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三章
大島主ムルファ
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ランムイの訪問から瞬く間に十日が過ぎた。ムルファの来訪に合わせ統都アキツマへ移動をせねばならない、と思っていたが、ランムイの打診を聞いたムルファは「自分がツトマへ向かう」と言ったらしい。過密な予定を押してでもこちらに来てくれる、というのはありがたいことではあったが、何かムルファの方にも含むところがあるのではないか、という気にさせられてナガエは不安だった。
ともあれ、このような外国の要人を子果清殿に迎え入れるということはなかなかないだけに、警護やその他の迎え入れ準備でこのところ清殿は慌ただしかった。いつもと変わらないのはリキの世話をしているユウビと、自分の仕事を淡々とこなしているアヤラセだけだった。
また、警護の応援として退異会からジョーイがやってきた。ジョーイは相変わらず朗らかで、アヤラセの事情を知っているにもかかわらずいつも通りに接してくれた。そのジョーイの態度はアヤラセに安心感を与えた。
ジョーイは自分の伝手を使ってずっとライセンを探していたが、全く足取りはつかめていなかった。だが、ふと思い立ってアヤラセが腕を斬り飛ばしたというシンリキシャの方を探してみることにした。あれだけの大怪我をして、もし生き延びているのであればどこかで必ずマリキシャの力を借りているはずだ。カンガのビンダとも協力し、慎重に少しずつ調べを進めていった結果、そのシンリキシャは聖タイカ合国に流れていったようだ、との情報が得られた。
ジョーイはその情報をアヤラセには伝えず、ヤルルアにのみ伝えた。ヤルルアは険しい顔をしていたが、「わかった、助かった。あとはこちらで引き取る」と言ってくれた。
ヤルルアはその情報をランムイと共有し、外交ルートを使って聖タイカに質問状を送ったが、「そのような人物は知らない」という返事が返ってきただけだった。だがそれを見てランムイはにやりと笑った。
これは確実に、そのシンリキシャが聖タイカにいることを示している。こちらは「腕を斬り飛ばされた犯罪者であるシンリキシャがそちらに行っていないか」という問い合わせをしたに過ぎないのに「知らない」とのみ言ってくる、というのはおかしい。
どのような犯罪者なのか、聖タイカにどのようなかかわりがあるのか聞いてきてもよさそうなものなのに、そう言ったことは一切書かれていなかった。
「やはり、聖タイカは絡んでますね。我が国にリキシャをたくさん送っていたことも後ろめたくてこのような返事になっているのでしょう。‥さて」
というランムイの顔は笑顔でいながら、どこかそら恐ろしかった。
子果清殿が要人を迎えるための準備をようやく終えたころ、ランムイとともに大島主ムルファがツトマにやってきた。
ムルファは、見た目は四十代ほどに見えるがっしりとした体つきのジャイラ人だった。褐色の肌に少し日に灼けた金髪が腰まで長く伸び、その髪は緩やかに波打っている。顔立ちは際立って美形という訳ではなかったが理知的で、長年政治に携わってきた者の貫録を備えていた。
ナガエは少々緊張しながら出迎えのあいさつをした。
「ムルファ様、このような地方都市にお越しいただきありがとうございます。ご滞在の間、精一杯おもてなしさせていただきます」
ムルファは柔らかく笑って応えた。
「いえ、私がこちらに来たいとわがままを申し上げてしまって。色々とお手数をおかけする仕儀になり申し訳なく思っています」
ナガエは小さくうなずいて一歩後ろへ下がった。この威圧感は何だろう。こんなに優しげに微笑んで友好的な言葉を述べているのに、息苦しいような押さえつけられているような感覚がする。
