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可能性

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「いや、きっと大丈夫だって」
 エーテルはどう慰めて良いかわからなかった。
 銀貨一枚を支払い、測定して当人に自信を持ってもらう。
 これも授業をする上で非常に大切なことだったのだ。

 勉強を嫌がる子供は、その勉強の楽しみ方を知らないのだ。
 だから、基礎理論を済ませた後はこうして測定を必ず頼んでいた。

 人よりも優れたところを伸ばし、その使い道を共に考える。
 ある生徒は複合魔法の効果について様々な疑問を投げかけてきた。
 ある生徒はとにかく鋭い刃を見せびらかしたかった。
 危険な面ももちろんあったが、魔法の上達にはその者のやりたいという気持ちが第一に必要なのだ。

「でも、何もないってことは成長もしないんじゃないかな……」
 前世も含めれば歳は20をゆうに超えている。
 だからこそ余計にソーマのショックは大きい。
 可能性など無いのだろうと、察してしまっているのだ。

「ま、まぁ魔力が全く無いなんて前代未聞だし……使えるようになるかどうかなんてわかんないじゃないの」
「そうだよね。
 ははは、やっぱり前代未聞かぁ……」

 別にエーテルは悪くない。
 しかも、そんなことがあった日もゴブリン狩りの道中は魔法についての授業は続行してくれたのだ。
「で、イメージをすることなんだけど……
 ねぇ、本当に魔法の授業を続けていいの?」
「大丈夫ですよ。
 ちょっと凹んだだけで、諦めたわけじゃないですから……」

 魔法を使う際に詠唱をするのは、精霊からどういった力を借りたいのかを口にして伝えるため。
 実は魔法学園ではそのように教えるのだが、エーテルはまた独自の魔法理論を持っていた。

 少なくとも他の生徒に独自の理論など言うことはない。
 しかし、気まずいこの状況で何を話すべきかと焦ったエーテルは、つい変わった話を初めてしまったのだ。

 しかもその独自理論にソーマが食いつき、エーテルもまたソーマが魔法を使えるようになる手がかりがあるかもしれないと、道中その話は続けられることとなった。

「実はあまり知られてないけど、詠唱破棄リダクションという技術があるの。
 部分詠唱破棄、全文詠唱破棄、独自オリジナル詠唱がそれにあてはまるのだけど、かなり慣れた人じゃないと上手くいかないのよ」
 だから学園で教えることはない。
 それにはイメージすることが重要で、水がパッと出現するようなシンプルなものでは効果が出ない。

 精霊が水を出すためにどのように大気に影響を与え、精霊が何を思っているのかを考えなくてはいけない。
 つまり、精霊を通さずに自らが精霊となって魔法を使っているようなものだとエーテルは考えているそうだ。

「今は空間を少し冷やす程度の魔法しか使えないし、普通に魔法を使うより何倍も魔力を使っちゃうんだけどね」
「それでも凄いじゃないですか」

 普段は魔力の消費が少ない通常の魔法を使っているが、先日の男どもに言い寄られた時に詠唱などしていたら魔法を使うことがバレバレである。
 あとは、ランキング戦などで使えるようになれば、非常に有利になるのだとエーテルは言っていた。

 こうして今日もまたゴブリン狩りを終え、エーテルとソーマは宿へと戻ったのだった。

 
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