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18 浴場
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浴場は外に面している壁が全て取っ払われており、外に向かって吹き抜けていた。少し熱めの湯に浸かっていると顔を撫でる風が冷たくて気持ちいい。外は荒野のような眺めで特に花が咲いているなどといういわゆる一般的に美しい景色、というわけではなかったが、少し遠くに見える切り立つような岩山、ところどころに生えている見慣れない木々など野趣あふれる景色でそれはそれでいいものだった。
石鹸も髪を洗うものも、使ってみればとてもいい匂いで、ああこれがハルタカの匂いなのかも、と思いついた。そして同じ匂いになってしまったことに気づき、一人赤面した。
(貸切露天風呂みたいで、贅沢だなあ‥)
やはり日本人だからなのか、湯船に身を沈めていると癒されている気がする。張りつめていた心や身体が解きほぐされているようにも感じた。
(ハルタカさん‥ハルタカって呼んだ方がいいんだっけか。いい人っぽいんだけど、なんであんなに私に執着するのかは解らないな~。やっぱり、パンダ的興味なのかなと思うけど‥世話したいとかも、生態に興味ある感じかもしれないし)
とにかく、こんな短時間で好きになるとか(セックス込みの)付き合いがしたいとかいうのは本当に解らない。理解できない、という方が正しいだろうか。
だが、マヒロも若い女性なのであのような恐ろしいほどの美青年に好意らしきものを示されているのは悪い気はしない。ただ、その反動がどう出てくるのかが怖いのだ。
(正気に戻ってから捨てられたりしたらみじめだもんな。とにかく、自分で生きていく道を見つけないと、不安でたまんない)
ここにしばらくいたとしても、タツリキという超能力を自由自在に使えるハルタカのもとでは何かの技術を身につけるということも難しそうだ。ハルタカの傍にいる間はこの世界の事などをよく学んで、いずれヒトが住んでいるところに行った時に何か自分ができる仕事はないのかを探そう。
せっかく受験勉強も頑張ってきて進学するつもりだったのに、急に就職を考えなければならなくなったのは残念だがこのような事態では仕方がない。まずは一人で生きていく方法を考えるのが最優先だ。
(そう考えると、悪いけど番いだ何だって考えてる時でもないよな、私)
ふーと息を吐きながら大きな湯船の中でぐっと身体を伸ばす。
(‥あれ、明日着物を買いに街に行くって言ってなかったっけ?)
初めて、ハルタカ以外のこの世界の人に会えるチャンスだ。色々見て、どういう世界なのかを観察しなければならない。
(身体の調子が悪くなければ、って言われてたな‥明日までは大人しくベッドの住人になってよう、うん)
ハルタカはマヒロの事に関しては少し過保護っぽいところがあるように見えるので、元気になったとみてもらえるように今日は大人しくしておいた方がいいだろう。
よし、あがろう。
マヒロはこっそり洗ってぎゅっと絞った下着を持って、脱衣所に向かった。
下着なしで衣服を身につけるのはかなり、抵抗があるが仕方がない。身体をざっと拭いて小さな布を頭に巻き付け、大きなタオルのような布の中に下着を忍び込ませた。
そしてそっと脱衣所から廊下に繋がるドアを開けて辺りをうかがう。名を呼べ、と言われたが、大きな声で呼んだら来てくれるということだろうか。
なんだかちょっと恥ずかしいので、普通くらいの声で「ハ、ハルタカ~‥」と呼んでみた。するとシュウッという音がしてあっという間にハルタカが目の前に現れた。
「わっ、びっくりした!」
「終わったか」
マヒロの驚きにも動じることなく声をかけてくる。その顔にはあまり表情がなく、どういう感情なのか今はよくわからない。
すぐにひょいとマヒロを抱きかかえ、ベッドのある部屋に戻る。大人に抱きかかえてもらったのなんて子どもの時ぐらいしかなかったのに、この二日でやたら抱き上げられている気がする。
だがしっかりと安定感があるハルタカの腕の中は、心地よかった。
部屋に戻ってベッドに下ろされる。そしてハルタカはマヒロの頭に巻かれている布をすっと手に取って外した。
「え、なんで」
「髪を乾かしてやろう」
そう言って、マヒロの頭に手をかざし温かい風をぶわっと吹かせた。あっという間に髪が乾く。しかも高級ドライヤーを使ったようなつるつるさらさらの出来上がりで、思わずマヒロは感動の声を上げた。
「すご!めっちゃ髪がさらさらになった!ハルタカすごいなあ!」
「‥喜んでもらえたならよかった」
そう言ってハルタカはふっと笑った。やはりハルタカの笑顔の破壊力はすさまじい。マヒロはその美しい笑顔を見て顔が赤くなるのを感じた。そのマヒロの顔を見て、ハルタカは眉根を寄せマヒロの額に手をあてた。
「顔が赤い。湯あたりでもしたか?」
「いや、違う違う、大丈夫!」
焦って必死に否定する。体調がいいアピールをしておかないと明日街に連れて行ってもらえないかもしれない。
そして、ハルタカドライヤーを目の当たりにしたマヒロは、小さい声でハルタカに頼んだ。
「ハルタカ、このタオルもちょっと乾かしてくれませんか‥?」
「構わんが、あとで色々まとめてやるぞ」
「いや、是非!何も訊かずに、今これ乾かしてほしい!してくれたらすっごく嬉しい!」
不思議そうな顔をするハルタカを拝み倒し、下着を忍び込ませたタオルを一気に乾かしてもらった。
明日、出かける時にノーパン状態にはならなくてすみそうで、マヒロはほっとした。
石鹸も髪を洗うものも、使ってみればとてもいい匂いで、ああこれがハルタカの匂いなのかも、と思いついた。そして同じ匂いになってしまったことに気づき、一人赤面した。
(貸切露天風呂みたいで、贅沢だなあ‥)
やはり日本人だからなのか、湯船に身を沈めていると癒されている気がする。張りつめていた心や身体が解きほぐされているようにも感じた。
(ハルタカさん‥ハルタカって呼んだ方がいいんだっけか。いい人っぽいんだけど、なんであんなに私に執着するのかは解らないな~。やっぱり、パンダ的興味なのかなと思うけど‥世話したいとかも、生態に興味ある感じかもしれないし)
とにかく、こんな短時間で好きになるとか(セックス込みの)付き合いがしたいとかいうのは本当に解らない。理解できない、という方が正しいだろうか。
だが、マヒロも若い女性なのであのような恐ろしいほどの美青年に好意らしきものを示されているのは悪い気はしない。ただ、その反動がどう出てくるのかが怖いのだ。
(正気に戻ってから捨てられたりしたらみじめだもんな。とにかく、自分で生きていく道を見つけないと、不安でたまんない)
ここにしばらくいたとしても、タツリキという超能力を自由自在に使えるハルタカのもとでは何かの技術を身につけるということも難しそうだ。ハルタカの傍にいる間はこの世界の事などをよく学んで、いずれヒトが住んでいるところに行った時に何か自分ができる仕事はないのかを探そう。
せっかく受験勉強も頑張ってきて進学するつもりだったのに、急に就職を考えなければならなくなったのは残念だがこのような事態では仕方がない。まずは一人で生きていく方法を考えるのが最優先だ。
(そう考えると、悪いけど番いだ何だって考えてる時でもないよな、私)
ふーと息を吐きながら大きな湯船の中でぐっと身体を伸ばす。
(‥あれ、明日着物を買いに街に行くって言ってなかったっけ?)
初めて、ハルタカ以外のこの世界の人に会えるチャンスだ。色々見て、どういう世界なのかを観察しなければならない。
(身体の調子が悪くなければ、って言われてたな‥明日までは大人しくベッドの住人になってよう、うん)
ハルタカはマヒロの事に関しては少し過保護っぽいところがあるように見えるので、元気になったとみてもらえるように今日は大人しくしておいた方がいいだろう。
よし、あがろう。
マヒロはこっそり洗ってぎゅっと絞った下着を持って、脱衣所に向かった。
下着なしで衣服を身につけるのはかなり、抵抗があるが仕方がない。身体をざっと拭いて小さな布を頭に巻き付け、大きなタオルのような布の中に下着を忍び込ませた。
そしてそっと脱衣所から廊下に繋がるドアを開けて辺りをうかがう。名を呼べ、と言われたが、大きな声で呼んだら来てくれるということだろうか。
なんだかちょっと恥ずかしいので、普通くらいの声で「ハ、ハルタカ~‥」と呼んでみた。するとシュウッという音がしてあっという間にハルタカが目の前に現れた。
「わっ、びっくりした!」
「終わったか」
マヒロの驚きにも動じることなく声をかけてくる。その顔にはあまり表情がなく、どういう感情なのか今はよくわからない。
すぐにひょいとマヒロを抱きかかえ、ベッドのある部屋に戻る。大人に抱きかかえてもらったのなんて子どもの時ぐらいしかなかったのに、この二日でやたら抱き上げられている気がする。
だがしっかりと安定感があるハルタカの腕の中は、心地よかった。
部屋に戻ってベッドに下ろされる。そしてハルタカはマヒロの頭に巻かれている布をすっと手に取って外した。
「え、なんで」
「髪を乾かしてやろう」
そう言って、マヒロの頭に手をかざし温かい風をぶわっと吹かせた。あっという間に髪が乾く。しかも高級ドライヤーを使ったようなつるつるさらさらの出来上がりで、思わずマヒロは感動の声を上げた。
「すご!めっちゃ髪がさらさらになった!ハルタカすごいなあ!」
「‥喜んでもらえたならよかった」
そう言ってハルタカはふっと笑った。やはりハルタカの笑顔の破壊力はすさまじい。マヒロはその美しい笑顔を見て顔が赤くなるのを感じた。そのマヒロの顔を見て、ハルタカは眉根を寄せマヒロの額に手をあてた。
「顔が赤い。湯あたりでもしたか?」
「いや、違う違う、大丈夫!」
焦って必死に否定する。体調がいいアピールをしておかないと明日街に連れて行ってもらえないかもしれない。
そして、ハルタカドライヤーを目の当たりにしたマヒロは、小さい声でハルタカに頼んだ。
「ハルタカ、このタオルもちょっと乾かしてくれませんか‥?」
「構わんが、あとで色々まとめてやるぞ」
「いや、是非!何も訊かずに、今これ乾かしてほしい!してくれたらすっごく嬉しい!」
不思議そうな顔をするハルタカを拝み倒し、下着を忍び込ませたタオルを一気に乾かしてもらった。
明日、出かける時にノーパン状態にはならなくてすみそうで、マヒロはほっとした。
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