媚薬魔法の優しい使い方

りりぃこ

文字の大きさ
上 下
16 / 114

大仕事⑥

しおりを挟む
 早速三人は御神木の近くに向かった。

 アウルは御神木の根本すぐ近くに座り込むと、荷物の中から大きな水晶を取り出す。そして、目をつぶって何やら長い間ブツブツ呟き続けた。


 しばらく続け、ようやく立ち上がると、クロウに向かって言った。

「この木は健康体だった。完全に雷のみで折れちまってる。だから、雷が落ちた日までだ」

「うーん。すると、今回は3日くらいで大丈夫そうかな?」

「多分な。頼めるか」

「オッケーオッケー。まあそのくらいかなって予想してたし」

 二人はジャスには全くわからない話をする。


「あ、じゃその件村長さんに伝えてくるね。御神木に魔法をかけるのは明日かな?もう暗いしね。村長さんに今日泊まれる所ないかも確認してくるよ」

 そう言って、クロウはスッと消えた。


「依頼は受けるんだな」

 ジャスは確認する。アウルは短く「ああ」とだけ言うと、そっと御神木に触れた。

「確認ができたからな。ちゃんと元の大木に戻してやる」

 それは、魔法使いとしてのプライドを表明するかのような強い言葉だった。

「本当に、生き返らせることが出来るの?」

 ジャスは以前クロウが言った事を思い出す。クロウは「そんな事出来る訳がない」と言っていたが…。

「生き返らせる事はできる。まぁ実質は生き返らせる魔法じゃなくて…」

 アウルが説明しようとしたが、途中で言葉を止めた。

「まあ、うまく説明できねえから明日実際見せてやる」


 クロウはすぐに戻ってきた。

「とりあえず、宿泊施設ほとんど機能してなくて汚いから今日は村長さんの家に泊まってだってさ。サア行こう」

「わかった」

 アウルはそう言って、クロウに付いていく。ジャスも一緒に行こうとしたが、スッとアウルに止められた。

「テメェは今日違うところに泊まれ」

「え?ど、どこに泊まれば?」

「んなこと自分で考えろよ。さっきの女のことでもいんじゃねぇか?」

 そう言ってクロウの後を追うと、すぐにサッと消えてしまった。

「自分で考えろって、そんな無茶な……」

 ジャスはひとり残され途方にくれてしまった。


 ~~~

「あれ、置いてきちゃったの?」

 ひとり村長の家の一部屋に一人で現れたアウルに、クロウは驚いてたずねた。

「何してんの。かわいそうでしょ」

「いいんだよ」

 アウルはそっけなく言う。あまりに言ってもアウルが機嫌悪くするのでそれ以上追求しないようにした。

「まぁ、あの子ならなんとか出来そうだよね。さて、明日の準備してゆっくり休もうか。魔力大量に使うからね」

 そう言ってクロウはサッサと寝る準備に取り掛かる。

「おい、テメェもここで寝るのか」

「そうだよ、一つしか部屋無いし」

「マジか」

 アウルは頭をかきながら、自分も寝る支度をした。

「久しぶりだねー、二人で同じ部屋に寝るの。100年ぶりくらい?」

「さあな」

 関心なさそうにアウルは布団に潜り込む。

「ちゃんと朝起きてね。また朝寝坊したらチューして起こしちゃうからね」

「やめろって。浮気したことになるだろ」

 アウルがそっけなくそう言うと、クロウは目を丸くした。

「えー、アウルが凄く真面目!」

「うるせぇ。早く寝ろ」

 そう言ってアウルは布団を頭から被り、それ以上何も言わずに寝てしまった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

助けの来ない状況で少年は壊れるまで嬲られる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...