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第1章 異世界

20話 ポーションと霊薬

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 昨日はかなりレベルも上がった。
 14まで上がったので、次のスキル習得まであとちょっとって所だ、正直ウィスプを全部でどのくらい倒したのかもわからないくらいである。

 まぁインベントリ見たらわかるんだが。
【仄めく小瓶】1227個
【仄めく岩塩®️】231個
 レアは15%くらいの入手なのだろうか?まぁ魔物によっても違うのだろうけれど。

「これだけあるなら売っても良いよなぁ」
 ギルド長に勿体無いからと言われていたけれど、使い切れる気もしなかったし、なにより料理をするかどうかも考えていなかった。
 俺は【銀狼亭】へと赴き、おやっさんに声をかけたのだ。

「おぉシュウか、こんな早くからどうしたぃ」
 おやっさんが鍋を振るう中、獣人族のエルンとベルジャンが朝ごはんを食べていた。二人はここの従業員だ。

「珍しいね、どったの?もぐもぐ」「そやね、なんかあったん?もぐもぐ」
 非常にマイペースという感じの二人なのだけど、エルンは料理上手で厨房を任されていることも多い。ベルジャンはその愛嬌で冒険者達から求婚されていたりもする。

「おやっさん、実はさ『仄めく岩塩』をここで使ってくれたりしないかと思ってさぁ」
 500gほどの小袋になったアイテムを一つを取り出しておやっさんに見せたのだ。

「うん?こいつぁ確かに肉と相性抜群だ、できれば使ってやりてぇがこれっぽっち有ったって1日ももたねぇぞ。
 使ってやるなら最低でも10倍は用意してもらわねぇとな」

 それに関しては心配無用だ、なんせ500gほどの岩塩は全部で200個はあるのだから。
 重量にして約100kgだ、卸すには十分な量であろう。

「あぁそうか、お前さん空間収納持ちだったな」

 誰から聞いたのだろうか、俺はまた酔っ払ってとんでもないことをしていたのではないかという疑問に悩まされてしまった。

『で、いくつあるんだ?』とおやっさんが問うので、200個と答えた。
結構な量なのだから、半分でもそれ以下でも良かったのだが、意外とあっさり全てを買い取ってくれることになったのだ。

「こんな量、1000は狩らないと集まらんだろ、なにがあったか知らんが死にに行くような真似だけはするなよ」
 レアアイテムだというのに、おやっさんはこのアイテムの事も入手方法も、よく分かってるかのようだった。

 しかしまぁ、この冒険者あふれる街でこんな店を構えるほどなのだから、知識だけじゃなく実力だって相当なものなのかもしれない。

「あぁそうだ、俺は2、3日店を留守にするからな、そろそろ仕入れに行かねぇと来月分の肉が出せなくなっちまう」
 おやっさんは不意にそう告げる。

「えーっ?!聞いてない!」
 エルンが声を荒げる。

 それもそのハズだ、おやっさんが店にいないときはエルンが厨房に入っているのだから。
 つまり、それはエルンにとって2、3日のまともな休みが無いという宣告でもあったのだ。

 だいたい1ヶ月か2ヶ月に一度、仕入れで店を空けるようだ。

 あぁ、ちなみにこの【銀狼亭】は24時間営業だからな。
 冒険者達は討伐対象によっては深夜や朝帰りも珍しくないのである。

「相場はkgあたり銅貨40枚ってとこなんだが、全部買ってやるからkg30枚でいいか?」
 全然問題ない、むしろ有難い!

