16 / 67
緑の液体を飲む光景は異様なのです
しおりを挟む
『攻撃力:315』
『運:5(+5)』
装備をしても上がるのは運だけだったか。
それにたったの5って。元の数値も5だし、僕って運が悪いんだろうなぁ。
家まで付けて帰ったのだけど、食事のときに着けるのは行儀が悪いだろう。
僕はそれを外してテーブルの隅に置いておいた。
父がそれを見てハッと驚いていたのだけど、どうやら冒険者には有名なアイテムのようだ。
「それはっ、グリーンスライムの腕輪じゃないか!」
いやぁ、こういう時に父の言葉は役に立つ。
アイテムのことだったら、やっぱり直接関わりのある人たちの方がよく知っているなぁ。
「どこで手に入れたんだ?
それを身につけると幸せが訪れるっていう貴重なアイテムだぞ?」
えっ? ……いや、普通に(畑で)拾ったんだけど……
僕がスライムを倒して、だけど。
しかし、たった『運+5』で貴重アイテム???
確かにまぁ、上げる方法もわからない運が上がるのは貴重なのかもしれないけれど。
「ねぇお父さん、これお母さんにあげてもいい?
僕は魔法学院にも行けて、毎日おいしいご飯も食べれて幸せだし。
周りがもっと幸せになってくれたら、僕ももっと幸せだよ」
母が幸せではない、というわけではない。
やはり出産が近いと、時々表情が辛そうに見えてしまうものなのだ。
それに、無事に兄弟が産まれてきてほしいという気持ちもあった。
「あぁ。きっと喜ぶんじゃないか?
それにしてもグリーンスライムをお前がなぁ……」
正直に魔物と戦ったことを言う。
後でバレても面倒だし、普通のスライムだと思っていたことも伝えた。
「あれは新人の冒険者程度では、まともに戦えない魔物だ。
きっと、どこかの戦闘から逃げてきたかで弱っていたんだろうな」
そう言って父は一人で納得してくれたみたいだ。
今まで街の外れで見ることはなかったらしいのだが、念のためギルドで対策を考えてみると言う。
怒られはしなかったが、危険だから今後は近付かないようにも言われてしまった。
しかし運が5……というのがどんなレベルなのか……
攻撃力も気になるし、でも魔物と戦う機会は少ないし。
まぁでも僕のステータスどうのというより、単純にタバスコ爆弾の威力がヤバいのだろう。
『実はもう一体……』なんてことを言う必要もないだろうが、ツグミちゃんの方は問題になっていないだろうか?
翌朝、早速先生はその話をされていた。
普通のスライムだけだったから放置されていたのだが、グリーンスライムがいるとなれば話は別らしいのだ。
それに、地面には大きくえぐれた跡があったので、他にも危険な魔物がいるかもしれないなんてことも。
ごめんなさい……そっちの犯人は僕です。
そういえば穴を埋めずに帰ってきちゃったな、失礼しました……
今度から、タバスコ爆弾を使うときは気を付けなくては。
さすがに何度も騒ぎを起こすわけにもいかず、その後、僕たちは大人しく授業を受ける日々を過ごした。
しばらくして、母は無事に女の子を出産した。
僕の時もこんな風に産まれてきたのだろう。
年老いた産婆は街では有名らしく、僕の時にも同じ人に見てもらったのだとか。
腕輪を身につけていた母は、それのおかげだと言って笑顔を見せていた。
少しでも気持ちが楽になってくれたのなら、僕としても嬉しい限りだ。
「この子の名前はアイビス。
女神様がさっき伝えてくれたんだ」
父レイブンが、新しい家族をそっと抱き上げて名前を言った。
僕の時のこともあったし、アイビスという名も、本当に女神が名付けたのかもしれない。
……とすると、僕と同じ転生者だったりする?
いやいや、普通に女神様は誰にでも啓示を授ける殊勝なお方なのかもしれないじゃないか。信じられないけどさ……
産まれてきた子はちゃんと泣くし、僕の時と違ったせいか父は慌てふためいていた。
なんとなく記憶に残っているが、やはり赤ん坊はこのくらい泣くのが普通なんだろうな……
と、そこまでは僕だって知識はある。
さすがに出産の時に、その場にいるほどの勇気は無かったけれど。
問題は、アイビスを産んだ後の母カナリーの様子がおかしいことだった。
「いかんっ、早く治癒師を呼んでくるのじゃ!」
顔色が……これは出血量が多すぎたということなのか?
