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8章《勇者と魔王》
13話
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辺りの魔素が急に失われていくのが感じられた。
僕が感じた初めての感覚だったというのに、それが決して良くないことだと理解させられるのだ。
「……さすがにすぐには馴染まない……わね」
リリアが何かを呟くと、今度は急に意識を失ったように棒立ちになって目を閉じていた。
「リリア……大丈夫?」
僕の問いかけに気付いたリリアがゆっくりと目を開ける。
「え? なによ驚いた顔して、何かあったの?」
そりゃあ驚くだろう。
嫌な予感がしたと思ったら、すぐにリリアがおかしくなるのだから。
本人は何もないと言っていたし、そのダウンロードとかいう作業を済ませたミントも、特に情報は得られなかったと言う。
とにかく外に出て、改めて周囲を見回す僕たち。
施設内や荒れた大地に変化はなく、ダウンロードというものが何だったのかは謎のままだった。
「そうだ! 思い出したんだけど、三つ目のダンジョンをどこかに作ろうって話じゃなかったっけ?」
この大地なら誰かが住んでいるわけではないし、どのみちドラゴンとはここで戦うのだから、と来てみたが。
「魔素が薄いんじゃ、ユーグも干渉し辛いんだって言ってたし。
仕方ないけど、私たちの大陸に戻りましょうか……」
ダンジョンの作成自体は可能だけど、中の転移機能なんかは正常に働かない可能性があるのだとユーグは言う。
ごくわずかの管理だけならばともかく、巨大なダンジョンとなると自信は全くないらしい。
月を生み出したり魔素を媒体に様々な現象を引き起こす割には、融通のきかない能力だ。
『セン、今私のこと何か言いましたか?』
「……いえ、何も……」
しかもヤマダさんみたいに、人の心を読むことができるのかもしれない。
やり辛いったらないなぁ。
「そろそろ私たちは行くわね。
二人とも、ずっとここにいるの?」
二人というか、一体と一匹なのだけど、リリアはブランとミントに声をかけていた。
「私たちは魔王様の命に従いますし、基本的には魔王様がここの施設で合成を行う邪魔が入らないようプログラムされております」
ブランは再起動以前のまま動いている。
「私のことなんかいいから、自分で考えて動きなさいよ。
もちろんエコモードってやつでだけどね」
そう伝えると、『ではどこまでもお供いたします』なんて言うのだから、本当にリリアのことを魔王様だと思っているのだろうなぁ。
問題は、エコモードに切り替えたはずなのに、すでに残魔素量が半分になっていると伝えられたことだが、どうも再起動時の影響じゃないかとブランは言った。
「じゃあ私もついてっちゃう!
前みたいに勇者とかいうのが暴れにきたら大変だもん」
「勇者ですか、それは確かに大変ですね。
さすがに今はもう生きてはいないでしょうが、意思を受け継いだ者がいないとも限りません。
用心に越したことはないでしょうね」
そんなことを言いながら、ミントまでもが僕たちの村についてくると決めた。
リリアと僕がピヨちゃんに跨ると、羽を広げたピヨちゃんは地面に立っていたブランを脚で捕まえて飛び立つ。
命令したわけではないけれど、ピヨちゃん的にはブランは荷物に見えたのかもしれない。
「最初の村から出たのは初めてだわ……
いえ、この子の記憶……海……なるほど。まぁこれも一興ね……」
風の音でリリアが何か喋っているのが聞こえない。
聞き返したところでろくな返事は返ってこなかったし、独り言を呟いているか?