そんなナガエを見て、ムルファは苦笑した。
「ああ、すみません。私は無意識に精神波を出してしまうことがあるらしい。委縮させたいと思っているわけではないのだが‥なかなか能力抑制の腕輪も効かなくてね」
ランムイも笑って言った。
「ムルファ様のお力が強い証です。ご本人に制御できうるところではないのですから、お気になさらず」
そういうものなのか、とナガエは思いながら一行を貴賓室へ案内した。
大きな窓から陽光が降り注ぐ明るい貴賓室で、一行にお茶を供した。ゆったりとした大きな椅子に座っているのは、ムルファ、ランムイとナガエのみで、その他の随行者は壁際に立ったままだ。ポロシルが椅子を壁際にも設置していたのだが、だれ一人座ろうとしなかったので、お茶を供することもできず困っていると、ランムイが声をかけてきた。
「ああ、申し訳ない、警護や側仕えの者たちなのでお茶は要らないよ。せっかく準備してくれたのにすまなかったね」
ポロシルは仕方なく茶道具の入ったワゴンを押してその場からまかり出た。
それを目で追ってから、ランムイは話し始めた。
「さて、ムルファ様、ここでなければ話せない、報酬のお話とは何ですか?」
ムルファは上品な手つきで茶を喫するとランムイの目を見て、それからナガエの方を見た。
「ナガエ様、今年こちらに入って来た新しいムリキシャは何人ですか?」
突然の、また予想外の問いに戸惑いつつナガエは答えた。
「そうですね、今年は少なくて今のところまだ一人です。去年は二人でしたが‥」
ムルファはかちゃり、と茶器を置いた。
「‥そうですか。今からお話しすることは必ずここだけのお話に留めておいてください。洩れた場合、ジャイラは全力を持ってゴリキ統治国に抗議をします」
思いがけず出た厳しい表現とムルファから発せられる威圧に、ナガエは息を呑んだ。ランムイは顔色を変えることなく頷いた。
「こちら側の者にはあとでシンリキ保証を書かせます。それで、何でしょうか?」
ムルファはランムイの方に向き直り話し始めた。
「我がジャイラ列島国では、この十年間ひとりもムリキシャが生まれていません」
「!!」
ナガエも驚いたがあのランムイでさえも驚いたようだった。これはトップレベルの国家機密だ。二人の表情を見て、ムルファはふっと薄く笑った。
「そんな国家機密を、と驚かれたでしょうね。‥それほど、今ジャイラは切羽詰まっている、ということです」
ムリキシャが生まれない、ということは将来において子どもが授かれなくなる、ということだ。今のジャイラは十年前までに生まれたムリキシャと子果樹だけで成り立っていることになる。
そしてこれまでの十年と同じくこの先もムリキシャが生まれないとすれば。
それは、遠くない将来での国家の滅亡を意味する。
「‥それは‥何とも言えない、事態ですね‥」
珍しくランムイが歯切れ悪く言葉を絞り出した。ムルファは薄く笑んだまま、もう一度茶を口に含んだ。
「ですから今回の報酬として、二つ、お願いがあります。こちらのツトマ子果清殿は比較的ジャイラから近い位置にある。年間、ジャイラの5000組の伴侶にこちらで子果授けをしていただきたい」
「ご、5000組ですか?」
今年は色々な出来事があって授けが滞ったが、ここツトマの子果清殿には、近隣の村々や町からもたくさんの授け希望者が訪問する。年間数にすれば少なくとも3万組以上が訪れているのだ。そのうえツトマ近隣でもムリキシャの数は年々減少しており、今ツトマの子果清殿で授けが可能な子果樹は62本。ギリギリのところである。
そこに追加される5000組。‥正直荷は重い。
ナガエは苦渋の表情でランムイを見た。ランムイは動揺を表にはあらわさず、ムルファに質問をした。
「それはどのくらいの期間を想定しておっしゃっておられますか?」
