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第2章 精霊王
16話 出身地《前》
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リキングバウトを出発して9日目、ようやく俺たちは辿り着いた。
「すっごいです!こんなに大きい街初めて見ました!」
王都が初めてだと言うレギが興奮していた。
ピルスルは時々来ているようだし、ローズは朧(おぼろ)げに記憶に残っているそうで大して驚いてはいなかったが。
俺はというと…。
『まるで…ドゥブロヴニク…みたいだな…』なんて生前旅行でもしてみようとパンフレットに載っていた言葉を口にしていた。
あまりに言いづらい名前だったので2、3回口にしていただけで、国名だったか遺産の名だったかも覚えてはいないのだが。
街全体が煉瓦色をしていて、なんかこう…もっと灯台とか劇場とか想像してたのに。
「どぶろく?何じゃそれは?」
「あぁ、いやこっちの(元いた世界の)話だ気にするな」
しかしピルスルと喋っていると何故か酒の名前が頭をよぎるのだよな…。今なんか絶対【どぶろく】って言ったよな…。
門の外からでも見渡せる山肌に広がる多くの建物。
山の上にはもう一つのかべが広がっており、その向こう、山頂には王城が構えているという。
そのなみいる建物と相まって、西に広がる青がよく映える。
「すっごい綺麗な海ですねー」
「ほんま、潮風が気持ちええわぁ」
二人がそう言うと、俺もなんだか『来てよかったなぁ』という気持ちになってしまう。
見えてはいるが、距離はそこそこある。ただ、街の近くには魔物も滅多に現れないので、思いのほかあっさりと門まで辿り着いた。
入り口では行商人などが積荷を検査されており、わずかではあるのだが列ができているのだった。
俺たち冒険者は、というと。
多くの荷物を抱えてでもいない限りは、簡単なボディーチェックを受けて素通りだ。
「私たちは手ぶらですからね、すぐ通してもらえそうです」
『魔物だと思われたくないから』と念のため、レギもタマを指輪に戻していた。
「そこの者!こちらでチェックを行う、参られよ!」
鎧を着た二人の兵士らしき者たちは、長い槍を持って入り口に立っていた。
「あの槍でこう…ばってん作って『ここは通さん』なんて言うんだろうな」
ってボソッと言ったら、ローズが急に吹き出して大笑いしてた。なにがそこまで可笑しかったのだろうか?
「何を笑っている!さっさとしないか!」
「あぁすいません!」
すぐに行きますとも。
「すいません、なにぶん初めての街並みに興奮してしまいまして」
俺は腰を低く謝っていたのだけど。
「初めてか、ここはアウロス国王サルヴァン様の御膝元、港に隣接する城下町だ。
手前はここ50年で建てられたものだ比較的緩やかな土地であるが。
奥は斜面が急になっているところも多い、気をつけてな」
非常に優しく、簡単に丁寧に説明してくれる。ちょっと想像と違っていた。
「して、君達はどこより何用で参られたのだ」
兵士はボディチェックを簡単に済ませて尋ねてきた。
「儂らはリキングバウトからじゃ、上級職への転職と街の散策をしたくてな。
一度に3人もおるとあちらの水晶じゃどうにもならんからな」
すごく自然だ、これなら違和感など全く無いだろう。
「しかし、あちらへ出向いた荷馬車などここ一ヶ月見かけていないが…まさか徒歩で来られたのか?」
「そうやねん、ほんま疲れたわ早よお風呂入りたいんや…」
兵士の問いにローズが答える。
魔法で綺麗にしていても、ローズはやっぱり風呂には入らないと気が休まらないらしい。
「それはわざわざご苦労であったな、…しかし面妖な…1週間はかかろう距離をそのような軽装で…か?」
ん?なんか怪しい空気が、と思ってたら…。
「すまんが抵抗はせんでくれよ、確認が取れるまで君達にはしばらくここにいてもらおうか」
「あ、いや…」
インベントリがあるんですが…と言いたかった。でも見せたら余計怪しまれる…のだろうか?
俺たちは兵士にギルドカードと武器を没収され、詰所のような場所に入れられてしまったのだ。
「おいピルスル、大丈夫なのか?」
「まぁ儂もおることじゃし…名乗らせてもくれんかったのぉ」
『はっはっは』なんて笑ってやがる。
しばらくじっとしていた、一時間…二時間くらい経ったころだろう。
「待たせたな、確認がとれた」
ホッとする4人、それもつかの間。
「元ギルド長ピルスル殿、魔法使いローズ殿、召喚士レギ殿…」
うんうん、そして俺。
「3人は間違いなく本物であると認めよう、だがレンジャーシュウ殿!
貴様だけはどうも信用がならない、登録されてわずか一月にも満たないときた。
なのにレベル27でここへは上位職への転職がお望みだとか?
そもそも貴様はどこの出なのだ、全て包み隠さず話してもらおうか」
やっべぇの来た、どこの出?日本です。信じねぇよなぁ…?
