ご当地アイドルなんか、余裕だし!

りりぃこ

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ヒソヒソ集団

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 オーディションが始まった。

 私と爽香はエントリーナンバーがずっと離れていたので、一旦お別れだ。
「お互い、頑張ろうな」
 にこやかに言う爽香の後ろでは、爽香のダサいジャージをみてクスクス笑っている人達がいた。
 何だか私まで笑われてるような気がして、少し私は顔を伏せた。
「ん、じゃあまた後でね」
 急いで爽香から離れる。
 ま、一応爽香とはライバルだしね。あまり馴れ合うのも良くないよね。


 すぐに何組かのグループに分けられて、順番に歌の審査とダンス審査をしていく。
 私もあまり歌は得意でない。下手ではないと思うけど。
 でも、同じグループの人たちも、上手な人もいたけど、私レベルの人が大半で、ま、これならいけるかな、とホッとした。
 ダンス審査に至っては、結構私は他の人と上手い方だったと思う。オーディションスタッフの人達から、「おお」っていう声が聞こえたし。

 結構自信があるな、とムフムフしながら待機場所に戻ろうとした時、何やらヒソヒソ声が聞こえてきた。

「ね、見た?あのダサいジャージの男みたいな子」
「ね、ヤバい。別に可愛くもないし、歌もダンスも下手じゃなかった?」
「よく恥ずかしげも無く来れたよね」
「もしかしてあのジャージって、実力無いからせめて目立とうとしてわざと着てきたんじゃない?」
「うわー、そうかもー、そういうあざといのムカツクー」

 ダサいジャージの男みたいな子。多分、爽香の事だ。あんなダサジャージで来てる子が何人もいてたまるか。
 私は、そのヒソヒソ集団の方をこっそり覗いてみた。
 ヒソヒソ集団の眼の前には、爽香のバックがあった。
「ね、これ、あのダサジャージのカバン。次の体力テスト用のシューズ入ってるんだけど。……隠しちゃわない?」
 ヒソヒソ集団の一人がそういいだしたので、私はギョッとした。
 うわあ、そんな嫌がらせするのって、漫画とか小説の中だけだと思ってたよ!
 私は隠れながら、そのヒソヒソ集団の観察を続けた。
 さすがに隠すとかの嫌がらせに対しては、「やめたほうが……」って言うマトモな子もいたけど、「やっちゃえやっちゃえ」って言う子達の声が大きい。
 え、やばくない?それは……。さすがに注意しに行こうとしたけど、ヒソヒソ集団の人数も多くて、変に目をつけられるのも嫌だ。

 どうしようかとモダモダしてると、向こうの方からオーディションのスタッフらしき大人の人が歩いて来た。
 これはチャンスだ。
「お疲れ様です!!」
 わざと大きめの声を出してみせると、ヒソヒソ集団はビクッとして一斉に散り散りになった。
「ああ、お疲れ様。元気な挨拶いいね」
 スタッフらしき大人の人がニッコリと笑いかけてくれた。
 よしよし、気分の悪い集団を解散させられたし、スタッフの人にも挨拶でいい印象与えられたし、なんかちょっといい気分かも。

 私はそう思いながら、次の体力測定のテストの準備の為に、急いで支度をするのだった。
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