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抱きつきたいです
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「全部で……ちょうど500個。
トリプラントは8つかぁ……」
単純に戦う魔物の数が少ないのか、それとも倒し方にルールがあったりするのだろうか?
宿に戻った僕は、ダストボックスと名付けた空間収納から、手に入れた素材を並べて数えていた。
「緑色いっぱーい、これどうするの?」
「んー、これはねぇ……」
床一面に敷き詰められた緑色のモノプラント。
利用価値はさほど高くないのだが、脱臭効果があるとかで公衆浴場に置いてあるシャンプーに使われていたりするらしい。
「こうやって敷布団の下に入れて……」
「ずいぶんとたくさん入れるのね?
それって、そんなに必要だったかしら?」
僕がモノプラントを敷き詰める後ろで、サクアが不思議そうにする。
大丈夫、むしろこのくらい大量に入れておかないと効果も薄いのだよ。
酒場に行っている今のうちにコッソリと……
『コツ……コツ……コツ……』
静かに作業を行っていたおかげで、階段を登ってくるフロックスの足音が聞こえる。
僕は出しっぱなしの素材をダストボックスに片付けて、二人もベッドから離れていった。
「今戻った。んー……やっぱりそう簡単には見つかりそうもないな」
「そっかぁ、残念だけど仕方ないよ。
こっちも全然成果が出なかったや」
ダストボックスからトリプラント8つを取り出してフロックスに渡す。
一個5000Gくらいにはなるみたいだし、まぁ数日の滞在資金にはなりそうだった。
「それにしても……なにしてたんだ?」
「え? なにが?」
ちょいちょいっと、顎で後ろを指しているフロックス。
振り向くとそこには、シャンとした姿勢で座っている二人の姿が。
「あー……さ、さぁ?
寝られそうにないからお話でもしてほしいんじゃないかなぁ?」
「寝られないってお前……これだけのトリプラント集めるのに普通だったら何日かかると思ってんだよ?」
……まぁそうだよね。
すっごく疲れたし、二人だって先ほどまで怠そうにしていたのだから。
「きっと興奮しすぎて寝られないんだよ。あはは……」
「そっ、そうなのよ! ねぇヤエっ」
「うんっ!」
ヤエだけは、ちょっとワクワクしている気もするけれど……
まぁ別に悪いことをしているつもりはない。
ただフロックスの匂いが気になって、どうにも仕方ない僕がいるだけのことである。
「ま、まぁ別に構わないが……俺はもう寝るつもりだぞ?
明日ももう1日情報収集は続けてみるつもりだ」
「そうなの? じゃあ僕たちも今度こそテトラプラントを……うーん……なんか面倒になってきたなぁ……」
「はははっ、アレばっかりは完全に運だからな。
何の気なしにひょこっと現れた冒険者が入手して帰るなんてことはよくある話だ」
『明日は手に入るといいな』なんて言って、フロックスはすぐに寝てしまった。
「じゃあ僕たちも寝よっか……
動きっぱなしで疲れたし、あーもうダメ……おやすみぃ……」
ボフッと自分の布団にダイビング。
ヤエとサクアも隣の部屋へと戻っていった。
微睡む意識の中で、少しだけ今朝の光景を想像してしまう。
うつ伏せで寝ていれば、また同じような思いができたりするのでは?
これじゃあイヤラしいと言われても仕方がないな。
でもやっぱり……少しだけ期待してしまう……
ちゅんちゅん……と、今日も鳥の鳴き声が喧しい。
そう感じるというのも、僕に疲れが溜まっていて起きるのが辛いからだろうな。
「で……こっちもまた、いるわけね?」
「はははっ、ヤエも随分と大胆だよな。
いくら獣人族だからって、家族以外のやつとはそんな姿で寝ないもんだぜ」
あーもう、なんで二人ともひっついてくるわけ?
