媚薬魔法の優しい使い方

りりぃこ

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騙していた

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 始終キラキラした目で話すクロウに、ジャスはゾッとした。

 しかしふとあることが気になった。

「じゃあ、クロウはアウルと僕がうっかり契を結ばないように監視してたってこと?」

「ま、そうだね」

 あっさりとクロウは頷いた。

「あの、契を結んでしまうような危なかったこと、結構あったかと思うんだけど……」

 ジャスの問いに、クロウはジャスではなく、アウルの目を見て言った。

「まあ、大抵はタイミングよくお家訪ねてきて邪魔したしね。
 あとは、俺はアウルの性格は知ってるから。夜とか訪ねてきたら不自然なときなんかは……。ねえアウル、ジャスくんって、酩酊したり眠りかけてぼんやりしてる時、とっても素直で可愛かったと思わない?」

「……どういう事だ」

 アウルはクロウを睨みつける。すると、クロウは小さく指を動かすと口を開いて言った。

「『全然、歩み、よる、気が、無かったのは、少しだけ、ごめん……』とか?『本当は僕……嫌いじゃないからな……お前との、毎日のキス。キスで……少しずつ……お前と分かり合おうと……思ってる……よ』とか?これ聞いて、無理やり契を結んだりしないで大事にしようと思ったでしょう?」

「テ、テメェまさか……」

「何?」

 ジャスは何がなんだか分からないままアウルの顔を見た。すると酷い顔色をしていた。

「テメェが魔法で代わりに言ってたのか……」

「うん、そうだよ」

 クロウがそう答えるのと同時で、アウルの身体が動いた。

 ジャスが止める暇はなかった。

 アウルはクロウを殴っていた。

「アウル!やめろよ!」

「止めんなジャス!こいつは……ずっとずっと俺等を騙してたんだぞ!!」

 そう叫んだアウルは、怒り狂いながらも、泣きそうな顔をしていた。

「ねえクロウ、どうして今そんな事言ったんだよ」

 ジャスは、興奮してしまったアウルを必死で抑えながら、殴られて座り込んだままのクロウにたずねた。

「そんな事、言わなくてよかっただろ?黙って、アウルの200歳になるギリギリに僕をさらって隠してしまうとか、そうしたほうがアウルを人間にできたんじゃないの?

 何で、そんな、わざわざアウルを傷つけるような事を言うんだよ。言わないでごまかす事だって、クロウならできたんじゃないのか?」

「俺にだって、耐えられないことあるんだよ」

 ゆっくりと立ち上がったクロウの顔は、真っ赤に腫れていた。

「こんなにも俺は苦しいのに。俺はアウルを手に入れる為に必死なのに。アウルは他のヤツと、俺じゃないヤツと……」

 クロウのさっきまでの笑顔は消えていた。

「んな事、テメェの勝手だろう」

 アウルは震えた声で抗議した。

 クロウはふるふると首を振った。

「勝手だよそりゃね!でも耐えられなかった。あと少しなのに……」

 クロウはそう言って、アウルを睨みつけるようにした。

「俺は、アウルに決めてもらう事にしたんだ」

「は?」

「ねえ決めて。花嫁はジャスくんにするのか、俺にするのか」

「んなもん、決まってんだろう。俺は人間になるつもりはねえし、だいたいジャスにずっと決めて……」

「ちなみに、アウルが俺を選ばなかったら、俺は二度とアウルの前には姿を現さない」

「……は?」

 アウルはぽかんとして言葉を止めた。

「二度とって……テメェ一体何言って……」

「3日。3日後またここに来る。その時に答え聞かせて」

 クロウはそう言ってくるりと背を向けた。その際に軽く指を動かした。途端に家中から軽い爆破音が聞こえた。

「キノコは処分したから、アウルなら3日もすれば魔力完全に回復するでしょ。あ、3日の間にジャス君にまた腕輪つけたりしたなら、それはジャスくんを選んだとみなすから」

 そうはき捨てるように言うと、クロウはさっと姿を消した。


「くそっ!」

 アウルはそう叫んで、クロウのいた空間に、何も入っていない魔法薬の瓶を投げつけた。
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