ピルスルが説明してくれねぇかなぁ…。
「どうした?答えられんのか!ならば貴様ら、全員仲間とみなし投獄するしかあるまいぞ!」
うーん…困った、本当の事全部言っても信じてもらえそうにないし…。
『そうか、残念だ…』と兵士が詰め寄る
きっとここで投獄されてしまい助けが来るって展開になるだろう、などと。
ありえないだろうなぁ…。
「すっごいです!こんなに大きい街初めて見ました!」
王都が初めてだと言うレギが興奮していた。
ピルスルは時々来ているようだし、ローズは朧(おぼろ)げに記憶に残っているそうで大して驚いてはいなかったが。
俺はというと…。
『まるで…ドゥブロヴニク…みたいだな…』なんて生前旅行でもしてみようとパンフレットに載っていた言葉を口にしていた。
あまりに言いづらい名前だったので2、3回口にしていただけで、国名だったか遺産の名だったかも覚えてはいないのだが。
街全体が煉瓦色をしていて、なんかこう…もっと灯台とか劇場とか想像してたのに。
「どぶろく?何じゃそれは?」
「あぁ、いやこっちの(元いた世界の)話だ気にするな」
しかしピルスルと喋っていると何故か酒の名前が頭をよぎるのだよな…。今なんか絶対【どぶろく】って言ったよな…。
門の外からでも見渡せる山肌に広がる多くの建物。
山の上にはもう一つのかべが広がっており、その向こう、山頂には王城が構えているという。
そのなみいる建物と相まって、西に広がる青がよく映える。
「すっごい綺麗な海ですねー」
「ほんま、潮風が気持ちええわぁ」
二人がそう言うと、俺もなんだか『来てよかったなぁ』という気持ちになってしまう。
見えてはいるが、距離はそこそこある。ただ、街の近くには魔物も滅多に現れないので、思いのほかあっさりと門まで辿り着いた。
入り口では行商人などが積荷を検査されており、わずかではあるのだが列ができているのだった。
俺たち冒険者は、というと。
多くの荷物を抱えてでもいない限りは、簡単なボディーチェックを受けて素通りだ。
「私たちは手ぶらですからね、すぐ通してもらえそうです」
『魔物だと思われたくないから』と念のため、レギもタマを指輪に戻していた。
「そこの者!こちらでチェックを行う、参られよ!」
鎧を着た二人の兵士らしき者たちは、長い槍を持って入り口に立っていた。
「あの槍でこう…ばってん作って『ここは通さん』なんて言うんだろうな」
ってボソッと言ったら、ローズが急に吹き出して大笑いしてた。なにがそこまで可笑しかったのだろうか?
「何を笑っている!さっさとしないか!」
「あぁすいません!」
すぐに行きますとも。
「すいません、なにぶん初めての街並みに興奮してしまいまして」
俺は腰を低く謝っていたのだけど。
「初めてか、ここはアウロス国王サルヴァン様の御膝元、港に隣接する城下町だ。
手前はここ50年で建てられたものだ比較的緩やかな土地であるが。
奥は斜面が急になっているところも多い、気をつけてな」
非常に優しく、簡単に丁寧に説明してくれる。ちょっと想像と違っていた。
「して、君達はどこより何用で参られたのだ」
兵士はボディチェックを簡単に済ませて尋ねてきた。
「儂らはリキングバウトからじゃ、上級職への転職と街の散策をしたくてな。
一度に3人もおるとあちらの水晶じゃどうにもならんからな」
すごく自然だ、これなら違和感など全く無いだろう。
「しかし、あちらへ出向いた荷馬車などここ一ヶ月見かけていないが…まさか徒歩で来られたのか?」
「そうやねん、ほんま疲れたわ早よお風呂入りたいんや…」
兵士の問いにローズが答える。
魔法で綺麗にしていても、ローズはやっぱり風呂には入らないと気が休まらないらしい。
「それはわざわざご苦労であったな、…しかし面妖な…1週間はかかろう距離をそのような軽装で…か?」
ん?なんか怪しい空気が、と思ってたら…。
「すまんが抵抗はせんでくれよ、確認が取れるまで君達にはしばらくここにいてもらおうか」
「あ、いや…」
インベントリがあるんですが…と言いたかった。でも見せたら余計怪しまれる…のだろうか?
俺たちは兵士にギルドカードと武器を没収され、詰所のような場所に入れられてしまったのだ。
「おいピルスル、大丈夫なのか?」
「まぁ儂もおることじゃし…名乗らせてもくれんかったのぉ」
『はっはっは』なんて笑ってやがる。
しばらくじっとしていた、一時間…二時間くらい経ったころだろう。
「待たせたな、確認がとれた」
ホッとする4人、それもつかの間。
「元ギルド長ピルスル殿、魔法使いローズ殿、召喚士レギ殿…」
うんうん、そして俺。
「3人は間違いなく本物であると認めよう、だがレンジャーシュウ殿!
貴様だけはどうも信用がならない、登録されてわずか一月にも満たないときた。
なのにレベル27でここへは上位職への転職がお望みだとか?
そもそも貴様はどこの出なのだ、全て包み隠さず話してもらおうか」
やっべぇの来た、どこの出?日本です。信じねぇよなぁ…?
ピルスルが説明してくれねぇかなぁ…。
「どうした?答えられんのか!ならば貴様ら、全員仲間とみなし投獄するしかあるまいぞ!」
うーん…困った、本当の事全部言っても信じてもらえそうにないし…。
『そうか、残念だ…』と兵士が詰め寄る
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ありえないだろうなぁ…。
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