
監視カメラの映像を切り取ったものなのか、とても画質が悪い。画質が悪くても、これがいつ撮られたもので何が写っているのか、七海は瞬時に理解した。
「……まさか、言い逃れはしないよな?」
写真に写っていたのは、晴太郎と七海。
昨日のパーティー会場のホテル。人気のない廊下で顔を近付けて、キスをした瞬間。
「……晴太郎様との間に、そういった関係はありません」
これは事実だ。晴太郎は七海の恋人ではない。まだ主人と従者という関係のままだ。
「仮にそれが本当だとしても……晴太郎の気持ちに、気付いていないわけではないだろう?」
「……っ」
「無言は肯定だと受け取るぞ。晴太郎は分かりやすいからな。それで、おまえはあいつの気持ちに応えたのか?」
「いいえ、まだ……」
「まだ、という事は受け入れる気持ちがあるということか」
幸太郎の刺さるような冷たい視線が、何を言っても無駄だと七海に語りかける。きっと彼は晴太郎と七海の間に、そういった感情があるという事実が気に入らないのだ。この場を凌ぐような嘘を言っても、きっと幸太郎には見透かされる。本当の事を言ったら、さらに追い詰められる。どうする事も出来ない。
「晴太郎はまだ未成年で子供だ……子供ゆえに、視野が狭い。憧れと恋愛感情が混ざってしまっているのだろうな。しかし、七海。おまえは大人だ……この意味、わかるな?」
「……はい」
「主従の関係に恋愛感情など不要だ。七海、おまえは晴太郎から離れてもらう」
ピリ、と空気が凍った。
一瞬、何を言われたかわからなかった。
——晴太郎から、離れる? それは一体、どういうことだ?
「兄さん、待って!」
凛と澄んだ高い声が、会議室内に響いた。普段は穏やかに話す紗香の、こんなに大きな声は今まで聞いたことがない。
彼女の必死の形相を見て、七海はこの時やっと幸太郎の言葉の意味を理解した。
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