私の主人はワガママな神様

どろろ

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1.1日のはじまり(2)

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「うぐぅ……ね、む……い………」
「ほら、起きてください。遅刻しますよ」
「ち、こく……? んん………あ、学校?!」

 意識が覚醒したのか、がばりとベッドから転げ落ちるように飛び起きた。

「いっ、今何時だ?!」
「おはようございます。7時10分です」
「あ、おはよう……なんだ、まだそんな時間か。焦ったあー」
「今日の朝食は和食ですが、飲み物はどうしますか?」
「んー……いつものカフェオレでいいや」
「かしこまりました。では、リビングで待っていますので、ご支度を」
「はーい。タオルは?」
「こちらをお使いください」
「ん、ありがとう」

 バンドタオルはを手渡すと、家主はパタパタとスリッパを鳴らしながら脱衣所へ向かった。
 その間に彼が所望したミルクたっぷりのカフェオレと朝食をリビングのダイニングテーブルに準備して、テレビを付ける。彼がいつも見ている朝のニュース番組にチャンネルを設定する。

「んー、いい匂いがするなー」

 顔を洗ってさっぱりした彼は、そう言ってダイニングテーブルの前に座る。いただきます、と手を合わせると行儀良く食べ始める。
 彼が食事をしている間に使った調理器具を片付け、食事を終えて身支度をしている間に食器を片付ける。


「よし、準備できたぞー」

 彼が身支度を終えリビングへ戻って来ると、あらかじめ準備していたコートを開いて差し出す。彼はそれに自然に腕を通した。

「では、行きましょうか」
「ああ、頼む」

 彼の学校カバンと弁当の入った袋、車のキーを持って一緒に家を出た。しっかりと施錠すると、エレベーターに乗って最上階から地下の駐車場まで一気に降りる。
 車の左後ろのドアを開くと、彼は不満そうに首を振った。

「今日は助手席が良い」
「かしこまりました」

 カバンと弁当の袋を後ろの席に置いて、ドアを閉めた。助手席のドアを開けようとする前に、彼は勝手にドアを開けて既に乗り込んでいた。自分は運転席に座り、エンジンをかける。
 
「何か良いことがありましたか?」
「ん? いやー、別に!」

 助手席を所望する日は、決まって機嫌が良い日だ。はぐらかされてしまったが、嬉しそうに笑う彼の顔はとてもわかりやすい。
 ここ数日、彼はとても機嫌が良い。それもそのはず。もうすぐ彼の17歳の誕生日なのだ。祝って貰えるのが楽しみだなんて、年相応の少年らしくて可愛らしい。もちろん、盛大に祝うつもりである。
 しばらく車を走らせて、最寄り駅のロータリーに駐車場する。

「よし、行ってくる!」
「お待ちください、今お荷物を……」
「それくらい自分で出来るから、大丈夫だ」

 そう言って彼は後ろの席から勝手にカバンと弁当箱の入った袋を取り出した。2つ持つのは面倒だったのか、カバンを開いて無理やり弁当袋を詰め込んだ。

「じゃあ、行ってきます!」
「はい、いってらっしゃいませ」

 元気に駅の方へ駆けていく背中を見送る。ここまでが、この男——七海壮介ななみそうすけの朝の仕事である。
 
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