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残り口数
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異世界も娯楽に飢えていたのであろう。
ガチャガチャも次々と新しい形のものが登場し始める。
その最新のものがロッカータイプのものである。
100ゴールドの自販機タイプが進化して、残りの当たりが見てわかるようになっているタイプだ。
「どうせ最後まで当たりなんか入ってねぇんだろ?
新商品って煽っておいて、最初の方に回した俺らが馬鹿みてえじゃねえか」
ハズレ181口で、当たり1口の時によく聞くクレームである。
途中に小当たりも無いから、ハズレしか出ないガチャだと文句をつけられるのだ。
「俺なんてこの間は売り切れまで購入したってのにハズレしか入ってやがらねぇ。
そうしたら『途中で出ることもありますから』だと?
当たりの入ってねぇガチャガチャを放置してんじゃねえ!」
回す以上は当たりが入っている前提で冒険者たちは回している。
一応は小さい文字で『当たりがすでに出ている場合もあります』とは書いてあるが、さすがに30回も40回も回してハズレしか無かったら怒りたくなるのも無理はないのだろう。
そういった声を無くすためにロッカーが導入されたのが最新ガチャである。
「へぇー、俺D賞のフレイムタンが欲しいぜ」
「いいじゃん、やってみろよ。
もう当たり3つも出てるから、そろそろD賞も当たるんじゃねえ?」
いくつものロッカーの中に景品が飾られていて、引換券が出てきたらロッカーが開く仕組みになっている。
鍵が出てくるのが普通だろうと思われるのだが、異世界ではこれも魔道具で作られているからすごい。
カード状の魔道具を番号の同じロッカーに触れさせると自動解錠されるのだから、まるでカードタッチタイプの電気錠である。
そして、こういう新しい筐体が投入されたタイミングというのは狙い目でもある。
「さすがアリアさんだね。
ロッカーの導入って結構お金かかったんじゃない?」
「まぁそれなりにね。
でも楽で良いのよ。景品の補充も一度にまとめてできるし、引き換えはお客さんが勝手にやってくれるからね」
自販機ガチャを4台並べて、景品はランダムで10種類。
おそらく一番高い魔道具はどれかの自販機の一番最後に入っていると思われるのだけど、アリアさんの性格上、大当たりの入っている自販機には小当たりは弱めにしているはずである。
冒険者たちが『新台だ』と盛り上がりながら何度も回し、当たりが出ていないことを確認してから一台の自販機にお金を投入し始める。
「さすがにローマ君でも、大当たりはすぐには出せないでしょー。
今までの4倍入っているからね」
カウンターからアリアが様子を眺めている。
しかし、まずは小手調べでしかない。
5回、6回。
この辺りまではハズレを覚悟していたから何の問題もない。
本番はここからである。
「おっ、小当たりかな。
えっと……J賞か」
「あら、おめでとう。
割と早く当たったじゃないの」
当たり全10種でロッカー4つ目の当たり。
8回目で出たものは一番安い600ゴールドの腕輪なのでマイナスである。
「あら、まだ続けるの?」
「うん。今日は運が良い気がするんだよね」
4台の自販機ガチャのうち、1台はすでに売り切れている。
2番目に効果なB賞は無くなっていて、おそらく売り切れになった自販機から出たのであろう。
しばらく悩みながら様子を見た結果、50から60回で一つの当たりを出すのだと思われた。
そして盛り上がっていた冒険者たちが持って帰った景品も1000ゴールド相当とかなり弱いところである。
一台に入るガチャの数は182口なので、その内100口以上は無くなっている計算となる。
A賞ならば3万ゴールドだが、C賞かD賞なら5000ゴールド程度になる。
ハズレの券で引き換えられるポーションのことを考えても、C賞かD賞ではやや負けてしまう。
だが……
「ローマ君、さすがにやめておいた方が良いんじゃないの?
もう結構使ってるよ?」
「大丈夫ですよアリアさん。
今日はこのためだけに2万ゴールド用意してきましたから」
「2万って、本気ねぇ」
アリアは苦笑する。
まだ3台も残っている内の、1台だけにひたすら集中してお金を入れる姿は子供らしくない。
そして追加で7600ゴールドを入れた時に自販機ガチャは売り切れたのだ。
中には引換券が入っていて、それを取り出したローマの姿を見届けるアリア。
「あのさぁ、ローマ君?」
「ん? どうかしたの、アリアさん?」
「いやさぁ、普通ってA賞が出たら大喜びすると思うんだけど。
なんか無言でロッカーを開けられると不安になるというか……」
「いや、めっちゃ嬉しいですよ。
僕、こんなレアな魔道具あまり持ってないですし」
「一応持ってはいるのね。仕入れるの大変だったんだけどなぁ」
思った以上に安く手に入った時は非常に嬉しいものである。
ただ、騒がないのは当たりが出ることに慣れすぎてしまったからだ。
少しくらい子供らしくしようと思うローマであった。
ガチャガチャも次々と新しい形のものが登場し始める。
その最新のものがロッカータイプのものである。
100ゴールドの自販機タイプが進化して、残りの当たりが見てわかるようになっているタイプだ。
「どうせ最後まで当たりなんか入ってねぇんだろ?
