私の主人はワガママな神様

どろろ

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6.香水(1)

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 パーティーが始まり、社長と副社長の簡単な挨拶が終わって食事がスタートして数分、七海はさっそく晴太郎を見失った。
 みんながビールを片手に歩き回る中、未成年の主人が何も持っていないのは可哀想だと思い、ジュースを探しにいっている間の出来事だ。
 食事を楽しみにしていた彼は、きっと食べ物を取りに行っているのだ。テーブルで待っていればそのうち戻ってくるとは思うが、離れるのは少し心配だ。どうしようかと悩んでいると、男女の二人組が声を掛けてきた。

「あれー? 七海ひとり?」
「七海がひとりなんて珍しいな。晴太郎は?」
「お久しぶりです、香菜子かなこ様、洋太郎ようたろう様」

 声を掛けてきた男女の二人組は、晴太郎の下の姉と下の兄である香菜子かなこ洋太郎ようたろうだった。中条兄弟の第四子と第五子に当たる。

「グラスが空ですね。お注ぎ致します」
「お、サンキュー」
「わーい、七海に注いでもらっちゃった!」

 中条兄弟の中でも特別顔の整っているこの二人は、実は双子で大学に通いながらファッションモデルとして活躍している。

「七海もビール飲むか?」
「いえ、私は運転がありますので」
「えー、一緒に飲みたかったなあ。七海、いつも飲まないし」
「それは……申し訳ありません」

 確か運転を理由にいつも酒を断っている。心当たりがありすぎて何も言えない。

「そんな事はいいんだけどさ! 七海、まだ恋人いないよね? 姉さんみたいに私の世話係兼旦那さんに……」
「やめろよ香菜子、七海が困ってるだろ」

 何故かよく分からないが、七海は昔から香菜子に懐かれている。会うたびにこの様なことを言うので、すっかり慣れてしまった。いかにも今風の若者だが実はしっかり者の洋太郎がいつもちゃんと彼女を阻止してくれる。
 世話係の話で思い出したが、彼らの使用人の姿が見えない。世話係兼マネージャーの女性がいつも一緒にいるはずなのだが。

「あー、須藤は今日どうしても事務所の仕事が外せなくてさ……残念だけど」
「そうでしたか。よろしくお伝えください」

 須藤も黒木と同じで、使用人としての七海の先輩にあたる人物だ。2人の世話係を同時にこなす彼女は、使用人として相当な腕を持っている。久々に会いたかったが、仕事なら仕方がない。

「ってかさ、今日の七海なんか雰囲気違ってさらにカッコいいー! ネクタイがいつもと違うのかな?」
「あ、本当だ。赤いヤツなんて珍しいな。派手な色は好きじゃないのかと思ってた」

 ファッションモデルを熟す2人にじろじろと見られるのは流石に少し恥ずかしい。
 それにしても、今日は良くネクタイの色を褒められる。晴太郎に選んでもらってよかった。

「ん? 七海、香水つけてるよな?」

 ネクタイをじっくりと見ていた洋太郎が、すんすんと鼻を鳴らしながら近づいて来た。
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