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1章 ダンジョンと少女
魔法とエーテル
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アレンたちと共に洞窟から出て1週間ほどの時が経った。
近くの村に訪れることとなった凍花は、パンの販売を手伝いながら生活をする。
早朝のピークは過ぎ、少し落ち着いた店頭で凍花は小さく欠伸をすると、そこに一人の女性がやってくる。
「おはようお嬢ちゃん、今日は10個ね。これに入れてちょうだい」
「あ、はい。いつもありがとうございます」
村にはおおよそ500ほどの住人と、一時的に滞在する者が数名。
小さな宿と教会、食事処、冒険者相手のギルドが一軒。
ファンタジーにありがちな獣人や亜人といった人間とはちょっと異なる存在というのものは現状確認ができない。
「……ライ麦パンみたいな見た目。
みんな美味しいって言うんだから、この世界の人はこれが好きなんだろうなぁ」
無発酵パンではないが、食パンほどふわふわではない。
皮ごと挽いているのか、色もやや黒っぽい丸いパンが売り物。
凍花が黒パンと呼ぶそれは、村の皆の主食であり、スライスしたものに野菜や干し肉を挟んで食べるのが一般的だった。
そんなパンの売り子にも慣れた頃、凍花はようやく落ち着いて今の状況を振り返ることになる。
洞窟から出てすぐ、サラは魔物の群れを見つけて迂回を提案。
凍花が顔を出して覗こうとしたところ、驚いたアレンに腕を掴まれ引っ張られてしまう。
『バ、バカかお前は!』
小声で怒るアレンに、凍花は困惑気味でいた。
曰く、魔物という存在は人を見ると無作為に襲いかかってくるものである。
しつこく迫ってくるため、村までやってくることもしばしば。
人間は魔物を狩ることでエーテルを得るが、魔物もまた人間を狩ることで何かを得ているのだとされていた。
草木や果実、鉱石からも少量の力は得られるが、人間がさぞかし美味しそうに見えるのだろう。
だから魔物は通常草の生い茂る場所にいることが多い。
早朝にしては遅い時間、最後の客が残っていた3つのパンをカゴに入れると、銅貨を受け取った凍花は『closed』の看板を置いて伸びをする。
丁度午後の仕込みを終えた店主も顔を出すと、凍花に気さくに話しかける。
「よっしゃ、こっちも今朝の分は終了!
テバちゃんは今日も村の中を見て回るの?」
「お疲れ様ロゼッタさん。
せっかくだし、ギルドに行って出来そうな仕事がないかなって」
活発な娘さんといった印象のロゼッタは、調理スキルを持つ15の少女。
そんな彼女にも歳下に見られてしまった凍花は、現在12歳という設定である。
「若いのにしっかりしてるねぇ。
私なんか、草むしりするくらいなら友達と買い物でも行っちゃうけどさ」
お金が欲しいというのもあるが、それ以上にエーテルが気になっていた凍花。
この世界にも魔法はあり、それを使うためにはエーテルが不可欠であった。
草むしりは村の付近にいながらエーテルを収集可能な仕事。
もちろん薬草があれば、それも買い取ってもらうことができる。
仕事というのかどうかは知らないが、凍花はアルミ缶を回収しながら小銭が落ちていたらラッキーみたいな感覚であった。
そしてクエストに必要なものが、この世界に来て使えるようになったカードの存在だったのだ。
近くの村に訪れることとなった凍花は、パンの販売を手伝いながら生活をする。
早朝のピークは過ぎ、少し落ち着いた店頭で凍花は小さく欠伸をすると、そこに一人の女性がやってくる。
「おはようお嬢ちゃん、今日は10個ね。これに入れてちょうだい」
「あ、はい。いつもありがとうございます」
村にはおおよそ500ほどの住人と、一時的に滞在する者が数名。
小さな宿と教会、食事処、冒険者相手のギルドが一軒。
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「……ライ麦パンみたいな見た目。
みんな美味しいって言うんだから、この世界の人はこれが好きなんだろうなぁ」
無発酵パンではないが、食パンほどふわふわではない。
皮ごと挽いているのか、色もやや黒っぽい丸いパンが売り物。
凍花が黒パンと呼ぶそれは、村の皆の主食であり、スライスしたものに野菜や干し肉を挟んで食べるのが一般的だった。
そんなパンの売り子にも慣れた頃、凍花はようやく落ち着いて今の状況を振り返ることになる。
洞窟から出てすぐ、サラは魔物の群れを見つけて迂回を提案。
凍花が顔を出して覗こうとしたところ、驚いたアレンに腕を掴まれ引っ張られてしまう。
『バ、バカかお前は!』
小声で怒るアレンに、凍花は困惑気味でいた。
曰く、魔物という存在は人を見ると無作為に襲いかかってくるものである。
しつこく迫ってくるため、村までやってくることもしばしば。
人間は魔物を狩ることでエーテルを得るが、魔物もまた人間を狩ることで何かを得ているのだとされていた。
草木や果実、鉱石からも少量の力は得られるが、人間がさぞかし美味しそうに見えるのだろう。
だから魔物は通常草の生い茂る場所にいることが多い。
早朝にしては遅い時間、最後の客が残っていた3つのパンをカゴに入れると、銅貨を受け取った凍花は『closed』の看板を置いて伸びをする。
丁度午後の仕込みを終えた店主も顔を出すと、凍花に気さくに話しかける。
「よっしゃ、こっちも今朝の分は終了!
テバちゃんは今日も村の中を見て回るの?」
「お疲れ様ロゼッタさん。
せっかくだし、ギルドに行って出来そうな仕事がないかなって」
活発な娘さんといった印象のロゼッタは、調理スキルを持つ15の少女。
そんな彼女にも歳下に見られてしまった凍花は、現在12歳という設定である。
「若いのにしっかりしてるねぇ。
私なんか、草むしりするくらいなら友達と買い物でも行っちゃうけどさ」
お金が欲しいというのもあるが、それ以上にエーテルが気になっていた凍花。
この世界にも魔法はあり、それを使うためにはエーテルが不可欠であった。
草むしりは村の付近にいながらエーテルを収集可能な仕事。
もちろん薬草があれば、それも買い取ってもらうことができる。
仕事というのかどうかは知らないが、凍花はアルミ缶を回収しながら小銭が落ちていたらラッキーみたいな感覚であった。
そしてクエストに必要なものが、この世界に来て使えるようになったカードの存在だったのだ。
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