媚薬魔法の優しい使い方

りりぃこ

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大仕事③

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 どれ位寝ていたのか。着いたよ、とクロウに声をかけられるまで完全にジャスは熟睡していた。

「早く荷物を持って付いて来い」

「わかってるよ。てか重いんだって。自分で持てばいいのに」

 ブツブツ言いながらジャスは汽車を降りた。



 そこは、ジャスは訪れたことのない駅だった。駅から少し歩くと、遠くの方に小さな村が見えてきた。

「小さい村だよ。住人も少ないし、そんなに財政も潤ってない」

 説明しながらクロウは先に立って案内して歩く。

「そんな貧乏村に、依頼料払えんのか」

「かき集めて払うって言ってたけど」

「かき集めて払う程の価値があんのか、ただの木を生き返らせんのが」

「価値観は人それぞれだからね」

 アウルとクロウは話しながら歩く。ジャスは話についていくつもりはなかったし、何より荷物が重くて必死だったので、ずっと黙ったまま二人の後を付いていった。

「いっ!」

 一瞬、ジャスの頭の後ろに鋭い痛みがはしる。痛みがあったことろを触ってみると、うっすら血が滲んでいた。慌てて周りを見渡すが、誰もいない。

「痛っ!」

 今度は足に何かがぶつかる感じがあった。

 足元を見てみると、石を何か紙で包んだようなものが落ちていた。拾って紙を広げてみる。

『出ていけ』

「……!」

 脅迫?ジャスはまた周りを見渡すがやはり誰も見つけられない。誰が誰に宛てて投げつけられた脅迫なのか。恐らくアウル宛であるのは間違いなさそうだが。

 ジャスは慌てて二人にこの件を伝えようとしたが、気づいたら二人はずっと先を歩いていた。急いで二人を追いかけようとした時だった。


「動くな」

 突然後から声が聞こえた。背中には何かが硬いものが当たっている。

「お前は魔法使いの弟子か?下僕か?」

「いや、どちらでも無いけども…」

 ジャスは恐る恐る振り向く。

 そこには、ジャスよりも少し年下と思われる少女が、怖い顔で棍棒を手に持って立っていた。

「お前たちが向かおうとしている村の者よ。お前たち魔法使いが来るのを阻止しようとしている」

 ハッキリとした口調で少女は答える。

「お前は弟子でも下僕でも無いと言ったが、魔法使いの仲間でしょう。村に行くのは辞めてくれと伝えて」

「あー、僕が言ってもアイツは聞いてはくれないと思う…」

 ジャスは残念そうに答えた。

 少女は怖い顔を崩さない。とりあえず少女を落ち着かせてその手に持った棍棒くらいは置いてもらいたい。ジャスは対話を試みることにした。



「僕はジャス。君の名前は?」

「……オーブよ」

「オーブ、よくわからないけど、どうして阻止しようとしてるの?何だっけ?えっと、なんか大木を生き返らせるんだっけ」

「ええ。村の真ん中にそびえる、樹齢三百年の御神木をね」

「御神木を生き返らせたくないってこと?」

「別に御神木に恨みはないわ。……今はね。でもこのままだと恨んでしまうかも」

 オーブは苦しそうに話し、少しだけ棍棒を持つ手を緩めた。

「このままだとって言うのは…?」

「お金の問題。あの折れた神木を魔法使いに直してもらうのに、この村の財政が破綻するくらいのお金がかかるのよ。お前、弟子なのにそんな事もわからないの?」

「弟子じゃねぇって」

 ジャスはそこは否定しながら、さっきの二人の会話を思い出す。そういえば、依頼料払えるのかどうかとか言ってたな。



 そう考えていると突然、見えない何かに襟首を掴まれる感覚を感じた。

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