「少なくとも十年です」
長い。だが、十年ムリキシャが生まれていないジャイラとすれば、その期間でもぎりぎりなのだろう。
ランムイは少し考えるそぶりを見せ、また質問をした。
「二つ、報酬を望むとおっしゃいましたね。もう一つは何ですか?」
「カベワタリの子果樹からとれる子果です」
ムルファはランムイの目をまっすぐ見据えてそう言い放った。
ナガエは無礼を承知しながらも思わずその会話に割り込んだ。
「ムルファ様、カベワタリのリキ様はいまだ心がウツロです。子果を授けることは難しく、またその子果樹は普通のものと違います。子果の実りを期待できません」
「今実っている子果はないのですか?」
そう問われ、凌辱の証である、あの淀んだ子果の事を思い浮かべる。そのナガエの表情を読み取ったのか、ムルファはにっこりと笑った。
「あるようですね。それをいただきたい」
「ですがムルファ様、あれはおそらくいいものではありません!‥‥詳しくは申せませんが、色も淀んでおり‥」
ムルファはその言葉を断ち切るように言葉を続けた。
「構いません。我々はもう追い詰められています。とにかく今は、カベワタリの子果樹から生み出された子果が欲しいのです。‥それと、授けを希望する5000組の受け入れを十年。これが私の希望する報酬です」
ランムイがゆっくりと話し出した。
「わかりました。ただし、その淀んだ子果をもって何か被害が起きても、ゴリキ統治国は一切の責を負いません。それでもよろしいか」
「構いません」
「また、ツトマだけで5000組の受け入れは難しい。他の都市にまたがってもいいなら受けましょう。ただ、その授けの旅に必要な旅費などの費用はゴリキ統治国は一切持ちません。‥また期間ですが、五年にしていただきたく」
「そこは譲れない!十年だ」
「では都市にまたがって6000組まで受け入れます。その代わり7年にしてください」
ムルファは少し苦い顔をして考えていたが、諦めたように深い息をついて頷いた。
「‥まあ、私も無理難題を言っているとは思っています。‥それで手を打ちましょう」
緊張していた貴賓室の空気が、ようやく緩んだ。壁際に立っていた者たちの顔にも安堵の色が見えている。
ランムイが証紙にさらさらと契約の内容を書きつけ、ムルファに見せる。ムルファはうなずき、同じ内容で証紙に書きつけ、ランムイに渡した。
お互いが手に証紙を持って握手を交わす。一瞬、証紙がふわりと小さく光った。
「よかった。・・では早速今年からお願いをしたい。帰国したらその人数の割り振りをご連絡しますので」
「了解致しました」
ムルファは立ち上がって証紙を側仕えに渡した。
「さて、ではそのカベワタリのところへ連れて行ってください」
部屋には相変わらずリキを守るように抱いているユウビの姿があった。その珍しくも美しい姿を見て、ジャイラからの一行は嘆声を上げて驚いていた。
「‥実際にこの目で見ても不思議な‥どんな文献にもこのような生き物の事は書いていないと聞いているが‥」
「そうですね。わが国でも色々と調べていますが、今のところはかばかしい結果は出ていません」
驚きの声をあげるムルファにランムイは答えた。カベワタリやそれに類する情報は、どの国にとっても最重要機密であり、易々と明かせるものではない。どうしても腹を探り合うような会話になってしまう。
ムルファはゆっくりと寝台に近づいた。ユウビの事を見ながらおっかなびっくりといった様相は否めない。
「この方に触れたいが‥」
<お前が新しいシンリキシャか>
「わっ!」
ムルファは頭の中に響いてきた声に驚いて思わず身を引いた。ユウビがその黒い瞳でじっとムルファを見つめている。
ムルファはその視線が自分の内を駆け巡っているのを感じ警戒した。この生き物は、自分の頭の中を探っている!
