私の主人はワガママな神様

どろろ

文字の大きさ
上 下
71 / 146

14.本心(2)

しおりを挟む
 晴太郎の生活が変化すると、一緒に七海の生活も変化する。今までは会社を定時であがり、晴太郎を駅や学校まで迎えに行っていたが、迎えに行く時間が遅くなった。定時で上がるのは変わらないが、一旦家に帰り夕食の準備をし、それから塾へ晴太郎を迎えにいく。その後ピアノのレッスンがある日はまたピアノ教室へ送り届ける。
 学校が休みの日も、朝から夕方まで勉強やレッスンで忙しい。受験生に休む暇など無いのだ。もちろん、それに付き合う七海にも、気が休まる時間がない。晴太郎が無理をしていないか、身体を壊さないか、常にハラハラしながら見守っている。

「晴太郎、変わったよ。前はあんなに甘えただったのに」
「ええ、とても立派になりました」

 以前は何をするにも七海、七海とすぐに自分のことを呼んで頼っていたのに、今は大体の事は彼自身でやるようになった。良い事であるはずなのに、頼られなくなってしまったのが少し寂しい。
 それに、受験は自分自身との戦いだ。七海が彼にしてあげられる事といえば、食事の準備と送迎くらいしかない。力になれないことが、こんなにもどかしいことだったとは知らなかった。

「そういえば、晴太郎はクリスマスパーティー行くの?」
「行く予定ですよ。いつも通り、終わったらホテルに宿泊せずに帰りますが」

 社内で仙台支店のほか、来週末に迫ったクリスマスパーティーも話題になっている。パーティーが終わるとすぐに納会、そして年末年始休みがやってくる。イベント行事の連続に、みんな浮き足立っているのだ。

「風太郎様は、今年はちゃんと参加なさるのですか?」
「うっ、うーん……顔だけ、出そうかな……」

 誤魔化すように視線を逸らす風太郎。きっと参加するつもりは無いのだろう。彼は別に家に歯向かっているわけではなく、重度な人混み嫌いなのだ。それを知っているからこそ、彼の父や兄も無理やり参加させる様な事はしない。

「そうですか。残念ですね……せっかく一緒に楽しめると思っていたのに」
「……お酒、気をつけてね。僕、助けられないから」
「うっ……運転があるので、大丈夫です。飲みません」

 残念に思っているのは本当だ。七海だって、上司に囲まれている中に、気の許せる間柄の人が1人でもいた方が良い。

「あ、もうこんな時間。僕、そろそろ戻るね」
「もうそんな時間ですか。私も戻ります」

 立ち話をしているうちに、ずいぶん時間が経過していたらしい。そろそろ戻らないと怒られてしまう。ふたりはビルの中へ戻った。

 クリスマスの話をして、もうそんな時期かと実感した。年が明けたら、すぐに一次試験の日が来る。そしてそれが終わって次の月は二次試験。さらに次の月は卒業式、そして合格発表。それまで気を抜く事は出来ない。最後まで、しっかり晴太郎のサポートしなければ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!

かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。 その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。 両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。 自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。 自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。 相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと… のんびり新連載。 気まぐれ更新です。 BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意! 人外CPにはなりません ストックなくなるまでは07:10に公開 3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

偏食の吸血鬼は人狼の血を好む

琥狗ハヤテ
BL
人類が未曽有の大災害により絶滅に瀕したとき救済の手を差し伸べたのは、不老不死として人間の文明の影で生きていた吸血鬼の一族だった。その現筆頭である吸血鬼の真祖・レオニス。彼は生き残った人類と協力し、長い時間をかけて文明の再建を果たした。 そして新たな世界を築き上げた頃、レオニスにはひとつ大きな悩みが生まれていた。 【吸血鬼であるのに、人の血にアレルギー反応を引き起こすということ】 そんな彼の前に、とても「美味しそうな」男が現れて―――…?! 【孤独でニヒルな(絶滅一歩手前)の人狼×紳士でちょっと天然(?)な吸血鬼】 ◆閲覧ありがとうございます。小説投稿は初めてですがのんびりと完結まで書いてゆけたらと思います。「pixiv」にも同時連載中。 ◆ダブル主人公・人狼と吸血鬼の一人称視点で交互に物語が進んでゆきます。 ◆現在・毎日17時頃更新。 ◆年齢制限の話数には(R)がつきます。ご注意ください。 ◆未来、部分的に挿絵や漫画で描けたらなと考えています☺

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!

toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」 「すいません……」 ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪ 一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。 作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)

処理中です...