【思案中】物見の塔の小少女パテマ 〜魔道具師パティのギルド生活〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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捕獲作戦その2

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「いえ、パティから自分の力でやってみるように言われたんですよ。
 ヒントももらってますし、いつも頼りっきりだから僕も自分の力でやってみたくて」
「そうかい?
 まぁあの子ならその捕まえる方法ってのも知ってるんだろうけど。
 そうだね、アンタへの試験みたいなもんだと思うことにするよ。
 成功したらまた来な、パティも喜んでくれるだろうさ」
「はいっ、がんばります!」
 まさか下でシンとアビルマがそんな会話をしているとは思わないパティ。
 夕方になって食事の時間になっても部屋から出てくる様子はなく、アビルマはこれを察して静かにしておくことにした。

 パティのことだからいつものように魔道具を作っているだろう。
 その方が楽しいのだろうし、毎日退屈なことに付き合わせるのも申し訳ない。
 そう考えたシンは一人でピアラビット捕獲作戦を決行することにした。
「強い魔物がいれば、弱い魔物は周囲から消えちゃうんだから……
 強い魔物を置いてピアラビットを追い詰めて、そこを一網打尽に!
 ……ピアラビットも捕まえられないのに、どうやって強い魔物を捕まえるんだよ……」
 草むらを目の前に、シンはぶつぶつと独り言。
 先日パティと共にいた時は、こんなにも町の近くにピアラビットはいなかった。
 日によって出現ポイントが違うのだろうか?
 行動パターンがあって、明日はまた別の場所に行くのではないか?
 色々と思考を巡らせるシンだが、結局のところ罠を置いて様子を見ることしかできずに途方にくれていた。
「ええいっ、もうっ!」
 さすがに2日間も何の成果もないとなると、シンも若干苛立ってしまう。
 ブンと振り回した剣に驚き、草むらから10匹ものピアラビットが散り散りに移動し始めた。
「そんなにいるのに……なんで1匹も罠にかからないんだよ」
 そうボヤくと、シンは町へと戻ることにする。
 何も収穫がないのでは生活が成り立たない。
 墓地で少しだけでも薬草を採取し、捕獲についてはまた翌日にすることに決めたのだ。

 翌日もまたギルドに訪れるシン。
 アビルマがその姿を見るや否や、手招きして呼び寄せる。
「どうかしました?」
「なぁに、パティが誘ってくれないからっていじけてるからさ。
 上に行って呼んでやりなよ」
「あははっ、そんなわけないですよ。
 一昨日もずっと『退屈だ~』って不貞腐れてましたよ。
 今頃魔道具作りに夢中だと思いますし、邪魔しちゃ悪いですからねっ」
 そう言いながら先日採った薬草をフェルトの元へと換金に持っていくシン。
「ちょっと、アンタ……
 やれやれ……それだけ信用されてるってことなのか、一体何なのかねぇ?」

 この日のセンはパティの言葉をずっと考えていた。
 草むらの前に立ち、ピアラビットの行動を見続ける。
 今日も特に変わった様子はなく、綿毛の生えている草や雑草の中をガサゴソと飛び回っているピアラビット。
「魔物は強い魔物からは遠ざかるってことだよね……
 あとは少なく見えても意外と群れている。
 草むらの中にいることがほとんどで、滅多に他では見ない……」
 プログラム?
 たしかに食べ物を探す様子もなく、その辺りをうろうろするばかり。
 土を食べているか草をたべているのか。
 そうだとしても、毎日これだけの数がいれば荒れた様子も伺えるはずである。

 せっかくなので綿毛も採取しようと思い、シンは草むらの中を慎重に入ってみることにした。
「この程度じゃ逃げないのか……
 ゆっくり近付い……うわっ⁈」
 逃げないのではなく、不用意に近づくと襲いかかってくるピアラビット。
 咄嗟にその体当たりをかわすと、物音に驚いた周囲のピアラビットたちは一斉に移動を開始した。
「痛ったた……また怪我するところだったよ……」
 幸い転んだだけで済んだのだが、やはり素手でピアラビットを捕獲するのは難しそうであった。
 あの様子では捕まえたとしても暴れるのは目に見えている。
 すっかりと魔物のいなくなってしまった草むらで、一人黙々と綿毛を摘みながら何か方法はないかと、頭を巡らせるばかりであった。
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