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第1章 異世界
10話 銀狼亭
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その日も狩りを終え、と言うべきではないのだろう。
もしまたゴブリンロードが出て来たのであれば、対処しきれないと思い引き上げることにしたのだった。
念のためにと、あの後に作ったフレイムボムは使うことは無く、早急に帰ることにし、門番では『半ドンか?』などと揶揄されもした。
そして、ギルドへ着いた俺は13個のゴブリンの耳を手渡す。
「あら、今日はどなたかとパーティーを組んで行ったの?ドルヴィンさんではないようですし…」
ドルヴィンはドルヴィンですでに納品を終え、仲間らしき三角帽子の女性と円卓を囲んでいた。
最近は夜狩りに行って、朝戻って来ることが多いそうである。
「あ、いや一人です」
爆弾で倒していったことを告げると、あぁ納得…といった様子で奥の部屋へ納品アイテムを持っていく。
「おぉシュウ来てたのか、どうだ調子は」
こちらに気付いたドルヴィンが声をかけてくれた。
「聞いたか?東の洞窟のそばに爆弾魔が現れたらしいぜ。
なんでも洞窟近くでほとんど感覚も空けずに何十発何百発もぶっ放してたらしいじゃねぇか。
あそこはゴブリンロードも出てくる危険な場所だっていうのに全く酔狂な奴もいたもんだな」
『ガッハッハ』と笑いながら酒の肴にしているようだった。
そんなにたくさん投げた覚えはないのだけれど…。
たったの20発ほどだ…もしかして、それでも余程珍しい光景なのだろうか。
そう思うと、とても恥ずかしい気持ちになるのだった。
どう考えても爆弾魔って自分なのだから、あぁそれで受付のヴァイツさんもあんな顔をしてたのか…。
ヴァイツさんが戻って銀貨3枚と銅貨25枚を渡してくれる。
「あの…魔物を退治してくれている冒険者さんにあまり強くは言えませんけれど
…ほどほどにしてくださいね。
まだシュウさんは冒険者になりたてなんですから」
すいません、あぁ本当にすいません。
自信満々に出かけた挙句危うい場面に遭遇し、よもや噂にまでなっているとは知りませんでした…。
だが、皆があの場所を危険なのだと知っているのであれば、もしかしたらこちらの証も出してしまって良いのではないだろうか?
もっと金を貯めてしっかりと装備を整えたいという気持ちが強いものだから、俺はゴブリンロードのドロップアイテムも出してしまう事にしたのだ。
「もしかしてゴブリンロードの出る場所ってこと、みんな知ってるんですか?」
「そうですね、基本洞窟がある場所には上位種と呼ばれる魔物が住み着いていることが多いですので」
そこまで聞いて、だったら大丈夫だろうと思い、インベントリに隠していたアイテムをこっそり取り出す。
身を乗り出し、周りに見えないようにヴァイツに渡すのだが、周りの冒険者の目が鋭くこちらに突き刺さる。
別に言い寄ったりしているわけではなかったのだが…。
「2体だけですが、なんとか倒せましたのでこれも納品していいでしょうか?」
証の角を2個スッと取り出した、金銭的に銀貨3枚では次のフレイムボム作成用の購入資金にしても不安があったものだから。
「えっ?…どうやって倒したんですか?ソロですよね?」
うーん…爆弾と結びついても、それでもまだ倒すには難しいほどのレベルだったのだろう。
「…確かに…ヤバイとは思ったんですが、貴女の笑顔を思い出したらどうにも帰ってこなくてはいけないと必死になりまして」
ははっ…と苦い笑いを浮かべられる。
「ま、まぁ強い冒険者さんは理想ですけど、シュウさんはまだ早いかなー…なんて」
遠回しに断られたのだろうか、ちょっと傷つく。
まぁでも、おかげで銀貨を4枚追加でもらうことができたのだから今日も美味い飯を食えそうだ。
「ウチまで一緒してええんですか?」
