私の主人はワガママな神様

どろろ

文字の大きさ
上 下
74 / 146

14.本心(5)

しおりを挟む


 ハードなスケジュールの中、時間通りに動くのは難しい。晴太郎と七海は開始時間に少し遅れて会場に到着する。もう既に社長のあいさつが終わっていて食事の時間が始まっていたが、誰も遅刻を咎める者はいない。

「おーい! 晴太郎、七海!」

 会場に入るなり、少し離れた位置から洋太郎と香菜子が駆け寄って来た。香菜子の姿を見つけた晴太郎は、七海の腕をぎゅっと握る。

「大丈夫、取らないって! どんだけ気にしてんのよ!」
「だってかな姉さん、ずっと七海のこと口説いてるじゃん」
「そりゃあ七海はカッコいいから好きだけどー……」
「ほら、やっぱり! 駄目だからな!」

 1年経ってもなかなか晴太郎の警戒は解けない。掴んでいただけだった腕に、晴太郎がぎゅっと抱き付いた。

「香菜子も晴太郎も、相変わらずだなあ……七海が困ってるよ」

 晴太郎と会う度に喧嘩に発展しそうな香菜子に対し、本当に双子なのかと疑いたくなるくらい、洋太郎は落ち着いている。

「七海も毎回ごめんな、香菜子が迷惑かけて」
「いいえ、とんでもございません。迷惑だなんて思っていませんよ」
「そんなこと言ってると、また香菜子が調子乗って晴太郎を泣かしてしまうぞ」
「そんなことしないよ! 洋太郎ってば適当なこと言わないで!」

 洋太郎の冷静さが、天真爛漫な香菜子をコントロールできる秘訣だろうか。

「そういえば、お二人とも何か用があったのでは?」
「用ってほどじゃないけど……晴太郎たちが遅れてくるって聞いてたから、あっちのテーブルに適当に料理取っておいたんだ」

 バイキングは早い者勝ちだ。遅れて到着してしまったので、もう残っていないかもしれないと覚悟はしていたが、彼のおかげでそれは免れたようだ。

「さすが洋兄さん! ありがとう!」
「晴太郎腹減ってるかなって思ってさ。早く取らないと、料理無くなっちゃうし」
「洋太郎だけじゃなくて、私も取っておいたんだからね!」

 七海もこっちに来て、と香菜子が晴太郎に掴まれている逆の腕を引っ張る。晴太郎は少しむっとした顔をしたが、食事に免じて七海に触れる事を許したようだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺

高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

処理中です...