なにせ不思議なものをたくさん見てしまったのだから、思うことも色々とあるのだろう。
上空から地表を眺めると、意外と人の住む地域とは狭いものだった。
魔物の影響が大きいのだろうけれど、あれだけ戦争だと騒いでいた隣国との間には、普通に凶悪そうな魔物の住む平地がある。
どう考えても、一般の兵がアレを倒して隣国に攻め入るとか、無理な話なんだよなぁ……
たとえ戦争を仕掛けて勝ったところで、隣国にだってそれほど有用な土地など無い。
道中に時折見えるのは、ケムリ玉を投げまくって魔物から逃げる商人の乗った馬車。
あるいは粉々に砕かれた荷馬車の残骸だ。
冒険者の活動範囲も、大きめな街の周辺に限っている。
エメル村周辺だけが異常で、数名は山の上に入っていったり、サラマンドル湿地帯でリザード狩りをする姿が見えていたり。
例によって初級ダンジョンには行列ができていたが、他のどの国を見て回ったってそんな村ありはしない。
「寝ている間にここまで荒廃しているなんて……
ふふっ、面白くなってきたわ……」
「え? 何か面白いものでも見つけたの?」
相変わらず先ほどからリリアの様子が変だ。
普通に振り向いて喋りかけてくることもあるし、聞いても返事がないこともあるのだけどどうしたのだろう?
僕は、エメル村の南にある森を越えた先の海岸沿いを選択。
こんなにも近くに海があるとは思っていなかったのだが、実はこれもユーグの力で森よりも南に行き辛いようにしていたからだそうだ。
『海に近いあの辺りは、魔素が濃く魔物も強いのです。
それに、海の中にまでエリアを設けてはいないので、どこから強力な魔物が姿を現すかはわかりません』
簡単に言えば、僕たちを守るために余計な場所へ行かないように力を使っていてくれたのだそうだ。
それでも魔族領への道は残されているし、昔は普通に森を越えて海沿いで素材集めをしていた冒険者もいたそうだ。
『山田はよくあの辺りでキャンプをしていましたね。
転移すれば街に戻れるのに、雰囲気を味わうんだとか言ってましたっけ』
そんなことをユーグが教えてくれる。
「へぇ……あの勇者がそんなことを、ねぇ……」
『そうそう、あの当時は勇者ヤマダなんて呼ばれてましたね。
あら? でも私そんなこと伝えましたっけ?』
不思議そうに喋るユーグ。
「んー、きっとヤマダさんが自分で言ったんじゃないの?」
『そうでしょうか……あの山田が……』
府に落ちない、といった感じだろうか?
リリアも口数はそれほど多くなく、真偽はわからない。
どうでもいいと言われればどうでもいいことではあったし、今はダンジョンを作るために銀の世界樹の種を植えなくては。
ひとまず近くの、水に流されなさそうな場所で種を投げる。
ユーグは先ほどの話の続きと言わんばかりに、ヤマダさんの話をし始めるのだった。
ヤマダさんは勇者という肩書が好きではなかったみたいだ。
だから自分から『昔は勇者と呼ばれていた』などと言うとは思えなかったのだと。
世界を守るためといえば聞こえがいいが、結局はどの国も自分たちに利害のあるものにしか関心が無いのだと嘆いていたのだとか。
とある国で巨大なワイバーンが鉱山に巣食ったのなら、騒ぎに乗じた隣国の王は金属を買い占めるよう通達した。
ろくな武器が手に入らなくなったものだから、被害は拡大しその後数年で国は壊滅状態に陥ってしまう。
そんなつまらない話が、幾度となくヤマダさんの目の前で起きる。
『どうして俺たちにもっと早く伝えなかったんだ!