しかも全身ふわふわのモフモフを見せられると……
『さわっ……』
……いいよね、撫でてるだけだし。
頭の次は首元……そして背中に前足。
「……っ」
ん? 少しだけ震えている。
ははーん……実はもう起きてるけど、もう少し寝たふりをしようというわけか。
「よしよしー……ヤエは可愛いなぁ」
『……ピクッ……ピクッ⁈』
ヤエの鼻と耳がしきりに動く。
揶揄うのも意外と面白い。せっかくの機会なので、耳の内側も触らせてもらおう。
フニフニとこちらもまた気持ちいいのだ。
「ピャ……ァフッ……」
ヤエの洩れた声にドキッ……としてしまった、やばいなこれは。
あまりやり過ぎずに、そろそろ起きてもらうことにするか。
「ヤエ? おーい……」
呼びかけるが返事がない。もう少し触れとでも言いたげだなぁ。
「ちょっとヤエってば」
「……んんー……むにゃむにゃ……」
ムニャムニャ……なんて口で言うもんじゃないからっ。
はぁ、これは調子に乗らせた僕が悪いのか?
「いい加減にしろよ、ヤエっ!」
僕は耳を掴んだまま少しだけ大声で怒鳴る。
「ピエッ⁈」
びっくりして目を見開いたヤエ。
両手で頭を覆い、まるで防御は完璧だぞ、と。
全くもう……大人しくしていれば可愛らしいのに……
「サクアもいるんでしょー?
もう、頼むから勘弁してよぉ」
カチャッとドアが開き、覗き込むようにゆっくりとサクアが入ってくる。
「あははー、やっぱりわかる?」
「もう……こんなこと毎日やられたら、(僕の理性が)もたないから」
僕はポンポンっとヤエの頭を叩き、早く着替えてこいと言う。
「だってー……私もヤエも貰ってばっかりなんだもん。
何かお返ししたいと思って、じゃあ好きなだけ触ってもらおうってヤエと……」
僕が二人の耳とか尻尾とか触りたくて気になっていたのがバレていた……
馬車の中でも山の小屋でも、『見てるなぁー……』なんて思ってたっぽい。
超恥ずかしい……
オッケー……認めよう。
でも、だったら普通に『触っても良いよー』でいいじゃん。ねぇ……
あぁダメだ……恥ずかしさが爆発して、僕はもう立ち上がれない……
あぁ、ちなみにフロックスの匂いはキレイさっぱり取れていた。
魔法の世界のアイテムは凄すぎる。
脱臭用の炭なんか目じゃないな。アレはアレで凄いんだけどさ……
くそぅ……
トリプラントは8つかぁ……」
単純に戦う魔物の数が少ないのか、それとも倒し方にルールがあったりするのだろうか?
宿に戻った僕は、ダストボックスと名付けた空間収納から、手に入れた素材を並べて数えていた。
「緑色いっぱーい、これどうするの?」
「んー、これはねぇ……」
床一面に敷き詰められた緑色のモノプラント。
利用価値はさほど高くないのだが、脱臭効果があるとかで公衆浴場に置いてあるシャンプーに使われていたりするらしい。
「こうやって敷布団の下に入れて……」
「ずいぶんとたくさん入れるのね?
それって、そんなに必要だったかしら?」
僕がモノプラントを敷き詰める後ろで、サクアが不思議そうにする。
大丈夫、むしろこのくらい大量に入れておかないと効果も薄いのだよ。
酒場に行っている今のうちにコッソリと……
『コツ……コツ……コツ……』
静かに作業を行っていたおかげで、階段を登ってくるフロックスの足音が聞こえる。
僕は出しっぱなしの素材をダストボックスに片付けて、二人もベッドから離れていった。
「今戻った。んー……やっぱりそう簡単には見つかりそうもないな」
「そっかぁ、残念だけど仕方ないよ。
こっちも全然成果が出なかったや」
ダストボックスからトリプラント8つを取り出してフロックスに渡す。
一個5000Gくらいにはなるみたいだし、まぁ数日の滞在資金にはなりそうだった。
「それにしても……なにしてたんだ?」
「え? なにが?」
ちょいちょいっと、顎で後ろを指しているフロックス。
振り向くとそこには、シャンとした姿勢で座っている二人の姿が。
「あー……さ、さぁ?
寝られそうにないからお話でもしてほしいんじゃないかなぁ?」
「寝られないってお前……これだけのトリプラント集めるのに普通だったら何日かかると思ってんだよ?」
……まぁそうだよね。
すっごく疲れたし、二人だって先ほどまで怠そうにしていたのだから。
「きっと興奮しすぎて寝られないんだよ。あはは……」
「そっ、そうなのよ! ねぇヤエっ」
「うんっ!」
ヤエだけは、ちょっとワクワクしている気もするけれど……
まぁ別に悪いことをしているつもりはない。
ただフロックスの匂いが気になって、どうにも仕方ない僕がいるだけのことである。
「ま、まぁ別に構わないが……俺はもう寝るつもりだぞ?
