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とってもクソ
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私達はその後すぐにファーストフード店を出た。雪華さんとは会社に向かう途中で別れた。
「それじゃあ、グッドラック!」
親指を立てる雪華さんに、力強く手を振ると、私は会社に戻った。
「あれ?神田さんどうしたんですか?」
会社に戻ると、案の定、同僚に不審そうに声をかけられた。
「ちょっと忘れ物しちゃって」
「何忘れたんです?」
「スマホ」
「それは忘れちゃダメなやつ!」
呆れ顔で言う同僚を後目に、私は広報課に急いだ。
広報課に行くと、鈴川さんがパッと明るい顔をして出てきた。待ち構えていたようだ。
「おかえりなさい!見れました?」
「もちろん」
鈴川さんは、私の返事に嬉しそうな顔をすると、すぐに机の近くから赤いエコバッグを取り出した。
「では、ご返却しますね」
「ありがとう」
自分のエコバッグを受け取ると、私は鞄から、さっき買ったアクリルキーホルダーの袋を取り出した。まだ開けていない、買ったばかりのものだ。
「これ、預かっててもらってもいい?持って帰ってバレたらいけないから」
鈴川さんは、ほあぁぁぁ、と謎の声を上げながら袋を受け取った。
「しかと受け取りました!開封の儀、今度一緒にやりましょう!」
「ええ。じゃあもう行くわね」
私はそう言って、帰ろうとした、か、ふと思うところがあって、思わずまた鈴川さんの方を見て恐る恐る言った。
「一言だけ、正直な感想、言ってもいい?」
「……正直な感想……、どうぞ」
鈴川さんが真剣な顔で促してくれた。まだ業務時間内なので、私は周りに気を使って小声で鈴川さんの耳に囁くように言った。
「とっても」
「とっても?」
「クソ映画だったわ!」
「ですよね!!!!」
鈴川さんも小声で、でも力強く同意してくれた。お互いにとびきりの笑顔だ。雪華さんが聞いたら、「上映中泣いてたのに!?」と驚かれてしまうだろう。でも、それはそれ、これはこれなのだ。
「でもとってもとっても楽しかったわ!クソ映画だけど」
「今度、いっぱい感想言い合いましょうね!」
「ええ。それじゃあ」
私は広報課から立ち去った。
ちょうど就業時間の五時のチャイムが鳴った。私は急いで会社の外に向かった。
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