新商品って煽っておいて、最初の方に回した俺らが馬鹿みてえじゃねえか」
ハズレ181口で、当たり1口の時によく聞くクレームである。
途中に小当たりも無いから、ハズレしか出ないガチャだと文句をつけられるのだ。
「俺なんてこの間は売り切れまで購入したってのにハズレしか入ってやがらねぇ。
そうしたら『途中で出ることもありますから』だと?
当たりの入ってねぇガチャガチャを放置してんじゃねえ!」
回す以上は当たりが入っている前提で冒険者たちは回している。
一応は小さい文字で『当たりがすでに出ている場合もあります』とは書いてあるが、さすがに30回も40回も回してハズレしか無かったら怒りたくなるのも無理はないのだろう。
そういった声を無くすためにロッカーが導入されたのが最新ガチャである。
「へぇー、俺D賞のフレイムタンが欲しいぜ」
「いいじゃん、やってみろよ。
もう当たり3つも出てるから、そろそろD賞も当たるんじゃねえ?」
いくつものロッカーの中に景品が飾られていて、引換券が出てきたらロッカーが開く仕組みになっている。
鍵が出てくるのが普通だろうと思われるのだが、異世界ではこれも魔道具で作られているからすごい。
カード状の魔道具を番号の同じロッカーに触れさせると自動解錠されるのだから、まるでカードタッチタイプの電気錠である。
そして、こういう新しい筐体が投入されたタイミングというのは狙い目でもある。
「さすがアリアさんだね。
ロッカーの導入って結構お金かかったんじゃない?」
「まぁそれなりにね。
でも楽で良いのよ。景品の補充も一度にまとめてできるし、引き換えはお客さんが勝手にやってくれるからね」
自販機ガチャを4台並べて、景品はランダムで10種類。
おそらく一番高い魔道具はどれかの自販機の一番最後に入っていると思われるのだけど、アリアさんの性格上、大当たりの入っている自販機には小当たりは弱めにしているはずである。
冒険者たちが『新台だ』と盛り上がりながら何度も回し、当たりが出ていないことを確認してから一台の自販機にお金を投入し始める。
「さすがにローマ君でも、大当たりはすぐには出せないでしょー。
今までの4倍入っているからね」
カウンターからアリアが様子を眺めている。
しかし、まずは小手調べでしかない。
5回、6回。
この辺りまではハズレを覚悟していたから何の問題もない。
本番はここからである。
「おっ、小当たりかな。
えっと……J賞か」
「あら、おめでとう。
割と早く当たったじゃないの」
当たり全10種でロッカー4つ目の当たり。
8回目で出たものは一番安い600ゴールドの腕輪なのでマイナスである。
「あら、まだ続けるの?」
「うん。今日は運が良い気がするんだよね」
4台の自販機ガチャのうち、1台はすでに売り切れている。
2番目に効果なB賞は無くなっていて、おそらく売り切れになった自販機から出たのであろう。
しばらく悩みながら様子を見た結果、50から60回で一つの当たりを出すのだと思われた。
そして盛り上がっていた冒険者たちが持って帰った景品も1000ゴールド相当とかなり弱いところである。
一台に入るガチャの数は182口なので、その内100口以上は無くなっている計算となる。
A賞ならば3万ゴールドだが、C賞かD賞なら5000ゴールド程度になる。
ハズレの券で引き換えられるポーションのことを考えても、C賞かD賞ではやや負けてしまう。
だが……
「ローマ君、さすがにやめておいた方が良いんじゃないの?
もう結構使ってるよ?」
「大丈夫ですよアリアさん。
今日はこのためだけに2万ゴールド用意してきましたから」
「2万って、本気ねぇ」
アリアは苦笑する。
まだ3台も残っている内の、1台だけにひたすら集中してお金を入れる姿は子供らしくない。
そして追加で7600ゴールドを入れた時に自販機ガチャは売り切れたのだ。
中には引換券が入っていて、それを取り出したローマの姿を見届けるアリア。
「あのさぁ、ローマ君?」
「ん? どうかしたの、アリアさん?」
「いやさぁ、普通ってA賞が出たら大喜びすると思うんだけど。
なんか無言でロッカーを開けられると不安になるというか……」
「いや、めっちゃ嬉しいですよ。
僕、こんなレアな魔道具あまり持ってないですし」
「一応持ってはいるのね。仕入れるの大変だったんだけどなぁ」
思った以上に安く手に入った時は非常に嬉しいものである。
ただ、騒がないのは当たりが出ることに慣れすぎてしまったからだ。
少しくらい子供らしくしようと思うローマであった。
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