三角帽子の魔法使いが問う。
深くかぶった三角帽子からは真っ赤に燃えるような長い髪がのぞかせている。
「いいんですよー、ドルヴィンさんいなかったら俺多分ここにいないし。
ドルヴィンさんの仲間なら大歓迎ですよ」
ちょっと小金持ちになった気でいて2人に奢らせてくれ、と銀狼亭へと足を運んでいたのだった。
香辛料の効いた肉を葉でくるんで食べる、これと苦味の効いたビールがよく合う。
ここでの一番人気のメニューだ。
最初は臭み消しかと思っていたのだけれど、とんでもない。
ほとんどサシのない赤身の肉は簡単に噛み切れるほど柔らかく、それでいて濃厚な血の味わい、熟成された甘みも感じ、正直言ってこれまで食べた肉の中では群を抜いていた。
まぁその分値段も高いのだけれど。
魔法使いの女性はローズと名乗った。
時折ドルヴィンと、もう一人レギという召喚士と共に、ダンジョンを探索したりするそうだ。
この世界、フォールドや洞窟のような場所とは別にダンジョンが存在する。
中は通常よりもかなり濃い魔素に満ちていて、時折とんでもないアイテムが入手できるのだそうだ。
その分湧いてくる魔物も高レベルだというのだが。
「俺はシュウ、まだ駆け出しだけど一応今日はゴブリンを倒しに行ってきた。
かなりやばかったけどな、はははっ」
ドルヴィンからは、『無茶をする冒険者はバカだ、死んでも治らないからいっぺん死んどけ』などと笑いながら言われてしまった。
しかも、『いつ死んでも良いように有り金全部奢れよ、もう3皿くらい注文するか』とまで言われるのだから、一瞬金の心配をしてしまうではないか。
まぁそんなこともあって、次は4人でダンジョンでも探索してみようぜ、とお誘いもうけたのだった。
魔法使いのローズは、『そうね、貴方がレベル15になったら考えるわ、まぁ1年後くらいかしら?』と、冷たい口調で言われ、それでも楽しい夜はふけていったのである。
もしまたゴブリンロードが出て来たのであれば、対処しきれないと思い引き上げることにしたのだった。
念のためにと、あの後に作ったフレイムボムは使うことは無く、早急に帰ることにし、門番では『半ドンか?』などと揶揄されもした。
そして、ギルドへ着いた俺は13個のゴブリンの耳を手渡す。
「あら、今日はどなたかとパーティーを組んで行ったの?ドルヴィンさんではないようですし…」
ドルヴィンはドルヴィンですでに納品を終え、仲間らしき三角帽子の女性と円卓を囲んでいた。
最近は夜狩りに行って、朝戻って来ることが多いそうである。
「あ、いや一人です」
爆弾で倒していったことを告げると、あぁ納得…といった様子で奥の部屋へ納品アイテムを持っていく。
「おぉシュウ来てたのか、どうだ調子は」
こちらに気付いたドルヴィンが声をかけてくれた。
「聞いたか?東の洞窟のそばに爆弾魔が現れたらしいぜ。
なんでも洞窟近くでほとんど感覚も空けずに何十発何百発もぶっ放してたらしいじゃねぇか。
あそこはゴブリンロードも出てくる危険な場所だっていうのに全く酔狂な奴もいたもんだな」
『ガッハッハ』と笑いながら酒の肴にしているようだった。
そんなにたくさん投げた覚えはないのだけれど…。
たったの20発ほどだ…もしかして、それでも余程珍しい光景なのだろうか。
そう思うと、とても恥ずかしい気持ちになるのだった。
どう考えても爆弾魔って自分なのだから、あぁそれで受付のヴァイツさんもあんな顔をしてたのか…。
ヴァイツさんが戻って銀貨3枚と銅貨25枚を渡してくれる。
「あの…魔物を退治してくれている冒険者さんにあまり強くは言えませんけれど
…ほどほどにしてくださいね。
まだシュウさんは冒険者になりたてなんですから」
すいません、あぁ本当にすいません。
自信満々に出かけた挙句危うい場面に遭遇し、よもや噂にまでなっているとは知りませんでした…。
だが、皆があの場所を危険なのだと知っているのであれば、もしかしたらこちらの証も出してしまって良いのではないだろうか?
