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10.家族の集まり(7)
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風太郎と水森、そして七海の3人で会社の事について話している途中、隣で晴太郎がうとうとし始めた事に気付いた。
「坊ちゃん、眠いですか?」
「うーん……難しい話してたから、わかんなくて眠くなってきた……」
大きな口を開けて大きな欠伸をする晴太郎。まだ高校生の彼にとって会社の話は退屈すぎたようだ。
「ごめんごめん、晴太郎。せっかくの旅行だし、仕事の話はやめるよ」
「風兄さん、せっかく久々に会ったんだし、他の話聞かせてよ! 最近お見合いしたって聞いたけど、どうだった?」
「えっ、何で知ってるの?! 水森も笑わないでよ……」
見合い、というワードに風太郎は驚き、隣に座っていた水森は吹き出した。水森のこの反応、きっと失敗に終わってしまったのだろう。長男長女が結婚して、次男である風太郎に期待が集まるのは仕方がないが、人見知りな風太郎には荷が重すぎるようだ。
七海は、晴太郎と風太郎が一緒にいるのをあまり見た事がない。そもそも風太郎が家族の集まりに顔を出さないせいで、風太郎という人物をあまり良く知らない。本社で一緒に働く仲ではあるが、システム開発部と総務部ではフロアが違うため、ほとんど顔を合わせる事はない。
初めは家族があまり好きではないのかと思ったが、そうでもないようだ。晴太郎と仲良く話す姿は微笑ましい。そもそも、家族が嫌いだったら親の経営する会社で仕事なんてするわけないのだ。
「晴太郎は仙台は初めて?」
「うん、初めてだ。新幹線降りたら、どうやって移動するんだろ? 電車?」
仙台駅への到着時刻が迫り、話題は今回の旅行について。
「うーん、父さん足悪いし、さすがに電車じゃないと思うけど……水森、何か聞いてる?」
「確か、マイクロバスを手配してるって言ってましたよ」
晴太郎は少し残念そうにしていたが、足の悪い社長が居るので電車での移動は厳しい。
「マイクロバスでしたら、運転は私が……」
七海は運転が好きなので、運転手を務めることは何の問題もない。こういう時、中型車両の免許を取っておいて良かったと思う。
運転は自分で決まりだと確信していたが、水森に待ったをかけられる。
「いえ、それは大丈夫みたいです。今回は運転手も手配しているそうです」
「……えっ、運転手?」
「はい。今回は運転係は不要ですので、七海さんも飲めますよ」
「そ、そうか……」
——困った、非常に困ったぞ。
七海は水森の言葉にかなり動揺した。別にどうしても運転がしたいとか、そういう訳ではない。運転は七海にとってひとつの逃げ道なのだ。逃げ道を確保するために、家族の集まりでは進んで運転手をしていたし、パーティーなども全て自分の運転で晴太郎を連れていっていたのだ。
それが、今回は通用しない。
「そういえば、兄さんが昼もお酒の美味しいところに行くって言ってたような……」
「えー、酒じゃ俺だけ楽しめないじゃないか」
「料理も美味しいらしいから、晴太郎も楽しめるよ」
中条家は酒豪の集まりだ。晴太郎は分からないが、他の兄弟たちは滅法酒に強い。だから今日のような集まりで食事に行くとき、必ずと言って良いほどみんな酒を飲む。
「良かったな、七海も今日は酒が…………七海?」
黙り込んでしまった七海を見て、晴太郎が首を傾げた。普通の大人であれば喜ぶべきことなのに、七海は一切喜んでいない。
七海には晴太郎にも、ここにいる誰にも言っていない秘密がある。それは——……
「どうかしたのか?」
「いえ……なんでもありません」
酒だ。
とんでもなく、酒に弱いのだ。
「坊ちゃん、眠いですか?」
「うーん……難しい話してたから、わかんなくて眠くなってきた……」
大きな口を開けて大きな欠伸をする晴太郎。まだ高校生の彼にとって会社の話は退屈すぎたようだ。
「ごめんごめん、晴太郎。せっかくの旅行だし、仕事の話はやめるよ」
「風兄さん、せっかく久々に会ったんだし、他の話聞かせてよ! 最近お見合いしたって聞いたけど、どうだった?」
「えっ、何で知ってるの?! 水森も笑わないでよ……」
見合い、というワードに風太郎は驚き、隣に座っていた水森は吹き出した。水森のこの反応、きっと失敗に終わってしまったのだろう。長男長女が結婚して、次男である風太郎に期待が集まるのは仕方がないが、人見知りな風太郎には荷が重すぎるようだ。
七海は、晴太郎と風太郎が一緒にいるのをあまり見た事がない。そもそも風太郎が家族の集まりに顔を出さないせいで、風太郎という人物をあまり良く知らない。本社で一緒に働く仲ではあるが、システム開発部と総務部ではフロアが違うため、ほとんど顔を合わせる事はない。
初めは家族があまり好きではないのかと思ったが、そうでもないようだ。晴太郎と仲良く話す姿は微笑ましい。そもそも、家族が嫌いだったら親の経営する会社で仕事なんてするわけないのだ。
「晴太郎は仙台は初めて?」
「うん、初めてだ。新幹線降りたら、どうやって移動するんだろ? 電車?」
仙台駅への到着時刻が迫り、話題は今回の旅行について。
「うーん、父さん足悪いし、さすがに電車じゃないと思うけど……水森、何か聞いてる?」
「確か、マイクロバスを手配してるって言ってましたよ」
晴太郎は少し残念そうにしていたが、足の悪い社長が居るので電車での移動は厳しい。
「マイクロバスでしたら、運転は私が……」
七海は運転が好きなので、運転手を務めることは何の問題もない。こういう時、中型車両の免許を取っておいて良かったと思う。
運転は自分で決まりだと確信していたが、水森に待ったをかけられる。
「いえ、それは大丈夫みたいです。今回は運転手も手配しているそうです」
「……えっ、運転手?」
「はい。今回は運転係は不要ですので、七海さんも飲めますよ」
「そ、そうか……」
——困った、非常に困ったぞ。
七海は水森の言葉にかなり動揺した。別にどうしても運転がしたいとか、そういう訳ではない。運転は七海にとってひとつの逃げ道なのだ。逃げ道を確保するために、家族の集まりでは進んで運転手をしていたし、パーティーなども全て自分の運転で晴太郎を連れていっていたのだ。
それが、今回は通用しない。
「そういえば、兄さんが昼もお酒の美味しいところに行くって言ってたような……」
「えー、酒じゃ俺だけ楽しめないじゃないか」
「料理も美味しいらしいから、晴太郎も楽しめるよ」
中条家は酒豪の集まりだ。晴太郎は分からないが、他の兄弟たちは滅法酒に強い。だから今日のような集まりで食事に行くとき、必ずと言って良いほどみんな酒を飲む。
「良かったな、七海も今日は酒が…………七海?」
黙り込んでしまった七海を見て、晴太郎が首を傾げた。普通の大人であれば喜ぶべきことなのに、七海は一切喜んでいない。
七海には晴太郎にも、ここにいる誰にも言っていない秘密がある。それは——……
「どうかしたのか?」
「いえ……なんでもありません」
酒だ。
とんでもなく、酒に弱いのだ。
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