そう激情して王に歯向かっていらっしゃいましたね』
王はヤマダさん達に伝える手段を持っていた。
だが、せっかく秘密裏に入手した情報だ。
財政難ということもあったのかもしれないが、そこで少しでも国の……いや、我が身の利になるように働きかけたのだろう。
ある程度時間が経ち、ワイバーンは討伐されたが被害は甚大。
しばらくは鉱山は封鎖され、新たに採掘を申し出る者もほとんどいなくなってしまった。
王の狙いはみごとに上手くいき、国には多大な利益を産むことになった。
ヤマダさんがいなければ……だったのだが。
『それまでも小さな諍いはありましたが、その事件が引き金となってしまいましたね』
そして遂にヤマダさんの怒りは頂点に達してしまった。
僕たちの今住んでいる国から、人族を除く全ての種族を別の大陸に移り住まわせたのだ。
エルフの知識と隠れ里の秘術は魔物から街を守っていた。
ドワーフの鍛治と力は素材の収集と装備作りに役立っていた。
獣人族の狩りの腕は人族の何倍も優れていて、有翼人が空の旅を提供する。
もちろん他にも多くの種族が生活を支え合っていたのだが、どの国も人族が王に就いていた。
貪欲なまでの金銭欲と悪知恵。狡猾さとでも言い換えようか。
力で敵わない種族には、子供の頃から爪と牙を折り恐怖を植え付ける、なんて話を聞いただけでも、僕は頭に血が昇りそうだった。
何だかんだ魔物による被害は少なかったため、多少の奴隷制度や種族差別には目を瞑ってきたヤマダさん。
小さい少女が貴族に買われていく、なんて話は、昔はよくあることだったそうだ。
『しばらくして、私の力もかなり落ちてしまいましたし。
山田が魔族の王と呼ばれ始めてすぐに私は眠りについてしまいましたが』
すぐ、とは言うものの、ユーグにとってのその『すぐ』が五十年らしいのだから、どう反応していいものか……
「ヤマダさんが勇者かぁー。
そうだと思うと、そんなふうにも思えてくるや」
ユーグの話に少しだけ感心していた僕。
「女の人侍らせて、好き勝手してるだけの男じゃなかったのね」
しかし、さすがリリアだ。
良い話を聞いたところで、ヤマダさんの評価は大して上がるものでもない様子。
カサカサと木の葉の揺れる音がする。
海岸から離れた木の近くに魔物がいるようだ。
「魔王様、この辺りには魔物が彷徨いているようですが……」
スッと剣を構えて戦闘姿勢に入るブラン。
その脇ではミントが魔物の情報をブランに伝えていた。
「ん? 大丈夫よブラン。
今の私ならその勇者にだって負ける気はしないわ」
リリアはブランを押し除けて前に出る。
インベントリから普段なら使わないような短剣を取り出して、急に合成スキルを使ったかと思うと、リリアはその短剣を魔物目掛けて投げつける。
爆発……と言うよりも、短剣の刺さった周囲が突如消えてしまった。
まるで一帯まるごとインベントリに片付けられたかのように……
僕が感じた初めての感覚だったというのに、それが決して良くないことだと理解させられるのだ。
「……さすがにすぐには馴染まない……わね」
リリアが何かを呟くと、今度は急に意識を失ったように棒立ちになって目を閉じていた。
「リリア……大丈夫?」
僕の問いかけに気付いたリリアがゆっくりと目を開ける。
「え? なによ驚いた顔して、何かあったの?」
そりゃあ驚くだろう。
嫌な予感がしたと思ったら、すぐにリリアがおかしくなるのだから。
本人は何もないと言っていたし、そのダウンロードとかいう作業を済ませたミントも、特に情報は得られなかったと言う。
とにかく外に出て、改めて周囲を見回す僕たち。
施設内や荒れた大地に変化はなく、ダウンロードというものが何だったのかは謎のままだった。
「そうだ! 思い出したんだけど、三つ目のダンジョンをどこかに作ろうって話じゃなかったっけ?」
この大地なら誰かが住んでいるわけではないし、どのみちドラゴンとはここで戦うのだから、と来てみたが。
「魔素が薄いんじゃ、ユーグも干渉し辛いんだって言ってたし。
仕方ないけど、私たちの大陸に戻りましょうか……」
ダンジョンの作成自体は可能だけど、中の転移機能なんかは正常に働かない可能性があるのだとユーグは言う。
ごくわずかの管理だけならばともかく、巨大なダンジョンとなると自信は全くないらしい。
月を生み出したり魔素を媒体に様々な現象を引き起こす割には、融通のきかない能力だ。
『セン、今私のこと何か言いましたか?』
「……いえ、何も……」
しかもヤマダさんみたいに、人の心を読むことができるのかもしれない。
やり辛いったらないなぁ。
「そろそろ私たちは行くわね。
二人とも、ずっとここにいるの?」
二人というか、一体と一匹なのだけど、リリアはブランとミントに声をかけていた。
「私たちは魔王様の命に従いますし、基本的には魔王様がここの施設で合成を行う邪魔が入らないようプログラムされております」
ブランは再起動以前のまま動いている。
「私のことなんかいいから、自分で考えて動きなさいよ。
もちろんエコモードってやつでだけどね」
そう伝えると、『ではどこまでもお供いたします』なんて言うのだから、本当にリリアのことを魔王様だと思っているのだろうなぁ。
問題は、エコモードに切り替えたはずなのに、すでに残魔素量が半分になっていると伝えられたことだが、どうも再起動時の影響じゃないかとブランは言った。
「じゃあ私もついてっちゃう!
前みたいに勇者とかいうのが暴れにきたら大変だもん」
「勇者ですか、それは確かに大変ですね。
さすがに今はもう生きてはいないでしょうが、意思を受け継いだ者がいないとも限りません。
用心に越したことはないでしょうね」
そんなことを言いながら、ミントまでもが僕たちの村についてくると決めた。
リリアと僕がピヨちゃんに跨ると、羽を広げたピヨちゃんは地面に立っていたブランを脚で捕まえて飛び立つ。
命令したわけではないけれど、ピヨちゃん的にはブランは荷物に見えたのかもしれない。
「最初の村から出たのは初めてだわ……
いえ、この子の記憶……海……なるほど。まぁこれも一興ね……」
風の音でリリアが何か喋っているのが聞こえない。
聞き返したところでろくな返事は返ってこなかったし、独り言を呟いているか?
なにせ不思議なものをたくさん見てしまったのだから、思うことも色々とあるのだろう。
上空から地表を眺めると、意外と人の住む地域とは狭いものだった。
魔物の影響が大きいのだろうけれど、あれだけ戦争だと騒いでいた隣国との間には、普通に凶悪そうな魔物の住む平地がある。
どう考えても、一般の兵がアレを倒して隣国に攻め入るとか、無理な話なんだよなぁ……
たとえ戦争を仕掛けて勝ったところで、隣国にだってそれほど有用な土地など無い。
道中に時折見えるのは、ケムリ玉を投げまくって魔物から逃げる商人の乗った馬車。
あるいは粉々に砕かれた荷馬車の残骸だ。
冒険者の活動範囲も、大きめな街の周辺に限っている。
エメル村周辺だけが異常で、数名は山の上に入っていったり、サラマンドル湿地帯でリザード狩りをする姿が見えていたり。
例によって初級ダンジョンには行列ができていたが、他のどの国を見て回ったってそんな村ありはしない。
「寝ている間にここまで荒廃しているなんて……
ふふっ、面白くなってきたわ……」
「え? 何か面白いものでも見つけたの?」
相変わらず先ほどからリリアの様子が変だ。
普通に振り向いて喋りかけてくることもあるし、聞いても返事がないこともあるのだけどどうしたのだろう?
僕は、エメル村の南にある森を越えた先の海岸沿いを選択。
こんなにも近くに海があるとは思っていなかったのだが、実はこれもユーグの力で森よりも南に行き辛いようにしていたからだそうだ。
『海に近いあの辺りは、魔素が濃く魔物も強いのです。
それに、海の中にまでエリアを設けてはいないので、どこから強力な魔物が姿を現すかはわかりません』
簡単に言えば、僕たちを守るために余計な場所へ行かないように力を使っていてくれたのだそうだ。
それでも魔族領への道は残されているし、昔は普通に森を越えて海沿いで素材集めをしていた冒険者もいたそうだ。
『山田はよくあの辺りでキャンプをしていましたね。
転移すれば街に戻れるのに、雰囲気を味わうんだとか言ってましたっけ』
そんなことをユーグが教えてくれる。
「へぇ……あの勇者がそんなことを、ねぇ……」
『そうそう、あの当時は勇者ヤマダなんて呼ばれてましたね。
あら? でも私そんなこと伝えましたっけ?』
不思議そうに喋るユーグ。
「んー、きっとヤマダさんが自分で言ったんじゃないの?」
『そうでしょうか……あの山田が……』
府に落ちない、といった感じだろうか?