もっと金を貯めてしっかりと装備を整えたいという気持ちが強いものだから、俺はゴブリンロードのドロップアイテムも出してしまう事にしたのだ。
「もしかしてゴブリンロードの出る場所ってこと、みんな知ってるんですか?」
「そうですね、基本洞窟がある場所には上位種と呼ばれる魔物が住み着いていることが多いですので」
そこまで聞いて、だったら大丈夫だろうと思い、インベントリに隠していたアイテムをこっそり取り出す。
身を乗り出し、周りに見えないようにヴァイツに渡すのだが、周りの冒険者の目が鋭くこちらに突き刺さる。
別に言い寄ったりしているわけではなかったのだが…。
「2体だけですが、なんとか倒せましたのでこれも納品していいでしょうか?」
証の角を2個スッと取り出した、金銭的に銀貨3枚では次のフレイムボム作成用の購入資金にしても不安があったものだから。
「えっ?…どうやって倒したんですか?ソロですよね?」
うーん…爆弾と結びついても、それでもまだ倒すには難しいほどのレベルだったのだろう。
「…確かに…ヤバイとは思ったんですが、貴女の笑顔を思い出したらどうにも帰ってこなくてはいけないと必死になりまして」
ははっ…と苦い笑いを浮かべられる。
「ま、まぁ強い冒険者さんは理想ですけど、シュウさんはまだ早いかなー…なんて」
遠回しに断られたのだろうか、ちょっと傷つく。
まぁでも、おかげで銀貨を4枚追加でもらうことができたのだから今日も美味い飯を食えそうだ。
「ウチまで一緒してええんですか?」
三角帽子の魔法使いが問う。
深くかぶった三角帽子からは真っ赤に燃えるような長い髪がのぞかせている。
「いいんですよー、ドルヴィンさんいなかったら俺多分ここにいないし。
ドルヴィンさんの仲間なら大歓迎ですよ」
ちょっと小金持ちになった気でいて2人に奢らせてくれ、と銀狼亭へと足を運んでいたのだった。
香辛料の効いた肉を葉でくるんで食べる、これと苦味の効いたビールがよく合う。
ここでの一番人気のメニューだ。
最初は臭み消しかと思っていたのだけれど、とんでもない。
ほとんどサシのない赤身の肉は簡単に噛み切れるほど柔らかく、それでいて濃厚な血の味わい、熟成された甘みも感じ、正直言ってこれまで食べた肉の中では群を抜いていた。
まぁその分値段も高いのだけれど。
魔法使いの女性はローズと名乗った。
時折ドルヴィンと、もう一人レギという召喚士と共に、ダンジョンを探索したりするそうだ。
この世界、フォールドや洞窟のような場所とは別にダンジョンが存在する。
中は通常よりもかなり濃い魔素に満ちていて、時折とんでもないアイテムが入手できるのだそうだ。
その分湧いてくる魔物も高レベルだというのだが。
「俺はシュウ、まだ駆け出しだけど一応今日はゴブリンを倒しに行ってきた。
かなりやばかったけどな、はははっ」
ドルヴィンからは、『無茶をする冒険者はバカだ、死んでも治らないからいっぺん死んどけ』などと笑いながら言われてしまった。
しかも、『いつ死んでも良いように有り金全部奢れよ、もう3皿くらい注文するか』とまで言われるのだから、一瞬金の心配をしてしまうではないか。
まぁそんなこともあって、次は4人でダンジョンでも探索してみようぜ、とお誘いもうけたのだった。
魔法使いのローズは、『そうね、貴方がレベル15になったら考えるわ、まぁ1年後くらいかしら?』と、冷たい口調で言われ、それでも楽しい夜はふけていったのである。
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