「おやっさんになら20枚でもいいさ」「よし、じゃあ20枚な!」
 返事が早かった…。

「そらっ受け取れ」
 100kgで銀貨20枚、それはズッシリと今まで持ったことのない重さだった。

 銅貨は意外と小さく、粗悪な材質で作られる事も多いのだけれど、100倍の価値のある銀貨までそのような扱いにするわけにはいかない。
 一枚がおよそ50gはあろうかというしっかりした作りになっているのだ。

 それでも銀の含有量はまちまちであったり、形はいびつであったりもする。

 ちなみに銀貨100枚で金貨1枚相当だ、さらに上には【交易共通白金貨】【アウロス王国金貨】やサルヴァン・アウロス王の誕生した際に作られた記念白金貨などもあるそうなのだけれど、そんなものは街で流通することはまず無い。

 日本円に直すとどうだろうか…。
 銅貨一枚が約100円と行ったところだろうか、宿屋や飲食の相場から考えればそんなものであろう。


 さて、【仄めく小瓶】の方はというと、銀狼亭ではあっさり断られてしまった。使い道が無いと。

 一杯の水で薄めるだけで、甘くいい香りがするジュースのようになる。
 料理に使う事もできるのだけれど、『薄める』これが主な使われ方だ。

 酒を提供する銀狼亭にジュースは合わない、ジュースを飲む冒険者がいないわけではないのだが少なすぎるので必要がないのだと。

 ちなみに岩塩と比べても、属性攻撃力強化の効果は薄いようではあった。

 俺は雑貨屋にも聞いてみたが、数が多すぎて断られてしまった。せっかくなのだけど手間を考えると、と。

「うーん、勿体無いし飲むかなぁ…」
 ギルドの片隅で小瓶を並べて眺めていると、正面に三角帽子…もといローズが立っている。

「どないしたんや、こんなとこで商売でも始めるつもりか?あんさん」

 そりゃま、別に商売しようとは思っていないが買ってくれる人がいないかな?とは考えてましたよ。
 だもんで『買う?』なんて聞いたのだ。

「ちゃう、これはそのまま売るようなもんちゃうんや、ちょっ2、3分待ってなや」
 そう言って、ローズは並べてある小瓶から10本を手に抱え、スキルを使ったようであった。

 しばらくすると、一つの綺麗な液体の入った小瓶へと変化する。
【煌く霊薬ポーション:精霊の力を帯びた魔力水、使用者の属性を持つ攻撃を一時的に100%強化する】

「そのまま売ったって銅貨一枚にもならんやん、これなら銀貨1枚にはなんでな。
 うちら魔法使いにはいくらあっても困らんもんやし、すぐに売れるわ。
 しっかし仰山集めたなぁ、20本もどないしたんや」

 聞いたら、これは魔法使いが15レベルで会得する【上級霊薬作成】のスキルだそうだ。

 材料は知られているのだけど、ウィスプ退治が大変なのだとか。
 そこそこ強い、物理効かない、魔力はすぐ尽きる。
 1日に2、3体ずつちまちま倒すか、他の冒険者から少しずつ買い取ったりして作ることが多いらしい。

「ローズ、いやローズ様、銀貨10枚を差し出しますから全部作ってくれはしないだろうか!」
 効果は一時的かもしれないが威力2倍はすごい、これは売らなくてよかったと思い、ローズに大量に作っておいてもらおうと考えた。

「いや別に金には困ってへんからええけど、なんや?まだあるんか?」

「んー…あと1200ほど…」

 『はああぁぁ??』といった顔をされた、そりゃそうだ。

 結局俺たちは、銀貨10枚に加え出来上がったポーションを20個ほどあげる事を条件に、6時間耐久レースを始めるのだった…。

 ちなみに、【ひかりの洞窟】にいるウィスプはそんなに多いはずがないという。
 せいぜい10mか20m感覚でいるくらいで、襲ってこないのだから戦う必要もない。

 じゃああのウィスプのおしくらまんじゅうは一体なんだったのか…?
 数日後、次に見に行った時には本当の本来の【ひかりの洞窟】になっていたのだった。

【シュウ】
 レベル14

【アイテム能力強化】
 煌く霊薬:使用時600秒間 属性攻+100%・属性魔+100%
 仄めく小瓶:使用時600秒 属性攻+5%・属性魔+5%
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