布越しに、ではあるが何やら産婆が緊急処置を施しているようにも見える。
アイビスをそっと布の上に置いて、すぐに家を飛び出す父レイブン。
「あわわ……」
人間、本当に慌てふためくと、漫画の表現のような言葉もでるものなのだな。
これは直接止血……とかそういうことなのだろうか?
それにしても僕の渡した腕輪の効果はあまり無かったわけだ……
「何か……何か出来ることないの??」
「……どうにもならん、これを治せるのは治癒師だけじゃろうて。
もしくは回復ポーションでも有ればとは思うが……そんなものすぐには……」
すぐには手に入らないもの……名前自体はゲームなんかでよく聞くのだけど。
女神からスキルを授かっているのに、こんな時にポーションの一つも出せないとは……
「いや、あの女神様のことだし……もしかして」
僕はハッとして、すぐにスキルを使用した。
『ドリンクバーの近くに置いてあったアレ』ではなく、『回復効果のあるアイテム』
と思うことで、何かしらは出ないものかと考えたのだ。
「あれ? ……これって」
そう、次の瞬間手に握られていたのは、緑の液体『ハラペーニョ』だったのだ。
確かに『調味料』だと思わなければ、回復できそうな色にも見えなくはない……
ともあれ、すぐにそれを母に振りかけた。
イメージの中ではドロドロだったけれど、フタを開けたそれは、サラサラと流れて瞬時に乾いたように消える。
「お……おおっ!
一体何をしたんじゃ坊主……」
「ごめんなさいっ、ちょっと待っててくださいっ!」
少しは顔色が良くなったみたいなので、僕は再びハラペーニョポーションを取り出す。
直接飲めばより効果は高そうなのだが、ハラペーニョを直飲みする姿はどうにも異様に思えて仕方なかった。
なんとか顔色も良くなって、危機は脱したようだ。
しばらくして、治癒師が見つからないのだと言って戻ってきた父レイブン。
その苦労は認めるが、すでに母は回復しアイビスを抱き抱えていた。
やっぱり出産って危険なものなのだろう。
何事もなくて、本当に良かったと思う僕であった。
『運:5(+5)』
装備をしても上がるのは運だけだったか。
それにたったの5って。元の数値も5だし、僕って運が悪いんだろうなぁ。
家まで付けて帰ったのだけど、食事のときに着けるのは行儀が悪いだろう。
僕はそれを外してテーブルの隅に置いておいた。
父がそれを見てハッと驚いていたのだけど、どうやら冒険者には有名なアイテムのようだ。
「それはっ、グリーンスライムの腕輪じゃないか!」
いやぁ、こういう時に父の言葉は役に立つ。
アイテムのことだったら、やっぱり直接関わりのある人たちの方がよく知っているなぁ。
「どこで手に入れたんだ?
それを身につけると幸せが訪れるっていう貴重なアイテムだぞ?」
えっ? ……いや、普通に(畑で)拾ったんだけど……
僕がスライムを倒して、だけど。
しかし、たった『運+5』で貴重アイテム???
確かにまぁ、上げる方法もわからない運が上がるのは貴重なのかもしれないけれど。
「ねぇお父さん、これお母さんにあげてもいい?
僕は魔法学院にも行けて、毎日おいしいご飯も食べれて幸せだし。
周りがもっと幸せになってくれたら、僕ももっと幸せだよ」
母が幸せではない、というわけではない。
やはり出産が近いと、時々表情が辛そうに見えてしまうものなのだ。
それに、無事に兄弟が産まれてきてほしいという気持ちもあった。
「あぁ。きっと喜ぶんじゃないか?
それにしてもグリーンスライムをお前がなぁ……」
正直に魔物と戦ったことを言う。
後でバレても面倒だし、普通のスライムだと思っていたことも伝えた。
「あれは新人の冒険者程度では、まともに戦えない魔物だ。
きっと、どこかの戦闘から逃げてきたかで弱っていたんだろうな」
そう言って父は一人で納得してくれたみたいだ。
今まで街の外れで見ることはなかったらしいのだが、念のためギルドで対策を考えてみると言う。
怒られはしなかったが、危険だから今後は近付かないようにも言われてしまった。
しかし運が5……というのがどんなレベルなのか……
攻撃力も気になるし、でも魔物と戦う機会は少ないし。
まぁでも僕のステータスどうのというより、単純にタバスコ爆弾の威力がヤバいのだろう。
『実はもう一体……』なんてことを言う必要もないだろうが、ツグミちゃんの方は問題になっていないだろうか?
