私の主人はワガママな神様

どろろ

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2.小さな神様(3)

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「それ、おれのサイフだ!」
「……これ?」
「そうだ! なかじょうせいたろうってかいてあるだろう?!」

 確かに名前が書いてあったが、これが本当にこの小学生の物なのか確かめる術はない。こんなに幼い子が嘘をつくとも思えない。七海はしゃがんで彼に目線を合わせて、大金の入った財布を渡してやった。
 少年は財布を受け取ると嬉しそうに笑った。

「……はあー、よかったあー。失くしてしまって、こまっていたんだ」
 
 安心した様子で胸を撫で下ろしていた。あんなに大金が入っている財布なのだから、失くして焦るのは当たり前だ。

「このカード、ちょうレアなヤツなんだ! もう手にはいらないかもしれない」

 彼が心配していたのは現金ではなく、キラキラしたトレーディングカードの方だったらしい。なんだか拍子抜けした。

「たすかった! ありがとう!」
「はあ……どういたしまして」

 キラキラとした笑顔で例を言われると、少し心が痛む。本当は例を言われる資格なんてない。だって、その財布の中身を盗ろうとしたのだから。

「あ! わすれた!」
「……何を?」
「いいことをしてもらったら、ちゃんとおじぎをしないといけないんだ!」
「いいよ、そんな……」
「あと、ケイゴもわすれた! ありがとうございま……わっ!」

 お辞儀をした勢いで、少年が背負っていたランドセルが開いて中身が飛び出した。バサバサと教科書やプリント類が地面に散らばる。

「ああっ、たいへんだ!」
「……手伝ってやるから、ランドセルこっちに向けて」
「うう……すまない……」

 散らばってしまった荷物を拾い集め、ランドセルに入れてしっかりと閉める。これで今度は飛び出したりしないだろう。
 
「はい、これで大丈夫だろ」
「ありがとう。やさしいな、おまえ!」
「別にこのくらいは……あ」

 しゃがみ込んで少年と話していると、ぐう、と腹の虫が割って入った。成長期なのに1日何も食べていないせいか、いつもに増して大きな音だ。

「はらがへっているのか?」

 腹の音はしっかりと少年にも聴こえていたようだ。少し気恥ずかしくて視線を逸らして頷く。

「よし、こっちにこい!」
「えっ、ちょっと……!」

 少年は七海の手を握って走り出した。といっても、彼の歩幅なんて大したことはない。七海が歩いて追いつける程度の速さ。もちろん、手を握った力も弱いので振り解こうと思えば簡単に振り解ける。
 しかし、七海は手を振り解かず、黙って少年の後をついて行った。
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