私の主人はワガママな神様

どろろ

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9.甘いもの(4)

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 洗濯と掃除を終えて、夕食の買い物ついでにケーキの材料を買う。そういえば晴太郎が何時に帰って来るのか聞きそびれていた。夕食は済ませて来るのだろうか。いつ帰ってきても問題ないようにすぐに温め直せるものを作る事にする。今夜はシチューにしようか、カレーにしようか。それともハヤシライスか。
 こういう事で迷った時、いつも買い物について来る晴太郎に決めてもらっていた。しかし、残念ながら今日は隣に彼がいない。


——カレー、ハヤシライス……うーん、七海が作ったの何でも美味いからなあ。
——ありがとうございます。嬉しいお言葉ですが……今日はどうしましょう。
——うーん……あ、あれだ、シチューは?
——そういえば、最近作ってなかった気がしますね。
——じゃあシチューがいいな! にんじん少なめで。
——好き嫌いは駄目ですよ。
——えー……いじわる!


 なんとなくそんな会話を思い出したので、シチューの材料を買い物かごに入れる。ひとりでする買い物は何だか味気無くて、すぐに終わってしまった。

 家に帰ってさっそくケーキ作りに取り掛かる。ひたすらチョコレートを刻んで湯煎した。ボウルに卵白と砂糖を入れてひたすら混ぜて、また別のボウルに卵黄と砂糖を入れてひたすら混ぜる。そしてその中に準備していたチョコレートとココアパウダーを入れてまた混ぜる。ケーキとは意外と単調な作業で出来るものなのかと、レシピを見た時は少し驚いた。あとは今まで準備してきた2つのボウルに入った物を一緒に入れて、今度は丁寧に混ぜる。それを型へ入れて、オーブンへ。30分ほど焼いて完成だ。
 焼いている間は暇だ。手持ち無沙汰だったので調理器具の片付けをする。しかしそれもすぐに終わってしまい、また暇になってしまう。オープンから甘くて良い香りが漂って来るが、まだ完成ではない。オーブンの前で待つ意味もないので、いったん自室へ戻ってベランダへ。今日何本目か分からない煙草に火を付けた。
 作業している間は何も考えずに没頭できて良かった。しかし暇になってしまうと、彼のことが頭をよぎる。やっぱり迎えに来い、なんて着信が無いかスマートフォンを気にしてしまう。
 連絡なんて来るわけがないのだが、一応確認だけ、とスマートフォンのロックを解除したと同時に、スマートフォンが鳴り出す。驚いてスマートフォンを落としそうになった。

「は、はい、七海です!」

 晴太郎からかと思って、ろくに画面も確認せずに電話に出た。
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