翌朝、早速先生はその話をされていた。
普通のスライムだけだったから放置されていたのだが、グリーンスライムがいるとなれば話は別らしいのだ。
それに、地面には大きくえぐれた跡があったので、他にも危険な魔物がいるかもしれないなんてことも。
ごめんなさい……そっちの犯人は僕です。
そういえば穴を埋めずに帰ってきちゃったな、失礼しました……
今度から、タバスコ爆弾を使うときは気を付けなくては。
さすがに何度も騒ぎを起こすわけにもいかず、その後、僕たちは大人しく授業を受ける日々を過ごした。
しばらくして、母は無事に女の子を出産した。
僕の時もこんな風に産まれてきたのだろう。
年老いた産婆は街では有名らしく、僕の時にも同じ人に見てもらったのだとか。
腕輪を身につけていた母は、それのおかげだと言って笑顔を見せていた。
少しでも気持ちが楽になってくれたのなら、僕としても嬉しい限りだ。
「この子の名前はアイビス。
女神様がさっき伝えてくれたんだ」
父レイブンが、新しい家族をそっと抱き上げて名前を言った。
僕の時のこともあったし、アイビスという名も、本当に女神が名付けたのかもしれない。
……とすると、僕と同じ転生者だったりする?
いやいや、普通に女神様は誰にでも啓示を授ける殊勝なお方なのかもしれないじゃないか。信じられないけどさ……
産まれてきた子はちゃんと泣くし、僕の時と違ったせいか父は慌てふためいていた。
なんとなく記憶に残っているが、やはり赤ん坊はこのくらい泣くのが普通なんだろうな……
と、そこまでは僕だって知識はある。
さすがに出産の時に、その場にいるほどの勇気は無かったけれど。
問題は、アイビスを産んだ後の母カナリーの様子がおかしいことだった。
「いかんっ、早く治癒師を呼んでくるのじゃ!」
顔色が……これは出血量が多すぎたということなのか?
布越しに、ではあるが何やら産婆が緊急処置を施しているようにも見える。
アイビスをそっと布の上に置いて、すぐに家を飛び出す父レイブン。
「あわわ……」
人間、本当に慌てふためくと、漫画の表現のような言葉もでるものなのだな。
これは直接止血……とかそういうことなのだろうか?
それにしても僕の渡した腕輪の効果はあまり無かったわけだ……
「何か……何か出来ることないの??」
「……どうにもならん、これを治せるのは治癒師だけじゃろうて。
もしくは回復ポーションでも有ればとは思うが……そんなものすぐには……」
すぐには手に入らないもの……名前自体はゲームなんかでよく聞くのだけど。
女神からスキルを授かっているのに、こんな時にポーションの一つも出せないとは……
「いや、あの女神様のことだし……もしかして」
僕はハッとして、すぐにスキルを使用した。
『ドリンクバーの近くに置いてあったアレ』ではなく、『回復効果のあるアイテム』
と思うことで、何かしらは出ないものかと考えたのだ。
「あれ? ……これって」
そう、次の瞬間手に握られていたのは、緑の液体『ハラペーニョ』だったのだ。
確かに『調味料』だと思わなければ、回復できそうな色にも見えなくはない……
ともあれ、すぐにそれを母に振りかけた。
イメージの中ではドロドロだったけれど、フタを開けたそれは、サラサラと流れて瞬時に乾いたように消える。
「お……おおっ!
一体何をしたんじゃ坊主……」
「ごめんなさいっ、ちょっと待っててくださいっ!」
少しは顔色が良くなったみたいなので、僕は再びハラペーニョポーションを取り出す。
直接飲めばより効果は高そうなのだが、ハラペーニョを直飲みする姿はどうにも異様に思えて仕方なかった。
なんとか顔色も良くなって、危機は脱したようだ。
しばらくして、治癒師が見つからないのだと言って戻ってきた父レイブン。
その苦労は認めるが、すでに母は回復しアイビスを抱き抱えていた。
やっぱり出産って危険なものなのだろう。
何事もなくて、本当に良かったと思う僕であった。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる