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7章《チートマジシャン》
14話
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『イクリプス』
ヤマダさんが名付けたこの名前には、蝕むとか、姿を消すという意味があるらしい。
何が言いたいのかって?
魔物の名前にも、ちゃんと攻略のヒントは隠されているんだなぁってことだ。
とはいうものの、僕たちにその意味がわかるはずがないので、ヒントにはなりようがないのだけど。
「じゃあさ……七体同時に倒したらどうなるかなぁ……」
何度も復活する魔物相手に、疲れ切った様子のリリアはそう言った。
一度に膨大な魔力を消費するのは非常に辛い。
時折交代しながら、僕とテセスもその杖を振っていた。
だが、一体ずつ処理していたのでは、魔物の復活に追いつかず、全てを倒す事が出来なかったのだ。
それに、ちょっとでも手を休めれば、あの漆黒の剣が飛んでくる。
どうにも終わりが見えない状況の中、リリアは残っていた魔力回復薬を使い、七体同時に攻撃を仕掛けてみると言う。
だが、実はすでに同じことは行っていたのだ。
当然倒せる魔物の数が多いほど楽になると思い、都合よく固まっていた三体に同じ攻撃を仕掛けてみた。
ところが、やはり魔物の数が増えればその分威力は減少するらしい。
三体どころか、その一撃では一体も倒すことはできなかった。
そんなことは重々承知だというリリア。
アステアも限界が近く、ひとまずコルンと変わって下がってくる。
「だったら四発でも五発でも撃つわ。
うまいこと一緒に倒せたら、それで……チャンチャン、よ」
「チャンチャンってなんです?」
「あら、王都じゃ読み聞かせとか無かったのかしら、アステア?
私たちが物語の締めくくりに使う言葉よ。
めでたしめでたしとか、そういう意味だと思ってくれていいわ」
そう笑いながら、すぐに杖を振るのではなく、魔法を使う時と同様に魔力を込めている。
一発一発の威力を高めるのに、杖の効果に自分の魔力をさらに上乗せしようとしているのだろう。
もしかしたら他の武器でも使える方法かもしれない。
サラッと当たり前のようにやっているリリアだが、簡単に思いつくことではないだろう。
「なんだかわかんないけど、いっけぇー!」
そう言いながらリリアが杖を思いっきり振りかぶる。
いつもなら技の名前も大事にしているリリアが、そんな余裕もないのだろう。
ミアの戦っているギリギリまで広がった黒い『なんだかわかんないもの』が、七体の魔物を覆い尽くす。
「もういっちょー!」
なんだかわかんないものが、消えそうになったタイミングでもう一撃。
ダメージもかなりのものらしく、技を受けている間は魔物も身動きが取れないようだ。
さらに続けてもう一撃。
リリアの額から汗が流れるのが見える。
魔力の減少で、かなり辛いのだろうことがわかる。
ミアが駆け寄ってくると、すぐにリリアの様子に気付いて声をかけていた。
「リリア、そんなに無茶して大丈夫なの?」
「だ……大丈夫よ、このくらい」
急激な魔力の枯渇による魔力酔いの辛さは、正直言って経験者にしか分からない。
徐々に気持ち悪くなるのではなく、ダメージを受けているわけでもないのに立っていられないほどに苦しくなるのだと聞いた。
魔力量が多ければ多いほど、その辛さは比例して大きくなるそうだ。
僕は……経験していない。
杖を渡しておいてなんだが、正直一回振っただけでも結構くるものがあったのだ。
こんなことを何度も繰り返すなんて……
「あ、あと一回で倒れてくれる……かな?」
リリアが再び魔力を杖に込め始める。
ポタリと大粒の汗が落ち、リリアの表情も青白く見えてしまう。
「ぼ、僕がやるよっ!
ほら、ミアも下がって来たんだし、精度はそれほどいらないからさっ!」
半ば無理やりにリリアから杖を奪い取ると、やはり無理をしていたのだろうリリアは、途端に力が抜けたように後ろに倒れ込んでしまった。
「リリアちゃん!」
咄嗟に前に出てリリアの身体を支えるテセス。
僕も声をかけたいところではあるが、今はここまで魔物の体力を削ってくれたリリアのため、振り返らずに杖を構える。
魔物の上空に再び円陣が描かれ、すでに黒い剣が宙を舞っている。
大丈夫……きっとこの杖の威力なら、魔物の攻撃ごと吹き飛ばせるに違いない……
風や水の上位のさらに上級魔石まで使っているんだから、そう簡単にやられたりはしないっ!
そう思いながら杖を大きく振ると、黒い濁流が生まれ、その魔法は魔物の発動した円陣ごと七体の魔物を巻き込んでいった。
だが円陣は消えない。
一本目は濁流に呑まれ事なきを得た。
二本目はどうにか僕の持つ杖で防いでやった。
三本目と四本目は大きく外れて五本目も濁流の中へ。
「よしっ……⁈」
この調子なら、と安堵すると6、7本目が魔法を突き破って僕目掛けて勢いよく飛んできた。
さすがに二本同時に防ぐ手立ては……
ザクッ……
頭と胸のどちらを守るかって、そんなもの条件反射的に頭を守るに決まっているし、その判断が間違ったとは思わない。
だけど、その一撃が命取りになったのだから、結果的には間違いなのかもしれない。
いや、頭でも確実に死んでいただろう。
僕の判断は間違ってはいない……。
魔力で作られた闇の剣は、刺さった瞬間に急激に僕の意識を刈り取っていった。
その技特有の効果なのか、それとも胸に剣が刺さると、誰だってこうやって意識が遠のいていくのかはわからない。
濁流が消え、七体の魔物はいなくなったのだが、それも一瞬だけの事だった。
ボヤける視界の中で、再び蘇る七体の魔物。
ふと視線を外して仲間たちを見ると、心配そうにするテセスとコルンが見える。
「あ……れ……?」
視界の片隅に小さな円陣が浮かぶのが見えるが、その方向には誰もいない。
じゃあ一体、あの円陣はなんなのだろうか?
七体の魔物……そして……
僕は薄れゆく意識の中で、その円陣を指差して言った。
『本体……が……』と……
…………
時間が経ち、ダンジョンから出てきたテセスは相変わらず具合の悪そうなリリアを抱えている。
「ごめん、私は先にリリアちゃんを寝かせに家に戻るわね」
「お、おう……早く良くなるといいな」
弓をインベントリに片付けると、コルンもまた家に戻ると言う。
「じ、じゃあ私たちも……」
言いよどみながら村へと歩み出すアステアとバリエ。
フードをかぶった黒いローブの少女(実年齢不明)は、ダンジョンの出口で一人立っていた。
若干のもどかしさと、苛立ちが混ざった感情をどうして良いものかと考えているのだ。
確かにボスは倒す事ができた。
それはセンが本体を見つける事ができ、その指差す意図を汲みとったコルンが、間違う事なく行動をとったからだ。
そしてリリアもまた、自らの身を痛めつけながらも可能性を信じて行動した。
それもきっと、センが作った武器を信じたからとれた行動なのだろう。
結果として三人のおかげでボスは倒せたのだ。
あれほど弱いと思っていた三人に、私は守られてしまった立場なのだろうか?
「だから、そんなやり方されたって笑えないよ!
寿命が縮むかと思ったんだよ? いや、縮んだね! だって死んだんだもん!」
「いーじゃねぇか、それくらいしないといつまでも弱っちいんだからよ。
つーか、俺がやらなかったら、どうせお前たち、近いうちに死んでたぜ。
まだ二つ目なんだぞ。このダンジョン」
「そ、そうかもしれないけどさぁ。
もうちょっと教えてくれたっていいんじゃない??」
遅れてダンジョンから出てくる二人の男。
一人は黒いマントにトゲトゲ頭の魔王様。
もう一人は、死してなおボス討伐のヒントを見つけた村の少年。
「なんで私にまで内緒だったんですかっ……」
いつもなら絶対に口答えなどしない少女、まぁ種族の中では比較的若いのかもしれないから、見た目通り少女でもいいだろう。
「悪かったよ、ミアもコイツらのことあまり信頼してないみたいだったからさ。
ま、俺は見てて面白かったけどな。
それに、お前ももうちょっと周囲に気を配らなきゃならないみたいだしな」
「うぐっ……そ、それは……」
もどかしい感情に苛立つ感情、それはミア自身にも試練が与えられていたと知らされて悔しいという想い。
そして、思いの外村の少年少女が強いのだと知り、そうは認識したくない反抗心だった。
「もうちょっと本気で攻略してくれれば、俺からこんなちょっかいはかけねーよ」
「そう思うのなら、攻略法なんかは教えてくれても良いんじゃ?」
「嫌だね、楽しくないことはやりたくない。
ただでさえ数百年退屈してんだ。
少しくらいわがまま言わせろや」
そんなことを言う魔王だが、実は半分以上は攻略法を覚えていない。
センだけではない。これでも十分魔王なりに頑張っていることを、誰にも知られないように行動しているのが魔王ヤマダなのだった。
翌日、とね屋にはセンを除いたみんなの姿が集まっている。
「じゃあ、本体以外にどれだけ攻撃しても無駄だったの?」
驚いた様子でリリアが魔王ヤマダに問い詰める。
「無駄じゃないけど、本体は分け合った体力を自己再生のスキルで回復するようにしてあったな。
俺たちがスキルを使うと世界樹の力を使うことになるが、魔物にとっての回復は、世界樹にとってはありがたい効果だからな」
暗黒龍のエネルギーが魔物にとってのエネルギー。
つまり、ユーグが暗黒龍から吸い取った力の放出先でもあるらしい。
『おかげさまで、多少は力が使えるようになりましたわ』
姿は見えないが、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「無駄に力使ってんじゃねーよ。
大人しく寝とけ……」
その声に反応するように、魔王ヤマダが返答し、箸を手に料理を頬張っていた。
「センは……やっぱり?」
心配そうにテセスが魔王ヤマダに聞く。
「あぁ、さすがにあそこまで言われて悔しかったみたいだぜ。
昨日は母親に怒られるのも覚悟でダンジョンに潜って素材集め。
今はどこかで合成スキルを試してるんじゃないか?」
戦いの後、ミアがセンを生き返らせるまでは良かったのだけど、その直後に魔王ヤマダが現れると全員が驚いた。
あのミアですら、その場にいたとは知らされていなかったのだ。
センと魔王ヤマダは色々と言い合ってたし、ミアも泣きだして、それ以降テセスたちはミアの言葉を聞いていなかった。
また深々とフードを被って、いつものミアのままである。
「ね、ねぇミアちゃん……?」
「……」
チラッとだけテセスの方を向き、すぐに正面の料理を口に運ぶミア。
「えっと……」
「テセスちゃん気にすんなよ。
フードを被ってる時は、いつもこんな感じだからよ。なっ、ミア」
「まぁ……そうですけど。
……今回ばかりは……魔王様のこと嫌いになりそうだった……」
「ま、マジか⁈
いやスマんかった!
他の部下だとむさっ苦しいし、ミアにはずっと一緒にいてもらいたいんだが」
焦った様子の魔王ヤマダを見ると、やっぱりミアのことが好きなんだろうと思ってしまうテセス。
ミアからの返事は『もう一回言ってくれたら許す』とのこと。
「他の部下だと……」
「そこはいらない。モグモグ……むしろ聞きたくない」
「……」
「どうしたの? モグモグ……言わないのならずっと怒ってるよ」
目の前の料理から視線を移さず、ひたすら料理を口に運ぶミア。
「……わぁかったよ!
ミア、お前は死ぬまでずっと俺と一緒にいろ。
他の女を魔王城に呼んだりもしない、お前だけが俺の女だ」
『すごい、こんな告白の場面に直面するなんて』というのがテセスの素直な気持ちだっただろう。
その直後の言葉を聞くまでは。
「よくない」
冷たく言い放ったミアの一言。
あれ? 好き同士じゃなかったの?
一瞬で、場の空気はなんとも言えないものに変わる。
テセスもエールを一口。
緊張した様子でテセスが二人を眺めていると、再びミアが口を開いた。
「本当に死ぬかと思った……
魔王様を残してさ……私、本当にダメなんじゃないかと思った!」
誰もミアの言葉を遮ろうとはしない。
食事の音さえ出すのを憚られてしまうほどの緊張感が襲ってくる。
「それに……私も魔王様がいなくなるのは嫌っ!
私は死んでも永遠に一緒にいたいのっ!」
ミアがフード越しに泣いているのがわかる。
それほどに今回の戦いはミアにとって辛いものだったのだろう。
まぁ冷静になって考えると、一緒に死んでほしいって意味にも捉えられるけど、そんな野暮なことは言いっこなし。
魔王ヤマダも、やや困った表情を浮かべながら『わかったわかった』とミアを慰めたところで、どうにか落ち着いたようだった。
ーーーーー
センがダンジョンと家に引きこもって5日目。
次の階層は遂にドラゴン戦だそうだ。
あの死闘を思い出しさえすれば、雫龍討伐は、それほど難しいものではないらしい。
だがそんな中、バリエさんは『力の限界を感じたので』という理由で王都へ戻ることになった。
これからは、一冒険者としてギルドに再登録し、騎兵隊とは別の形で国に貢献していきたいそうだ。
以前のような戦争になりかけたら、身を呈して防いでやるから、と息巻いていた。
アステアもまた、『腕の未熟さを感じた』と言い、しばらくはアッシュに稽古をつけてもらうらしい。
それに、人族と異種族との仲をどうにか取り持ちたいとも思っているそうだ。
それを聞いたヤマダさんが、『じゃあ俺の目的の一つは、任せて大丈夫だな』なんて言って、魔族領への転移アイテムを渡していた。
もしヤマダさんがいなくなったら、次期魔王は元勇者アステアだとも言っている。
全く役に立たないどころか、むしろ戦いに貢献してくれた二人なのだが……
そんなことをテセスとリリアが言ってはみたが、これ以上魔物が強くなれば、きっと攻撃に耐えきれずに足手まといになるだろうと、二人揃って言い返してくるのだ。
先の戦いもすでにギリギリだったというのだから仕方ないのかもしれない。
場所を移し、村の入り口近くの訓練場前。
「ねぇねぇ……すっごいお姉ちゃんのすっごい魔法、もっかい見せて」
小さな小さな少女が、黒いローブの裾を掴み言う。
それに対して『ちょっと離れてなさい、危ないわよ』と言いながら金色の錫杖を取り出す少女、リリア。
少女を抱きかかえ、数歩下がるテセスを見て、リリアは小さく頷いた。
「はぁー……」
テセスにも、大きく息を吐く声が聞こえる。
錫杖には薄緑の光が集まり、次第に少女の身体全体を包み込むほどに光は溢れていった。
「……ヤアァッッ!」
プラチナゴーレムを模したデク人形を、見えない速度で薄緑色の光が刺さり、止まったところでそれが剣の形なのだとわかる。
『10323』
そんなダメージ量が出ては、周りにいる冒険者の顔も引きつって当然だろう。
だが、まだリリアの身体に光は残っている。
次々と放たれる光の剣。
速度は比較できないほど速いが、あの七体の魔物が使った技を模しているようだ。
『11480』……『12611』……
二発目からは、やや威力を抑えているようだ。
ここは見た目の派手さなんかを演出しいているのだろうか?
それに数も多い、すでに十発は超えた。
『38606』……
無数の剣がプラチナゴーレムに突き刺さり、これでお終いかと思ったその瞬間。
ドンッッ!!
と、村中に響くような音が聞こえ、テセスは驚いて咄嗟に目を閉じてしまった。
恐る恐る目を開けると、元の姿に戻りバラバラのデク人形が一体。
その上空に『128090』と見える……
その後、このデク人形は数値の上限を無くしたのだとミアから聞いた。
別に世界樹の力を著しく消耗することもないし、ユーグがついこの間改良したらしいのだ。
それにしてもいきなり六桁の数字を叩き出すリリアちゃんの魔法……
仲間だというのに、そんなことを思うと、若干恐ろしく感じてしまうテセスだった……
ヤマダさんが名付けたこの名前には、蝕むとか、姿を消すという意味があるらしい。
何が言いたいのかって?
魔物の名前にも、ちゃんと攻略のヒントは隠されているんだなぁってことだ。
とはいうものの、僕たちにその意味がわかるはずがないので、ヒントにはなりようがないのだけど。
「じゃあさ……七体同時に倒したらどうなるかなぁ……」
何度も復活する魔物相手に、疲れ切った様子のリリアはそう言った。
一度に膨大な魔力を消費するのは非常に辛い。
時折交代しながら、僕とテセスもその杖を振っていた。
だが、一体ずつ処理していたのでは、魔物の復活に追いつかず、全てを倒す事が出来なかったのだ。
それに、ちょっとでも手を休めれば、あの漆黒の剣が飛んでくる。
どうにも終わりが見えない状況の中、リリアは残っていた魔力回復薬を使い、七体同時に攻撃を仕掛けてみると言う。
だが、実はすでに同じことは行っていたのだ。
当然倒せる魔物の数が多いほど楽になると思い、都合よく固まっていた三体に同じ攻撃を仕掛けてみた。
ところが、やはり魔物の数が増えればその分威力は減少するらしい。
三体どころか、その一撃では一体も倒すことはできなかった。
そんなことは重々承知だというリリア。
アステアも限界が近く、ひとまずコルンと変わって下がってくる。
「だったら四発でも五発でも撃つわ。
うまいこと一緒に倒せたら、それで……チャンチャン、よ」
「チャンチャンってなんです?」
「あら、王都じゃ読み聞かせとか無かったのかしら、アステア?
私たちが物語の締めくくりに使う言葉よ。
めでたしめでたしとか、そういう意味だと思ってくれていいわ」
そう笑いながら、すぐに杖を振るのではなく、魔法を使う時と同様に魔力を込めている。
一発一発の威力を高めるのに、杖の効果に自分の魔力をさらに上乗せしようとしているのだろう。
もしかしたら他の武器でも使える方法かもしれない。
サラッと当たり前のようにやっているリリアだが、簡単に思いつくことではないだろう。
「なんだかわかんないけど、いっけぇー!」
そう言いながらリリアが杖を思いっきり振りかぶる。
いつもなら技の名前も大事にしているリリアが、そんな余裕もないのだろう。
ミアの戦っているギリギリまで広がった黒い『なんだかわかんないもの』が、七体の魔物を覆い尽くす。
「もういっちょー!」
なんだかわかんないものが、消えそうになったタイミングでもう一撃。
ダメージもかなりのものらしく、技を受けている間は魔物も身動きが取れないようだ。
さらに続けてもう一撃。
リリアの額から汗が流れるのが見える。
魔力の減少で、かなり辛いのだろうことがわかる。
ミアが駆け寄ってくると、すぐにリリアの様子に気付いて声をかけていた。
「リリア、そんなに無茶して大丈夫なの?」
「だ……大丈夫よ、このくらい」
急激な魔力の枯渇による魔力酔いの辛さは、正直言って経験者にしか分からない。
徐々に気持ち悪くなるのではなく、ダメージを受けているわけでもないのに立っていられないほどに苦しくなるのだと聞いた。
魔力量が多ければ多いほど、その辛さは比例して大きくなるそうだ。
僕は……経験していない。
杖を渡しておいてなんだが、正直一回振っただけでも結構くるものがあったのだ。
こんなことを何度も繰り返すなんて……
「あ、あと一回で倒れてくれる……かな?」
リリアが再び魔力を杖に込め始める。
ポタリと大粒の汗が落ち、リリアの表情も青白く見えてしまう。
「ぼ、僕がやるよっ!
ほら、ミアも下がって来たんだし、精度はそれほどいらないからさっ!」
半ば無理やりにリリアから杖を奪い取ると、やはり無理をしていたのだろうリリアは、途端に力が抜けたように後ろに倒れ込んでしまった。
「リリアちゃん!」
咄嗟に前に出てリリアの身体を支えるテセス。
僕も声をかけたいところではあるが、今はここまで魔物の体力を削ってくれたリリアのため、振り返らずに杖を構える。
魔物の上空に再び円陣が描かれ、すでに黒い剣が宙を舞っている。
大丈夫……きっとこの杖の威力なら、魔物の攻撃ごと吹き飛ばせるに違いない……
風や水の上位のさらに上級魔石まで使っているんだから、そう簡単にやられたりはしないっ!
そう思いながら杖を大きく振ると、黒い濁流が生まれ、その魔法は魔物の発動した円陣ごと七体の魔物を巻き込んでいった。
だが円陣は消えない。
一本目は濁流に呑まれ事なきを得た。
二本目はどうにか僕の持つ杖で防いでやった。
三本目と四本目は大きく外れて五本目も濁流の中へ。
「よしっ……⁈」
この調子なら、と安堵すると6、7本目が魔法を突き破って僕目掛けて勢いよく飛んできた。
さすがに二本同時に防ぐ手立ては……
ザクッ……
頭と胸のどちらを守るかって、そんなもの条件反射的に頭を守るに決まっているし、その判断が間違ったとは思わない。
だけど、その一撃が命取りになったのだから、結果的には間違いなのかもしれない。
いや、頭でも確実に死んでいただろう。
僕の判断は間違ってはいない……。
魔力で作られた闇の剣は、刺さった瞬間に急激に僕の意識を刈り取っていった。
その技特有の効果なのか、それとも胸に剣が刺さると、誰だってこうやって意識が遠のいていくのかはわからない。
濁流が消え、七体の魔物はいなくなったのだが、それも一瞬だけの事だった。
ボヤける視界の中で、再び蘇る七体の魔物。
ふと視線を外して仲間たちを見ると、心配そうにするテセスとコルンが見える。
「あ……れ……?」
視界の片隅に小さな円陣が浮かぶのが見えるが、その方向には誰もいない。
じゃあ一体、あの円陣はなんなのだろうか?
七体の魔物……そして……
僕は薄れゆく意識の中で、その円陣を指差して言った。
『本体……が……』と……
…………
時間が経ち、ダンジョンから出てきたテセスは相変わらず具合の悪そうなリリアを抱えている。
「ごめん、私は先にリリアちゃんを寝かせに家に戻るわね」
「お、おう……早く良くなるといいな」
弓をインベントリに片付けると、コルンもまた家に戻ると言う。
「じ、じゃあ私たちも……」
言いよどみながら村へと歩み出すアステアとバリエ。
フードをかぶった黒いローブの少女(実年齢不明)は、ダンジョンの出口で一人立っていた。
若干のもどかしさと、苛立ちが混ざった感情をどうして良いものかと考えているのだ。
確かにボスは倒す事ができた。
それはセンが本体を見つける事ができ、その指差す意図を汲みとったコルンが、間違う事なく行動をとったからだ。
そしてリリアもまた、自らの身を痛めつけながらも可能性を信じて行動した。
それもきっと、センが作った武器を信じたからとれた行動なのだろう。
結果として三人のおかげでボスは倒せたのだ。
あれほど弱いと思っていた三人に、私は守られてしまった立場なのだろうか?
「だから、そんなやり方されたって笑えないよ!
寿命が縮むかと思ったんだよ? いや、縮んだね! だって死んだんだもん!」
「いーじゃねぇか、それくらいしないといつまでも弱っちいんだからよ。
つーか、俺がやらなかったら、どうせお前たち、近いうちに死んでたぜ。
まだ二つ目なんだぞ。このダンジョン」
「そ、そうかもしれないけどさぁ。
もうちょっと教えてくれたっていいんじゃない??」
遅れてダンジョンから出てくる二人の男。
一人は黒いマントにトゲトゲ頭の魔王様。
もう一人は、死してなおボス討伐のヒントを見つけた村の少年。
「なんで私にまで内緒だったんですかっ……」
いつもなら絶対に口答えなどしない少女、まぁ種族の中では比較的若いのかもしれないから、見た目通り少女でもいいだろう。
「悪かったよ、ミアもコイツらのことあまり信頼してないみたいだったからさ。
ま、俺は見てて面白かったけどな。
それに、お前ももうちょっと周囲に気を配らなきゃならないみたいだしな」
「うぐっ……そ、それは……」
もどかしい感情に苛立つ感情、それはミア自身にも試練が与えられていたと知らされて悔しいという想い。
そして、思いの外村の少年少女が強いのだと知り、そうは認識したくない反抗心だった。
「もうちょっと本気で攻略してくれれば、俺からこんなちょっかいはかけねーよ」
「そう思うのなら、攻略法なんかは教えてくれても良いんじゃ?」
「嫌だね、楽しくないことはやりたくない。
ただでさえ数百年退屈してんだ。
少しくらいわがまま言わせろや」
そんなことを言う魔王だが、実は半分以上は攻略法を覚えていない。
センだけではない。これでも十分魔王なりに頑張っていることを、誰にも知られないように行動しているのが魔王ヤマダなのだった。
翌日、とね屋にはセンを除いたみんなの姿が集まっている。
「じゃあ、本体以外にどれだけ攻撃しても無駄だったの?」
驚いた様子でリリアが魔王ヤマダに問い詰める。
「無駄じゃないけど、本体は分け合った体力を自己再生のスキルで回復するようにしてあったな。
俺たちがスキルを使うと世界樹の力を使うことになるが、魔物にとっての回復は、世界樹にとってはありがたい効果だからな」
暗黒龍のエネルギーが魔物にとってのエネルギー。
つまり、ユーグが暗黒龍から吸い取った力の放出先でもあるらしい。
『おかげさまで、多少は力が使えるようになりましたわ』
姿は見えないが、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「無駄に力使ってんじゃねーよ。
大人しく寝とけ……」
その声に反応するように、魔王ヤマダが返答し、箸を手に料理を頬張っていた。
「センは……やっぱり?」
心配そうにテセスが魔王ヤマダに聞く。
「あぁ、さすがにあそこまで言われて悔しかったみたいだぜ。
昨日は母親に怒られるのも覚悟でダンジョンに潜って素材集め。
今はどこかで合成スキルを試してるんじゃないか?」
戦いの後、ミアがセンを生き返らせるまでは良かったのだけど、その直後に魔王ヤマダが現れると全員が驚いた。
あのミアですら、その場にいたとは知らされていなかったのだ。
センと魔王ヤマダは色々と言い合ってたし、ミアも泣きだして、それ以降テセスたちはミアの言葉を聞いていなかった。
また深々とフードを被って、いつものミアのままである。
「ね、ねぇミアちゃん……?」
「……」
チラッとだけテセスの方を向き、すぐに正面の料理を口に運ぶミア。
「えっと……」
「テセスちゃん気にすんなよ。
フードを被ってる時は、いつもこんな感じだからよ。なっ、ミア」
「まぁ……そうですけど。
……今回ばかりは……魔王様のこと嫌いになりそうだった……」
「ま、マジか⁈
いやスマんかった!
他の部下だとむさっ苦しいし、ミアにはずっと一緒にいてもらいたいんだが」
焦った様子の魔王ヤマダを見ると、やっぱりミアのことが好きなんだろうと思ってしまうテセス。
ミアからの返事は『もう一回言ってくれたら許す』とのこと。
「他の部下だと……」
「そこはいらない。モグモグ……むしろ聞きたくない」
「……」
「どうしたの? モグモグ……言わないのならずっと怒ってるよ」
目の前の料理から視線を移さず、ひたすら料理を口に運ぶミア。
「……わぁかったよ!
ミア、お前は死ぬまでずっと俺と一緒にいろ。
他の女を魔王城に呼んだりもしない、お前だけが俺の女だ」
『すごい、こんな告白の場面に直面するなんて』というのがテセスの素直な気持ちだっただろう。
その直後の言葉を聞くまでは。
「よくない」
冷たく言い放ったミアの一言。
あれ? 好き同士じゃなかったの?
一瞬で、場の空気はなんとも言えないものに変わる。
テセスもエールを一口。
緊張した様子でテセスが二人を眺めていると、再びミアが口を開いた。
「本当に死ぬかと思った……
魔王様を残してさ……私、本当にダメなんじゃないかと思った!」
誰もミアの言葉を遮ろうとはしない。
食事の音さえ出すのを憚られてしまうほどの緊張感が襲ってくる。
「それに……私も魔王様がいなくなるのは嫌っ!
私は死んでも永遠に一緒にいたいのっ!」
ミアがフード越しに泣いているのがわかる。
それほどに今回の戦いはミアにとって辛いものだったのだろう。
まぁ冷静になって考えると、一緒に死んでほしいって意味にも捉えられるけど、そんな野暮なことは言いっこなし。
魔王ヤマダも、やや困った表情を浮かべながら『わかったわかった』とミアを慰めたところで、どうにか落ち着いたようだった。
ーーーーー
センがダンジョンと家に引きこもって5日目。
次の階層は遂にドラゴン戦だそうだ。
あの死闘を思い出しさえすれば、雫龍討伐は、それほど難しいものではないらしい。
だがそんな中、バリエさんは『力の限界を感じたので』という理由で王都へ戻ることになった。
これからは、一冒険者としてギルドに再登録し、騎兵隊とは別の形で国に貢献していきたいそうだ。
以前のような戦争になりかけたら、身を呈して防いでやるから、と息巻いていた。
アステアもまた、『腕の未熟さを感じた』と言い、しばらくはアッシュに稽古をつけてもらうらしい。
それに、人族と異種族との仲をどうにか取り持ちたいとも思っているそうだ。
それを聞いたヤマダさんが、『じゃあ俺の目的の一つは、任せて大丈夫だな』なんて言って、魔族領への転移アイテムを渡していた。
もしヤマダさんがいなくなったら、次期魔王は元勇者アステアだとも言っている。
全く役に立たないどころか、むしろ戦いに貢献してくれた二人なのだが……
そんなことをテセスとリリアが言ってはみたが、これ以上魔物が強くなれば、きっと攻撃に耐えきれずに足手まといになるだろうと、二人揃って言い返してくるのだ。
先の戦いもすでにギリギリだったというのだから仕方ないのかもしれない。
場所を移し、村の入り口近くの訓練場前。
「ねぇねぇ……すっごいお姉ちゃんのすっごい魔法、もっかい見せて」
小さな小さな少女が、黒いローブの裾を掴み言う。
それに対して『ちょっと離れてなさい、危ないわよ』と言いながら金色の錫杖を取り出す少女、リリア。
少女を抱きかかえ、数歩下がるテセスを見て、リリアは小さく頷いた。
「はぁー……」
テセスにも、大きく息を吐く声が聞こえる。
錫杖には薄緑の光が集まり、次第に少女の身体全体を包み込むほどに光は溢れていった。
「……ヤアァッッ!」
プラチナゴーレムを模したデク人形を、見えない速度で薄緑色の光が刺さり、止まったところでそれが剣の形なのだとわかる。
『10323』
そんなダメージ量が出ては、周りにいる冒険者の顔も引きつって当然だろう。
だが、まだリリアの身体に光は残っている。
次々と放たれる光の剣。
速度は比較できないほど速いが、あの七体の魔物が使った技を模しているようだ。
『11480』……『12611』……
二発目からは、やや威力を抑えているようだ。
ここは見た目の派手さなんかを演出しいているのだろうか?
それに数も多い、すでに十発は超えた。
『38606』……
無数の剣がプラチナゴーレムに突き刺さり、これでお終いかと思ったその瞬間。
ドンッッ!!
と、村中に響くような音が聞こえ、テセスは驚いて咄嗟に目を閉じてしまった。
恐る恐る目を開けると、元の姿に戻りバラバラのデク人形が一体。
その上空に『128090』と見える……
その後、このデク人形は数値の上限を無くしたのだとミアから聞いた。
別に世界樹の力を著しく消耗することもないし、ユーグがついこの間改良したらしいのだ。
それにしてもいきなり六桁の数字を叩き出すリリアちゃんの魔法……
仲間だというのに、そんなことを思うと、若干恐ろしく感じてしまうテセスだった……
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