「何をする!」
精神の守りを固くしてムルファは低く恫喝した。ナガエが取り繕うように横から言葉を発した。
「ムルファ様、ユウビは発声しません。頭の中に声を届けるのです。そして知識をヒトから吸収して成長するようなのですが、それをヒトに伝えることはあまりありませんので‥」
そう言われ、少し警戒を解いて生き物の方に向き直る。するとまた声が響いてきた。
<確かにお前は、あのシンリキシャより力があるようだ。主の心を救ってくれるのか?>
「‥ええ。ですからあまり私の中を探らないでもらえますか。不快ですから」
<‥お前から得られる知識はあまりない。もう必要ないから安心しろ>
その物言いにむっとして思わずゴリキ統治国の人々の方を振り返るが、ユウビの言葉はムルファにしか届いていないようで、特に誰も何も反応していない。
苛ついた気分を抑えようと深呼吸をして、寝台に座りリキの手首をとった。
美しい青年だ。だが、確かにかなりひどいウツロの状態である。目は開いているが何者をも映していない。
「では、始めます。ランムイ様だけ、万が一のシンリキの欠乏に備えて傍にいらしてください。他のヒトは少し離れて。‥‥あなたも」
最後にユウビの方に目を向けて言えば、意外にも大人しく立ち上がり壁の方に寄った。立ち上がった姿を見れば、この部屋にいる誰よりも背が高くたくましい体つきだ。金色の尾は輝いて太く長い。、あれだけでも攻撃力がありそうである。
ムルファはふうと息を吐き、目を閉じて少しずつシンリキをリキの中に流し始めた。するすると深層意識へ下がっていく。
真っ暗な深層精神世界におりてムルファは目を開けた。あちこちにほんの少しだけ、金色の粒子が舞っている。
(こころのかけらか・・)
粒子を追いながらシンリキを流していく。様々なヒトの顔や景色が断片的に映り始めたが、それはかけらでしかなく、何なのかはっきり見えない。
(もっと、深く‥)
シンリキを少しずつ用心しながら流していく。ランムイでさえ意識が剥がれそうになったといっていた。慎重に進めなければならない。
少し明るい画面が見えてきた。いや、明るいというより、何か燃えているようだ。
『散れ!』
『承知!』
燃え盛る景色の中で弓を引く美しい青年が見える。そしてぐにゃりと消えた。
(‥帯壁の向こうがわか‥)
落ちる、落ちる。
『喉が痛かったか、水を飲んだ方がいいが‥。起き上がれるか?』
『よし、じゃあ今からリキを洗ってやるからな。髪の結い紐はほどいてもいいか?髪も洗った方がいいと思うんだ。』
『‥‥‥この皮なら、15ルトは払える。ほらよ』
人々の顔がぼんやりと映るようになってきた。心の奥に着いたのかもしれない。用心しながら慎重に、ほんのわずかずつシンリキを流していく。
『…好きだよリキ。そんなこと言われたら、もう止めてやれない。後悔しないのか?』
『おれも、すき、きも、ち、いいっ、よ、リキ、すげえ、リキの、ナカ』
『‥ああ、ここ、やっと、入れた‥。気持ちいいよ、リキ…。』
『愛してる、リキ』
『ごめんな、不安なのに、一人にする時間を増やして‥』
同じ青年が何度も何度も出てくる。伴侶だろうか。この青年が出てくる空間はとても甘い匂いがした。そして優しい金色の粒子が舞い踊っている。
(この青年の記憶を核にして、心を定着させれば、呼び戻せるかも・・)
ムルファはこの青年に関する記憶の方へ意識を向けた。
『お前はいつもおれの理性を殺しに来るな!』
『リキ、すき、すきだ、おぁ、いい、おれも、ああ、達く、』
甘い、甘い匂い。この記憶を核にして膜で覆い、心を繋ごう。そう思ってシンリキを流していると、ぞわぞわとしたものがせりあがってくるのを感じた。
これは、心の傷のもとになっているものだ。長年に渡る治療の経験からムルファはそう感じとった。
アヤラセだよ。リキ……おい、大丈夫か?性交できるんだろうな?
そうだよ、アヤラセだ、ほらきもちいいだろ?
うお、イイ、こりゃ、イイぜ、あ、あっ、きもち、いいっ
やだじゃねえだろッほらッ、こんなに、濡らして、よぉ!
