上 下
8 / 19

おはようの挨拶

しおりを挟む
午前3時、起きたらベットの上だった。

——昨日確かに水華は言った。

「私は天使です。」って。
まず常人はこんなこと信じるわけがない。
でも、
水華は俺の心の中を読めると言う。
神は存在すると言う。

俺にはとても嘘をついているとはおもえなかった。

……はー、とため息を吐く。

ため息は不幸の始まりだと言うのに、
ここ数日で何回吐いているのだろう。
そろそろ死ぬんじゃないかな?

いや、あと2年あった…。

まあこんな気持ちで動いたって、
いいことがあった試しがない。
気持ちを入れ替えていこう。
そうしてベットから出た。

まずは着替えのためにクローゼットに向かう。

……と言っても破滅的に服のセンスがない俺はスウェットぐらいしか持っていない。
あそこも半分、物置と化している。

——アレ?

物置クローゼットの前にきたのはいいのだが、
そこにはトランクケースが数個乱雑に置いてあった。

ゾワッ、
一瞬、悪寒がした。
まるで、
と言う警告のように、

……オチが見えた。
見えてしまったよ。

なんというか、
嬉しいようで、困るようなオチだよ。

俺は少し考えた。


——考えて考えて考えまくった。
結果、一つの案に絞ることができた。
それは——。

「あっ、神さま!ご無沙汰しております。」
ガタッ!ゴトっ!バタンっ!

「こ、こんにちは!!」  ←水華

やはり出てきた。

勿論、神さまはいない。
水華をおびき出すための作戦である。

恐ろしや神さま。

「あれぇ、?いない?、え?かみしゃま?ふぇ?」
まだ寝ぼけている。
それにしても、

『かみしゃま』

ああ、
なんといい響きなのであろうか。
こんなにも可愛い子が存在するとは、
天界も捨てたもんじゃない。

本当は、
俺的にずっと寝ぼけていてくれて構わない。
だけどこのままだと理性が機能しなくなりそうだし、
一つ聞きたいことがあるので起こすとしよう。

「すみません、寝起きのところ申し訳ないんですけど、」
「~?にゃに?」

ズキュンー、『にゃに砲』が心臓を貫通。
にゃ、にゃに?  だと?
不意打ちだぞ、それはキツイ。
あざといにもほどがある。

深呼吸。

———すまんすまん、取り乱した。
この調子だと本当に聞きたいことが聞けるのは、
2~3時間はかかりそうだ。

「水華さん、なんで俺ん家にいるの?」

……反応なし。
立ちながら寝てるし…。

もう!
こうなったらを使うしかないな。

決心した俺はボロボロの精神の力を振り絞る。
そして、
で水華の頭を撫で始めた。
それだけではない、
『あんな事』や『そんな事』などもしまくった。
別によこしまな事ではないが、
それなりに恥ずかしい。

すると、水華はいきなり顔を真っ赤にした。
「ちょっ!?」
りょうくん?  と、とても、恥ずかしいのでやめてください!」
水華 いや、この寝坊助、やっと起きた。

ん?
意味がわからない?
では、説明しよう!
今のは心が読める水華にしかできない技である。
クローゼットを開けようとした時、水華は寝ていた。
しかし、水華は心を読み警告した。
結論として、
水華は寝ている間も無意識にのだ。
だから、
あの半分、よこしま的な妄想も読み取ってしまい恥ずかしがった。

「——という事だろ?」
どうせ心の声は聞こえていたであろう。
水華に答え合わせを問う。

「お見事です。」
水華は半目で拍手をする。
「んで?なんで俺ん家にいるの?」
早速本題へ戻る。

「えっと、何と言うか、住むところがないんです。」

「??、、今までどこに住んでたの?」

「つい昨日下界に降りてきたんです。」 
それにしては随分、下界ここに慣れてんな。

ちなみに、、
「音ゲーの練習は?」
「maimaiなら天界にもあります。」
あっ、あるんだ。
ちょっと意外だわ、

「今日からよろしくお願いします。」
水華はかしこまって挨拶をした。

何勝手に住むこと決まってんだ。

しかし、これって水華と同棲といっても過言ではない。
一人暮らしだし別に迷惑がかかる人間もほとんど居ない。
俺は全然OK。むしろカモン。

「あんまり、心の中読まないでね?」 
俺は答える。
でも、俺が水華のこと可愛いと思ってることぐらいは確認済みだろう。
とことん好き好き大好きしてやろう。

「気持ち悪いですよ。」
早速心を読まれてしまった。
これまた一興。

「狭いところだけど好きに使っていいよ」
俺は続ける。
「まぁ、改めてよろしくお願いね。」

水華はにっこり笑って頷いた。
「よろしくお願いします!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる

春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。 幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……? 幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。 2024.03.06 イラスト:雪緒さま

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~

あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……

処理中です...