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食用

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「まずは精霊とマナについてのお話ね」
 エーテルは狩りに向かう道中、ソーマに魔法の授業をしていた。

 それにしても、さすが小さくとも異世界の街だった。
 冒険者のためのギルドがあり、そこで魔石を渡すと『討伐費』としてお金が貰えるのだ。
 また今回のような討伐費以外にも、売却費や依頼報酬があるらしい。
 逆に収入が多すぎたり、依頼を失敗すると取られる場合もあるのだとか。

 雑貨屋には服に剣に傷薬。
 どれほどの効果があるのかはわからないが、ソーマはしばらくその傷薬を眺めていたりもした。

 宿には風呂はなく、明け方は男たちが裏庭で裸になって水浴び。
 女たちは井戸の周りに集まって談笑しながら、男を見たり食べ物をつまんだり。

 そしてエーテルの言うように、下級魔法はそこらにいる誰もが使っていた。
 ランプ代わりの灯りとりに。
 また極少量の水なら出せて、種火くらいなら作ることも可能。

「ねぇ聞いてるの?」
 エーテルは不満げにソーマを見つめる。
「あっはい。
 でも精霊って四種類だけなんですか?」
「ちゃんと聞いているならいいけど……」

 火・水・風・地。
 いわゆる四大属性とかいうやつだろう。
 それらの精霊と人々は太古の昔にとある契約をしたという。
 そこで出てくるのが人々の持つマナという存在。

「やっとゴブリンを見つけたわ。
 二体いるなんてラッキーじゃない」
 下級魔法を攻撃に特化させる魔法が中級魔法ミドルマジック
 主に高速で打ち出すことが多く、それらは射撃魔法バレットと呼ばれている。
 
 ウォーターバレット、エアバレット、ファイアーバレット、アースバレットがそれにあたり、つまりは魔法で出したものを動かす技術が問われるらしい。
 今回はその中でも一撃が大きいアースバレットを使ってみせるエーテル。
 ただし、同時に十発のアースバレットを打ちだすこと自体は中級魔法の範疇ではないらしいのだが。

「さ、さすがエーテル師匠……
 詠唱も短かったし、これってかなり実践向けなんじゃないですか?」
「そうね!
 もちろん本気を出せば一個一個の威力も上げられるわよ」
 だが、こういったバレットの威力では倒せない魔物がいるのも事実。
 そもそも装甲が硬すぎる魔物。
 そうでなくても魔法で障壁を張る魔物がいたりもする。
 それを打ち破れてようやく上級。
 冒険者としてはAランクとなれる。

 ともあれ、こういった魔法の行使には魔力マナが必要だとエーテルは言う。
 精霊は、人族の持つマナを貰い、代わりに力を貸す。
 つまりは精霊にとっての餌が人間にあるのだと言われていた。

 マナを多く持つ人は、それだけ魔法を多用できるというわけだ。

「隠れて……」
 スッと伸ばしたエーテルの腕がソーマの行先を遮る。
 岩陰になって見えていなかったが、そこにも魔物が一匹。
「あっ、何か寝そべってる……」
「あれはティアラビットっていう生き物よ。
 魔石は持ってないけど、肉は食用になるし皮も売れるわ」
 小さいが、確かにウサギが一匹いるようにも見えていた。
 比較的おとなしいが、逃げ足がとにかく早いので捕まえるのは難しいそうだ。

「……されど走錨たるが如く、敵を我が元へ……バインド!」
 風魔法の長い詠唱が唱えられると、ウサギは急に天高く跳ね上がり、二人の元へと飛び込んできたのだ。
「今のうちに押さえてっ」
「あっ、はい!」

 地面に落ちたウサギをソーマがしっかりと押さえ、エーテルはナイフを持ちその首筋に刃を当てる。
「ごめんなさい……」
 ……そのまま食肉用へと処理が行われてたが、前世を日本で育ったソーマにとって、それはとても衝撃的であったことは言うまでもない……
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