ぞわぞわざわざわと、淀んだ記憶が立ち上り、これまでに出てきた人々の顔や声を塗りつぶしていく。金色の粒子がその淀みにどんどん吸収されていく。
(まずい)
こりゃあ萎むまでヤってやるか
締まるぜえ、おら、もっとよがれよ
ざわざわ。ぞわぞわ。降りかかる淀みをムルファはシンリキの膜で必死に覆った。覆っても覆ってもどんどん湧いてくる。
(・・く、っ、足り、るか・・)
最後にありったけのシンリキを流して淀みを覆いつくし膜を閉じた。ぱち、という音とともに意識がぐうんとはじかれるのを感じる。
ムルファはその流れに乗って、自分の意識を切り離した。
ともあれ、このような外国の要人を子果清殿に迎え入れるということはなかなかないだけに、警護やその他の迎え入れ準備でこのところ清殿は慌ただしかった。いつもと変わらないのはリキの世話をしているユウビと、自分の仕事を淡々とこなしているアヤラセだけだった。
また、警護の応援として退異会からジョーイがやってきた。ジョーイは相変わらず朗らかで、アヤラセの事情を知っているにもかかわらずいつも通りに接してくれた。そのジョーイの態度はアヤラセに安心感を与えた。
ジョーイは自分の伝手を使ってずっとライセンを探していたが、全く足取りはつかめていなかった。だが、ふと思い立ってアヤラセが腕を斬り飛ばしたというシンリキシャの方を探してみることにした。あれだけの大怪我をして、もし生き延びているのであればどこかで必ずマリキシャの力を借りているはずだ。カンガのビンダとも協力し、慎重に少しずつ調べを進めていった結果、そのシンリキシャは聖タイカ合国に流れていったようだ、との情報が得られた。
ジョーイはその情報をアヤラセには伝えず、ヤルルアにのみ伝えた。ヤルルアは険しい顔をしていたが、「わかった、助かった。あとはこちらで引き取る」と言ってくれた。
ヤルルアはその情報をランムイと共有し、外交ルートを使って聖タイカに質問状を送ったが、「そのような人物は知らない」という返事が返ってきただけだった。だがそれを見てランムイはにやりと笑った。
これは確実に、そのシンリキシャが聖タイカにいることを示している。こちらは「腕を斬り飛ばされた犯罪者であるシンリキシャがそちらに行っていないか」という問い合わせをしたに過ぎないのに「知らない」とのみ言ってくる、というのはおかしい。
どのような犯罪者なのか、聖タイカにどのようなかかわりがあるのか聞いてきてもよさそうなものなのに、そう言ったことは一切書かれていなかった。
「やはり、聖タイカは絡んでますね。我が国にリキシャをたくさん送っていたことも後ろめたくてこのような返事になっているのでしょう。‥さて」
というランムイの顔は笑顔でいながら、どこかそら恐ろしかった。
子果清殿が要人を迎えるための準備をようやく終えたころ、ランムイとともに大島主ムルファがツトマにやってきた。
ムルファは、見た目は四十代ほどに見えるがっしりとした体つきのジャイラ人だった。褐色の肌に少し日に灼けた金髪が腰まで長く伸び、その髪は緩やかに波打っている。顔立ちは際立って美形という訳ではなかったが理知的で、長年政治に携わってきた者の貫録を備えていた。
ナガエは少々緊張しながら出迎えのあいさつをした。
「ムルファ様、このような地方都市にお越しいただきありがとうございます。ご滞在の間、精一杯おもてなしさせていただきます」
ムルファは柔らかく笑って応えた。
「いえ、私がこちらに来たいとわがままを申し上げてしまって。色々とお手数をおかけする仕儀になり申し訳なく思っています」
ナガエは小さくうなずいて一歩後ろへ下がった。この威圧感は何だろう。こんなに優しげに微笑んで友好的な言葉を述べているのに、息苦しいような押さえつけられているような感覚がする。