リリアも口数はそれほど多くなく、真偽はわからない。
どうでもいいと言われればどうでもいいことではあったし、今はダンジョンを作るために銀の世界樹の種を植えなくては。
ひとまず近くの、水に流されなさそうな場所で種を投げる。
ユーグは先ほどの話の続きと言わんばかりに、ヤマダさんの話をし始めるのだった。
ヤマダさんは勇者という肩書が好きではなかったみたいだ。
だから自分から『昔は勇者と呼ばれていた』などと言うとは思えなかったのだと。
世界を守るためといえば聞こえがいいが、結局はどの国も自分たちに利害のあるものにしか関心が無いのだと嘆いていたのだとか。
とある国で巨大なワイバーンが鉱山に巣食ったのなら、騒ぎに乗じた隣国の王は金属を買い占めるよう通達した。
ろくな武器が手に入らなくなったものだから、被害は拡大しその後数年で国は壊滅状態に陥ってしまう。
そんなつまらない話が、幾度となくヤマダさんの目の前で起きる。
『どうして俺たちにもっと早く伝えなかったんだ!
そう激情して王に歯向かっていらっしゃいましたね』
王はヤマダさん達に伝える手段を持っていた。
だが、せっかく秘密裏に入手した情報だ。
財政難ということもあったのかもしれないが、そこで少しでも国の……いや、我が身の利になるように働きかけたのだろう。
ある程度時間が経ち、ワイバーンは討伐されたが被害は甚大。
しばらくは鉱山は封鎖され、新たに採掘を申し出る者もほとんどいなくなってしまった。
王の狙いはみごとに上手くいき、国には多大な利益を産むことになった。
ヤマダさんがいなければ……だったのだが。
『それまでも小さな諍いはありましたが、その事件が引き金となってしまいましたね』
そして遂にヤマダさんの怒りは頂点に達してしまった。
僕たちの今住んでいる国から、人族を除く全ての種族を別の大陸に移り住まわせたのだ。
エルフの知識と隠れ里の秘術は魔物から街を守っていた。
ドワーフの鍛治と力は素材の収集と装備作りに役立っていた。
獣人族の狩りの腕は人族の何倍も優れていて、有翼人が空の旅を提供する。
もちろん他にも多くの種族が生活を支え合っていたのだが、どの国も人族が王に就いていた。
貪欲なまでの金銭欲と悪知恵。狡猾さとでも言い換えようか。
力で敵わない種族には、子供の頃から爪と牙を折り恐怖を植え付ける、なんて話を聞いただけでも、僕は頭に血が昇りそうだった。
何だかんだ魔物による被害は少なかったため、多少の奴隷制度や種族差別には目を瞑ってきたヤマダさん。
小さい少女が貴族に買われていく、なんて話は、昔はよくあることだったそうだ。
『しばらくして、私の力もかなり落ちてしまいましたし。
山田が魔族の王と呼ばれ始めてすぐに私は眠りについてしまいましたが』
すぐ、とは言うものの、ユーグにとってのその『すぐ』が五十年らしいのだから、どう反応していいものか……
「ヤマダさんが勇者かぁー。
そうだと思うと、そんなふうにも思えてくるや」
ユーグの話に少しだけ感心していた僕。
「女の人侍らせて、好き勝手してるだけの男じゃなかったのね」
しかし、さすがリリアだ。
良い話を聞いたところで、ヤマダさんの評価は大して上がるものでもない様子。
カサカサと木の葉の揺れる音がする。
海岸から離れた木の近くに魔物がいるようだ。
「魔王様、この辺りには魔物が彷徨いているようですが……」
スッと剣を構えて戦闘姿勢に入るブラン。
その脇ではミントが魔物の情報をブランに伝えていた。
「ん? 大丈夫よブラン。
今の私ならその勇者にだって負ける気はしないわ」
リリアはブランを押し除けて前に出る。
インベントリから普段なら使わないような短剣を取り出して、急に合成スキルを使ったかと思うと、リリアはその短剣を魔物目掛けて投げつける。
爆発……と言うよりも、短剣の刺さった周囲が突如消えてしまった。
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