明日ももう1日情報収集は続けてみるつもりだ」
「そうなの? じゃあ僕たちも今度こそテトラプラントを……うーん……なんか面倒になってきたなぁ……」
「はははっ、アレばっかりは完全に運だからな。
何の気なしにひょこっと現れた冒険者が入手して帰るなんてことはよくある話だ」
『明日は手に入るといいな』なんて言って、フロックスはすぐに寝てしまった。
「じゃあ僕たちも寝よっか……
動きっぱなしで疲れたし、あーもうダメ……おやすみぃ……」
ボフッと自分の布団にダイビング。
ヤエとサクアも隣の部屋へと戻っていった。
微睡む意識の中で、少しだけ今朝の光景を想像してしまう。
うつ伏せで寝ていれば、また同じような思いができたりするのでは?
これじゃあイヤラしいと言われても仕方がないな。
でもやっぱり……少しだけ期待してしまう……
ちゅんちゅん……と、今日も鳥の鳴き声が喧しい。
そう感じるというのも、僕に疲れが溜まっていて起きるのが辛いからだろうな。
「で……こっちもまた、いるわけね?」
「はははっ、ヤエも随分と大胆だよな。
いくら獣人族だからって、家族以外のやつとはそんな姿で寝ないもんだぜ」
あーもう、なんで二人ともひっついてくるわけ?
しかも全身ふわふわのモフモフを見せられると……
『さわっ……』
……いいよね、撫でてるだけだし。
頭の次は首元……そして背中に前足。
「……っ」
ん? 少しだけ震えている。
ははーん……実はもう起きてるけど、もう少し寝たふりをしようというわけか。
「よしよしー……ヤエは可愛いなぁ」
『……ピクッ……ピクッ⁈』
ヤエの鼻と耳がしきりに動く。
揶揄うのも意外と面白い。せっかくの機会なので、耳の内側も触らせてもらおう。
フニフニとこちらもまた気持ちいいのだ。
「ピャ……ァフッ……」
ヤエの洩れた声にドキッ……としてしまった、やばいなこれは。
あまりやり過ぎずに、そろそろ起きてもらうことにするか。
「ヤエ? おーい……」
呼びかけるが返事がない。もう少し触れとでも言いたげだなぁ。
「ちょっとヤエってば」
「……んんー……むにゃむにゃ……」
ムニャムニャ……なんて口で言うもんじゃないからっ。
はぁ、これは調子に乗らせた僕が悪いのか?
「いい加減にしろよ、ヤエっ!」
僕は耳を掴んだまま少しだけ大声で怒鳴る。
「ピエッ⁈」
びっくりして目を見開いたヤエ。
両手で頭を覆い、まるで防御は完璧だぞ、と。
全くもう……大人しくしていれば可愛らしいのに……
「サクアもいるんでしょー?
もう、頼むから勘弁してよぉ」
カチャッとドアが開き、覗き込むようにゆっくりとサクアが入ってくる。
「あははー、やっぱりわかる?」
「もう……こんなこと毎日やられたら、(僕の理性が)もたないから」
僕はポンポンっとヤエの頭を叩き、早く着替えてこいと言う。
「だってー……私もヤエも貰ってばっかりなんだもん。
何かお返ししたいと思って、じゃあ好きなだけ触ってもらおうってヤエと……」
僕が二人の耳とか尻尾とか触りたくて気になっていたのがバレていた……
馬車の中でも山の小屋でも、『見てるなぁー……』なんて思ってたっぽい。
超恥ずかしい……
オッケー……認めよう。
でも、だったら普通に『触っても良いよー』でいいじゃん。ねぇ……
あぁダメだ……恥ずかしさが爆発して、僕はもう立ち上がれない……
あぁ、ちなみにフロックスの匂いはキレイさっぱり取れていた。
魔法の世界のアイテムは凄すぎる。
脱臭用の炭なんか目じゃないな。アレはアレで凄いんだけどさ……
くそぅ……
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