そんなナガエを見て、ムルファは苦笑した。
「ああ、すみません。私は無意識に精神波を出してしまうことがあるらしい。委縮させたいと思っているわけではないのだが‥なかなか能力抑制の腕輪も効かなくてね」
ランムイも笑って言った。
「ムルファ様のお力が強い証です。ご本人に制御できうるところではないのですから、お気になさらず」
そういうものなのか、とナガエは思いながら一行を貴賓室へ案内した。
大きな窓から陽光が降り注ぐ明るい貴賓室で、一行にお茶を供した。ゆったりとした大きな椅子に座っているのは、ムルファ、ランムイとナガエのみで、その他の随行者は壁際に立ったままだ。ポロシルが椅子を壁際にも設置していたのだが、だれ一人座ろうとしなかったので、お茶を供することもできず困っていると、ランムイが声をかけてきた。
「ああ、申し訳ない、警護や側仕えの者たちなのでお茶は要らないよ。せっかく準備してくれたのにすまなかったね」
ポロシルは仕方なく茶道具の入ったワゴンを押してその場からまかり出た。
それを目で追ってから、ランムイは話し始めた。
「さて、ムルファ様、ここでなければ話せない、報酬のお話とは何ですか?」
ムルファは上品な手つきで茶を喫するとランムイの目を見て、それからナガエの方を見た。
「ナガエ様、今年こちらに入って来た新しいムリキシャは何人ですか?」
突然の、また予想外の問いに戸惑いつつナガエは答えた。
「そうですね、今年は少なくて今のところまだ一人です。去年は二人でしたが‥」
ムルファはかちゃり、と茶器を置いた。
「‥そうですか。今からお話しすることは必ずここだけのお話に留めておいてください。洩れた場合、ジャイラは全力を持ってゴリキ統治国に抗議をします」
思いがけず出た厳しい表現とムルファから発せられる威圧に、ナガエは息を呑んだ。ランムイは顔色を変えることなく頷いた。
「こちら側の者にはあとでシンリキ保証を書かせます。それで、何でしょうか?」
ムルファはランムイの方に向き直り話し始めた。
「我がジャイラ列島国では、この十年間ひとりもムリキシャが生まれていません」
「!!」
ナガエも驚いたがあのランムイでさえも驚いたようだった。これはトップレベルの国家機密だ。二人の表情を見て、ムルファはふっと薄く笑った。
「そんな国家機密を、と驚かれたでしょうね。‥それほど、今ジャイラは切羽詰まっている、ということです」
ムリキシャが生まれない、ということは将来において子どもが授かれなくなる、ということだ。今のジャイラは十年前までに生まれたムリキシャと子果樹だけで成り立っていることになる。
そしてこれまでの十年と同じくこの先もムリキシャが生まれないとすれば。
それは、遠くない将来での国家の滅亡を意味する。
「‥それは‥何とも言えない、事態ですね‥」
珍しくランムイが歯切れ悪く言葉を絞り出した。ムルファは薄く笑んだまま、もう一度茶を口に含んだ。
「ですから今回の報酬として、二つ、お願いがあります。こちらのツトマ子果清殿は比較的ジャイラから近い位置にある。年間、ジャイラの5000組の伴侶にこちらで子果授けをしていただきたい」
「ご、5000組ですか?」
今年は色々な出来事があって授けが滞ったが、ここツトマの子果清殿には、近隣の村々や町からもたくさんの授け希望者が訪問する。年間数にすれば少なくとも3万組以上が訪れているのだ。そのうえツトマ近隣でもムリキシャの数は年々減少しており、今ツトマの子果清殿で授けが可能な子果樹は62本。ギリギリのところである。
そこに追加される5000組。‥正直荷は重い。
ナガエは苦渋の表情でランムイを見た。ランムイは動揺を表にはあらわさず、ムルファに質問をした。
「それはどのくらいの期間を想定しておっしゃっておられますか?」
「少なくとも十年です」
長い。だが、十年ムリキシャが生まれていないジャイラとすれば、その期間でもぎりぎりなのだろう。
ランムイは少し考えるそぶりを見せ、また質問をした。
「二つ、報酬を望むとおっしゃいましたね。もう一つは何ですか?」
「カベワタリの子果樹からとれる子果です」
ムルファはランムイの目をまっすぐ見据えてそう言い放った。
ナガエは無礼を承知しながらも思わずその会話に割り込んだ。
「ムルファ様、カベワタリのリキ様はいまだ心がウツロです。子果を授けることは難しく、またその子果樹は普通のものと違います。子果の実りを期待できません」
「今実っている子果はないのですか?」
そう問われ、凌辱の証である、あの淀んだ子果の事を思い浮かべる。そのナガエの表情を読み取ったのか、ムルファはにっこりと笑った。
「あるようですね。それをいただきたい」
「ですがムルファ様、あれはおそらくいいものではありません!‥‥詳しくは申せませんが、色も淀んでおり‥」
ムルファはその言葉を断ち切るように言葉を続けた。
「構いません。我々はもう追い詰められています。とにかく今は、カベワタリの子果樹から生み出された子果が欲しいのです。‥それと、授けを希望する5000組の受け入れを十年。これが私の希望する報酬です」
ランムイがゆっくりと話し出した。
「わかりました。ただし、その淀んだ子果をもって何か被害が起きても、ゴリキ統治国は一切の責を負いません。それでもよろしいか」
「構いません」
「また、ツトマだけで5000組の受け入れは難しい。他の都市にまたがってもいいなら受けましょう。ただ、その授けの旅に必要な旅費などの費用はゴリキ統治国は一切持ちません。‥また期間ですが、五年にしていただきたく」
「そこは譲れない!十年だ」
「では都市にまたがって6000組まで受け入れます。その代わり7年にしてください」
ムルファは少し苦い顔をして考えていたが、諦めたように深い息をついて頷いた。
「‥まあ、私も無理難題を言っているとは思っています。‥それで手を打ちましょう」
緊張していた貴賓室の空気が、ようやく緩んだ。壁際に立っていた者たちの顔にも安堵の色が見えている。
ランムイが証紙にさらさらと契約の内容を書きつけ、ムルファに見せる。ムルファはうなずき、同じ内容で証紙に書きつけ、ランムイに渡した。
お互いが手に証紙を持って握手を交わす。一瞬、証紙がふわりと小さく光った。
「よかった。・・では早速今年からお願いをしたい。帰国したらその人数の割り振りをご連絡しますので」
「了解致しました」
ムルファは立ち上がって証紙を側仕えに渡した。
「さて、ではそのカベワタリのところへ連れて行ってください」
部屋には相変わらずリキを守るように抱いているユウビの姿があった。その珍しくも美しい姿を見て、ジャイラからの一行は嘆声を上げて驚いていた。
「‥実際にこの目で見ても不思議な‥どんな文献にもこのような生き物の事は書いていないと聞いているが‥」
「そうですね。わが国でも色々と調べていますが、今のところはかばかしい結果は出ていません」
驚きの声をあげるムルファにランムイは答えた。カベワタリやそれに類する情報は、どの国にとっても最重要機密であり、易々と明かせるものではない。どうしても腹を探り合うような会話になってしまう。
ムルファはゆっくりと寝台に近づいた。ユウビの事を見ながらおっかなびっくりといった様相は否めない。
「この方に触れたいが‥」
<お前が新しいシンリキシャか>
「わっ!」
ムルファは頭の中に響いてきた声に驚いて思わず身を引いた。ユウビがその黒い瞳でじっとムルファを見つめている。
ムルファはその視線が自分の内を駆け巡っているのを感じ警戒した。この生き物は、自分の頭の中を探っている!
「何をする!」
精神の守りを固くしてムルファは低く恫喝した。ナガエが取り繕うように横から言葉を発した。
「ムルファ様、ユウビは発声しません。頭の中に声を届けるのです。そして知識をヒトから吸収して成長するようなのですが、それをヒトに伝えることはあまりありませんので‥」
そう言われ、少し警戒を解いて生き物の方に向き直る。するとまた声が響いてきた。
<確かにお前は、あのシンリキシャより力があるようだ。主の心を救ってくれるのか?>
「‥ええ。ですからあまり私の中を探らないでもらえますか。不快ですから」
<‥お前から得られる知識はあまりない。もう必要ないから安心しろ>
その物言いにむっとして思わずゴリキ統治国の人々の方を振り返るが、ユウビの言葉はムルファにしか届いていないようで、特に誰も何も反応していない。
苛ついた気分を抑えようと深呼吸をして、寝台に座りリキの手首をとった。
美しい青年だ。だが、確かにかなりひどいウツロの状態である。目は開いているが何者をも映していない。
「では、始めます。ランムイ様だけ、万が一のシンリキの欠乏に備えて傍にいらしてください。他のヒトは少し離れて。‥‥あなたも」
最後にユウビの方に目を向けて言えば、意外にも大人しく立ち上がり壁の方に寄った。立ち上がった姿を見れば、この部屋にいる誰よりも背が高くたくましい体つきだ。金色の尾は輝いて太く長い。、あれだけでも攻撃力がありそうである。
ムルファはふうと息を吐き、目を閉じて少しずつシンリキをリキの中に流し始めた。するすると深層意識へ下がっていく。
真っ暗な深層精神世界におりてムルファは目を開けた。あちこちにほんの少しだけ、金色の粒子が舞っている。
(こころのかけらか・・)
粒子を追いながらシンリキを流していく。様々なヒトの顔や景色が断片的に映り始めたが、それはかけらでしかなく、何なのかはっきり見えない。
(もっと、深く‥)
シンリキを少しずつ用心しながら流していく。ランムイでさえ意識が剥がれそうになったといっていた。慎重に進めなければならない。
少し明るい画面が見えてきた。いや、明るいというより、何か燃えているようだ。
『散れ!』
『承知!』
燃え盛る景色の中で弓を引く美しい青年が見える。そしてぐにゃりと消えた。
(‥帯壁の向こうがわか‥)
落ちる、落ちる。
『喉が痛かったか、水を飲んだ方がいいが‥。起き上がれるか?』
『よし、じゃあ今からリキを洗ってやるからな。髪の結い紐はほどいてもいいか?髪も洗った方がいいと思うんだ。』
『‥‥‥この皮なら、15ルトは払える。ほらよ』
人々の顔がぼんやりと映るようになってきた。心の奥に着いたのかもしれない。用心しながら慎重に、ほんのわずかずつシンリキを流していく。
『…好きだよリキ。そんなこと言われたら、もう止めてやれない。後悔しないのか?』
『おれも、すき、きも、ち、いいっ、よ、リキ、すげえ、リキの、ナカ』
『‥ああ、ここ、やっと、入れた‥。気持ちいいよ、リキ…。』
『愛してる、リキ』
『ごめんな、不安なのに、一人にする時間を増やして‥』
同じ青年が何度も何度も出てくる。伴侶だろうか。この青年が出てくる空間はとても甘い匂いがした。そして優しい金色の粒子が舞い踊っている。
(この青年の記憶を核にして、心を定着させれば、呼び戻せるかも・・)
ムルファはこの青年に関する記憶の方へ意識を向けた。
『お前はいつもおれの理性を殺しに来るな!』
『リキ、すき、すきだ、おぁ、いい、おれも、ああ、達く、』
甘い、甘い匂い。この記憶を核にして膜で覆い、心を繋ごう。そう思ってシンリキを流していると、ぞわぞわとしたものがせりあがってくるのを感じた。
これは、心の傷のもとになっているものだ。長年に渡る治療の経験からムルファはそう感じとった。
アヤラセだよ。リキ……おい、大丈夫か?性交できるんだろうな?
そうだよ、アヤラセだ、ほらきもちいいだろ?
うお、イイ、こりゃ、イイぜ、あ、あっ、きもち、いいっ
やだじゃねえだろッほらッ、こんなに、濡らして、よぉ!
ぞわぞわざわざわと、淀んだ記憶が立ち上り、これまでに出てきた人々の顔や声を塗りつぶしていく。金色の粒子がその淀みにどんどん吸収されていく。
(まずい)
こりゃあ萎むまでヤってやるか
締まるぜえ、おら、もっとよがれよ
ざわざわ。ぞわぞわ。降りかかる淀みをムルファはシンリキの膜で必死に覆った。覆っても覆ってもどんどん湧いてくる。
(・・く、っ、足り、るか・・)
最後にありったけのシンリキを流して淀みを覆いつくし膜を閉じた。ぱち、という音とともに意識がぐうんとはじかれるのを感じる。
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