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4.成長(3)
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晴太郎が出ていったのが午前10時頃。
昼を過ぎた頃から、心配でそわそわし始めた。
一旦落ち着こうと、自室からベランダへ出て煙草に火をつけた。大きく息を吸って肺に煙を入れ、一気に吐き出す。それを何度か繰り返すうちに少し落ち着きを取り戻した。
晴太郎には内緒だが七海は喫煙者である。あまり家では吸わないようにしているが、今日のように彼が不在の時や就寝後にこっそり吸っている。今日はベランダに置いた灰皿にいつもの倍近く吸い殻が溜まっていた。
幼い頃からずっと見ていた晴太郎が、今日初めて同級生の女の子と遊びに行ったのだ。成長は嬉しいが、上手くやれるかとても心配だ。
素直で嘘が付けなくて裏表がない主人の性格は本来であれば褒めるべきことのはず。しかし、素直すぎるがゆえ、思ったことを何でも口に出してしまうところがある。
相手に何か失礼なことを言っていないか、幻滅させるようなことを言っていないか。晴太郎に従える者としてこのような心配ばかりしていることが失礼だと七海は気付いていない。
今日は夕食を済ませて来ると言っていたので、きっと帰って来るのは午後8時を過ぎた頃。まだまだ時間がある。今からこんなに心配していては身が持たない。気を紛らわせようと、気合を入れて掃除を始めた。
もし今日のデートが成功したら、主人に恋人が出来る。恋人が出来て結婚して、子供ができて。そうなると、自分はどうなるのだろうか。主人の輝かしい未来はいくらでも想像できる。しかしそこに自分の姿は無い。
とても嬉しいことのはずなのに寂しく思ってしまうのは、自分が無能な従者だからなのだろうか。
*
午後5時を過ぎた頃、ガチャリと玄関の鍵が開く音がした。
「ただいまー」
「あれ、おかえりなさい」
予定よりずいぶん早く晴太郎が帰ってきた。
「呼んで下されば迎えに行きましたのに」
「んー……まあ、予定より早い時間だったからな。タクシーで帰ってきた。何してるんだ?」
「掃除を……今はシンクを磨いていました」
「おお、ピカピカだな……ん? そういえば、家の中がいつもより綺麗な気がするぞ!」
いつもきちんと掃除されている二人の家だが、いつもより更に綺麗になったと晴太郎は目を輝かせた。
七海は落ち着かず、結局ずっと掃除をしていたのだ。おかげて床はチリひとつ落ちていないし、窓もトイレもピカピカ輝いている。風呂場は排水溝の中まで綺麗になった。
自身を落ち着けるために掃除をしていたのだが、主人が喜んでくれるなら掃除をして良かった。
「初デートはどうでしたか?」
「うーん……あまり楽しくなかったな」
「え?」
「学校ではよく話すし仲が良いんだが、休みの日に一緒に出掛けるとなると、なんか違ったな。だから早く帰ることになったんだ」
「そうでしたか」
薄々気付いていたが、どうやらデートは失敗に終わってしまったらしい。成功していたらそもそも早く帰って来るわけがない。少しホッとして胸を撫で下ろした。
昼を過ぎた頃から、心配でそわそわし始めた。
一旦落ち着こうと、自室からベランダへ出て煙草に火をつけた。大きく息を吸って肺に煙を入れ、一気に吐き出す。それを何度か繰り返すうちに少し落ち着きを取り戻した。
晴太郎には内緒だが七海は喫煙者である。あまり家では吸わないようにしているが、今日のように彼が不在の時や就寝後にこっそり吸っている。今日はベランダに置いた灰皿にいつもの倍近く吸い殻が溜まっていた。
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素直で嘘が付けなくて裏表がない主人の性格は本来であれば褒めるべきことのはず。しかし、素直すぎるがゆえ、思ったことを何でも口に出してしまうところがある。
相手に何か失礼なことを言っていないか、幻滅させるようなことを言っていないか。晴太郎に従える者としてこのような心配ばかりしていることが失礼だと七海は気付いていない。
今日は夕食を済ませて来ると言っていたので、きっと帰って来るのは午後8時を過ぎた頃。まだまだ時間がある。今からこんなに心配していては身が持たない。気を紛らわせようと、気合を入れて掃除を始めた。
もし今日のデートが成功したら、主人に恋人が出来る。恋人が出来て結婚して、子供ができて。そうなると、自分はどうなるのだろうか。主人の輝かしい未来はいくらでも想像できる。しかしそこに自分の姿は無い。
とても嬉しいことのはずなのに寂しく思ってしまうのは、自分が無能な従者だからなのだろうか。
*
午後5時を過ぎた頃、ガチャリと玄関の鍵が開く音がした。
「ただいまー」
「あれ、おかえりなさい」
予定よりずいぶん早く晴太郎が帰ってきた。
「呼んで下されば迎えに行きましたのに」
「んー……まあ、予定より早い時間だったからな。タクシーで帰ってきた。何してるんだ?」
「掃除を……今はシンクを磨いていました」
「おお、ピカピカだな……ん? そういえば、家の中がいつもより綺麗な気がするぞ!」
いつもきちんと掃除されている二人の家だが、いつもより更に綺麗になったと晴太郎は目を輝かせた。
七海は落ち着かず、結局ずっと掃除をしていたのだ。おかげて床はチリひとつ落ちていないし、窓もトイレもピカピカ輝いている。風呂場は排水溝の中まで綺麗になった。
自身を落ち着けるために掃除をしていたのだが、主人が喜んでくれるなら掃除をして良かった。
「初デートはどうでしたか?」
「うーん……あまり楽しくなかったな」
「え?」
「学校ではよく話すし仲が良いんだが、休みの日に一緒に出掛けるとなると、なんか違ったな。だから早く帰ることになったんだ」
「そうでしたか」
薄々気付いていたが、どうやらデートは失敗に終わってしまったらしい。成功していたらそもそも早く帰って来るわけがない。少しホッとして胸を撫で下ろした。
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