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魔石と相性

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「本当は下級魔法が使えるようになってからやるんだけど、試してみる?」
「へぇ、全部違う色の魔石なんですね」

 エーテルが取り出したのは6色の小さな魔石。
 ゴブリン同様無色のもの。
 他には、赤、青、茶、緑、白の5色である。

 全て双角錐、つまり多面体サイコロをやや細長くしたような形をしている。
 それらにもマナが含まれていて、相性の良い魔石を握りながら瞑想をすることで、自身の魔力の質と量を高めるものらしい。

 瞑想などという眉唾ものの実態は、つまりは自分の中にあるマナを感じとって自由に操作ができるようになるための訓練。
 魔石を握らせることで、それらしい理由ができ、教えるのには都合が良いそうだ。
「なんてこと、生徒にペラペラいうことなんて無いんだからね。
 まぁ聡明な君にはバレているだろうからいいけどさ……」
「でも、ここにはその生徒もいるみたいなんだけど」

 あれから数週間。
 毎日狩りをしながら生活をしていたが、ようやくエーテルにとって本業の依頼があったのだ。

「あ、あの……」
 まだ7つか8つの小さな少女が今回の生徒らしい。
「あぁごめんごめん。
 フランちゃんはそのまま目を閉じて続けてて良いわ。
 こっちの子はちょっと訳ありだから気にしなくていいの」
「そう……ですか」

 金髪のふわふわで、瞳もエメラルドグリーンで第一印象が『可愛い』である。
 水色の服も安物には見えないし、何より案内された家は他よりも随分と大きいのだ。

 そんな少女が暮らす家に、エーテルは教師として招き入れられた。
 ただし、ソーマという生徒が既にいるため、場所を借りて二人同時に指導することになった。

 フランの父は、それで教育が疎かにならないのかと心配したが、どうにか納得してもらったようだ。

『フランさんよりも歳下の彼は、既に魔法理論を修了しており、今は実技に入っております。
 そのような存在が身近におれば、娘さんも負けじと授業に熱が入るでしょう』

 結果的に、フランにも魔法理論と同時に実技も行い早く魔法を使えるようにということで承諾が得られることとなった。

 そんなフランは、体内にマナを感じるための瞑想をおこなっているわけだが、ソーマ達の話が気にならないわけがない。
「わ、私もその……魔石に触ってみてもいいですか?」
「それはまだダメ。
 触れながら瞑想するのは、完全に自己のマナを制御できてからよ」

 魔石に触れてしまうと、そこに存在するマナを強く感じてしまい自身のマナを感じることが難しくなってしまう。
 だから、フランに触れさせることはできないそうだ。
 それが原因で魔法の習得が遅れてしまえばフランの親に申し訳が立たない。

 若干哀しそうにしていたフランだが、ソーマをそれが羨ましくもあった。
 なにせ自分は感じるマナが存在しないのだから。

「あー……確かに魔石の中に熱いものがある気はするね」
 ソーマは目を閉じてゆらめく何かを感じとっていた。

「そう。その熱い感覚が大きいほどマナは強いのよ。
 で、さっきフランちゃんから感じたマナが自分の中にあったとして、その状態でそれに気付けると思う?」

「いやー……無理かなぁ。
 本当に熱いわけじゃないけど、比べものにならないよ」

「つまりそういうこと。
 だから下級魔法が普通に使えるくらいには自分のマナのことを理解できていないと、この練習法は逆効果なのよ。
 でも、マナを感じるの早いよねソーマは」
 普通は自分のマナを感じることでさえ数週間はかかるのだとエーテルは言う。
 最初はボンヤリとそこにあるような気がする程度の、ごく小さなそれを、毎日感じ続けることが魔法を使うための第一歩。

「いや、マナがあるのがわかるだけで……」
 ソーマは自分自身にそのマナが無いのだが、エーテルの持つ大きく熱いマナはもちろん、風が吹けば無くなりそうなほど小さなフランのマナでさえも感じとってしまったのだ。
 そしてそれはエーテルでさえも真似のできない力であった。

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