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終わった

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※※※※

 上映が終わった。


 終わっだのだ!


 エンドロールが終わり、明るくなっても私は立ち上がれなかった。雪華さんに強引に立ち上がらせてもらって映画館を出る。

「凄いCGでしたね!迫力凄かった」

「そうね。そして首、痛かった……」

 思わず呟いた私に、雪華さんは、吹き出した。

「一言目がそれですか!?まあ確かにちょっと首が疲れましたね。でも大迫力だったんじゃないですか?」

「ダイハクリョクダッタ」

 私はまだボーッとしていて、オウム返しのような返事しかできなかった。


 私は久しぶりの推しに、ストーリーとは関係無しに号泣してしまったのだ。

 星川良馬くん、ちょっと見ない間にそんなにかっこよくなってたのね……。似合ってるわ、松竜の格好。まあ松竜はもう少しムキムキのガッチリしてるけどね……。


 雪華さんは、ボーッとしている私の背中をバンと叩いた。

「久しぶりの映画で感激しているところ申し訳ないんですけど、まだ計画は終わってませんよ。家に帰るまでがこの計画です」

「わかってるわ」

 私は慌てて答える。でもまだ会社に帰る予定時間までは余裕がある。あまり早く会社に戻って五時迄いたりしたら、有給取ってるのに何してるんだとまた同僚に不審がられてしまう。

「のんびりまだしてても良さそうよ」

 私がそう言った時だった。


 目の前を、見慣れた人影が通り過ぎた。

 私は一瞬で血の気が引いた。

「く、日下部さんだわ」

 あの人影は、多分日下部さんだ。そして多分目が合った。

「どうしました?何か顔色悪いですけど」

 雪華さんが心配そうに私の顔をのぞきこんだ。私は真っ青になってぷるぷる震えだした。

「どうしましょう。たった今、夫の友人がすれ違ったの。私のことも知ってる人。軽く会釈された気がするから私がここにいた事、その彼にバレたわ。夫に何気なく言うかもしれない」

 私は激しく動揺してしまっていた。

 こんな短期間に敦さんを裏切ってしまっていることがバレたら、もうただでは済まないだろう。会社を辞めさせられてもう二度と働くことなど許されないかもしれない。何より、またあんな、敦さんの悲しい顔を見てしまうのは辛い。


「美香さん、落ち着いて」

 雪華さんは、動揺しきってしまっている私の肩を強く掴んだ。

「落ち着いてください。旦那様の友人とは?」

「日下部さんっていって、夫の古くからの友人で、今も一緒にお仕事している人よ。つい最近家に来て一緒にご飯たべたばかりだから……」

「なるほどなるほど」

 ドウドウ、と雪華さんは私を落ち着かせる為に優しく背中をさすったり

「確かに、日下部さんでしたか?見間違いってことは?」

「間違いないと思う。会釈された気がするし」

「そう、ですか。会釈されただけですか?なんか、こう、びっくりした表情とかは?」

「一瞬だったから……」

 私はフルフルと首を振った。

 そんな様子の雪華さんは、少し考えこんでいる様子だったが、すぐに言った。

「大丈夫です」

「どうして?大丈夫なんかじゃない!」

 私が思わず声を上げると、雪華さんは優しく言った。

「大丈夫なんです。美香さんの味方は意外に多いんですよ。少し座れる場所に行きましょうか」

 雪華さんがそう言うと、私を近くのファーストフード店に連れて行った。
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