35 / 146
8.夜食(3)
しおりを挟む
「これをどうぞ」
「えー、何だ…………っ、これ……!!」
中身を見た晴太郎の顔が、キラキラと輝いた。
封筒には、晴太郎が姉から貰ったものと同じ場所のチケット。
「お誕生日おめでとうございます。私からのプレゼントです」
以前から晴太郎が夢の国に行きたがっていたのを知っていた七海は、誕生日プレゼントにチケットを用意していたのだが、姉の紗香に先を越されてしまい渡せずにいた。
しかも紗香は、日付け指定の券を渡して誕生日当日に遊びに行けるように手配までしていた。チケットを渡すことしか考えていない七海は完敗だ。
同じ物を渡すのも気が引けたのでずっと放置していたのだが、幸か不幸か、誕生日当日に行けなくなってしまったので渡すなら今がチャンスと思い、持って来たのだ。
「七海、ありがとう! すごく嬉しい!」
よほど嬉しかったのか、晴太郎は隣に座る七海に抱きついた。
これほど喜んでくれるとは思っていなかったので驚いたが、七海は主人の喜ぶ顔が見れて嬉しい。捻りのないプレゼントだと思ったが、これを選んで良かったと思う。
「しかも4枚もある! これで一緒に2回行けるな!」
「わ、私とで良いのですか? ご友人とか……」
「俺は七海と行きたいって言っただろ!」
友人たちと行けるようにと思って4枚用意したのだが、晴太郎は七海と2回行くつもりらしい。想定と違ったが、主人がそうしたいのなら七海は喜んで付いて行く。
「楽しみだなあ。いつ行こうか?」
「落ち着いてください。体調がちゃんと治るまで駄目ですよ」
「えー……早く行きたい!」
夢の国へ思いを馳せて、キラキラした笑顔で楽しみだ、早く行きたいと言う姿は、まるで遠足前の子供のようだ。
晴太郎のキラキラした笑顔を見ると、七海はじんわりと心が温まるのを感じる。彼の笑顔はどうしてこうも七海を幸せにするのか、不思議で堪らない。
「だったら早く治しましょう。これ以上の夜更かしは身体によく無いので、薬を飲んでもう寝ますよ」
「うっ、アレは……もう嫌だからな?!」
「アレ……? ああ、座薬ですか。熱がないので大丈夫ですよ」
「そうか、よかった……」
薬と聞いて警戒したが、晴太郎は嫌いなアレではないと分かると安心した様に息をつく。
七海としても、泣いて嫌がる晴太郎に挿れるなんて事はもうしたくない。ものすごく心が痛む。次から座薬を処方された時は突っ返そう、と心に誓った。
楽しみにしていた誕生日が、晴太郎にとっては辛くて苦しくて散々な日になってしまった。誕生日を祝えなかった分、二人で過ごす年末年始くらいは思い切り甘やかしても良いのでないかと七海は思う。
明日は彼の好きな物をたくさん作って、誕生日ケーキも焼いて、晴太郎が喜ぶと事をたくさんしよう。彼が笑顔でいてくれる事が、七海とってこの上ない幸せだ。
「えー、何だ…………っ、これ……!!」
中身を見た晴太郎の顔が、キラキラと輝いた。
封筒には、晴太郎が姉から貰ったものと同じ場所のチケット。
「お誕生日おめでとうございます。私からのプレゼントです」
以前から晴太郎が夢の国に行きたがっていたのを知っていた七海は、誕生日プレゼントにチケットを用意していたのだが、姉の紗香に先を越されてしまい渡せずにいた。
しかも紗香は、日付け指定の券を渡して誕生日当日に遊びに行けるように手配までしていた。チケットを渡すことしか考えていない七海は完敗だ。
同じ物を渡すのも気が引けたのでずっと放置していたのだが、幸か不幸か、誕生日当日に行けなくなってしまったので渡すなら今がチャンスと思い、持って来たのだ。
「七海、ありがとう! すごく嬉しい!」
よほど嬉しかったのか、晴太郎は隣に座る七海に抱きついた。
これほど喜んでくれるとは思っていなかったので驚いたが、七海は主人の喜ぶ顔が見れて嬉しい。捻りのないプレゼントだと思ったが、これを選んで良かったと思う。
「しかも4枚もある! これで一緒に2回行けるな!」
「わ、私とで良いのですか? ご友人とか……」
「俺は七海と行きたいって言っただろ!」
友人たちと行けるようにと思って4枚用意したのだが、晴太郎は七海と2回行くつもりらしい。想定と違ったが、主人がそうしたいのなら七海は喜んで付いて行く。
「楽しみだなあ。いつ行こうか?」
「落ち着いてください。体調がちゃんと治るまで駄目ですよ」
「えー……早く行きたい!」
夢の国へ思いを馳せて、キラキラした笑顔で楽しみだ、早く行きたいと言う姿は、まるで遠足前の子供のようだ。
晴太郎のキラキラした笑顔を見ると、七海はじんわりと心が温まるのを感じる。彼の笑顔はどうしてこうも七海を幸せにするのか、不思議で堪らない。
「だったら早く治しましょう。これ以上の夜更かしは身体によく無いので、薬を飲んでもう寝ますよ」
「うっ、アレは……もう嫌だからな?!」
「アレ……? ああ、座薬ですか。熱がないので大丈夫ですよ」
「そうか、よかった……」
薬と聞いて警戒したが、晴太郎は嫌いなアレではないと分かると安心した様に息をつく。
七海としても、泣いて嫌がる晴太郎に挿れるなんて事はもうしたくない。ものすごく心が痛む。次から座薬を処方された時は突っ返そう、と心に誓った。
楽しみにしていた誕生日が、晴太郎にとっては辛くて苦しくて散々な日になってしまった。誕生日を祝えなかった分、二人で過ごす年末年始くらいは思い切り甘やかしても良いのでないかと七海は思う。
明日は彼の好きな物をたくさん作って、誕生日ケーキも焼いて、晴太郎が喜ぶと事をたくさんしよう。彼が笑顔でいてくれる事が、七海とってこの上ない幸せだ。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
年上の恋人は優しい上司
木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。
仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。
基本は受け視点(一人称)です。
一日一花BL企画 参加作品も含まれています。
表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!!
完結済みにいたしました。
6月13日、同人誌を発売しました。

有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺
高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです


エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる