スキル【合成】が楽しすぎて最初の村から出られない

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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6章《吹っ切れ》

13話

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「じゃあ、僕の持っていた剣のせいで大変だったんだね?」
「大変だったなんてとんでもないです。
 センさんが、あの剣を私に売ってくださったおかげで、騎兵隊への入隊が認められたんですし」
 バリエさんの話によると、例のミスリルの剣は国に献上することになったそうで、その見返りに騎兵隊へ入り事になったそうだ。
 国威信をかけたと言っても良いくらいの組織ゆえに、訓練も厳しく日々ボロボロになるほどに馬と剣と礼節を叩き込まれるらしい。
 結婚が先延ばしになった話もしていたが、そちらは僕の受け取った白金貨のせいらしいので、僕は苦笑いを浮かべるほかなかった。

 幸い、先の戦闘時には、ワイバーンが倒れる音は聞いたものの、その場面は見ていないらしく、戦闘音と僕のボロボロの装いで、倒したんじゃないかと思っただけらしい。
 まぁ、その現物というか、死体が無いのだから追い払ったことになったわけだ。

「それにしてもお主、かなりの腕を持っておるようじゃな。
 よもやとは思うが、隣国の廻者などではないのであろう?」
 優れた武器をバリエに渡し、今回は隊長の命をも助けている。
 そんなことがなければ、国の知らないところで、僕みたいな脅威となり得る冒険者の存在を見過ごしておくわけにはいかない、という意味だとカンブリス隊長は説明する。

 日々大蛇との戦闘訓練を行い、今日もあと少しで倒すことができたというのに、横入りでワイバーンの一撃いいのをもらったという。
 みっともない所を見せてしまったとは言っていたが、カンブリス隊長に並ぶ強さの者は国にはいないらしい。
 半強制的にこの森に連れてこられているバリエさんが、最近ようやく使い物になったと言われているらしく、それがレベルアップによる効果だとは気付いていないようだ。

「ははっ、僕なんてまだまだ未熟ですよ。
 父が冒険者の案内役なんかをしてますので、時折手土産にって、不思議なアイテムなんかを持って帰ってくるんですよ」
 身につけている防具なんかを、じろじろと見られているし、誤魔化すように返答したけれど嘘は言っていない。
 以前は父も手土産に薬草なんかを摘んで帰ってきていたし、今でも合成に役に立ちそうな素材は持って帰ってくれる。
「ふむ、父上にもぜひ一度会ってみたいものだ。
 どこの出なのかね? 王都ではないのだろう?」
「あ、えっと……え、エメル村です」

 僕はとっさに聞かれた質問に、誤魔化すことができなかった。
 まぁ、ワイバーンと戦っていた事実は消せそうにもないし、観念したという感じだろうか。
「ふむ、最近よく耳にする噂の村か。
 しかし、答えるときは間をあまり置かん方が良いぞ。
 お主が何かを隠しているというのが、ヒシヒシと伝わってくるわい」
 カンブリス隊長がジロっと睨むと、僕を背筋に氷を当てられたかのような寒気が襲いかかる。

 この人、間違いなく僕を信用していない。命を救われたから、とりあえず様子を見ているだけなのだ。
 というか、その睨みつけ、もしかしてスキルの一つなんじゃないか?
 これまで戦ったボスの中にも、『睨む』や『咆哮』という、相手の行動を制限するスキル持ちはいたし、カンブリス隊長ほど毎日大蛇というボスと戦っていれば、覚えていても不思議じゃない。

「……」
「や、やめましょうよ隊長。
 それよりほら、先ほど使っていただいた薬、結構高価なものだったんじゃないんですか?」
 バリエさんが隊長と僕の間に入ってくれた途端に、寒気はなくなる。

「あ、いえ。いつも持ち歩いてる回復薬です。
 エメル村では、普通に売られているものですけど……」
 エメル村では普通に僕の作ったポーションと特殊解毒薬が売っているし。
「それはすごい! ぜひ王都にも卸して貰えるよう、交渉してみましょうよ。ね、隊長」
「……そうだな。戻ったら提案書を作成してみるか」
「返答は即、ですよ隊長。
 センさんを疑うのでしたら、私も今の隊長の言動は疑わざるをえません」
「お前は本当に……言いたいことはハッキリ言いやがるな。
 まぁいい、教えてやろうバリエ。この少年はおそらくお前が思っているよりもかなり強く、同時に危うい存在だ。
 ワシのスキルをマトモに受けたにもかかわらず、平然と動いておるのだ」
 やっぱりスキルを使っていたんだ……。
 その言葉に続けて、普通の者なら震えて身動きが取れなくなるだの、失禁する場合もあるだの、恐ろしいことをサラッと言う。
 そんなスキルを受けて失禁させられるとか、絶対に嫌だ。

「凄いじゃないですか! きっと隊長のスキルに耐性があるスキルを持っているんですよ」
「そんなもん聞いたことが無いわい。
 その若さで経験の差ということはあるまいし。
 圧倒的な力の差で、スキルを無効化させられたと考えるのが一番納得いく……か」
 僕もそんなスキルは持ってないし、カンブリス隊長の言う圧倒的なレベルちからの差というのが合っているんだと思う。

「じゃあ、センさんが騎兵隊に入隊すれば戦力アップじゃないですか!
 どうです? 給金は悪くないですし、センさんほどの実力があれば訓練も必要ないんじゃなおですか?」
 突然そんなお誘いを受けてしまったのだが、その横で訝しげな表情の隊長。

「馬鹿をいえバリエ。
 この少年が力を持ち、我らと敵対することが無いにしても、身分も功績も無い人物を、おいそれと入隊させるわけにはいかん」
「功績ならついさっき立てたじゃないですか! あのままにしていたら死んでいたのは隊長なんですからね!」

 僕を放置して言い争う二人。
 放っておくと、本当に僕が入隊させられてしまいそうで、それは困るというか、興味がない。
「僕は村でやりたいことがあるので、入隊のお誘いはありがたいのですが……」
「そうですか……非常に残念です。
 そうだ、お礼をしなくちゃいけないんだった」
 バリエさんは背中に担いでいた荷袋の中から、数枚の銀貨を手に取るが、僕は腕でバツを作って受け取らないアピールをする。
 横で隊長は『こいつもいらないって言ってんだ。結婚までとっておけ』とバリエさんに言うが、バリエさんは無理にでも渡そうとしてくる。

「受け取ってもらわないと、もう私、センさんのいらっしゃるエメル村に足を向けて寝れません」
 そう言って銀貨を押し付けてくるものだから、僕も断ろうにも断れない。
「じゃ、じゃあお守りを渡しますから、その商品代ってことにしますよ」
 腰袋に手を伸ばして、僕は指輪を二つ取り出す。
 なんの変哲もない『プラチナリング』だけど、さっきのワイバーンの一撃くらいは耐えられるくらいの防御力はあるんじゃないかと思う。
 思うだけで、実践したくはないから、どうとも言えないんだけど。

「ダメですよ、こんな高価なもの受け取ったら、僕のお礼の意味がないじゃないですか」
 引かないバリエさんに、横から隊長が『受け取らねばお前が後悔するぞ』と口を挟む。
「えっ? どうしてです?」
「その少年の持っているそれは、おそらくミスリルではない。
 二つ取り出したということは、ワシにもくれるという意味で良かったかな?」
 カンブリス隊長に問われ、僕は首を縦に振って答える。
 ただ、元よりそのつもりだったとはいえ、やけに断り辛い場の空気に僕は呑まれてしまっていた。

「そうか、ではありがたくワシは受け取っておこう。
 お代は金貨一枚ほどでよろしいかな?」
 なぜか押し付けられる金額が増してしまった。
 もう少し安定してプラチナが手に入ったら、エメル村で小金貨一枚で売りに出そうと思っていただけあって、その十倍を受け取るのは気が引けてしまう。
 治療費も合わせてということで受け取っておいたが、これほど使うのを躊躇ってしまいそうなお金はいつぶりに受け取っただろうか……

「へぇー……見た目はあまり変わりませんが、ミスリルじゃないんですね。一体なんの金属なんです?」
「うむ……いや、金属ですらないかもしれんな。
 ドラゴンの骨は金属以上の硬さを持つとも聞く。そういった魔物の素材なのかもしれん」
「じゃあ、さっきのワイバーンも、もし倒せたらこんな指輪を作れたりするんですかね?」
「さぁな? どちらにしても、それほどの強度を誇る素材、生半可な知識で加工が出来るとは思えんが」

 隊長とバリエさんで、色々と考察しているようだが、なんの変哲もないただのプラチナで、僕のスキルで普通に作れてしまうというのに、そんなことを口にできるはずもなかった。
「ど、どうだったかなぁ? 父が持って帰ってきたアイテムの中に混ざっていたやつだったかも?」
 適当すぎることを言ったせいか、帰り道も疑惑の視線が僕に突き刺さっていた。

 ワイバーンのいた森を出て、三人で王都へと向かう。
「そういえば先ほどから『セン』と呼ばれておるが、エメル村のセンと……リリアといったか? まさか不当滞在しておった二人ではないだろうな?」
「え? あ、ちょっと門を通るのを忘れちゃって」
 スラム街で身を潜めていた設定だったのを忘れて、僕は普通に答えてしまう。
「なんと、門番が居眠りでもしておったのか?
 いや、裏道か? 井戸の中に地下通路があるとかではないだろうな?」
 そこから隊長による怒濤の質問責め。
 当然そんな抜け道は知らないし、たまに枯れ井戸の中に入っている者がいることも初耳だった。

「も、もぅ! わかりましたよ、話しますよ!」
 バリエさんになら聞かれても、悪いことにはならないと思うし、とにかくこの隊長の質問責めから逃れたい一心で転移のアクセサリーの説明をする。
 今この場で転移して逃げることもできたけれど、そうすると良からぬ疑いがエメル村にかかる恐れも考えられたから。

「……ふむ、やはり只者ではないと思っておったが、どうせ先程の指輪もお主のスキルで作ったものなのだろう?」
「はい、そうですよ。
 素材は魔物の骨とかじゃないですし、まぁ魔物から採れたのは間違い無いですけど……」

 これまで色々と隠していても面白くなかったけど、こうやってぶちまけてしまえば意外にも気持ちはスッキリしてしまっていた。
 もう、いい年齢だと思っているのに『少年』と呼ばれていたのにも若干苛立っていたのだと思う。
 ワイバーン如きで瀕死になって、その少年に助けられたのはどこのどいつだって話だ。
 せっかくだから装備一式変えた方が良いんじゃないかと進言して、僕はインベントリからプラチナメイルほか装備一式を取り出して見せる。

「ど、どこから取り出したのだ?
 異空間魔法収納ができる魔法媒体は、高価なものでも鎧ほど大きなものは入らんと聞いておる。
 今のはなんだ? 魔法ではないのか?」
「そんな話、今はどうでもいいじゃないですか!
 隊長さんは、毎日あの大きな蛇を倒してレベルが高いかもしれないですけど、バリエさんはまだ低レベルのはずです!
 こんな危険な場所で無茶をさせるのなら、最低でも装備くらいは整えなきゃ、本当に死んじゃいますよ⁈」
 『バリエは、もうレベル4だ』とか、『騎兵隊の中でも最高の装備を選んでいる』とか言い返してくるけど、全く話にならなくて僕は呆れてしまう。

「……隣国が攻めてきているんでしたっけ?」
「そうだ、魔物の動きも活発になり、王都周辺では謎の男の目撃情報が多数寄せられておる」
 え? それだけで隣国の仕業と?
 たまたま北東に魔物が多くて、それが大移動を行ったから、そちらの方面にあった隣国の仕業にしたって感じの話を、カンブリス隊長は話していた。

「それ、世界樹の力が弱っている影響で、隣国は全く関係ないと思いますけど?」
「なんだそれは? 何か知っているのであれば全て包み隠さず話さぬか!」
 高圧的な態度は若干鼻についたが、まぁ隊長としての職務もあるのだろう。
 ぐっと堪えて、最近魔物が大移動した話を伝えると、今度は『何故知っているのか』と。
 さすがに聞かれてばかりで疲れてくるが、ソワソワしているバリエさんの横で隊長は質問をやめようとはしない。

「もういいでしょ?
 僕もそろそろ帰りたいし、聞きたいことがあるなら今度にしてくれない?」
「ならぬ、ワシらとしても事態は急を要するのだ」
 そんなことを言うけれど、蛇と遊んでいたくせに、とか思ってしまう。
 腕を掴まれてしまったが、すぐに振り解けてしまう。
 おそらくこの隊長、レベルはかなり高くてエメル村にいる冒険者たちよりは強い。
 いつからなのかは知らないけれど、毎日大蛇と戦っていただけあるのだろう。

「わ、わかった! 時間も時間だ、ワシとバリエを一緒に村に連れて行ってはくれんか?」
「隊長、それじゃあ森の監視の任務が」
「何を聞いておったのだバリエ、この少年は『隣国は関係ない』と言い切ったのだぞ?
 少なくとも今この場で最も強いのは、この少年なのだ。
 それがどういうことかわかるか?」
「いえ……」

 バリエさんが力なく答えるが、僕もどういうことかわかっていない。
「おそらく、この少年次第で王都は傾くぞ。
 これ以上ない、今回の任務の対象ターゲットだと言っているんだ。
 それに純粋にワシは少年に興味を持ってしまった」
 褒められているのか警戒されているのか……
 結局、僕は押し負けてエメル村まで三人で転移することにしたのだった。
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