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第1章 異世界

6話 駆け出し冒険者

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 助けてくれただけではなく、酒を酌み交わしながら冒険者としての知識を色々を教えてくれるドルヴィンには、深く礼を言った。
 それだけのことをしてもらったのだから、それだけでなくこの先も機会があれば一緒にパーティーを組んで、ダンジョンにでも行こうとまで言ってくれているのだ。

 俺は酔ってしまいながらも宿へ向かう。
 異世界の酒とは思えぬほどビールに似たそれが、ピルスナーほど軽くはなく苦味も強かったのだが、それが肉料理とよく合うものだから飲みすぎてしまった。

「っしゃいー!」

 威勢の良い宿屋の女将は14、5と思われるほどの若い少女でそれはそれは活発な振る舞いだった。

「っしゃいお兄さん!どしたの?泊まり?1泊銅貨20枚、まからんないからねぇ~」
 その元気の良さが疲れ果てた身体を癒してくれるのだ。

 ほとんど金は残ってはいなかったのだが、一緒に銅貨5枚を支払ってお湯とタオルも用意してもらった。
 着替えたとはいえ…スライムの感触が残るままでは、床にはつけない自分がいたのである。

「この街に初めて来たんだけど、良いところだね」
「私もこの街好きよ、初めてってことは王都から来た冒険者さんかな?」
「まぁそんなところかな」
 本当は冒険者すら初めてなのだが、恥ずかしさもあってそこは黙ってしまった。

「はい鍵、部屋は二階の左使ってね。
お湯は後から持ってくよ、騒いでもいいけど爆発物とか厳禁だからね。
以前さぁ錬金してて部屋に大穴開けたバカがいたんよ、そんなことしたら金貨10枚、あとギルドにも言うからね。
そうそう…呑みたかったら外でよろしく、こんな時間から食事はしないかもしれないけどオススメは『銀狼亭』ね。
香辛料の効いた焼いた肉が人気だよ、朝は私バジルちゃんが5時から立ってるから、それより早く出発するなら鍵はこのボックスに入れてってね、もちろん連泊も歓迎よ」

「あ、うんありがとう…」
 勢いに圧倒された。
 香辛料の効いた肉というのはきっと先程まで食べていたものであろうか?確かにあれは美味かった。

 翌朝、言っていた通り早朝からせっせと働いているバジルに挨拶をして、俺は宿を出た。

「まずは金策と情報収集!まぁ情報収集ったって何すりゃいいか知らんけど!」
 その足は潔くギルドへと向かう、ここしかアテが無いのだから当然である。

 ギルドの受付の横には背丈をゆうに越えるほどの大きな掲示板があり、採取依頼や修理依頼が。
 はたまたドブさらいから炊事洗濯まで依頼が貼り出されているのだから驚きであった。
 当然なのだけど、聞いたことのないアイテムの名前が並んでいる。
 討伐依頼は見当たらなかった、証を持ってくればいつでも換金するってことなのだろうか?

「すいません、貼り出されているクエストなんですが、
初心者にオススメありますか?できれば採取とか優しいのがいいです」

 昨日とは違うギルドの受付が座っていた、同じケモミミなのだけどとても優しい雰囲気が漂っていたのでつい甘えてしまう。

「駆け出しさんですか?そうですね…薬草採取はいかがでしょうか?南東の森は日中ですと、スライム以外はほとんど目にすることはないかと思われますし、スライムからも時折薬草をドロップします。
30枚集めていただきましたらご報告下さい、報酬として銀貨1枚となっております」

 回復薬『ヒールポーション』の作成に欠かせないので、随時募集しているらしい。
 貼り出されている中には無かったので聞いてみたら、皆が知っている依頼内容らしく貼り出す必要がないからだとか。

 すでに薬草なら50枚近くあったのだけれど、100枚まとめてなら銀貨4枚と聞いて欲が出てしまう。
 申し訳ついでにスライムの弱点を聞いてみる、昨日あれだけの目に遭ったものだから心配なのである。

「ない…ですね」
 即答されてしまった。

 無いというよりも、ただ殴れば普通に倒せてしまうので、弱点など有って無いようなものだという。

 なんにせよ木の枝でいつまでも戦うわけにもいかないので新しい武器を見繕いにいく。
「らっしゃーぃ」「あ、いらっしゃいませー」
 玄関に『剣と鎧の絵』が書いてある看板のお店、ここもドルヴィンのオススメだ。

 バタバタと駆け回る小さな少年は弟子か息子なのか、カウンターの奥にドッシリ構える小太りの男は折れた剣をしげしげと眺めている。

 手持ちは酒代と宿代の残りわずか銅貨35枚
「これで買える剣が欲しい、頼む」
 今日はしっかりスライム退治をして稼ぐのつもりなのだから、全てをはたいて良い武器を買ってやろう。

 そう思ったのだけれど一番安い短剣で銅貨50枚だった。

「すまん主人、これしか持ってないので一度ギルドに戻って薬草を売り払ってくる…」

 そういうと主人は笑いだす。
「ははは、お主駆け出しか?冒険者なら後払いでいいぞ!その保証はギルドからたんまりいただいているからな
それで、お前さんのランクは【F】でいいんだな?」

 そうなのか?と思いギルドでもらった一枚のカードを取り出して見ると【名前】の下に小さく【ランクF】と。

「駆け出しなら50銅貨まで、まぁ短剣ならこれしか渡せんがな」
 名前を聞かれカードを見せると、しばらくし短剣を渡された。

「まぁ頑張って生きて帰って来いや」
 不安にさせる一言を平気で言う主人である、まぁこの世界の激励だと思って聞いておこう… 。

 決して新品の物ではないその探検を鞘に収め、俺は一言礼をし、店を後にしたのだった。
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